弁護士コラム 離婚・男女問題SOS

離婚にともなう慰謝料請求のために必要な理由と請求方法

  • 慰謝料
  • 離婚
  • 慰謝料
  • 理由
更新日:2024年08月09日  公開日:2023年08月03日
離婚にともなう慰謝料請求のために必要な理由と請求方法

不貞行為・DV・モラハラなど、離婚の原因を作った配偶者に対して、離婚にともなう慰謝料(離婚慰謝料)を請求したいとお考えの方もいるでしょう。

離婚慰謝料は離婚すれば必ず認められるというものではなく、配偶者に離婚の原因があるという場合に、その事実を主張・立証しなければなりません。離婚慰謝料の請求を行う際には、弁護士にご相談ください。

本コラムでは、離婚慰謝料を請求するために必要な理由と証拠、金額を左右する要素、請求のタイミングや方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく解説します。

1、離婚慰謝料を請求するために必要な理由と証拠

夫婦が離婚する際には、常に離婚慰謝料が発生するわけではありません。たとえば性格の不一致など、離婚理由が「お互いさま」である場合は、離婚慰謝料は発生しないことになります。

配偶者に対して離婚慰謝料を請求するには、配偶者による「不法行為」(民法第709条)を立証できるだけの理由が必要です。ここからは、どのような行為があれば、離婚慰謝料を請求できる可能性が高いのかを解説していきます。

  1. (1)不貞行為

    夫婦は互いに、配偶者以外の者と性交渉をしない「貞操義務」を負うと解されています。

    この貞操義務に違反して配偶者以外の者と性交渉をすることは、法定離婚事由(離婚原因)のひとつである「不貞行為」(民法第770条第1項第1号)に該当するとともに、慰謝料の発生原因である不法行為にもなります。

    <不貞行為に当たること>
    • 配偶者以外の異性と性的関係を持った
    <不貞行為に当たらないことの例>
    • 配偶者以外の異性と2人だけでご飯を食べに行った
    • 配偶者以外の異性と休日にショッピングに出掛けた
    <不貞行為の証拠となるものの例>
    • ホテルや相手の自宅に出入りする場面の写真、動画
    • スマートフォンに保存された性的な画像、動画
    • 性的な会話が記録された録音データ
    • 性的なやり取りが含まれるメッセージのやり取り
    • 不貞行為を認める旨が記載された、配偶者または不倫相手が作成した書面
    • 親族や知人の証言
  2. (2)DV・モラハラ

    配偶者に対して暴力を振るう「DV(ドメスティック・バイオレンス)」や、侮辱などによって精神的に傷つける「モラハラ(モラル・ハラスメント)」も不法行為に該当し、離婚慰謝料の発生原因となります。

    <DVに当たることの例>
    • 殴る
    • 蹴る
    • 物を投げつける
    • 包丁を突き付ける
    • タバコの火を押し当てる
    • 髪を引っ張る
    • 子どもに対して暴力を振るう
    • 性行為を強要される
    <DVの証拠となるものの例>
    • 医師の診断書
    • DVの場面を撮影した動画
    • DVの音声が記録された録音データ
    • DVによりケガをした箇所の写真
    • 暴力的な内容を含むメッセージのやり取り
    • DVを認める旨が記載された、配偶者が作成した書面
    • 親族や知人の証言
    <モラハラに当たることの例>
    • 侮辱する
    • 大声で怒鳴る
    • 行動を監視する
    • 外出を制限する
    • 自由に使えるお金を全く渡さない
    <モラハラの証拠となるものの例>
    • 医師の診断書(精神疾患を患った場合など)
    • モラハラの場面を撮影した動画
    • モラハラの音声が記録された録音データ
    • 侮辱的な内容を含むメッセージのやり取り
    • モラハラを認める旨が記載された、配偶者が作成した書面
    • 親族や知人の証言
  3. (3)悪意の遺棄

    悪意の遺棄」とは、正当な理由なく夫婦の協力義務・同居義務・扶助義務(民法第752条)を放棄することです。

    悪意の遺棄は法定離婚事由に該当するほか(民法第770条第1項第2号)、不法行為にも該当するため、離婚慰謝料の発生原因となります。

    <悪意の遺棄に当たる行為の例>
    • 無断での正当な理由のない別居、長期外出
    • 家事や育児の放棄
    • 働く能力があるにもかかわらず、全く労働に従事しないこと
    • 収入を得ているにもかかわらず、生活費を全く支払わないこと
    <悪意の遺棄の証拠となるものの例>
    • 無断別居や無断外出がわかるメッセージのやり取り
    • 家事や育児の放棄が表れているメッセージのやり取り
    • 就労能力の証明書類(医師の診断書、健康診断の結果など)
    • 預貯金の入出金履歴(生活費の支払いがなされていないことなどを立証)
    • 生活費関連の領収書
    • 親族や知人の証言
  4. (4)正当な理由のない性交渉の拒否

    夫婦のいずれか一方が性交渉を求めているにもかかわらず、他方が正当な理由なく拒否し続けた場合には、セックスレスについて離婚慰謝料が認められる場合があります。

    <正当な理由なく性交渉の拒否に当たることの例>
    • 異常性癖により、通常の性交渉を行うことができない
    <正当な理由なく性交渉を拒否されている証拠となるものの例>
    • 性交渉を拒否されたメッセージのやり取り
    • 性交渉を拒否する会話が記録された音声データ
    • 日記

2、離婚慰謝料の請求可否を弁護士に相談するべき理由

配偶者と離婚する際に、離婚慰謝料を請求できるかどうかわからない場合は、弁護士への相談をおすすめします

弁護士に相談すれば、離婚慰謝料の発生原因の立証で必要な証拠について、さまざまな観点からアドバイスを受けることが可能です。弁護士のアドバイスをきっかけとして、ご自身では気づかなかった証拠を確保できれば、離婚慰謝料の獲得につながります。

また配偶者と離婚する際には、慰謝料以外にも財産分与や年金分割などを請求できる場合があります。さらに、子どもがいる場合には親権者の決定が問題となるほか、養育費や面会交流の方法についても話し合わなければなりません。

弁護士には、これらの離婚条件の交渉などを一括して依頼することができます。有利な条件による離婚をスムーズに成立させるためには、弁護士への相談がおすすめです。

3、離婚慰謝料の相場と金額を左右する要素

離婚慰謝料の相場はケース・バイ・ケースですが、おおむね100万円から300万円程度です。具体的な金額は、さまざまな事情を総合的に考慮して決定されます。

以下に挙げるのは、慰謝料額を左右し得る考慮要素の一例です。

① 不貞行為やDV、モラハラの期間・回数

不貞行為やDV、モラハラを理由に離婚慰謝料を請求する場合は、その期間や回数(頻度)が問題となります。これらの行為が長期間に及ぶ場合や、回数が多い場合(頻度が高い場合)には、離婚慰謝料が高額となりやすいです。

② 婚姻期間の長さ

婚姻期間が長い場合は、それを破綻に追い込むことによる精神的損害が大きいと判断され、離婚慰謝料が高額となる傾向にあります。

③ 未成熟の子どもの有無

未成熟の子ども(おおむね18歳未満)がいる場合には、離婚によって家庭が崩壊することによる精神的損害が大きいと判断され、離婚慰謝料が高額となる傾向にあります。

④ 精神疾患の発症

配偶者の不貞行為やモラハラなどが原因で、うつ病などの精神疾患を発症した場合には、精神的損害が大きいと判断され、離婚慰謝料が高額になりやすいです。



なお、DVによるケガや不貞行為・モラハラなどによる精神疾患について、病院で治療を受けた場合には、慰謝料とは別に治療費などの損害賠償を請求できます

離婚慰謝料その他の金銭につき、どの程度の金額を請求できるのかについては、弁護士にご相談ください。

4、離婚慰謝料を請求するタイミング・請求方法

離婚慰謝料は、離婚手続きの際に併せて請求するのが一般的ですが、離婚後でも請求は可能です。ただし、慰謝料請求権の消滅時効に注意が必要です。

  1. (1)離婚手続きの際に慰謝料も請求する

    離婚慰謝料は、以下の離婚を求める手続きと併せて請求する流れがもっともスムーズです。

    ① 離婚協議

    離婚の可否やその条件について、配偶者と直接話し合います。弁護士を代理人とすると、交渉の窓口を弁護士として進めていくことも可能です。

    ② 離婚調停

    家庭裁判所の調停手続きを通じて、離婚の可否やその条件を話し合います。

    参考:「夫婦関係調整調停(離婚)」(裁判所)

    ③ 離婚訴訟

    裁判所に訴訟を提起して、離婚判決を求めます。離婚判決を得るためには、法定離婚事由の立証が必要です。

    参考:「離婚」(裁判所)

  2. (2)離婚後でも慰謝料を請求できる場合がある

    離婚が成立した後であっても、協議・調停・訴訟などの手続きを通じて、元配偶者に離婚慰謝料を請求することはできます。

    ただし、離婚協議書や調停調書に清算条項※が定められている場合には、離婚後の慰謝料請求ができない可能性があります
    ※清算条項:特定の紛争に関して、当事者間に債権債務関係が存在しないこと(お互いに請求するものはないこと)を確認する条項

  3. (3)慰謝料請求権の消滅時効に注意

    離婚慰謝料請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効が消滅します(民法第724条)。

    • 損害および加害者を知った時から3年
    • 不法行為の時から20年


    離婚後に慰謝料を請求する場合は、消滅時効が完成しないように注意が必要です。

    時効の心配がある際には、弁護士に依頼して、早めに内容証明郵便の送付や訴訟の提起などを行い、慰謝料請求権の時効完成を阻止しましょう。

5、まとめ

配偶者に対して離婚慰謝料を請求するには、不貞行為・DV・モラハラなど、不法行為に当たる事実の立証が必要です。適正額の離婚慰謝料を獲得し、その他の離婚条件についても有利に取り決めるためには、弁護士に対応を依頼することをおすすめします

ベリーベスト法律事務所は、豊富な実績を有する離婚専門チームが組まれており、離婚問題に強い弁護士が在籍しています。有利な条件でスムーズに離婚が成立するようにサポートするだけでなく、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の各手続きを全面的に代行することが可能です。

配偶者との離婚をご検討中の方、離婚慰謝料を請求したい方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

同じカテゴリのコラム(慰謝料)

同じカテゴリのコラム一覧はこちら 弁護士コラム 離婚・男女問題SOS一覧はこちら
PAGE TOP