本気で離婚を考えたら。離婚する前に準備したい5つのこと
生涯の愛を誓い合って結婚したものの、配偶者と共に過ごす毎日の生活がつらい。将来に不安しかない。こんなはずではなかったのに。だからもう、離婚してしまおう……。
そんな決意をしたあなたへ、まずは「ちょっと待った!」と言わせてください。たしかに今の日本では、結婚したカップルのうち3分の1が離婚する時代となり、ひたすら耐えるような風潮はもう終わりました。
ですが、「とにかく別れたい」「はやく離婚したい」という衝動にかられたまま行動すると、泥沼化してしまうことも少なくありません。
もしスムーズに離婚できたとしても、後になってから、大きな問題が発覚することになる可能性もあります。だからこそ、あらかじめ、離婚後の生活を見据えた準備をしておくことが重要なのです。
本コラムでは、離婚する意思があることを配偶者に告げる前に必ず準備しておきたい5つの項目や、離婚を切り出すタイミングについて、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。
1、いきなりの離婚宣告はNGです!
結婚があなただけの意志ではできなかったように、離婚もまた、基本的にはあなただけの意志ではできないことです。だからこそ、離婚の意志を相手に告げることこそが最初の1歩……と思いがちですが、その前に改めて冷静になって離婚という事実に向かい合い、あらかじめ準備をしておく必要があるのです。
では、なぜいきなり「離婚したい」と相手に言ってはダメなのでしょうか。
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(1)事前準備なしで離婚を告げるとどうなる?
結論から先に申し上げますと、不利な条件で離婚してしまう可能性や、無一文で再スタートを切らなければならなくなる可能性が高まります。
●本当に離婚したほうがよいのか、改めて考える
離婚をすると、あなたの生活はどのように変わるでしょうか。まずはそれをじっくり考えてみてください。
離婚すれば、配偶者の経済面や生活面における面倒を見なくて済むという点は、大きなメリットです。しかし、ことはそれほど単純ではありません。離婚をすれば、仕事、家事、育児など、これまでふたりで協力して行っていたものの多くをひとりで背負うことになる可能性があります。
家事や生活面の手間だけではありません。婚姻中に築き上げてきた財産については分割することになるため、あなたが手にする財産もおよそ半分になることが多いでしょう。おそらくあなたが想像している以上に経済的な環境が変わります。これらは、デメリットといえるでしょう。
その上で、今現在あなたが「離婚したい」と考えてしまう現状を照らし合わせてみてください。なんとか現状を改善する方法を見つけたほうがよいのか、デメリットがあるとしても別々の道を歩んだほうがよいのかを、改めて考えておく必要があります。
「離婚の意志を告げて話し合ってからでもいいのでは……」と思う方もいるでしょう。しかし多くのケースでは、離婚の話し合いはスムーズには進みません。
精神面、金銭面、さらには時間も削っていくことになります。話し合いの途中で離婚したくないと思いなおしたとしても、一度口に出してしまった「離婚したい」という言葉が、知らず知らずしこりになって残ってしまうケースは少なくありません。それだけ、「離婚」という言葉は重いものであることを肝に銘じておきましょう。
だからこそ、離婚をしたいかどうかの事前の自問自答はとても重要なのです。
●改めて考えても離婚の意志が固いとき
離婚の意志が固く、何を言われてもその意志は変わらないと思った方も、すぐに離婚したいという意志を告げるのはやめておきましょう。
たとえば、相手に不倫や暴力といった非があれば、慰謝料などを請求することができる場合もあります。
離婚を拒まれれば、あなたが離婚をしたいと思う原因が、法律で認められた離婚の条件に合致していることを証明する必要があります。
離婚をすること自体はスムーズに承諾されたとしても、財産を正しく分割するためには、夫婦共有財産と特有財産をリストアップしておくことが必要です。いずれの場合にも、「証拠」が欠かせません。
しかし、何も準備をせずに離婚したいことを告げてしまうと、慰謝料請求に使える証拠を処分されてしまったり、離婚したいと思う原因に関係する証拠を隠蔽されてしまったり、夫婦共有財産を使いこまれてしまったりする可能性が発生します。
その結果、冒頭で述べたとおり、受け取れるはずのものが受け取れない、あったはずのものまでむしり取られてしまう……というリスクが大幅にアップしてしまうのです。
離婚することになれば、たとえ今は配偶者でも法律上は他人となります。離婚の意志を伝えるということは、あなたと他人になりたいと告げることにほかなりません。そのことを前提に、まだ相手があなたを身内だと認識しているうちに、慎重に準備をしておく必要があるのです。 -
(2)準備しておけば不測の事態に備えられる!
離婚の話し合いは、可能な限り長引かせないほうがよいものです。長期化すればするほど先行きが見えなくなりますし、心もお金も時間も削られていくため、多くのマイナスを生む結果となりがちだからです。
ところが、離婚の話し合いは金銭や子どもの人生が関わることでもあるので、話がこじれてしまいやすいものです。相手の両親など、親族が絡んで話がさらに混乱してしまうこともあるでしょう。相手がありもしない事実を主張し、あなたが不利になるように貶めることもあるかもしれません。その結果、早く決着を付けたいと焦って離婚したケースや、相手の言いなりになってしまったケースでは、離婚後に貧困状態に陥ってしまうことも少なくありません。それでは、新たなスタートすら満足に切れないのではないでしょうか。
相手の言いなりにならず、なおかつ話し合いの長期化を防ぐためには、準備しておいた証拠となる資料が役立ちます。これまで起きた事実や現在の状況などが、誰が見ても一目でわかる状態で用意されていれば、相手や周囲の勝手な言い分が通りづらくなります。れっきとした事実を示す証拠は、調停や裁判でも利用できるため、なによりも強いのです。
また、改めて冷静になって調べていくうちに、これまで気づかなかった配偶者が有責であるといえる事実が露呈することもあるかもしれません。これらは、あなたにとって有力な武器となります。少しでもあなたにとって有利な条件で離婚するために、非常に役立つものとなるでしょう。
次項で挙げている準備の数々は、離婚の話し合いの中ではもちろん、離婚後も必ず役立つものです。スムーズに新たな生活を始められるよう、できる限り準備しておくことをおすすめします。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
2、離婚を決意したら必ずしておきたい準備5つ
離婚に向けた下準備として必要なものを、ここでは5つの項目に分けてご紹介します。
可能な限り、ここに挙げた5項目の準備を整えてから、離婚に向けた話し合いを行うことをおすすめします。
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(1)経済的自立の準備
離婚後、もっとも困ってしまいがちなものは、やはり経済面です。特に、専業主婦であれば、たとえDVにあっていても経済面の不安から離婚をあきらめてしまうことがあるぐらい、大きな問題となるでしょう。また、男性で一家の大黒柱として働いている方でも、給料すべてを配偶者に渡してしまっていれば、自分で自由にできるお金がまったくないというケースもあります。
離婚を検討する際に最初に必要となるものが、別居費用です。現在住んでいる住宅で暮らし続けられればよいのですが、そうとも限りません。話し合いの行方によっては、離婚が成立する前に別居をしなければならないケースもあります。別居するにあたっては、引っ越し費用や新たな賃貸借契約を結ぶための費用、それから当面の生活費が必要となります。
そこで、別居費用だけでおよそ100万円かかると考えてあらかじめ確保しておけば、心に余裕が生まれますし、万が一の際も素早い行動が可能となります。簡単なことではありませんが、できる限り節約したり、働いたりして、なんとか貯金をしておきましょう。また、離婚する前から就業しておけば、離婚後の生活に困る確率を大幅に減らすこともできます。可能な限り、離婚後の生活を見据えて行動しておきましょう。
なお、この別居費用にあてるお金は、できる限り配偶者に気づかれないように用意してください。相手名義の通帳では問題となる可能性もありますし、必ずあなた自身の名義の通帳を用意しましょう。もし、自分名義の通帳を配偶者に渡してしまっている場合は、できる限り早急に自分で管理することをおすすめします。 -
(2)離婚理由を明確にできるようまとめておく
離婚は、婚姻したときと同様、双方が合意すれば成立します。しかし、相手が離婚に合意しなかった場合は、離婚を求めて争うことになります。さらに裁判の場となれば、民法770条1項で定められている特定の理由がなければ離婚することはできません。
●不貞行為(770条1項1号)
配偶者が、あなた以外の人と自由な意思に基づいて性的な関係を結んだとき
●悪意の遺棄(770条1項2号)
配偶者があなたに生活費を払わない、配偶者が勝手に別居してしまった、など、婚姻生活を送るにあたっての同居・協力・扶養義務を行わないとき
●3年間の生死不明(770条1項3号)
配偶者と3年以上連絡が取れず、生死すらわからないとき。(配偶者の親族が行方を知っている、など生存がわかっているときは当たらない)
●強度の精神病となり回復の見込みがない(770条1項4号)
重度の精神疾患により、あなたを認識できない、会話が成立しないなど、婚姻の本質ともいうべき相互協力義務、とくに精神的生活に対する協力義務を十分に果たせない状況から回復しないことが明確なとき
●その他婚姻を継続しがたい重大な事由(770条1項5号)
婚姻関係が破綻して婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがないと認められるとき。具体例として、DV、モラルハラスメント、過度な浪費、借金、過度な宗教活動などが挙げられる。(ただし、これらの事情が存在するからといって、770条1項5号に必ずあてあまるというわけではありません。)
上記5つの離婚が認められる条件は、「法定離婚事由」と呼ばれています。
これらの事由の少なくとも1つが当てはまる場合のみ、裁判所はあなたが申し出た離婚を認めるということになります。ただし、あなた自身が法定離婚事由に当てはまる行為をした「有責配偶者」であって、相手方には法定離婚事由が存在しない場合には、原則としてあなたから希望した離婚は認められません。(一定の条件を充たす場合には、有責配偶者からの離婚請求が認められることがあります。
また、双方が有責配偶者の場合には、責任の割合によって判断が分かれることになります。)
あなたが直面している離婚したい理由が法定離婚事由に当てはまるかわからない、当てはまるような気がするが不安……という場合は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。 -
(3)請求可能なお金や資産のリストアップ
離婚する際には、お金や資産、さらには、あなたが今置かれている状況によっては援助などを受けることができる場合があります。
何をどれぐらい受け取れるのかは、各家庭の状況によって異なります。まずはそれを明確にするために、以下の項目について検討してリストアップしておきましょう。離婚後の生活のめどを立てることができます。
●婚姻費用
離婚する前に生活費を受け取っていないときや、話し合いによって離婚を前提とした別居をすることになったときには、相手に生活費を請求することができる場合があります。
具体的な金額は、家庭裁判所でも広く活用されている基準(算定表)に基づいて決まることが多いですが、基本的にはあなたの収入よりも配偶者の収入の方が多い場合には、婚姻費用の請求が認められる可能性が高くなります。忘れずに請求しましょう。
●財産分与
婚姻中、夫婦が協力して築いた財産は、ふたりの共有財産となります。
もし、あなたが専業主婦であったとしても、あなたが家事をしていたからこそ配偶者が仕事に専念してお金を稼ぐことができたとして、あなたと共に築いた財産であるとみなされます。共有財産は、離婚に伴い清算することになります。婚姻後に建てた家などの不動産も対象です。必ずリストアップして計算しておきましょう。ただし、婚姻後に契約したローンなどの借金も財産分与対象となるので、注意が必要です。
なお、それぞれが独身のときに貯めた貯金や相続で受け取った不動産やお金などは、特有財産となる場合には財産分与の対象とはなりません。
●慰謝料
前項「(2)離婚理由を明確にできるようまとめておく」で挙げた法定離婚事由に当てはまる行為を相手がしていたときは、慰謝料を請求できる場合があります。反対に、あなたが法定離婚事由に当てはまる行為をしていた場合には、慰謝料を支払う側になることもあります。
慰謝料を請求できる典型例として、不倫や暴力が挙げられます。よく、慰謝料は男性が支払うものと勘違いをしている人がいますが、男女問わず慰謝料を支払う義務を負う可能性はありますので、誤解のないようにしてください。
●養育費
あなたに子どもがいて、あなたが親権者となる場合には、相手から養育費を受け取ることができます。養育費は、子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる子どものためのお金です。
子どもの教育計画を明確にし、何のためにいくら必要なのかを説明できるようにしておきましょう。養育費の額については、婚姻費用と同様に算定表に基づいて決まることが多いです。なお、あなたが相手に親権を譲る場合は、たとえあなたが女性であっても養育費を支払う側になる可能性があります。
●助成金など
離婚後、あなたがひとり親家庭になったり、安定した所得を得られない可能性がある場合は、お住まいの市区町村による扶助や助成金を得られることがあります。助成される金額やサービスは市区町村によって異なります。離婚後の居住地となる自治体のホームページなどで確認しておきましょう。 -
(4)使用する証拠の収集
離婚を申し入れても、拒否されたり、条件がかみ合わずに話し合いがスムーズに進まなくなったりするケースは少なくありません。これまでも何度か説明してきたとおり、あなたが提示する条件を相手に飲んでもらうためには「証拠」が欠かせません。
●集めておくべき資料
この証拠は、離婚自体の請求に必要なことはもちろんのこと、慰謝料や財産分与、婚姻費用分担請求、養育費の請求など、さまざまなシーンで必要とされるものです。
- 浮気、DVなどがあればその証拠となる資料(例えば、メールのやり取り、けがを負っている写真など)
- 預貯金通帳(通帳のコピー)
- 所得を証明する書類(給与明細、確定申告書類など)
- 不動産登記簿
- 生命保険に関する書類
- 証券口座の明細
もし、相手が厳重に管理していて見せてくれないなどの理由で、共有財産に関する資料を集められないときは、弁護士に相談してみましょう。「弁護士会照会制度」を利用することによって相手の預貯金等を調査することができる可能性があります。
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(5)精神的な自立の準備
結婚と比べ、離婚は何十倍もの気力と体力を使うと言われています。その理由は明快で、結婚はそもそも祝福されることですし、結婚に伴い発生するアレコレのほとんどは個人で対処できるため、手間もさほどかかりません。
しかし、離婚は一緒に築いてきた財産を分けることになりますし、感情のすれ違いも発生しやすく、かつ生活環境も大きく変わるという事情があります。さらに、子どもがいればその生涯にも関わる問題となるため、一過性の感情だけで気楽にできるものではありません。
前述したとおりの入念な準備が必要なことはもちろん、あなた個人が決断し、行動しなければならないシーンが多々発生することになります。そのため、なによりもあなた自身が自立し、自らの人生を自ら切り開こうとする強い意志が求められます。ある意味、離婚をするためにもっとも重要で不可欠な準備は、あなた自身の精神的な自立かもしれません。
3、離婚を申し出るタイミングはいつ?
先ほどまで、離婚には入念な準備が必要だということを解説してきました。では、いつ相手に「離婚したい」と言い出せばよいのでしょうか?
その答えは、あなたが今置かれている状況によって異なります。
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(1)状況によって異なる適切なタイミング
もし、あなたが今、DV被害にあっている、子どもが虐待されている……という緊急事態であれば、入念な準備が整う前であってもできるかぎり早急に脱出してください。もしひとりでは動けない場合には、あなたの身内や友人を頼ることもひとつの手です。
もし、頼れる身内などがいなければ、DVの相談窓口などに助けを求めてもよいでしょう。緊急性が高いと判断されればシェルターなどを紹介してくれますし、そこまでの緊急性が認められない場合でも、あなたが現在の状況から抜け出すための手助けをしてくれるでしょう。
一方、あなたが今、生命や身体、そして精神的な危険を感じる状況ではない場合には、まずは冷静になって着実に準備を整えましょう。
証拠となる資料を入手して、経済的な自立ができる程度に状況を整えてから、離婚を申し出ることをおすすめします。頭に血が上っている状態では、冷静な話し合いはできません。落ち着いて話ができる状況をつくり、理路整然と対応したほうが、より有利な条件で離婚できる可能性が高まります。 -
(2)可能な限り十分な準備をしておこう
これまでご説明したとおり、事前の準備を万全におこなっておけば、よりスムーズに、より有利な条件で離婚ができる可能性が高まります。もしかしたらDV(モラハラ)かも?といった、あいまいな状況で悩まれているのであれば、日記をつけておくのもひとつの手です。万が一のとき、有力な証拠となります。
早く離れたいと思わなければ、離婚を考えることはないでしょう。急ぎたい気持ちはわかります。ただ、早急な離婚は、近い将来後悔することにつながりかねません。まずは、落ち着いて離婚に向けた準備を少しずつ進めていくことをおすすめします。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
4、まとめ
その場の勢いで配偶者に離婚を切り出してしまうと、不利な条件で離婚に至ってしまうことがあります。
条件等、大きな後悔をすることなく納得のうえで離婚したいのであれば、恋人同士が別れるケースとは異なって、入念な事前準備が欠かせません。
ひとりで離婚に向けて準備を進めることが難しいと感じたときや、自分自身で配偶者との交渉ができない状況にあるとき、どうすればよいのか迷ったときは、離婚問題の知見・経験が豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。
よりスムーズに明日への第1歩を歩めるよう、離婚専門チームの弁護士が全力でお手伝いいたします。
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