モラハラ妻と離婚したいときに読むべき、モラハラ妻との離婚の手順

常日頃から妻がバカにしてくる……。
妻から暴言を受けるのがつらい……。
自宅が安らげない場所になってしまった。
互いに支え合うことを誓ってした結婚。あたたかい家庭を作ろうと決めたはずなのに、妻から酷い態度や暴言を受けていて悩んでいるという夫は少なくありません。帰宅恐怖症の兆候がある、妻の気配を感じると何も悪いことをしていないのにビクビクしてしまう、その様子を見ている子供も不安定になっている……などの場合は、モラハラ被害を受けている可能性があります。
もし、モラハラ妻との離婚を考えたとき、夫はどんな準備をしておくとよいのでしょうか。知っておきたい離婚の手順や慰謝料請求の方法などを、離婚問題に詳しい弁護士が解説します。
1、離婚の原因を男女別で比較!モラハラは何位?

妻からのモラハラが離婚する理由として認められるか?という命題を紐解く前に、現在の日本では、どのような動機で離婚を希望する人が多いのかを、ご存知でしょうか。
これについては、司法統計により明らかになっています。全国の家庭裁判所で取り扱われた「婚姻関係事件数の申し立て動機」の集計結果が、毎年発表されているのです。それでは、最新版となる平成28年の離婚したい理由についてみてみましょう。
<平成28年度統計/男性が離婚を決意した理由>
- 1位 性格が合わない
- 2位 その他
- 3位 精神的に虐待する
- 4位 家庭親族と折り合いが悪い
- 5位 異性関係
<平成28年度統計/女性が離婚を決意した理由>
- 1位 性格が合わない
- 2位 生活費を渡さない
- 3位 精神的に虐待する
- 4位 暴力を振るう
- 5位 異性関係
もちろん、その内情や詳細は夫婦ごとに異なるため、離婚を決意した理由がひとつだけではありません。そのため、「申し立ての動機は申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる」方法で調査していて、重複集計されています。
この統計結果を見ると、男女ともに最も多い離婚したい理由は「性格が合わない」ですが、2位以降は男女差がみられます。男性側をみると、離婚を決意した理由の3位に「精神的に虐待する」が入っています。その他を除くと堂々の2位です。
なお、平成30年3月時点でWebに掲載されている司法統計のうち、最も古い平成12年度の統計では、「精神的に虐待する」は、男性の離婚を決意した理由の第6位でした。当時はまだ、配偶者からのモラハラに関する情報があまりなかったのでしょう。
モラハラ被害の実態が浮き彫りになるにつれて、妻からのモラハラが原因で離婚したいと希望する夫が、年々増加しているのかもしれませんね。
2、そもそもモラハラとは? モラハラ妻のよくある特徴

「精神的な虐待」や「精神的DV」などともいわれるモラハラ。そもそもモラハラとは、モラル・ハラスメントの略称なのですが、実際にどのようなものがモラハラなのかはご存知でしょうか。まずは基礎知識として、「モラハラとは何か」を知っておきましょう。
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(1)モラハラとは何なのか知っておこう
そもそも「ハラスメント(harassment)」という単語は、「嫌がらせ」や「いじめ」「悩ませる」という意味を持つ言葉です。つまり、ご存知の通り、セクシャル・ハラスメントであれば、性的な発言や行動によって相手に精神的・肉体的苦痛を与える行為をさします。そしてパワー・ハラスメントならば、社会的地位の高い者が低いものに対して業務などの適正な範囲を超えた発言・行動によって精神的・肉体的苦痛を与える行為ということになります。
では、モラル・ハラスメントとは?モラル・ハラスメントは、法律上の明確な定義があるわけではありませんが、「言葉や態度などによる精神的な嫌がらせ・虐待」などといわれており、性的な言動や社会的地位が必ずしも伴わない精神的に傷を負わせる「暴力」といえます。
加害者にとっては普通や常識のことだろうと思われても、被害者にとって尊厳を傷つけられたり、脅威を感じているのであれば、それはモラル・ハラスメントになり得ます。モラハラの加害者となる条件に性別は一切関係ありません。まずはあなた自身がモラハラを受けていないか、また逆に、モラハラをしてしまっていないかを改めて考えてみてください。 -
(2)こんな被害に遭っていませんか? モラハラ妻の特徴
モラハラ加害者には、男女問わず共通となるポイントがあります。それは、「モラハラ加害者は、自身が目下であると認識した相手に対してのみ、傲慢にふるまう」という点です。よって、モラハラは「相手は反抗してこないはずだ」、「従順だから、自分の言うことを聞くのが当たり前だ」などと認識した相手にしか行わない場合が多いでしょう。。
具体的にモラハラ妻は、次のような行動を悪気なく日常的に行います。- 「男のくせに~もできないの?」とバカにする
- 自分の話は聞かないと激怒するのに、あなたからの話は無視をする
- 反論すると「うそをついている」と決めつける
- あなたに対して「生きてる意味ある?」「死んだ方がいい」などの暴言を吐く
- あなたの親族や友人の悪口を言う
- あなたの家庭環境や学歴をバカにする
- あなたを孤立させようとする
- 子供にあなたの悪口を吹き込む
ただ返事をしない・無視をするというだけでは、夫婦ケンカなどでもよくあることに思われてしまいがちですが、これが長期間継続するようであれば、話は大きく異なります。そのほか、あなた自身の努力ではどうにもならないことまであげつらい、見下してくるような状態であれば、モラハラにあたる可能性が高まります。あなた自身が苦痛を感じているのであれば、何らかの対処を行う必要があるでしょう。
3、妻からのモラハラを理由に離婚することは可能?

精神的苦痛を理由に離婚を希望する男性が少なくない現状がある中、実際に、モラハラを理由に離婚することは可能なのでしょうか?
離婚するためには、基本的には相互の合意が必要です。しかし、妻が離婚に合意してくれない場合は、調停や裁判へ移行して争うことになります。その際、「法定離婚事由」が求められます。
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(1)法定離婚事由とは?
民法では、夫婦の片方だけが離婚を希望した際、5つの離婚原因のいずれかがある場合には、離婚訴訟を提起できると定められています。これが、民法770条第1項に定められている「法定離婚事由」です。
民法第770条
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。- 一 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
- 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
これらのうち、モラハラは5番目の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
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(2)モラハラ被害はあなたのせいではないかもしれません!
モラハラ加害者は、自分が目上だと認識している人の前では、面倒見のいい人、頭の回転が速い人などの評価を受けるよう、行動している傾向があります。このため、被害者がモラハラ被害を訴えても、「相手がそんなことを言うのはあなたのせいでは?」、「夫が妻からモラハラを受けるはずがない」、「あなたが情けないせい」などと周囲の人から言われてしまうケースは少なくありません。
もっと言えば、あなたをさらにコントロールしやすくするよう、周囲を固めることすら罪悪感を抱くことなく行うのがモラハラ加害者です。
モラハラ被害を訴えて、周囲の人に共感を得られなかったとしても、あなたが悪いわけではないかもしれません。
日常的にモラハラを受けていると、自尊心を失い、心が疲弊し、うつ状態に陥ることもあります。これは、加害者や被害者の性別は一切関係ありません。悪循環を生み出す現状から脱出しましょう。
4、モラハラ妻に対して慰謝料を請求するには?

妻からのモラハラ行為が法定離婚事由として認められれば、あなたは、離婚理由をつくった「有責配偶者」である妻に対して慰謝料の請求が可能となります。
モラハラ離婚で認められる慰謝料の相場は、数十万~300万円とされていますが、慰謝料請求を認めてもらうためには、「妻からモラハラをされていた」ということを証明しなければなりません。
多くのケースで、モラハラ妻は自分自身がモラハラをしていたという事実を認めません。素直に認めるタイプであれば、そもそもモラハラはしないでしょう。だからこそ、まずは第一段階として、周囲にモラハラをされていたことを認めてもらうためにも証拠が必要となります。その上で、その証拠は、慰謝料額算定の根拠ともなり得ます。同じモラハラでも、より悪質なケースであると裁判所で認められれば、慰謝料額はより高額になります。
受けてしまった心の傷はお金で癒すことはできません。しかし、お金があれば心が受けた傷を癒すための治療や、そのために仕事を休むこともできます。ぜひ検討してください。
5、モラハラ妻と離婚するときの方法・手順

ただでさえ、離婚に向けた話し合いは泥沼化しやすいものです。精神的にも疲弊します。モラハラ妻との離婚を目指す場合は、なおさらです。
対等な関係性すら失われ、冷静な話し合いができる状況ではなくなっている可能性が高く、通常のセオリーどおりに離婚に向けたコマを進めることが難しいかもしれません。では、どのようにすればスムーズに離婚できるのでしょうか。
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(1)モラハラをされている証拠を集める
まずは、あなたが「妻からモラハラをされている」という証拠を集めてください。証拠としては、以下のようなものが有効です。
- モラハラを受けているときの録音
- 暴言などを含むメールやライン
- モラハラによってうつ病になっていれば、医師の診断書
- 妻から言われたこと、受けた場所や日時、あなたが感じたことなどを綴った日記 など
次のものは、用意できればあったほうが、話し合いをスムーズに進めやすくなります。
- あなた自身や妻の収入や財産を証明する資料(源泉徴収票や確定申告書、通帳のコピーなど)
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(2)緊急性が高い場合は相談機関へ!
モラハラ妻が近くにいるだけで手が震える、死にたくなる、日々あなたが受けるモラハラを目撃している子供も精神的に不安定になっている……など、深刻な状況に陥っている場合は、まずは身の安全の確保を行ってください。
状況を知っていて、信頼できる身内や友人がいる場合は、助けを求めてみましょう。もし、周囲の人もあまり頼りにはできない状態であれば、各自治体に設置されている「配偶者暴力相談支援センター」か、法テラス、もしくは弁護士に相談してください。配偶者暴力相談支援センターでは、相談者の性別に関わらず、配偶者からのDV・モラハラに関する相談ができるだけでなく、状況によっては身の安全を確保するための保護手続に関しても手助けしてくれます。
男性の場合は特に、プライドや世間体があるためか、ひとりで抱え込んでしまう傾向があるようです。しかし、精神的な虐待を受けている最中は、男女問わず判断能力が衰えてしまうものです。繰り返しになりますが、モラハラを受けているのはあなたのせいではないかもしれません。自分のせいかもしれないなどと思わず、まずは助けを求めるのもよいかもしれません。 -
(3)まずは協議離婚を目指す
離婚への道のりは、通常であれば互いに話し合い、財産分与や子供のことなど離婚に伴い必要となることを決め、離婚することになります。話し合いによって離婚が成立することを「協議離婚」といいます。
緊急性がなく、話し合いがかろうじてできる状況であれば、まずはしっかり話し合いをしましょう。財産分与により財産を多くとられそうなときは、慰謝料請求を行うこと分与すべき財産を減少させることも考えられます。
もし、顔を合わせて話し合うことが難しい状態であれば、話し合いはメールや電話でも構いません。しかし、決めたことはしっかり守ってもらうよう、離婚協議書を作成してから離婚届を提出してください。ここで離婚協議書を作成しておくことで、言った言わないのもめごとになることや、約束していないのにあなたがお金を請求されてしまう……という事態を防ぐことができます。 -
(4)離婚に向けた話し合いができない場合は?
「離婚したいといっても話し合いに参加してくれない」、「モラハラ妻から避難をしているため、直接会うことができない」など、まともに話し合いができないケースもあるでしょう。そのときは、離婚調停を利用します。離婚調停では、離婚する・しないという話だけではなく、慰謝料の請求や財産分与に関する話し合いも同時に行うことができます。
離婚調停は、家庭裁判所で行われます。男女1名ずつ2名の調停委員が待つ部屋へ、あなたと妻が別々に呼び出され、それぞれの主張を行うことで、話し合いを進めていく場所です。調停は、月に1回程度しか行われないため、結論が出るまで数ヶ月かかります。また、調停は平日の日中に行われるので、弁護士に依頼しない場合は、仕事の調整などが必要になるでしょう。
離婚調停を通じて離婚について合意ができた場合は、「調停離婚」として離婚が成立します。また、慰謝料や子供のことなどを決めた内容はすべて、調停が終了するときに「調停調書」としてまとめてくれます。調停で決めた慰謝料や養育費を支払ってもらえないときなどは、給料や預金口座の差押えなどの強制執行ができますので、大切に保管しておいてください。
もし、調停で話し合いがまとまらないときは、裁判を起こすことになります。裁判は手続きが複雑化するため、あなたひとりで対応するのは難しくなります。弁護士に相談しましょう。
6、モラハラ妻との離婚を弁護士に依頼するメリット

離婚、特にモラハラ加害者との話し合いを被害者自身が進めていくことは、とても難しく、精神的にも負担がかかるものです。場合によっては、離婚そのものをあきらめてしまう、非常に不利な条件で離婚してしまい生活に困ってしまう……という状態にもなりかねません。
モラハラ妻と離婚の話し合いをする前に、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)法律の専門家のアドバイスや指導を受けられる
弁護士は法律の専門家です。離婚問題に直面したあなたが、少しでも損をせずに離婚できるよう、法律の面からサポートします。また、冷静な視点で、あなたが受けている被害が本当にモラハラかどうかも判断してくれるはずです。
具体的には、モラハラ離婚に必要な証拠の集め方のアドバイスもできますし、あなた自身で対応する場合も、対応の仕方や法律面などの疑問に対する適切な回答を得られるでしょう。 -
(2)保護命令申立の手続なども依頼できる
さらに弁護士は、離婚前でも少しでも早くモラハラ妻から離れたいというときも、お手伝いできます。まずはあなたが離婚の話し合いをする際、不利にならないよう、婚姻費用負担に関する相談もできます。
さらに、モラハラを指摘されたことから、妻が実際に暴力を振るうようになることもありえます。そんなとき、弁護士であれば、DV防止法に基づく保護命令を裁判所に発令してらえるよう、申し立てを行うことができます。 -
(3)弁護士に依頼すればモラハラ妻と会わずに交渉可能
弁護士は、被害者の代理人となることもできます。弁護士は、職務の性質上、いろいろな相手と交渉してきた経験があるので、モラハラをするような妻に対しても精神的な圧力を感じることはありません。あなた自身が、モラハラ妻と話しているうちに「自分のせいかも……」と思ってしまうことがあっても、弁護士ならば惑わされることはないでしょう。
法律に則り、相手の話に丸め込まれることなく毅然とした態度で対応していくため、弁護士が同席するだけで話し合いがスムーズに進むことは多々あります。また、代理人にもなれますので、あなたの代わりに交渉をすることや、調停に出席することも可能です。
以上が主な弁護士に依頼をするメリットです。デメリットがあるとすれば、費用が掛かるということだけともいえるでしょう。もし、弁護士費用に不安があれば、無料法律相談を利用することもできます。
7、まとめ

今回は、妻からのモラハラ被害を受けている夫はどうすればよいかを解説しました。男性がモラハラ被害を受けている場合、「自分が情けない」などと思い込み、ひとりで抱え込んでしまうケースが少なくありません。しかし、悪いのはモラハラをする妻であって、あなたではないのです。
離婚を決意したのであれば、一刻も早く、苦しい現状から脱出しませんか? 離婚問題に対応した経験が豊富な弁護士に相談することで、早急な解決も可能です。ぜひご検討ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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