ご来所相談初回60分無料まずは電話かメールでお問い合わせください
※相談内容により一部有料となる場合があります

離婚弁護士 60分初回相談無料 0120-666-694 平日9:30〜21:00/土日祝9:30〜18:00

ただ今、電話がつながりやすくなっております

弁護士コラム 離婚・男女問題SOS

養育費を取り立てやすくなる? 改正民事執行法について弁護士が解説

2020年03月19日
養育費を取り立てやすくなる? 改正民事執行法について弁護士が解説

子どもがいる夫婦の場合、離婚後に養育費の支払いでトラブルになることがあります。とりわけ問題視されているのが、“養育費の不払い”です。厚生労働省が発表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、離婚した父親から養育費を「現在も受けている」と答えた母子世帯は24.3%でした。離婚した母親から養育費を「現在受けている」と答えた父子世帯はさらに少なくたったの3.2%にとどまっています。

以前より政府は、ひとり親家庭の養育費確保に関する取り組みを進めています。しかし、養育費を支払われなくなったもののあきらめざるを得ない原因として、養育費の取り立てに関する法制度の甘さが指摘されてきました。ご存じのとおり、養育費を支払う側が転職・財産隠しなどを行うと養育費を断念しなければならず、実質的に“逃げ得”が許されていたのです。

しかし、令和元年5月10日に改正民事執行法が国会で成立しました。今後は、今までよりも養育費を取り立てやすくなるといわれています。具体的に、何がどう変わるのか、ベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく解説します。

1、民事執行法の改正で何が変わる?

改正民事執行法が施行される令和2年4月1日以降、裁判所を通じた「第三者からの情報取得手続き」が利用できるようになります。本改正によって、養育費未払い問題を抱えている方が受けられる大きなメリットについて、順番に解説していきます。

  1. (1)そもそも民事執行法とは?

    養育費をせっかく取り決め、公正証書や調停調書、裁判の判決書など、公的な書面として残していたとしても、支払われなくなってしまうケースは少なくありません。このようなとき、これまで、民事執行法に基づく強制執行の手続きをとる必要がありました。

    民事執行法とは、養育費に限らず、借金などを支払う義務がある者(債務者)に対して、支払ってもらう権利を持つ者(債権者)が強制執行、仮差押え・仮処分の執行や担保権の実行としての競売などを行う際の基本的なルールを定めた法律です。

    養育費においては、親権を持つ者か子ども自身が「債権者」であり、養育費を支払う義務がある方が「債務者」となります。そのため、これまでも、養育費の支払いが滞ったときなどには、民事執行法に基づいて強制執行が行うことができたのです。

    しかし、改正前の民事執行法に基づき、元配偶者の給与・預貯金を差し押さえるためには、勤務先・金融機関の支店までを特定しなければなりませんでした。元配偶者が転職を繰り返したり、わざと預貯金を他に移し替えたりしていた場合には、「探偵に依頼して勤務先を特定してもらう」「金融機関・支店を推測してひとつずつ弁護士に依頼したうえで開示請求を行う」など効率の悪い方法しかなく、非常に手続きが煩雑だったのです。

    そこで、支払い義務のある者に対して財産の内容を自ら開示させる「財産開示手続」が、平成15年に創設されました。それでも、相手側が裁判所の呼び出しを無視したり、虚偽の陳述を行ったりしたときの罰則が30万円以下の過料と非常に軽微なものであるためか、実効性は低く、あまり活用されませんでした。

  2. (2)勤務先不明になっても、突き止めて給与の差し押さえが可能に

    養育費未払い問題を抱えている方にとって最大のメリットとなりうるのは、前述のとおり「第三者からの情報取得手続」を行えるようになることでしょう。

    たとえば、元配偶者が転職をして勤務先がわからなくなっても、養育費について取り決めされている公正証書や調停調書、判決書があれば、今後は裁判所を通して市区町村・年金事務所に照会することが可能となります。

    各市区町村には、住民税(市町村民税・都道府県民税)の源泉徴収をしている各企業のデータがあります。年金事務所も同じく、厚生年金の納付データを保有しています。源泉徴収・厚生年金納付の情報から、元配偶者の勤務先を特定することができるのです。

    本制度を利用して、新しい就職先の情報がわかれば、給与を差し押さえる手続きをより容易に行うことができるでしょう。給与の差し押さえがされると、勤務先に「この社員は養育費の未払いをしている」ということが伝わってしまいます。雇用されている方にとっては、さまざまな影響が想定されるでしょう。そのような事態に陥るくらいなら最初からきちんと養育費を支払った方がいい、という心理的プレッシャーを与える効果も、改正法には期待されています。

  3. (3)預貯金の情報提供をしてもらえる

    2つ目のメリットは、元配偶者の預貯金がある金融機関に支店名を照会できるようになったことです。こちらも、裁判所を通して情報提供を求めることになります。

    相手方が経営者や自営業者の場合は、勤務先を特定したところで養育費分を天引きしてもらうなどの措置を取ってもらえるケースは少ないものです。つまり、収入の差し押さえが難しいことが多いものです。

    そのような状況で強制執行をするとき、相手方の預貯金を差し押さえる必要があるのですが、事前に申立人側が金融機関・支店まで特定しておかなければなりません。そのため、改正前までは、預け先の銀行や支店名がわからないときは、予測しながらひとつずつ確認したうえで差し押さえしていくしかありませんでした。一緒に暮らしていたときの記憶を頼りに、“イチかバチか”で差し押さえを行うというのは、途方もなく効率の悪い作業です。たとえ1度目は特定に成功したとしても、2回目以降には別の金融機関・支店に預貯金を隠されてしまい養育費を回収できなくなった……というケースは少なくありません。さらに1度に複数の金融機関・支店を差し押さえる場合は、養育費の金額を支店数に応じて均等に割り振らなければならず、全額回収が難しいという問題もありました。

    元配偶者がよほど子どもを大切に思うと同時に責任感が強い方でなければ、簡単に“養育費逃れ”が成功してしまうのが、これまでの民事執行法だったのです。

    このような問題を踏まえて、改正民事執行法が施行された以降は、裁判所が金融機関に情報提供命令を出すと、本店から「元配偶者の預貯金の有無」「預けている支店名」「預貯金の残高」「預貯金の種類」などの回答をもらうことができるようになります。複数の金融機関に問い合わせた場合でも、各本店が元配偶者の情報を調べて回答してくれるため、これまでに比べてかなり負担が軽減されるはずです。

    なお、情報提供の事実が元配偶者に通知されるのは、実際に情報を開示される日からタイムラグがあります。元配偶者が開示されたことを気づかないうちにいきなり差し押さえすることが可能となるため、事前に預貯金を下ろされてしまうリスクも抑えられるでしょう。

    さらに、裁判所が登記所に問い合わせれば、不動産情報についても開示してもらえることになりました。また、預貯金以外の金融資産(株式、社債、投資信託)についても同様で、裁判所を通して「証券保管振替機構」に照会すれば、元配偶者の情報を教えてもらうことができます。

  4. (4)養育費逃れのための財産隠しにはペナルティーを強化!

    最後のポイントとしては、財産隠しに対するペナルティーの強化があります。

    改正前までは、裁判所からの財産開示命令や履行命令を無視した、もしくは虚偽の報告をしたときのペナルティーは「30万円以下の過料」と、非常に軽いものでした。しかも、「過料」は刑事罰ではないので、前科がつくことはありません。

    しかし、改正後の民事執行法では、財産開示手続の開示拒否や虚偽の報告をした者に対して、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」の刑事罰を科すことになりました。うそをつく、ごまかす、無視をすることによって、刑事罰を科される可能性も出てきたことで、“養育費逃れ”が減少することが期待されています。

2、今回の法改正で押さえておくべきポイント

改正民事執行法は令和元年5月10日に国会で成立し、令和元年5月17日に公布されました。本改正は、原則として令和2年4月1日から施行されます。

  1. (1)執行認諾文言付き公正証書でも財産開示手続きが利用可能に

    離婚の際、金銭支払いの約束を形に残す手段としてよく用いられるのが、「執行認諾文言付き公正証書」です。公証役場で作成される公文書である公正証書に、「支払いを怠った場合強制執行を受けても構いません」という文言が記載されているものを指します。これがあると、裁判手続きを経ることなく相手の給与・財産に強制執行をかけられることから、従前より離婚協議書を作成したのち、執行認諾文言付き公正証書にしたという方もいらっしゃるでしょう。

    それでも、本改正前までは、養育費の支払いを約束した執行認諾文言付き公正証書があったとしても、裁判所を通じて相手方の財産状況を調査する「財産開示手続き」を利用することはできませんでした。「財産開示手続き」ができるのは、確定判決、家事審判書、家事調停調書などがある場合に限られていたのです。そのため、公正証書があったとしても裁判をまず行って財産開示手続きを行ってから差し押さえを行うことになるケースが一般的でした。

    しかし、改正以降は、公正証書をもとに財産開示手続きを申し立てることが可能となりました。法改正前に作成された公正証書であっても、執行認諾文言付きのものであれば、財産開示手続きが可能となります。

    これから離婚をするのであれば、協議離婚(注:当事者の話し合いによる離婚)であっても、必ず養育費については執行認諾文言付きの公正証書にしておきましょう。あなたの状況にとって適切な養育費の金額や、公正証書の正しい作成方法については、弁護士に相談されることをおすすめします。

  2. (2)生命保険の解約返戻金は情報提供の対象外

    今回の改正では、生命保険の解約返戻金について「第三者からの情報取得手続き」を行うことができません。どんなお金もわが子の養育費に当てたいのが親心でしょう。しかし、残念ながら解約返戻金についてはあきらめるしかないのが現状です。生命保険に限らず、保険関係の名義や受取人については離婚する前にしっかり確認・変更しておく方がよいでしょう。

  3. (3)公正証書・調停調書・裁判の判決書が必要

    きちんと養育費の支払いを決めて、書面化していなければ利用できない点には注意が必要です。

    個人的に交わした離婚協議書はもちろん、契約書、念書、メモなどでは対象外となるため、今回の法改正に伴いスタートする、相手方の財産状況調査の制度を利用することはできません。具体的には、「執行認諾文言付き公正証書」「調停調書」「判決」などの公的な書類で、養育費の支払いについて決定した内容を明記してある必要があります。

    もし、公正証書などの公的な書類がなければ、従来通り、ご自身で相手方の財産状況を調査し、特定するという手続きを取らなければなりません。弁護士に依頼することも可能ですが、ある程度、特定できる目星がついていなければ調査は難しいでしょう。

  4. (4)行方不明の場合は利用できない

    本法改正からスタートする制度では、前述のとおり、第三者からの情報取得手続きが新設されます。しかし、情報取得手続きを申し立てたいと思ったとしても、相手方の住所などが明確でなければ、本制度を利用することはできません。

    元配偶者が住む自治体が不明なときや、完全な行方不明の場合は、まず、探し出さなければならないということになります。住民票上の市区町村役場や年金事務所に問い合わせてもわからない場合は、残念ながらお手上げとなってしまうかもしれません。

3、子どものためにも養育費の取り決めはしっかり行おう

本改正は、養育費の未払い問題を抱えている方にとってはまちがいなく朗報です。しかし、前述のとおり、公正証書・調停調書・裁判の判決書がなければ、スムーズに相手方の財産状況の調査を行うことはできません。

しかし、「とにかく早く離婚して苦しい現状から抜け出したい」という焦りや、「話し合っても無駄」というあきらめから、養育費についての話し合いをしないまま離婚届を出してしまう方は少なくないようです。厚生労働省が発表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯は54.2%、父子世帯に至っては74.48%が養育費について「取り決めをしていない」と回答していることがわかっています。取り決めをしているにもかかわらず、公的な文書にしていないという方も少なくありません。

もちろん離婚の話し合いはつらく苦しいものでしょうが、大切な子どものためにも、きちんと「執行認諾文言付き公正証書」または「調停調書」「確定判決」という形で残しておくことが非常に大切です。

不貞・モラハラ・DVなど離婚に至る事情はさまざまでしょう。しかし、個人的な感情をグッと我慢して、子どもに対する愛情をお互いに確認しながら養育費を決めることをおすすめします。

冷静な話し合いがどうしても難しい場合や、金額などに納得できないには、弁護士に間に入ってもらうことをおすすめします。養育費についての知見が豊富な弁護士であれば、相手の譲歩も引き出しつつ、あなたの代理人として適切な交渉を行います。協議離婚の場合は、公正証書作成のサポートも可能です。大切なお子さまのことですから、まずはできるだけ早いタイミングでご相談ください。

参考:養育費計算ツール|養育費はいくらもらえるの?養育費算定表に基づいて月額養育費を計算します。

4、まとめ

改正民事執行法では、裁判所に申し立てることで、元配偶者の勤務先、預貯金のある銀行支店名、不動産情報などの情報提供が可能となります。養育費の差し押さえ手続きをスムーズに進められるようになることは間違いありません。

ただし、「確定判決・調停調書・公正証書で養育費の支払いを取り決めしている」「元配偶者の住んでいる地域がわかっている」などの条件がありますので、注意してください。LINEなどSNSを通じて毎月請求するサービスなどもあるようですが、法的な強制力はありません。これから離婚を検討していて養育費が発生するのであれば、双方のためにはもちろん、子どものためにも公的な書類を作成することを強くおすすめします。

離婚や養育費の話し合いについて困ったことがあれば、ぜひベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。親身になって対応します。

同じカテゴリのコラム(養育費)

PAGE TOP