モラハラ夫の弱点や対処法とは? 離婚における注意点も弁護士が解説

幸せな結婚生活を夢見ていたものの、次第に夫がモラハラ化してしまい、ストレスを感じる日々を過ごしている方もいるでしょう。
家でも外でも我が道を行くモラハラ夫に対して、「怖いもの無し」という印象をお持ちの方は少なくありません。
しかし実際は、無関心や無反応、孤独に弱いなど、モラハラ加害者にはいくつかの弱点があるものです。
本コラムでは、モラハラ夫の弱点やモラハラに効く言葉、関係を改善する方法、離婚する前に考えておくべきこと、別居や離婚の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。
目次を
1、モラハラ夫の5つの弱点とは
人によってさまざまな弱点があるので一概には言えませんが、よくある弱点として次の5つが挙げられます。
それでは、モラハラ夫の弱点を具体的にみていきましょう。
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(1)無関心・無反応に弱い
モラハラ夫の最大の弱点は、妻の無関心・無反応だといっても過言ではありません。
モラハラをする夫は、妻を支配することで自分の夫としての存在感を確認し、承認欲求を満たしたいという傾向があります。
自分の言動で妻が怯えて素直に言うことを聞くようになると、夫としての自尊心が満たされるからです。本当は妻から尊敬されたいのですが、それが叶わないためにモラハラ行為によって虚栄心を満たしているともいえます。
しかし、妻が夫に対して無関心・無反応だと、モラハラ自体が成り立ちません。モラハラ行為をスルーされてしまうと、夫は自分の存在感を確認できないために、戸惑ってしまうことがあるようです。 -
(2)孤独に弱い
モラハラ夫は、一人でいると自尊心が満たされないため、孤独に弱いということも少なくありません。
モラハラをする人は、幼少期に独りぼっちだったり、両親などの身近な人から認めてもらえず精神的に孤独だったりすることが多いと言われています。そのため、妻に対して嫌がらせやいじめを行いつつも、心の中では妻が自分から離れていくことを非常に恐れている場合があるのです。
妻を束縛するタイプのモラハラ夫も、妻が自分以外の人間と仲良さそうに談笑することで「妻が自分だけのものではなくなってしまう」と思い、孤独を感じてしまうからだと考えられます。 -
(3)世間体に弱い
世間体を気にするというのも、モラハラ夫によくある特徴のひとつです。
幼少期から両親に認めてもらえなかったモラハラは、自分を守るために「良い子」として振る舞っていたことが多い傾向にあります。大人になっても、自分のコントロールが及ばない世間の人たちに対しては、つい「良い子」のように振る舞ってしまうのです。そのため、モラハラ夫は外面が非常に良いことが多くあります。
しかしその反面で、身近な存在である妻に甘えたいという心理も働いて、わがままな本性が出てきてしまうこともあるようです。 -
(4)自分より気が強い人に弱い
モラハラ夫に限らず、人に対して嫌がらせやいじめを行う人間には、自分より気が強い人や立場が強い人に対しては逆らえないという特徴があります。
前述のとおり、モラハラ行為は、妻に対する甘えの裏返しのような側面もあります。幼少期に両親に甘えることができなかった分、妻に甘えたいという心理です。
素直に甘えるのであれば、まだよいのですが、モラハラ夫は自分よりも立場が弱い(と勝手に思っている)妻を支配しようとすることで、満たされなかった甘え心を満たそうとしていると考えられます。
もし、妻の方が気が強く、平気で言い返すような人であれば、夫がモラハラをすることはありません。 -
(5)自分の欠点に向き合うことができない
モラハラ夫には、自分の欠点に向き合うことができず、目をそらしがちという弱点もあります。
モラハラ行為の背景には、幼少期から周囲の人との関係をうまく築くことができなかったことによる孤独感や劣等感、甘えたい気持ちなどがあるケースも少なくありません。
しかし、モラハラ夫はそんな自分の人間としての弱さを認めることを恐れています。妻から弱さを指摘されようものなら、逆ギレしてモラハラ行為がエスカレートすることでしょう。モラハラ夫は、妻を自分に服従させることで無意識のうちに弱さを隠し、強さを演出しているとも考えられます。
2、モラハラ夫に効く8つの言葉と対処法
モラハラ夫に反対や否定をするような言い方は、モラハラが悪化する可能性があるため、相手を認めるようなポジティブな言葉で対応するのがよいでしょう。
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(1)ありがとう
ささいなことにでも「ありがとう」など感謝の気持ちを伝えることで、モラハラ夫は自分のことが認められたと感じて満足し、モラハラを抑制することが期待できます。
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(2)すごいね
モラハラ夫はプライドが高く、認められたいと常に考えているため、誉め言葉には非常に弱いです。「すごい!」「さすがだね」などと褒めれば、承認欲求が満たされてモラハラも抑制されるでしょう。
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(3)そうだね/それもいいね
モラハラ夫は自分の意見や考えに反発されるとプライドが傷つき、モラハラ行為をエスカレートさせる傾向にあります。夫の意見に対し、「そうだね」「それもいいね」と受け止めて肯定するような相槌を打つことで、言いたいことが伝わったと満足し、モラハラ予防につながることがあるでしょう。
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(4)私もそう思う
「私もそう思う」「私もだよ」など、共感する言葉はモラハラ夫に効果的と考えられます。共感して賛同すれば、モラハラ夫は「理解してもらえた」と考えて仲間意識を持つようになり、モラハラによる攻撃も減ることがあるようです。
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(5)頼りになるね
モラハラ夫はプライドが高いため、頼られると内心喜んでいることが多いのも特徴のひとつです。頼られることで承認欲求が満たされるため、モラハラの抑制につながります。
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(6)お願いしてもいいかな?
モラハラ夫に何か頼みごとをするときには、「○○してもらってもいいかな?」「お願いできるかな?」と低姿勢にすることがポイントです。モラハラ夫の怒りに触れにくく、お願いすることで相手の承認欲求も満たされるでしょう。
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(7)それから?
モラハラ夫の話に対して興味を示し、「それから?」「それで?」と会話を引き出すような相槌を打つことで、自分のことに興味を示してくれていると感じて満足します。
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(8)なるほどね
どうしてもモラハラ夫の意見に賛成できない場合や共感できない場合もあるでしょう。しかし、最初からモラハラ夫の言葉を否定すると相手が逆上し、モラハラが悪化する恐れがあります。
このような場合は「なるほどね」「そういう考え方もあるんだね」というような言葉で相手の意見を一度受け入れてあげましょう。その後で「私は○○だと思う」と自分の意見を述べれば、比較的、相手の攻撃性を抑えやすいといえます。

3、モラハラ夫との離婚が頭をよぎったときに考えるべきこと
モラハラ夫との離婚を実現するためには、あらかじめ以下のことをしっかりと考えておきましょう。
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(1)法定離婚事由はあるか
夫が離婚に反対する場合には、法定離婚事由がなければ離婚することができません。
法定離婚事由とは、相手が離婚を拒否しても、裁判で強制的に離婚が認められる事情のことです。民法で、以下が定められています。- ① 不貞行為
- ② 悪意の遺棄
- ③ 3年以上の生死不明
- ④ その他婚姻を継続し難い重大な事由
「モラハラ」は直接的に法定離婚事由に規定されていませんが、程度によってはその他婚姻を継続し難い重大な事由に該当する可能性があります。
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(2)証拠はあるか
モラハラ行為を証明できる証拠としては、夫の言動を録画・録音したデータや、継続的に記録した日記、第三者からの証言、医師からの診断書などが挙げられます。
このようなモラハラが証明できる証拠があると調停や裁判になったときに役立つため、収集しておきましょう。
現時点で証拠がない場合は録画・録音、日記などの証拠をためていくことをおすすめしますが、すでに心身に不調をきたしていることもあるでしょう。
その場合、弁護士に相談してどのように行動すべきかのアドバイスを受けることで、今後のさまざまな選択肢を知ることができます。なお、「証拠が何もなければ、絶対に離婚が認められない」というわけではないため、ご安心ください。 -
(3)慰謝料をいくらもらえるか
モラハラは相手の人格権を侵害する不法行為なので、被害を受けた側は慰謝料を請求することが可能です。
裁判をした場合は、以下のようなさまざまな事情を総合的に考慮して金額が決められます。- ・モラハラ行為が行われた期間や回数
- ・モラハラを受けた側の精神的苦痛の程度
- ・婚姻期間の長短
慰謝料の相場は、10万円~100万円程度と言われていますが、多くの場合は10万円~50万円程度にとどまっているのが実情です。しかし、長期間にわたる悪質なモラハラ行為によって妻がうつ病などの精神的疾患を発症したような場合には、高額の慰謝料が認められているケースも少なくありません。
離婚後の生活のためにも、モラハラを理由とした慰謝料請求の検討は進めておきましょう。ただし、慰謝料請求においてはモラハラの証拠が重要となるため、可能な範囲での収集が欠かせません。また、実際の請求はかなり難しいため、弁護士にご相談ください。 -
(4)離婚する決意は固いか
モラハラ夫に離婚を切り出すと、それを受け入れることなく拒絶し、再構築を求めてくる夫もいます。そして、情にほだされて離婚を思いとどまるケースは少なくありません。
一度離婚を切り出した後に元の鞘に戻ると、再び離婚を突きつけてもモラハラ夫は「どうせ言っているだけだ」「謝れば許してくれる」などと考えるようになります。その結果、いつまでもモラハラ行為が続いてしまうこともあるようです。
離婚を切り出すなら、「夫の反対を断ち切り、調停や裁判をしてでも離婚したい」という固い決意が自分にあるかを確認しておきましょう。

4、別居や離婚を切り出すときの注意点
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(1)準備が整ってから切り出すこと
まず、離婚を切り出すとモラハラがエスカレートする可能性が高いので、離婚や別居の準備が整ってから切り出すようにしましょう。
離婚話をきっかけに夫のモラハラ行為がエスカレートすると考えられる場合は、話を切り出したらすぐに別居できるようにしておくことが重要です。賃貸住宅に移る場合は契約を済ませ、実家に戻る場合は両親などと話をしておくことをおすすめします。 -
(2)理由は端的に伝えること
実際に離婚や別居を切り出す際には、理由は端的に伝える程度にとどめておきましょう。夫に対して恨みがあるとしても、非難や挑発をするとモラハラがエスカレートする可能性が高いので、やめておくべきです。
伝える理由としては、「あなたから〇〇と言われるのがつらくて、これ以上は一緒にいられない」といった端的なもので構いません。
それ以上に「なぜ」と問われたり、「その発言はやめるから出て行くな」などと言われても、夫の弱点を指摘したりせず、「もう耐えられないから」と答えたほうが良いでしょう。 -
(3)いったん切り出したら引き下がらないこと
別居や離婚を切り出し、夫の反対を受け入れて引き下がることを何度も繰り返すと、「どうせ本気ではない」と思われてしまいます。これもモラハラ行為がエスカレートする原因となる可能性が高いので、いったん話を切り出したら引き下がらないことが大切です。
すぐに離婚できないとしても、別居は実行してモラハラ夫と距離を置くようにしましょう。
5、モラハラ夫とスムーズに離婚するためのポイント
モラハラ夫とスムーズに離婚を成立させるためには、次の3つのポイントを頭に入れておきましょう。
- 第三者を間に入れて話し合うこと
- 離婚条件について、最低限、譲れないラインを決めること
- 離婚調停や離婚裁判も視野に入れること
夫と離婚の話し合いをしようとしても、モラハラの加害者・被害者という関係性のために冷静かつ建設的な話し合いが成立しにくいものです。そのため、話し合いは第三者を介して行うこともご検討ください。
親族や友人、知人などに仲介を頼む場合は、夫妻のどちらかの肩を持つケースがあったり、「せっかく夫婦になったんだから……」と離婚を阻むことがあったり、話し合いがさらに混沌とすることもあります。スムーズに話し合いを進めるためには、弁護士に任せるのがベストです。
また、離婚する際には慰謝料・財産分与・親権・養育費をはじめとして、さまざまな離婚条件を定める必要があります。自分の意見に固執すると話し合いが進まないことがありますので、「譲れる部分は譲る」という姿勢も重要です。
モラハラ夫が強硬的に離婚に反対する場合には、離婚調停や離婚裁判に進んだほうが、結果的にスムーズに離婚できることもあります。話し合いで埒が明かないと思ったら、弁護士に相談のうえで法的手段をとることも検討しましょう。
なお、ベリーベスト法律事務所では、お客さまが行きやすい事務所での対面、もしくは電話やZoomを活用したオンライン上で弁護士相談を行うことが可能です。
お悩みの方はご相談ください
6、モラハラ夫の弱点に関するQ&A
Q1. モラハラ夫によくある5つの弱点とは?
- 無関心・無反応に弱い
- 孤独に弱い
- 世間体に弱い
- 自分より気が強い人に弱い
- 自分の欠点に向き合うことができない
Q2. モラハラ夫とスムーズに離婚するためには?
- 第三者を間に入れて話し合うこと
- 離婚条件について、最低限、譲れないラインを決める
- 離婚調停や離婚訴訟も視野に入れる
Q3. モラハラ夫との結婚生活をやり過ごす方法は?
モラハラ夫は目つきだけではなく、行動や態度にも特徴があります。
- 無視するのはNG
- 弱点を攻撃するのもNG
- スルーするのがベスト
7、弁護士からのメッセージ
モラハラ夫の多くは、幼少期からの体験によって精神的な傷を負っていることもあり、可哀想な人と捉えることもできます。改善してあげたいと思う場合は、カウンセリングを利用するなどして夫婦で頑張っていくのもよいでしょう。
ただ、モラハラは立場の強弱など、関係性によって発生するものでもあります。現に、夫によるモラハラ行為が行われている場合、2人の相性がアンマッチなのかもしれません。その場合は、離婚することがお互いにとって最善の選択肢となる可能性もあります。
モラハラ夫との離婚においては、話し合いがスムーズに進まないケースも少なくないため、弁護士に相談することがおすすめです。弁護士は、状況に応じて最善の解決策を一緒に考えるだけでなく、財産分与や慰謝料などで損をしないようにサポートいたします。
ベリーベスト法律事務所では、離婚専門チームの弁護士が親身になってお話を伺いますので、まずはお気軽にご相談ください。

- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
-
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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