熟年不倫が許せない! 慰謝料請求や熟年離婚の流れを解説

40代50代などの夫婦においては、長年連れ添った配偶者が別の方と不倫しているケースがあります。このことを、「熟年不倫」と呼ぶことがあります。
熟年不倫は、長い間信頼していた相手から裏切られる行為であるため、それによるショックも大きく、離婚を決断する方も少なくありません。ただし、熟年離婚となると、将来の生活のこともあるため、しっかりと事前準備を進めることが大切です。
本コラムでは、熟年不倫を理由に離婚する方法や慰謝料請求の流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。
目次を
1、熟年不倫に至るきっかけと見抜くポイント
最初に、熟年不倫に至るきっかけにはどのようなものがあるのか、また、熟年不倫を見抜くポイントについて説明します。
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(1)熟年不倫のきっかけや原因
不倫は、夫婦が離婚するきっかけのひとつになりますが、夫婦の年代によって不倫をする理由には少し違いがあるようです。
熟年夫婦が不倫に至るきっかけや原因としては、主に以下のようなものが挙げられます。- お金や時間に余裕ができる
- 夫婦関係がマンネリ化して、新しい刺激を求める
- 配偶者に対する不満が積み重なっている
- SNSやマッチングアプリによって、出会いが容易になった
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(2)熟年不倫を見抜くポイント
熟年不倫の疑いがある場合には、配偶者の行動を注意深く観察して、熟年不倫の証拠を集めるようにしましょう。なお、以下のようなポイントにひとつでも該当する場合には、熟年不倫の可能性があります。
① 休日出勤や残業が増えた
熟年不倫をするようになると、不倫相手と会うために何らかの口実をつけて外出することが多くなります。- これまでは定時に仕事を終えていたのに、休日出勤や残業を理由に帰りが遅くなった
- 突然に新しい趣味を始めて、休日に家を空けることが多くなった
- 泊まりの出張が増えた
不倫をすると、これまでの行動パターンが大きく変わるため、不倫に気付くきっかけになります。特に、熟年夫婦だと長年の習慣がありますので、行動の変化にも気付きやすいでしょう。
② 身なりに気をつかうようになった
熟年不倫をするようになると、不倫相手に好意を持たれたいと考えるため、突然、身なりに気をつかうようになります。- 服装のテイストが変わった
- いつも同じ服ばかり着ていたのに、新しい服を購入するようになった
- 出掛ける際に香水をつけるようになった
- 鏡の前で身だしなみを整える時間が増えた
熟年夫婦になると、配偶者の服装などにはあまり関心がないかもしれませんが、意識して観察してみると変化に気付くことができます。
③ スマートフォンを手放さない
不倫相手との連絡には、LINEやメール、SNSなどを利用することが多いです。
不倫をしていると、当然ながら「配偶者に気付かれたくない」という心理が働きますので、不倫の証拠となるスマートフォンを手放さないようになります。- トイレやお風呂に行くときもスマートフォンを手放さない
- 普段はロックを掛けていないのに、突然スマートフォンに暗証番号を設定した
上記のような行動があったときは、熟年不倫している可能性を否定できません。
2、熟年不倫が原因で離婚するときの3つの方法
熟年不倫が発覚して離婚を決断したときは、協議離婚・離婚調停・裁判離婚により、離婚を進めることができます。それぞれの方法について、見ていきましょう。
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(1)協議離婚
協議離婚とは、夫婦間の話し合いで離婚する方法です。
離婚裁判と違って、協議離婚では離婚理由を問われることはなく、どのような理由であっても離婚することができます。
配偶者が熟年不倫していることを裏付ける証拠を確保したら、相手に対して離婚を切り出してみましょう。最初は不倫を否定していたとしても、証拠があれば相手も言い逃れができなくなり、離婚に応じてくれる可能性が高くなります。
相手との話し合いで離婚の合意に至ったときは、必ず離婚協議書を作成するようにしてください。特に、熟年離婚では決めるべき内容も多岐にわたりますので、離婚後の金銭給付を確実なものとするためにも、公正証書の形で残しておくとよいでしょう。 -
(2)離婚調停
夫婦の話し合いで離婚の合意に至らなかったときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
離婚調停は、話し合いの手続きのため、協議離婚と同様にどのような理由でも離婚することができます。一方で、協議離婚との違いは、裁判所の調停委員を介して話し合いが行われることです。熟年不倫というお互いに感情的になりやすい話題であっても、第三者が関与することで、冷静に話し合いを進められる可能性が高まります。
調停で離婚が成立すると、合意内容が調停調書にまとめられるため、万が一、相手が慰謝料などの支払いを怠ったとしても、直ちに強制執行の申し立てをすることが可能です。 -
(3)離婚裁判
離婚調停でも離婚の合意に至らなかったときは、最終的に家庭裁判所に離婚訴訟(=裁判)を提起します。
離婚裁判では、裁判官が離婚の可否を判断しますが、その際に重要になるのが法定離婚事由の有無です。以下の5つのうち、いずれかの法定離婚事由がなければ、裁判で離婚をすることはできません。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
熟年不倫は、法定離婚事由のひとつである「不貞行為」に該当しますので、不貞行為の証拠があれば、相手が離婚に同意してくれなくても離婚できる可能性が高いです。
不貞行為は慰謝料の請求原因にもなるため、離婚訴訟を有利に進めるには、事前に熟年不倫の証拠を確保しておくことが大切です。
3、熟年不倫による慰謝料請求をするときの流れ
配偶者の不倫が判明したときは、離婚請求とともに慰謝料を請求することができます。以下では、熟年不倫による慰謝料請求をするときの流れと証拠について説明します。
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(1)慰謝料請求の流れ
熟年不倫が発覚したときは、不倫をした配偶者と不倫相手の双方に対して、慰謝料を請求することができます。
配偶者と離婚するのであれば、不倫をした配偶者への慰謝料請求は、離婚手続きの際に一緒に請求することができるため、協議離婚、調停離婚、裁判離婚という流れで慰謝料請求の手続きを進めていきます。
他方、不倫相手に対する慰謝料請求については、以下のような流れになります。
① 不倫相手の住所や氏名を調査
不倫相手に対して慰謝料請求する前提として、不倫相手の住所や氏名を把握する必要があります。
不倫をした配偶者が不倫を認めているのであれば、不倫相手の住所や氏名も配偶者から聞くことも可能でしょう。不倫を認めない場合には、不倫相手の住所や氏名を教えてはくれないでしょうから、ご自身で調査を進める必要があります。
自分で調べるのが難しいという場合には、弁護士に慰謝料請求を依頼すれば、弁護士会照会という方法で電話番号や自動車のナンバーなどから不倫相手を特定できる可能性があります。
② 不倫相手に対して内容証明郵便の送付
不倫相手の住所や氏名が判明したら、不倫相手に対して、慰謝料の支払いを求める内容証明郵便を送付します。
内容証明郵便自体に支払いを強制する法的効果はありませんが、相手に対して心理的なプレッシャーを与えることができますので、任意の支払いが期待できる手段です。
また、慰謝料請求には時効があり、内容証明郵便で慰謝料請求することで時効の完成を6か月間猶予するという効果が得られます(民法第150条1項)。
③ 不倫相手との話し合い
内容証明郵便が届いたら、不倫相手と話し合いを行います。
不倫相手が不倫を認めているのであれば、慰謝料の金額や支払い方法などを決めていきましょう。支払いに関する合意が得られたときは、必ず合意書などの書面を作成してください。
④ 交渉が決裂したときは民事訴訟の提起
不倫相手との交渉が決裂したときは、民事訴訟を提起して、裁判で決着をつけることになります。裁判では、後述するような証拠が不可欠となりますので、熟年不倫を立証する証拠をしっかりと集めておくようにしてください。 -
(2)熟年不倫を理由に慰謝料請求するなら証拠が重要
熟年不倫を理由に慰謝料請求をするなら、不倫を裏付ける証拠が必要になります。
証拠がなければ相手に慰謝料請求をしても言い逃れされてしまいますし、裁判になったときも、不倫を理由とする離婚や慰謝料請求が認められません。
有利に離婚や慰謝料請求を進めていくためにも、まずは以下のような証拠を集めるようにしましょう。最近は、相手とのメッセージのやり取りを主としないPayPayなどのアプリを活用して、不倫相手と連絡を取っているケースもあるようです。
どのようなものであっても、「不倫相手との肉体関係がある」と証明できる証拠を収集するようにしましょう。
4、弁護士に熟年不倫や離婚のことを相談すべき4つの理由
熟年不倫を理由とする離婚や慰謝料請求をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)適正な離婚条件をアドバイスできる
離婚をする際には、離婚だけではなく、慰謝料、財産分与、年金分割、親権、養育費、面会交流などの取り決めが必要になります。
特に熟年離婚では、夫婦の共有財産も高額になるため、適正な財産分与を行えるかどうかで、離婚後の生活が変わってくるでしょう。
また、婚姻期間が長くなれば、年金分割により将来もらえる年金を増やせる可能性もあります。老後の生活の不安を緩和するためにも、年金分割の手続きも重要です。
さらに、夫婦間に社会的経済的に自立していない未成熟子がいる場合には、養育費の支払いも必要になります。
このような離婚条件を適切な内容で定めるためには、弁護士のアドバイスが不可欠です。不利にならない条件で離婚をするためにも、まずは弁護士に相談するようにしましょう。 -
(2)不倫について慰謝料請求するときのサポートを行うことができる
熟年不倫が発覚したときは、配偶者と不倫相手に対して、慰謝料請求をすることができます。
しかし、そのためには熟年不倫があったことを裏付ける証拠が不可欠です。
どのような証拠が必要になるかは具体的な状況によって異なりますので、適切な証拠を収集するためにもまずは弁護士に相談するようにしましょう。弁護士に相談をすることで、熟年不倫の立証に必要な証拠収集のアドバイスやサポートを受けることができます。 -
(3)代理人として、配偶者や不倫相手との交渉を任せられる
熟年不倫を理由に離婚や慰謝料を請求するには、まずは配偶者や不倫相手との交渉が必要になります。しかし、長年寄り添ってきた配偶者に裏切られたことでの精神的なショックを受けた状態では、配偶者や不倫相手と交渉をするのが困難という方も少なくありません。
弁護士に依頼をすれば、弁護士があなたの代理人となって、配偶者や不倫相手との交渉を行うことができます。ご自身の負担を大幅に軽減しながら、適切な条件で離婚や慰謝料請求をするには、相手との交渉は弁護士に任せるのが安心です。 -
(4)調停や裁判の対応を一任できる
配偶者や不倫相手との交渉が決裂したときは、裁判所の調停や訴訟などの法的手続きが必要になります。このような法的手続きに対応するには、知識や経験が不可欠です。
離婚や慰謝料請求という大きな問題だからこそ、おひとりで対応するのではなく、弁護士にサポートしてもらうことをおすすめします。
お悩みの方はご相談ください
5、弁護士からのメッセージ
長年連れ添った配偶者による熟年不倫が発覚すると、ショックで何も考えられなくなる方もいるかもしれません。相手のことが信頼できず、これ以上一緒に生活することができないという場合は、離婚もひとつの選択肢です。
配偶者との離婚を決断したときは、証拠収集や離婚条件の決め方、相手との交渉や調停・裁判など弁護士がサポートすることができますので、おひとりで対応する前に、一度弁護士にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所では、離婚専門チームを組成して、豊富な知見・経験を蓄えております。配偶者の熟年不倫をきっかけに離婚や慰謝料請求をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
-
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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更新日:2025年02月06日 公開日:2025年02月06日熟年不倫が許せない! 慰謝料請求や熟年離婚の流れを解説 40代50代などの夫婦においては、長年連れ添った配偶者が別の方と不倫しているケースがあります。このことを、「熟年不倫」と呼ぶことがあります。熟年不倫は、長い間信頼していた相手から裏切られる行為である... 離婚・不倫コラム全文はこちら
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