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慰謝料請求した相手がまさかの自己破産!それでも請求する方法とは?

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更新日:2024年02月28日  公開日:2018年12月03日
慰謝料請求した相手がまさかの自己破産!それでも請求する方法とは?

離婚の際、慰謝料を支払ってもらう約束をしたのに、その後、相手が自己破産してしまったら、もはや払ってもらえなくなるのでしょうか?
確かに、離婚慰謝料は自己破産によって免責されてしまうことも多いのですが、場合によっては自己破産されても請求できる可能性があります。

今回は、離婚の際に慰謝料を取り決めたのに、相手が自己破産してしまい、「泣き寝入りするしかないの?」とお悩みの方のため、弁護士が法的な考え方と対処方法を解説します。

1、離婚慰謝料は自己破産で免責される可能性がある

  1. (1)慰謝料は、基本的に「免責」の対象になる

    離婚の際、相手が不貞行為(不倫、浮気)やDVをしているなど「有責」である場合には通常、慰謝料を請求することができます。公正証書や調停で慰謝料の支払いについて約束することもありますし、訴訟で慰謝料の支払いを命じる判決が出ていることもあるでしょう。
    しかし、相手が離婚後、慰謝料支払い前に自己破産してしまったら、慰謝料はどうなるのでしょうか?

    まず、自己破産すると、税金などの一部を除いて基本的にすべての債務が「免責」されます。免責とは、負債の支払い義務が免除されることです。一般には自己破産というと「借金」を思い浮かべることが多いですが、借金だけではなく、未払い家賃や買掛金、連帯保証人の債務などもすべてが免責の対象になります。
    慰謝料も基本的には免責されるので、離婚後、相手が自己破産すると、慰謝料を払ってもらえないことになります
    また、不倫相手が自己破産すると、不倫相手の損害賠償債務も免責対象になるので、不倫相手に対する慰謝料請求もできなくなります。

  2. (2)慰謝料が免責されないケース

    ただし、慰謝料が「免責」の対象にならないケースもあります。
    1つは、相手(破産者)に「免責不許可事由」がある場合です。免責不許可事由とは、免責を受けられなくなる事情です。
    たとえば、一般的には浪費やギャンブルがあると免責不許可事由に該当し、免責を受けられなくなることが知られています。(なお、実際には免責不許可事由があっても、裁量免責という方法で免責が認められてしまうことも多いです)

    また、自己破産をするときには「非免責債権」も問題になります。非免責債権とは、たとえ破産者が免責を受けても、なお支払い義務が残る債権のことです。

    非免責債権の中には「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」や「破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」があります。
    離婚相手や不貞相手による行為が、これらの不法行為に該当する場合には、たとえ相手が自己破産をしても、慰謝料は免責されず、請求をすることができるのです。

  3. (3)浮気や不倫の慰謝料は、非免責債権になりにくい

    離婚の際の慰謝料発生原因は、夫や妻の不倫や浮気を原因とすることが多いですが、これらについては、非免責債権になるのでしょうか?

    残念なことかもしれませんが、東京地裁の裁判例において、浮気や不倫行為の慰謝料は、基本的に免責されるという判断が出ています(東京地方裁判所平成15年7月31日)。
    この事件では、不貞行為が5年継続しており、それなりに悪質であると評価されましたが、配偶者に対する積極的な害意があったとは認められないとして、「悪意を持って加えたる不法行為」には該当せず、破産により免責されていると判断されました。
    このことからすると、離婚の際の不倫や浮気の慰謝料については、相手が自己破産すると免責され、請求できなくなってしまう可能性が高いと言えます。

2、慰謝料請求が自己破産で免責されない条件

ただし、場合によっては離婚の慰謝料請求権が、自己破産によっても免責されないことがあります。それはどのような場合なのか、ご紹介します。

  1. (1)悪意で加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権に当てはまるケース

    まずは、相手による不法行為(離婚原因。慰謝料発生原因となったもの)が、「悪意で加えた不法行為」である場合です。
    この場合の「悪意」というのは、単なる加害意思を超えて「相手を積極的に傷つけてやろう」と考えることです。
    たとえば、夫が、身体が不自由な妻に対して強い憎しみを抱き「苦しめてやろう」と思って生活費を一切渡さず、家を出て困窮させ、餓死寸前まで追い込んだようなケースでは、この要件に該当する可能性が高くなります。
    これに対し、先ほども紹介したように、単なる不倫や浮気の場合には、この要件に該当することが難しいです。

  2. (2)故意、重過失によって生命、身体に加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権に当てはまるケース

    次に、故意・重過失によって生命、身体に加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権に該当するケースでも、慰謝料は免責されません。
    「生命・身体」に対する不法行為の場合、「害意」までは不要で、「故意または重過失」があれば、非免責債権となります。
    たとえば、DV(家庭内暴力)は「身体に対する不法行為」ですので、婚姻中に夫から継続的なDVを受けていて慰謝料が発生した事案では、たとえ離婚後に夫が自己破産しても、慰謝料が免責されません

    ただし、モラハラの場合には、身体に対する暴力ではないので、免責されてしまいやすいでしょう。(その場合でも「悪意」が認められれば非免責債権になる余地はあります)。

  3. (3)債権者一覧表に記載しなかった場合

    また、破産の際の債権者一覧表に記載されていない場合、たとえ書き忘れであったとしても原則として免責されません

3、自己破産しても養育費や婚姻費用の支払いは免責されない!

以上のように、離婚慰謝料や離婚時財産分与、離婚に伴う解決金などは、離婚後に元の配偶者が自己破産して免責許可決定が出ると、請求できなくなってしまいます。
しかし、自己破産によっても「養育費」「婚姻費用」は免責されません
そのため、離婚前の婚姻費用が未払いになっている場合や、離婚後に相手から養育費を支払ってもらっている事案などでは、自己破産の影響を受けずに請求できます。
離婚後、月々養育費の支払いを受けている場合には、相手の自己破産中にも養育費の支払いを止められることはありません(これまで通り、支払いを受け続けることができる)し、公正証書や離婚調停、離婚訴訟などで養育費の取り決めをしていた場合には、相手が不払いを起こしたら、強制執行(差押え)によって取り立てることも可能です。

4、相手が自己破産したときに慰謝料を支払ってもらう方法は?

もしも、離婚時に慰謝料の取り決めをしたにも関わらず、相手が自己破産してしまったら、その慰謝料はどのように請求すれば良いのでしょうか?
その方法は、債務名義がある場合とない場合とで異なります。

  1. (1)債務名義とは

    債務名義とは、強制執行をするための書類です。強制執行認諾条項付きの公正証書、調停調書、審判書、判決書、和解調書が債務名義となります。
    こういった書類によって慰謝料支払いの約束をしていたら、これらの債務名義により、相手の財産を差し押さえることができます。

  2. (2)債務名義がある場合

    手元に債務名義がある場合には、地方裁判所に申し立てをして、相手の財産(預貯金や生命保険不動産など)や債権(給料など)に強制執行をすることができます。
    ただし、相手が自己破産をしている場合には「請求異議」を出してくる可能性が高いです。請求異議とは、債務者が強制執行に異議がある場合に争うための手続きです。
    請求異議訴訟が起こると、強制執行にもとづく差押えが認められるかどうかが裁判手続き内で争われます。その中で、慰謝料が非免責債権に該当するかどうかが決まり、裁判所が判決を出します。
    「慰謝料は非免責債権に該当する」という判断が出たら、慰謝料について強制執行ができますし、「免責の対象になる」という判断が出たら、強制執行は認められなくなります

  3. (3)債務名義がない場合

    債務名義がない場合には、いったん地方裁判所(場合によっては簡易裁判所)で、慰謝料請求訴訟をしなければなりません。
    その裁判の中でも、おそらく相手は「離婚慰謝料は非免責債権に該当しないので、もはや支払い義務がない」と主張するでしょう。
    そして、裁判の中で、慰謝料が非免責債権に該当するかどうかを争い、裁判所に決めてもらうことになります。
    慰謝料は非免責債権であるという判断が出ると、裁判所が相手に対して支払いを命じる判決を出してくれるので、判決書を債務名義として強制執行することで、相手の財産や給料を差し押さえて慰謝料を回収できます

  4. (4)話し合いによって支払ってもらう方法もある

    自己破産後に慰謝料を支払ってもらうためには、破産後に相手と話し合う方法もあります。
    自己破産すると、慰謝料を含めた損害賠償義務が免責されますが、その後に債務者が任意で支払うことは自由だからです。
    たとえば、相手が不倫をしたことについて反省しており、被害者である慰謝料の請求者が子どもを引き取って生活に困窮している場合などには、話し合いによって慰謝料の支払を受けられる可能性もあります。
    相手と直接交渉することが難しければ、弁護士を代理人にして、相手に請求をしたり話し合いを継続したりする方法もあります。

5、相手が自己破産した場合の慰謝料請求は弁護士にご相談を

以上のように、離婚時に相手から慰謝料支払いを受ける約束をしても、離婚後に相手が自己破産してしまったら、支払ってもらえなくなる可能性があります。
その場合、まずは慰謝料請求権が「非免責債権」に該当するかどうかを検討し、もしも非免責債権に該当するなら、訴訟などによって相手に請求する必要があります
また、慰謝料請求権を有している場合、自己破産手続きにおける「債権者」となるので、債権者の1人として破産裁判所に対し、債権届出書を提出したり免責についての意見を提出したりしなければなりません。
こういった手続きを自分一人で進めるのは困難と言えます。

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この記事の監修
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設立
2010年12月16日
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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