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子どもの「預貯金」は財産分与の対象? 将来に備えた取り決めとは

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更新日:2024年10月09日  公開日:2021年01月14日
子どもの「預貯金」は財産分与の対象? 将来に備えた取り決めとは

離婚において、夫婦の共有財産をどのように分けるのか(財産分与)についての取り決めも重要です。
子どもがいる夫婦では、子どもの預貯金や学資保険を財産分与の対象とするかどうかでもめるケースもあるでしょう。

子ども名義の預貯金口座には「お年玉」「お小遣い」「児童手当」などが入金されているケースが多く、これから子どもを直接養育する親として「子どもの未来のために自分が取得したい」と考えることも自然なことです。

本コラムでは、離婚において子どもの将来を支える預貯金や児童手当、学資保険等の財産分与をどのように進めるべきか、弁護士が解説します。

1、財産分与の基礎知識

  1. (1)共有財産は2分の1ずつに分ける

    財産分与とは、離婚時に夫婦の「共有財産」を分けることを意味します。
    共有財産とは、婚姻中に夫婦の協力によって築いた財産です。したがって、婚姻中に得た給与等が入っている預貯金や、それを原資として取得した不動産、給与から支払いを行っている生命保険等、婚姻中に築いた財産は原則として財産分与の対象となり、離婚時には分け合うことになります
    分与の割合は基本的に2分の1ずつとされていますが、互いの合意があれば、どのような割合で分け合ってもかまいません。

  2. (2)財産分与の対象になる財産の例

    財産分与対象になるのは、婚姻中に得た財産ですが、具体的には以下のようなものが考えられます。


    • 現金
    • 預貯金
    • 保険
    • 株式、債券
    • 投資信託、仮想通貨、FX
    • 不動産(土地、住宅、自動車など)
    • 動産(骨董品、絵画、貴金属など)


    夫婦どちらかの名義で上記のような財産があれば、原則として財産分与対象となります。

  3. (3)特有財産は財産分与の対象外

    夫婦それぞれの特有財産は財産分与の対象になりません。 以下のような財産が特有財産とされます。


    • 独身時代から持っていた財産(独身時代に購入し完済した自動車等)
    • 親や親族から相続、贈与された財産
    • 友人から夫婦のどちらか一方にプレゼントされた衣服や装飾品など


    特有財産は、財産分与の対象になりませんので、財産分与の際に計算には入れません。離婚の際には、それぞれの特有財産はそのままその所有者である一方が所有し続けるということになります。


    「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。

    適切な分配・損をしないために離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください

    参考:財産分与について詳しく知る

2、子どもの預貯金等は財産分与の対象か?

子ども名義の預貯金や学資保険は財産分与の対象になるのでしょうか。
基本的な考え方としては、子どもの自身が取得した財産は、子どもの固有財産となり、夫婦が築いた財産ではありませんから、財産分与の対象になりません。他方、子どもの名義になっていたとしても、その原資が夫婦が築いた財産(婚姻中の給与等)であれば、名義がどうなっているかに関わらず、財産分与の対象になります

それでは、子どもの財産として考えられるものについて、個別にみてみましょう。

[分類表]子どもの財産分与

財産の種類 内訳 財産分与対象になるか
学資保険 学資保険 財産分与対象になる
預貯金 出産一時金 財産分与対象になる
児童手当 財産分与対象になる
お祝い金 お祝い金の趣旨や理由により異なる
お年玉 財産分与の対象にならない
お小遣い 財産分与の対象にならない
アルバイト代 財産分与対象にならない


上の表は、一般的な判断を簡易に示したものですので、子どもの年齢や支払われた趣旨・理由により結論が変わる可能性があります。

以下、それぞれについて解説します。

  1. (1)学資保険

    学資保険は、子どもの大学費用などの将来に備え、親が契約して加入する保険です。契約者は親であり保険料も親が払い込むので、契約者が夫婦のどちらか一方であったとしても「両親の財産」と評価できるでしょう。したがって、学資保険は財産分与の対象になります

    ただし、払込みを祖父母が行っている場合には、夫婦が築いた財産ではありませんので、財産分与の対象にはなりません。

  2. (2)出産一時金・児童手当

    出産一時金は、出産にかかる費用を援助するための給付金です。出産によって費用を負担する親が取得する給付金ですから、夫婦が婚姻中に築いた財産と評価され、財産分与の対象となると考えられます。

    また、児童手当は子どもが成長するための生活費や教育資金の負担を軽減するため、つまり親を支援するためのお金です。
    「児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与する」ことを目的とするものであること(児童手当法1条)、親の所得により制限限度額が設けられており、親を基準に受給資格者を限定していることから、親が取得権限を有するものであると考えられますので、夫婦が婚姻中に築いた財産として、財産分与の対象になると考えられます。


    適切な分配・損をしないために離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください
  3. (3)親族からのお年玉・お祝い金

    お年玉については、子に対して与えられるものであり、子の固有財産と評価されますので、夫婦が築いた財産ではなく、財産分与の対象とはなりません。これは、子どもが受け取ったお年玉の管理を親がしていたとしても変わりません。

    お祝い金については、どのような趣旨や理由により支払われたかにより異なります。一概にお祝い金と言っても、出産祝いや入学祝いなど趣旨は様々ですし、その想定されている使い道も、子が自由に使うことを想定しているもの、親が子どもの用品を買うための資金として使うことを想定しているものなど様々です。そのため、一概に結論付けることはできません。

    一般的には、出産祝いは、子どものために使うものであるとしても、両親が使うことを想定しているものと考えられますので、財産分与の対象となりやすいと言えます。一方で、入学祝は子どもに対して支払われることが多いですので、財産分与の対象ではないと考えられる可能性が高いように思います。

    なお、子どもの固有財産と両親の共有財産が同じ口座で管理され、当該口座から保育料の引き落としをするなどして継続的に入出金が続く場合には、子どもの固有財産部分が特定できないために全体として夫婦の共有財産と評価される可能性が高くなりますので、ご注意ください。

  4. (4)子どものアルバイト代や小遣い

    子どもがアルバイトし稼いだ金銭は、子どもの固有財産であり、夫婦の財産ではありませんから、財産分与の対象になりません。
    また、お小遣いについても、子どもの固有財産であり、夫婦の財産ではありませんので、財産分与の対象とはならないと考えられるでしょう。

    以上が、財産分与について裁判所が判断したときの見通しとなります。当事者間での話し合いの場合は、上記の判断には縛られませんので、両者が合意すれば、子ども名義の財産については財産分与の対象とせず、子どもを育てる方に取得させて管理させるということも可能です。

3、離婚における財産分与の手続き

離婚時に財産分与を行う際は、以下の手順で進めていきます。

  1. (1)共有財産の把握

    まず、共有財産をすべて把握しなければなりません。
    夫婦それぞれの名義の預貯金や保険など、まずはすべての財産を探して把握しましょう。そのうえで、夫婦それぞれの特有財産や子どもの固有財産をそこから外し、最終的に共有財産を把握しましょう。

    共有財産として何があるかが把握できたら、現金や預貯金など額が定まっているもの以外の、保険や不動産、動産について、基準となる時点の評価額を把握する必要があります。
    学資保険や生命保険などの保険については、基準となる時点の評価額は、解約返戻金額により把握しますので、各保険会社へ「解約返戻金証明書」を申請し、発行を受けて、把握します。
    土地や住宅等の不動産、自動車や絵画などの動産については、業者に査定を依頼して評価額を把握します。

    株式や投資信託などについては、基準となる時点の時価を調べます。上場されている場合には容易ですが、非上場会社の株式の場合には評価の方法についても検討する必要があります。

  2. (2)財産分与についての協議

    財産を把握したら、夫婦間で財産分与方法(財産分与の割合、どの財産を取得するか)について協議を行います。

    財産分与割合は基本的に夫婦で2分の1ずつとされていますが、両者の話合いで合意することができれば、割合は自由です。
    最終的に裁判所が判断する場合には、相手が特別な資格や能力があるために高額所得者であった場合、財産形成に大きく貢献したとみなされ、相手が多く取得し、支払われる割合が少なくなるケースもあります。また、不貞行為などどちらかに明らかな離婚原因があった場合、財産分与に慰謝料を含めること(慰謝料的財産分与)や、離婚後の生活保障のために割合を変更すること(扶養的財産分与)もあります。
    合意した割合を踏まえるなどして、どの財産を取得するかについても話し合います。

    財産分与すべき財産に、住宅ローンが残っている不動産が含まれている場合には、売却するのか維持するのか、維持する場合には今後の住宅ローンについてどちらが支払い、どちらが住むのか等細かい調整が必要になります。
    財産分与について合意できた場合には、合意した内容を書面にしておくことをおすすめします。

  3. (3)離婚調停

    夫婦で話し合いをしても協議が成立しなかった場合、離婚前であれば、離婚調停を申し立てて、その中で財産分与についても話し合います。すでに離婚している場合には、財産分与請求調停を申し立てます。

    調停では、家庭裁判所の調停委員が夫婦(元夫婦)の間に入って話し合いを調整してくれます。子ども名義の財産の取り扱いでもめてしまう場合にも、冷静な第三者が入ることで解決に向かう可能性があります。

    なお、調停の段階で弁護士にご依頼いただいた場合、調停委員にどのように主張すればよいかについてアドバイスすることはもちろん、調停とは言え財産分与の場合には書面の作成が必要になりますので、その作成も行います。また、財産の評価や、住宅ローンの借換え等についてもお手伝いいたします。
    さらに、調停外で配偶者(元配偶者)と連絡しなければならない場合も弁護士が間に入りますので、直接話すことがストレスになる場合も、弁護士に一任することで軽減されるでしょう。

  4. (4)離婚訴訟

    離婚調停で合意できなかった場合には、離婚訴訟の中で財産分与について附帯処分を申し立てることによって財産分与を求めることになります。離婚訴訟では、最終的には、裁判所が、夫婦が提出した証拠・資料をもとに財産分与の対象財産を確定し、方法を決定します。子ども名義の財産が財産分与対象になるかどうかも、裁判所が判断します。

    訴訟で希望を実現するには、的確な証拠提出と正しい法的主張が必要です。訴訟になると、一般の方では対応が難しくなりますので、離婚問題の実績のある弁護士に相談しましょう。

    なお、離婚の際に財産分与の取決めを行わず、離婚後に財産分与請求調停を申し立てた場合、調停で合意できなかった場合には、そのまま審判に進み、裁判所が判断します。

4、財産分与を弁護士に相談するメリット

  1. (1)財産を適切に確保するためのサポートを行う

    離婚後に子どもを実際に養育する者としては、子ども名義の預金などの財産をできれば取得したいと考えるのは自然なことです。しかし個人で対応すると、相手からの主張にうまく対応できず、納得がいかない金額になってしまうこともあるでしょう。

    弁護士にご依頼されると、弁護士は、学資保険を親権者名義に変更することの交渉や、子ども名義の預貯金について固有財産であると主張することなどにより、子どもの将来に備えた適切な財産分与を主張するお手伝いをします。また、財産分与に加えて、養育費についても取決めを行うよう活動し、合意ができた場合には、公正証書を作成するなど支払いをより確実なものにするためのサポートを行います。
    離婚後の生活についてご不安を感じていらっしゃる方も多くいらっしゃると思いますので、離婚後の経済的安定のために様々な活動を行います。

  2. (2)財産隠しに対応することができる

    財産分与の際には、相手の財産隠しに注意が必要です。預貯金、株式などの財産を隠されると、総財産の額が下がり、本来受けられるはずの財産分与額から不当に減額されてしまいます。

    相手が巧妙に財産を隠している場合、個人で調べるのは困難ですが、弁護士にご依頼いただいている場合には、弁護士が弁護士会による照会手続き(弁護士法23条の2)を用いて、金融機関や保険会社、証券会社等に契約の有無や残高等について照会することができます
    また、調停や審判、訴訟に進んでいる段階では、裁判所で調査嘱託の手続きを行うことも検討できます。調査嘱託の申出を行い、裁判所が採用した場合には、裁判所が金融機関に財産情報の開示を求めます。弁護士会照会に応じない金融機関等でも裁判所からの要請であれば開示に応じてくれる場合があります。
    配偶者に財産隠しの疑いがある場合は、早めに弁護士へ相談してみましょう。

  3. (3)公正証書の作成により不払いに備えられる

    せっかく財産分与や養育費の支払いを定めても、相手が約束どおり支払わない可能性があります。
    特に養育費の場合には、一括ではなく継続して支払われるもののため、途中で不払いとなってしまうケースが多いので注意が必要です。

    不払いとなった場合に回収するためには、離婚の際に、財産分与や養育費について合意できたからと安心せずに、強制執行認諾文言付きの「公正証書」を作成しておくことがよいでしょう。強制執行認諾文言付きの公正証書があれば、相手が支払いを滞納したときに、スムーズに給料や預貯金、保険などの差押えをすることが可能になります。場合によっては、調停を利用することも考えられます。

    参考:もっと知りたい「公正証書」について

  4. (4)離婚後のサポート

    離婚すると、様々な手続きが必要になります。たとえば、今まで夫が児童手当を受け取っていた場合には、受給者の切り替えのための申請手続きが必要です。また、子どもの名字を変更するために家庭裁判所で「氏の変更許可申し立て」を行うケースもあります。

    離婚後のこのような手続きは、ご自身でしなければならないものや、ご自身でできるものが多いですが、離婚についてご依頼いただいている場合には、弁護士が手続きの案内をしますので、抜けなく手続きを行うことにつながるでしょう。

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5、まとめ

子ども名義の預貯金や児童手当、学資保険は、離婚後の子どもの将来を支える大切なものです。子どもの将来のためにも、弁護士の力を借りて、しっかりと確保するために動きたいものです。

夫婦で話し合っても財産分与の条件がまとまらないとき、また納得できる条件で合意できない場合には、ベリーベスト法律事務所までお早めにご相談ください。離婚問題の解決実績が豊富な離婚専門チームが、離婚後も安心できる財産分与に向けて尽力いたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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