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再婚後に養育費を打ち切り(減額)にできる?│公正証書の有効性

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更新日:2023年11月14日  公開日:2023年11月14日
再婚後に養育費を打ち切り(減額)にできる?│公正証書の有効性

再婚して家族が増えると、それまで支払っていた養育費の支払いが難しい状況になることは珍しくありません。また、思わぬ給与の減少や就業状況の変化などで、支払いが難しくなるケースもあるでしょう。

このように養育費の支払いが困難になった場合、養育費の金額を減額したり、打ち切りにしたりすることは可能なのでしょうか。

今回は、再婚後の養育費の打ち切りや減額、手続きの進め方について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、再婚するだけでは養育費の打ち切り(減額)にならない

養育費は、親族間の扶養義務(民法877条)に基づき、離婚後、子どもと別々に暮らす親(非監護親)に対して、支払いが義務付けられています。親子間の扶養義務については、「生活保持義務」といって、子どもが扶養義務者と同一水準の生活が送れる程度の扶養が必要だと考えられています。

このように、養育費の支払い義務は、親子であることから当然に生じる義務ですので、権利者または義務者が再婚したという事情だけでは、養育費の支払いを打ち切ることはできません。

しかし、権利者または義務者の再婚をきっかけに一定の事情が生じた場合には、養育費の金額を打ち切りまたは減額できるケースもあります。これについては、第2章で詳しく説明します。

2、再婚後に養育費が打ち切り(減額)になる可能性が高い6つのケース

以下では、再婚後に養育費が打ち切り(減額)になる可能性が高い6つのケースを紹介します。

  1. (1)支払い義務者│再婚後に子どもが生まれた・養子縁組をした

    養育費の支払い義務者が再婚すると、再婚相手との間に子どもが生まれたり、再婚相手の連れ子との間で養子縁組をしたりすることがあります。このような場合には、養育費の支払い義務者の扶養義務者が増えることになりますので、養育費の打ち切りまたは減額事由となります

  2. (2)支払い義務者│再婚後の妻が専業主婦

    養育費の支払い義務者が再婚をした場合には、再婚相手に対する扶養義務も生じます。

    しかし再婚相手は、働いて収入を得る能力があるケースが大半なため、再婚相手との間に子どもがおらず、再婚相手の連れ子と養子縁組をしていない場合には、原則として、養育費の打ち切りまたは減額事由とはなりません。

    ただし、再婚相手が病気や怪我などで働くことができなかったり、連れ子が幼く働けない状況であったりした場合には、例外的に、養育費の打ち切りまたは減額事由になることもあります

  3. (3)支払い義務者│リストラなどによる収入の減少

    養育費の金額は、権利者および義務者の収入に応じて決められます。そのため、養育費の支払い義務者がリストラなどにより収入が大幅に減少したことは、養育費の打ち切りまたは減額事由となります

    ただし、転職など自身の意思で給与が下がった場合や、給与の減少が一時的な場合には養育費の打ち切りや減額を求めることはできません。

  4. (4)受給の権利者│再婚後に養子縁組をした

    養育費の受給権利者(支払いを受ける側)が再婚し、再婚相手との間で養子縁組をすることがあります。養子縁組をすると、子どもと再婚相手との間に法律上の親子関係が生じ、再婚相手も子どもの一次的な扶養義務者になります。

    養育費の支払い義務者は、再婚相手と子どもとの養子縁組により、二次的な扶養義務者になりますので、再婚相手に十分な収入があれば、養育費の打ち切りや減額を求めることが可能です

  5. (5)受給の権利者│就職などによる収入の増加

    当初は、専業主婦であった養育費の受給権利者(支払いを受ける側)が就職などにより収入が大幅に増加した場合には、養育費の打ち切りや減額事由となります

    ただし、養育費の取り決めをする際に、将来就職することも見込んで金額を決めていた場合には、養育費の打ち切りや減額を求めることはできません。

  6. (6)子どもが経済的に自立した

    養育費は、未成熟子である子どもに対して支払われるお金です。子どもが就職するなどして、経済的に自立するようになった場合には、養育費の支払いを継続する必要性がなくなりますので、養育費の打ち切りまたは減額事由となります

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3、再婚によって減額となる養育費の目安

再婚によって、権利者または義務者に一定の事情が生じた場合には、養育費の減額が可能です。では、養育費の減額が可能なケースにおいて、どの程度の減額を求めることができるのでしょうか。

減額できる養育費の金額は、権利者と義務者の収入や扶養家族の人数などさまざまな事情によって判断することになりますので、一概に判断することはできませんが、以下のような計算により一定の目安となる金額を知ることができます。

たとえば、養育費の支払い義務者の年収が600万円、権利者の年収が300万円で、権利者と義務者との間に子どもが1人(5歳)いたとします。この場合、算定表で計算される養育費の金額は、約5万円です。

義務者が再婚し、再婚相手との間に子どもが1人生まれたとすると、義務者は2人の子どもを扶養することになりますので、以下のような計算により1人あたりの養育費の金額を求めます。

  • 権利者の基礎収入:300万円×42%=126万円
  • 義務者の基礎収入:600万円×41%=246万円
  • 子どもの生活費:246万円×{62÷(100+62+62)}≒68万円
  • 義務者の負担額:68万円×{246万円÷(246万円+126万円)}≒45万円


よって、義務者が負担すべき養育費の金額は、約3万8000円となりますので、従前の金額よりも1万2000円の減額が可能になります

4、公正証書の養育費の取り決めはどうなる?

養育費の取り決めを公正証書または離婚協議書によって行った場合でも、養育費の打ち切り(減額)は可能なのでしょうか。

  1. (1)公正証書や離婚協議書で決められた養育費の有効性

    公正証書とは、公証役場の公証人が作成する公文書です。養育費の取り決めを公正証書によって行い、必要な文言を入れておくことにより、義務者が養育費の支払いを怠った場合に、直ちに強制執行の申立てを行い、義務者の財産を差し押さえることが可能になります

    これに対して、公正証書とはせず、当事者で離婚協議書を作成する方もいらっしゃいます。離婚協議書には、離婚の合意のほか、離婚時の条件(親権、養育費、慰謝料、財産分与など)が記載されています。離婚協議書は、公正証書と同様に離婚時の合意内容を証明する証拠となりますが、公正証書のように直ちに強制執行の申し立てはできず、強制執行をするためには、まずは調停や審判により債務名義を取得する必要があります

    このように養育費の取り決めが公正証書や離婚協議書によってなされたとしても、養育費の打ち切りまたは減額を求めることは可能です。ただし、適切な手続きをとらず、いきなり養育費の打ち切りや減額をしてしまうと、財産を差し押さえられるなどのリスクが生じますので注意が必要です。

  2. (2)話し合いがまとまらない場合は調停へ

    養育費の打ち切りや減額を求める場合には、まずは、権利者と義務者との話し合いを行います。再婚を理由に養育費の打ち切りを求めるのであれば、なぜ現在の養育費の金額が支払えないのかをしっかりと説明して、相手の納得を得ることが大切です。
    話し合いによって、養育費の打ち切りや減額の合意に至った場合には、口頭での合意で終わらせるのではなく、必ず書面を作成するようにしましょう。口頭での合意だけでは、後日、言った言わないのトラブルになる可能性がありますので注意が必要です。

    なお、当事者同士の話し合いがまとまらない場合には、後述する養育費減額調停または審判の手続きをとる必要があります。

5、養育費を打ち切り・減額する方法

当事者同士の話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所の養育費減額調停または審判を利用する必要があります

  1. (1)養育費減額調停

    当事者間の話し合いで養育費減額の折り合いがつかないときは、家庭裁判所に養育費減額調停の申し立てをします。

    調停では、裁判官や調停委員を交えて、養育費の減額を認めるかどうかの話し合いが行われます。あくまでも話し合いの手続きになりますので、当事者双方の合意がなければ調停を成立させることができません。しかし、養育費の打ち切りや減額事由がある場合には、裁判官や調停委員から相手を説得してもらうことができますので、当事者だけの話し合いに比べて解決の可能性が高くなります。

  2. (2)養育費減額審判

    調停でも養育の減額についての合意に至らない場合は、調停は不成立となり、自動的に審判の手続きに移行します。審判では、裁判官が当事者の主張や提出された証拠などをもとに、養育費の減額や打ち切りを認めるかどうかの判断を下します。なお、審判に不服がある場合には、即時抗告をして不服申し立てをすることも可能です。

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6、まとめ

再婚によって扶養家族が増えたり、収入に変化があったりした場合には、養育費の打ち切りや減額を求めることができる可能性があります。養育費の打ち切りや減額は、まずは、当事者同士の話し合いを行いますが、話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所の調停や審判を利用する必要があります。

養育費の打ち切りや減額が可能であるか、どの程度の金額であれば減額できるのかなどは知見のある弁護士に相談することをおすすめします。養育費の打ち切りや減額をご希望の場合は、離婚問題の解決実績があるベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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