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うつ病の配偶者と離婚できる? 気になる慰謝料や親権は?

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更新日:2023年12月21日  公開日:2017年02月13日
うつ病の配偶者と離婚できる? 気になる慰謝料や親権は?

配偶者がうつ病になって、働けずに収入が絶たれた。
うつによる病状が思わしくなく、子どもの精神や生活そのものにも影響が出るようになってしまった。

そんなとき、「離婚」の二文字が脳裏によぎってしまうのも当然のことでしょう。

うつ病になってしまった本人が苦しいのはもちろんですが、そばで見守ってサポートする側もまた、苦しい日々が続き、耐えてきたのではないでしょうか。

昨今、「配偶者がうつ病になってしまったことで離婚を考え始めた」という相談を多く受けるようになりました。
厚生労働省が公表する「令和2年(2020)患者調査の概況」のデータによると、「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」に分類される入院患者・外来を受けた患者の総数は94万人にものぼります。

うつ病は、心の風邪とも呼ばれ、誰にでもなる可能性がある病気です。しかし一方で、長期化しやすく、適切な治療が必要で、かつ再発しやすいともいわれている病気でもあります。

本コラムでは、うつ病の配偶者と離婚できるのかどうかという条件や慰謝料、親権などの扱い、交渉時に気をつけたいポイントについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、うつ病だけを理由にした離婚は難しい?

配偶者のうつ病を理由に離婚できるかどうかという疑問に答えるためには、まず大前提となる、民法で定められている離婚できる条件を知っておく必要があります。

民法第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  1. 一 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3. 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
  4. 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  5. 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

もし配偶者のうつ病による離婚がこの中で該当するとすれば、四に挙げられている「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。」が該当することになるでしょう。つまり、ここに挙げられている「強度の精神病」にうつ病が当てはまるか否か、が争点になるわけです。

そもそも民法第752条によって、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と、婚姻の本質が記されています。この大前提となる相互扶助が、強度の精神病によって果たし得ないと判断されれば、離婚事由になるわけです。

夫婦で話し合い、協議のうえで離婚となる場合は問題ありません。しかし、調停や裁判などになった場合、専門家によって「強度の精神病」であるうえ「回復の見込みがない」かどうかの鑑定が必要となるケースがほとんどです

ただし、一般的にうつ病は誰でもなる可能性があるいわば心の風邪であり、適切な治療をすれば回復できる病気です。
また、もし回復の見込みがない強度の精神病だと鑑定されたとしても、「これまでパートナーに対して誠実な対応をしてきたか」という点と「離婚後も精神病患者が安定した生活ができるか否か」が問われます。この二つがクリアできない限り、「配偶者のうつ病」を理由とした離婚は認めてもらいにくいといえるでしょう。

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2、うつ病の配偶者と離婚する3つのポイント

もちろん、配偶者がうつ病の場合は離婚できないというわけではありません。
具体的にどうすればよいのかについて、説明します。

  1. (1)離婚したい理由を改めて考えてみる

    配偶者がうつ病になったとたん、すぐに離婚したいと考える方はほとんどいないでしょう。離婚の文字が頭をよぎるようになるまでには、さまざまな出来事があったのではないかと推察します。

    たとえば、薬を飲まない、そもそも病院へ行ってくれないといった、治療をまともにしてくれないケースもあるでしょう。家事などで負担をかけないように手を貸すようになったとたん、それが当たり前のようにふるまわれているというケースもあります。また、治療や回復のために最大限の努力をしているにもかかわらず、「あなたのせいでうつになった、うつが治らない」などと言い募られているケースもあるかもしれません。
    さらには、「子どもがこれまでなかったおもらしをするようになるなど、精神的な影響を受けはじめた」という方もいるでしょう。

    もっといえば、常にそばにいて寄り添っていても、回復の兆しがなく、一緒にうつ状態へ陥ってしまうことも少なくありません。そうなれば共倒れです。
    あなたが離婚を決意した理由は、本当に「配偶者のうつ病」だけが理由でしょうか。いま一度よく考えてみてください。

    理由によっては、民法第770条1項四号「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」を理由としたものではなく、民法第770条1項五号「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」を理由に離婚を申し立てることができるかもしれないのです。

    いずれにせよ、調停や裁判になったときには、離婚事由と、求められればその証拠が必要となります。できるだけ普段から日記をつけるなど、第三者から見て「離婚を決意しても仕方がない」「離婚したほうがよい」と判断されるような証拠集めをしてください。

  2. (2)話し合いが難しい場合は調停へ

    離婚までのプロセスとして、まずは条件等含め話し合いのうえで離婚に至る「協議離婚」を目指します。しかし、すぐに逆上してしまう、会ってもらえないなど、話し合いそのものができないこともあるでしょう。また、もう顔を見ることで自身も平静を保てなくなってしまう状態に陥ってしまうこともあるかもしれません。その場合は、弁護士に交渉を依頼することで、第三者を通じた話し合いをすることでスムーズに解決できたケースもあります。

    もし話し合いだけで離婚ができなかった場合は、離婚調停を申し立てることとなります。
    離婚調停とは、家庭裁判所の調停室で、調停員2名を介した話し合いを行える制度です。直接顔を合わせて話し合うわけではなく、ひとりずつ呼ばれて事情を調停委員に話し、それを元に離婚の際の条件などを仲介・交渉してくれる制度です。

    調停を決意した場合は、以下の書類を準備して、相手方の住所地にある家庭裁判所へ申し立てを行います。

    1. 夫婦関係調整調停申立書
    2. 申立人の印鑑
    3. 申立人および相手方の戸籍謄本(同じ戸籍であれば1通で足ります。子どもがいる場合は、子どもの記載も載せるとスムーズです。)
    4. 年金分割についての調停を含むときは年金分割のための情報通知書

    調停の日時は家庭裁判所が決定し、一般的には月に一度、1~3時間程度の頻度で進められます。調停離婚は期日が月に1回程度しか開かれないため、結論を出せるまで、およそ数か月から1年程度かかります。
    もし調停でも話がまとまらず、交渉が決裂してしまった場合は裁判へ進むこととなります。

  3. (3)できるだけ証拠はそろえておこう

    裁判となった場合は特に、第三者が「離婚したほうがよい」と判断できる証拠が必要です。証拠は、調停でもしっかりした証拠があれば審判官(裁判官)や調停委員が「離婚すべきだ」と相手を説得してくれることもありますので、あらかじめできる限りの証拠をそろえておいたほうが、有利にことを運ぶことができます。

    <うつ病にまつわる離婚であると有利な証拠>

    1. 治療履歴
    2. 回復の見込みがないことを明記された専門家の診断書
    3. 発病前後から受けた暴言や暴力などの詳細を記した日記
    4. 暴力を受けていれば被害にあった診断書

    裁判離婚で有利にことを運ぶために必要なものは、証拠だけではありません。配偶者が精神を患っているというケースでは特に、相手が離婚後も生活をしていけるだけの環境があるかどうかが重視されます。

    うつ病を理由にスムーズに離婚するためには、離婚後、相手が親と住むことができる、数年分の生活費を補填するなどの条件を満たすことが求められます。逆にいえば、証拠と配偶者の今後の生活保障に関する問題を満たすことさえできれば、裁判で離婚を認められる傾向があるようです。

  4. (4)成年後見人を申し立てる必要があるケースとは?

    本人同士で会話や意思疎通ができる、通常の離婚手続きにおいては、話し合いからスタートし、調停を行い、それでもまとまらなければ裁判という流れになります。
    しかし、配偶者がうつ病をこじらせてしまい、物理的に会話が難しかったり、自らの意志を発言できなかったり、離婚について正常な判断ができないような状態に陥ってしまうケースも…そんなときは成年後見人と呼ばれる代理人を立てる必要があります。

3、慰謝料や親権・養育費|できるだけ有利に離婚するためには?

離婚するということだけでも、気力体力ともに必要な作業になるものです。財産分与をはじめとした金銭的な部分から、家族間のやり取りなど、大きな負担となるでしょう。
ましてや、配偶者が精神疾患のさなかで、かつ、お子さんがいらっしゃればなおさらです。

  1. (1)配偶者のうつ病を理由に慰謝料はもらえる?

    まず、本人もなりたくてうつ病になったわけではありません。ですから、うつ病になったというだけで慰謝料をもらえるということはないでしょう。ましてや病気の状態ですから、収入も満足に得られないというケースも多いため、慰謝料請求は困難であるといわざるを得ません。

    ただし、慰謝料請求が認められることもあります。たとえばうつ病を理由に自分だけ実家に帰ってしまって相互扶助の基本を放棄されてしまったケースや、暴言暴力などが激しかったケースで、かつもともと資産がある場合です。

    ただ、交渉が困難で裁判などに至ることが多々あるので、証拠集めなど入念な準備が必要となります。スムーズな話し合いが難しいときは、弁護士に相談してみるのもひとつの手です。

  2. (2)親権が欲しい場合にできること

    子どもがいる場合、離婚に際には親権のことも考えなければなりません。配偶者であるあなたも、うつ病患者に寄り添うことを負担に感じた末、離婚を考えたのですから、子どもの負担はそれ以上であると考えてよいでしょう。子どもは親のために存在しているわけではありませんから、子どもが心身ともに健やかな成長をできる環境作りを最優先にしなければなりません。

    よって、基本的に裁判所は、子どもの成長に適した環境があるほうを親権者として選択します。親権者が母親になるケースが多いのは、母親のほうが子どもに長く接しているケースが多いためです。配偶者のうつ病により、子どもの親権者となるのは難しいと判断されれば、たとえ父親だろうと親権を得ることは十分に可能です。

    もちろん親権を得るためにも、心身ともに健康であり、子どもに寄り添える環境を整えておく必要があります。

  3. (3)養育費はどうなる?

    養育費は親の義務でもあります。法律上でも、自身と同程度以上の文化的な生活を送れるよう、子どもを養育することを定められています。よって本来は、親権者が母親となった場合は父親が、逆に親権者が父親となった場合は母親が、子どものために支払うべき金銭となります。

    ただし、養育費は互いの経済状況や子どもの数などによって計算方法が変わっていきます。つまり、うつ病が原因で働けず、収入を得られない元配偶者から養育費をもらうことは難しいでしょう。しかしもともと資産がある場合はその限りではありません。

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4、本当は治ってほしい……治療のためにできること

離婚の言葉が脳裏をよぎるものの、「うつ病さえ治れば……」と思う方も多いでしょう。うつ病の治療は、十分な休息と投薬が不可欠です。そのサポートを行うことは困難を伴うことも多々ありますが、うつ病から回復してほぼ元通りの生活に戻った方もいます。

そもそもうつ病になる原因はまだはっきりと改名されていません。ただ、ストレスなど心身状態の悪化や、脳内の神経伝達情報をつかさどる物質のバランスが崩れてしまうことで発症することがわかっています。自らを追い詰めるネガティブな思考が原因となることも多いため、最近では考え方を見直すことを目的とした「認知行動療法」をはじめとした「精神療法」を組み合わせた治療も行われていて、成果を上げているようです。

配偶者の状態に異変を感じたら、まずは病院へ行くことが先決です。本人が拒否をしても、体調不良や落ち込みが数日続くようでしたら、通院の必要性をやさしく説明し、説得する必要があります。
早期に発見し、ケアをすることで悪化を防ぐ第一歩となります。

また、うつ病は再発しやすく、完治が見えにくい病気でもあります。よくなったと思ってもそのときの状況によってぶり返すこともよくあるようです。互いに無理はせず、のんびりとサポートし、付き合っていく必要があります。

一緒に寄り添い続けたことで、再び幸せな生活を取り戻せた夫婦も少なくありません。互いに限界まで我慢せず、主治医や周囲にも助けを求めながら治療に向き合っていくことで、きっと再び明るい日常が取り戻せるはずです。

5、ひとりで抱え込まないで専門家の門を叩こう

「うつ病かも?」と思ったときから、安心できるはずの家庭が落ち着かない場所になってしまい、離婚を考えるようになるまで、さまざまな試行錯誤をされたのではないかと思います。

もしそれまでの過程で病院やそのほかのサポートを受けておられないようでしたら、まずは保健所や病院のカウンセリングなどを利用してみることをおすすめします。どんなトラブル下においてもそうですが、渦中の当事者であればあるほど、周囲が見えにくくなっていることがあります。困ったときに助けを求めることは、なにも恥ずかしいことはありません。離婚をせずに家庭環境を回復できる手段があるかもしれませんよ。

また、離婚へ向けた話し合いを行う過程でも、ひとりで抱え込むことはおすすめしません。いずれにせよ、症状的に会話が難しい、患者本人の意思伝達が難しいときなどは特に、成年後見人が必要となります。ひとりで解決できる問題ではないのです。

成年後見人とは、重度のうつ病や痴ほう症をはじめとした精神障害などにより、判断能力が十分でない方が不利益をこうむらないよう、当事者を援助する後見人をつけてもらう制度です。成年後見人には、通常の場合であれば親族が選定されるケースが多いですが、離婚調停を視野に入れている場合などは法律の専門家である弁護士が選任されることが多いです。

基本的に成年後見人をつけるためには、当事者が申し立てを行うのですが、本人が手続きを行うことが難しい場合は、その配偶者が代わりに手続きを行うことができます。離婚調停や裁判を行う際は、ここで選定された成年後見人が配偶者の代わりに調停や裁判に出席し、成年後見人の利益の観点から事件を進めることになります。

これらの手続きでも専門的で難しいやり取りが多くなるものです。子どもがいらっしゃる場合はなおさら、さまざまな手続きに時間を取ることが難しくなりがちです。ここでも弁護士に依頼することで、猥雑な手続きから解放され、早期決着を目指すことが可能となります。まずは弁護士にご相談ください。

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6、まとめ

「病めるときも健やかなるときも……」
結婚するとき、互いにそう誓い合った夫婦は多いはずです。
法律的にも、このことは民法第752条で明記されており、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とされています。つまり、困難に襲われたとき、結婚した二人は手を取り合ってその壁を乗り越えなければなりません。

しかし、配偶者のうつ病をきっかけに離婚を考えている方もいらっしゃるでしょう。
現代病ともいわれるうつ病ですが、実際にサポートする側の負担も大きく、生活そのものが大きく変わってしまうこともあります。

病気なのだから仕方ないと抱え込まず、第三者の手を借りることで状況を打開することは可能です。ご自身の生活や精神状況を守るためにも、ひとりで抱え込まず、弁護士をはじめとした専門家へ相談することを検討してみてください。

そして、実際に離婚を決断してサポートが必要となった際には、ベリーベスト法律事務所までお問い合わせください。必ずお力になれるように、尽力いたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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