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夫の浮気相手と示談交渉をするときに知っておきたいこと

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更新日:2020年02月27日  公開日:2018年10月03日
夫の浮気相手と示談交渉をするときに知っておきたいこと

夫がまさかの浮気!
離婚はしないけれど、もちろん許せるはずもない。
大人として、しっかり償ってもらうと同時に、関係も断ち切ってほしい。

そのように考える方は、決して少なくありません。
浮気相手に償いを求める場合は、法律的には慰謝料を請求することになるのですが、裁判などのおおごとにしたいわけではない……とためらう方も多いでしょう。
そこで、今回は浮気相手に不倫慰謝料請求をする場合に知っておきたい示談交渉の進め方や手順について、弁護士が解説します。ぜひ参考にしてください。

1、浮気相手に示談交渉を行うのはどんなとき?

浮気相手に慰謝料などを請求する場合、主に次のような方法が考えられます。

  • 話し合いで相互が納得する「示談(又は示談交渉)」
  • 簡易裁判所の調停制度を利用して話し合う「調停」
  • 裁判所の判断を仰ぐ「裁判」


一般的に、示談とは裁判所など公的機関を挟まずに行われる話し合いをいいます。ここでは、なぜ示談を選択したい方が多いのか、どのようなときに示談で決着するように交渉していくのかについて解説します。

  1. (1)なるべく早く問題を解決したい

    示談交渉によって慰謝料請求を行う最大のメリットは、素早い問題解決を望めるという点です。

    調停や裁判は、公的機関が仲介、もしくは判断を下す場であり、決められた手続きを踏まなければいけません。また、調停の場合は月に1回程度の頻度でしか開催されず、話し合いそのものがスムーズに進まないこともあります。裁判に至っては、手続きの難しさはもちろん、判決が下るまでそれなりの期間がかかることは覚悟したほうがよいでしょう。

    一方、示談は互いに合意さえすればすぐに問題が解決します。複雑な手続きを踏む必要はなく、あなたと相手の都合で、話し合うためのスケジュールを組むことができます。話し合いができる状態であれば、示談で解決してしまう方があなた自身にも負担がかからないといえるでしょう。

  2. (2)夫と浮気相手との関係を断ち切りたい

    お金が欲しいわけではなく、「反省してほしい」、「浮気相手には完全に夫との関係を絶ってほしい」、「二度と会わないでほしい」と望む方は多いのではないでしょうか。しかし、民法には、精神的損害について賠償請求ができることは定められていますが、その後の接触などについての規定はありません。
    二度と会わないようにさせるためには、浮気相手に「二度と配偶者と会わない」ことについて話し合いの上で合意する必要です。

  3. (3)なるべく高額な慰謝料を手に入れたい

    慰謝料で請求できる金額は、法律であらかじめ決まっているわけではありません。互いに合意さえすれば、慰謝料として認められます。しかし、調停や裁判を通じて交渉を行う場合は、一般的な相場を基準にして話し合われることになります。事情によって異なるものの、浮気の慰謝料相場とされる金額は、離婚に至った場合で100~300万、離婚に至らない場合は100万円以下となることもあります。

    そのため、できるだけ高額な慰謝料を手に入れたい場合は、示談を通じて相手に納得してもらう必要があるのです。

  4. (4)おおごとにしたくない

    思っても見なかったトラブルだったからこそ、周囲に知られたくない、おおごとにならないよう浮気相手と自分だけで問題を解決したい、と考えることは、当然のことです。裁判所などを通じて解決を図ろうとする場合、調停であれば裁判所に指定された平日の日中に足を運ぶ必要があり、仕事や日常生活への影響もあるでしょう。訴訟であれば現実的には弁護士に依頼しなければ進められません。

    互いに速やかかつ冷静に話し合いができるのであれば、それに越したことはありません。裁判などに至らない穏便な解決を目指して、示談を選択するケースも多数あります。

2、浮気相手と示談交渉を行うなら、事前に証拠を集めておく

浮気に対する慰謝料請求を行い、示談を通じて解決するためには、どのような準備が必要となるのでしょうか。あらかじめ知っておきましょう。

法律上、慰謝料請求が認められるためには、一定の条件を充たす必要があります。闇雲に慰謝料請求ができるわけではありません。不法行為による損害賠償請求について定めた民法709条で明文化されているとおり、浮気相手があなたの「故意又は過失によって権利又は法律上保護される利益を侵害した」といえなければならないのです。そして、それを浮気相手に認めさせる必要があります。

  1. (1)証拠が必要な理由

    あなたが浮気、もしくは不倫だと思う行為をあなたの配偶者と浮気相手がしていたら、まずは民法で定められた慰謝料請求が認められる条件を充たしているか確認する必要があります。

    一般的に「浮気」や「不倫」と称される行為のことを、法的には「不貞行為」と呼ぶことが多く、離婚事由を定めた民法770条にも「不貞」という言葉が出てきます。 この不貞行為に当てはまり、浮気相手に慰謝料を請求するためには、一般的には「配偶者がいることを知っているにも関わらず、性行為を行った」ケースに限られます。

    実際に浮気相手があなたの配偶者と不貞行為をしていたことがわかったとしても、浮気相手が否定するケースは少なくありません。また、あなたの配偶者が既婚者であることを知らなかったと主張することもあるでしょう。

    そこで、重要となるのが「証拠」なのです。証拠があれば、相手は言い逃れできません。支払いや交渉そのものを拒否して、最終的に裁判などになったときにも、証拠があればスムーズに手続を進めることができます。逆に、証拠がなければ裁判を通じて不倫慰謝料を支払ってもらうことは難しいといえます。

    示談交渉をする前には、必ず証拠を集めておいてください。

  2. (2)有力な証拠とは?

    浮気相手が、「あなたの配偶者が既婚者であることを知りながら、性行為を行った」事実がわかるようなものが「証拠」となります。

    具体的には、以下のようなものが有力な証拠として扱われる可能性があります。

    • メールやLINE、SNSなどで、配偶者と浮気相手のやり取りから、性行為をしたことがわかるような履歴
    • ラブホテルに入り、出たことがわかる写真(時間の表示があるとベスト)
    • 性行為があることが明白な写真
    • ラブホテルなどの領収書
    • 浮気をしたことを認めたときの録音データ
    • ラブホテルなどに出入りする目撃情報など


    いずれも、肉体関係があったと推測できる内容である必要があります。「好きだ」「また会いたい」などの文面だけでは、証拠としては弱いという点に、注意してください。

    ただし、証拠集めは精神的にも非常につらい作業となります。自身で証拠を集めることが難しい場合は、信頼できる探偵事務所に依頼するのもひとつの手です。また、ご自身で「有力な証拠」がとれているのか判断が難しい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。一つ一つの証拠では弱い証拠であったとしても、証拠を組み合わせることで有力な証拠となることも多々あります。ひとりでは無理だと諦めず、まずは弁護士に相談してみましょう。

3、浮気相手と示談交渉を行う手順・方法

ここからは、実際に浮気相手を呼び出し、示談交渉を行う手順についてご紹介します。後の紹介する「通知書」という書面を送ることも多く、ここでご案内するのはあくまで一例ですので、状況によって異なることも多々あるでしょう。場合によっては、弁護士に相談することも視野に入れておくとよいでしょう。

  1. (1)通知書(慰謝料請求書)を作成する

    示談交渉を行う前に、あなたが示談によって相手へ行う要求を書面にまとめておきます。慰謝料請求をする金額や支払い条件、接近禁止の約束を破った場合の処置なども盛り込んでおくとよいでしょう。

    この書面は、「慰謝料請求書」や「通知書」などと呼ばれることもあります。それとは別に、「示談書」という形で、相手の署名部分と金額部分を空欄にしてその他の条件を記載した書類を2部作っておけば、話し合いがまとまった場合にその場でサインをもらうことができるかもしれません。

    冷静な話し合いとスピーディーな解決のためにも、あらかじめ書類を用意しておくことをおすすめします。

    そのほかに、示談交渉へ赴く際、持参したほうがよいものは以下のとおりです。

    • あなたの配偶者と浮気相手が不貞行為をしていた証拠
    • 通知書(慰謝料請求書)と示談書を各2枚
    • ボールペン(浮気相手が書くものがないと言ったときにすぐ貸すことができる)
    • ボイスレコーダー(話し合いの内容を録音する)
    • 自分の印鑑と朱肉
  2. (2)相手に会う

    示談とは、相手と話し合いの末、結論を出すことです。通知書を相手方に送って書面で交渉する方法や電話で交渉する方法もありますが、ここでは実際にあって交渉する場合についてご案内します。あなたが冷静に話をすることができて、浮気相手も話合いでの解決を望んでいる場合には適切な解決方法といえるでしょう。
    前提として、当然ですが相手がわからなければ示談交渉はできません。相手の住所などを特定してから、行動を起こすことになります。
    どのようにして会って話をするかは、個々のケースで異なるでしょう。家の前や職場の近くで待機する、電話などで連絡を取るなどのケースもあります。また、終始冷静に交渉できる自信がある場合は、あなたひとりで交渉に向かってもよいのですが、少しでも不安があれば、信頼できる友人や弁護士、不倫を反省した配偶者に同席してもらうと心強いかもしれません。
    ただし、直接会うことによってさらに問題が複雑化することもあるので事前に弁護士のアドバイスを聞いておいたほうが安心でしょう。

  3. (3)通知書(慰謝料請求書)を読んでもらう

    浮気相手に会えたら、立ち話はせずに話し合う場所へ移動します。話し合いの場所ですが、以下の場所は避けたほうがよいでしょう。

    • 互いの自宅
    • 賑やかなファミレスやファーストフード店
    • バーや居酒屋など、飲酒がメインとなりがちなお店


    人目があったほうが、互いに興奮してしまってエスカレートしてしまうといったトラブルには発展しづらいものです。しかし、賑やかすぎると話し合いが難しくなります。近隣に隣席とはパーティションで区切られている個室風のカフェなどがあれば、交渉の場として適切かもしれません。弁護士に依頼していれば、弁護士事務所などで示談交渉することもできます。なお、無理矢理話し合いの場へ連れて行くことは犯罪となります。絶対にしないようにしましょう。

    相手が話し合いの席についたら、まずは事前に用意した通知書を浮気相手に読んでもらいましょう。

  4. (4)慰謝料の条件や金額について話し合う

    浮気相手が通知書を読み終えたら、金額や条件面での話し合いになります。

    出した条件をすぐに納得してくれることはほとんどないと考えておいてください。やはり、なによりも冷静な交渉が肝になります。浮気相手にとって脅迫と受け取られる発言をしてしまうと、話し合いがこじれてしまうこともあり得ます。気をつけて交渉を進めてください。相手が何か質問してきても、基本は「書面のとおりです」と答えるようにして、なるべく感情的な話はしないほうがよいでしょう。

    相手が誠意ある対応を検討しているものの、金額面で迷いがある場合は、ある程度の減額に応じることでスムーズな解決が期待できます。

  5. (5)示談書を作成し、署名・捺印してもらう

    交渉の末、互いに納得できる内容が決定したら、示談書を作成します。誓約書と呼ばれることもあります。あらかじめ、慰謝料額と署名欄を空欄にしていた示談書を作成していれば、その場で署名捺印してもらいましょう。

    <示談書に書いておくべき内容>
    • 事実の確認
    • 謝罪
    • 浮気相手が支払う慰謝料の金額と、支払期限、支払方法等
    • 制約事項(今後、ふたりきりで会わないなど)
    • 口外禁止
    • 清算条項(約束の支払いをした場合には、これ以上慰謝料を請求しないなど)


    示談書への署名捺印までできれば、示談成立となります。
    一通を浮気相手に渡し、一通は自分で保管します。

4、相手が交渉に応じない場合はどうする?

前章でも述べたとおり、提示した条件で浮気相手がすぐに納得してくれるケースはさほど多くありません。多くのケースで、慰謝料額の減額を申し入れてきますし、そもそも話し合いの場にすらつこうとしないこともあります。浮気の事実を否定されることもあるでしょう。

その場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。

  1. (1)裁判をする意思がある旨をはっきり伝えてその場は引くべき

    まず、大原則として、示談とは話し合いによって相互が納得して慰謝料額などを決めることです。よって、あなたが出した条件を強制的にのませる形で示談書を作成することはできません。無理に署名させても、その効力が認められなくなる可能性が高まります。

    もし、相手が話し合いそのものや、その場での署名捺印を拒んだときは、「内容証明郵便を使い、自宅へ改めて通知書を送付する」こと、それから「正式に裁判を起こす考えである」ことを伝えてください。このまま問題を先送りすることでおおごとになるという事実を相手に伝えることで、早期解決を目指します。

    それでも、その場でのサインを拒む場合は、無理をせずに引いて仕切り直しましょう。

  2. (2)「周囲に知らせる」などの言葉はあなたが犯罪者になってしまう可能性も

    裁判を起こす覚悟があることを伝えて、あっさり引き下がることには意味があります。

    まずひとつめは、いくら粘っても相手が合意する気持ちがなければ、あなたの貴重な時間をムダに消費してしまうことになるためです。また、無理に交渉を続けても、押し問答や口論になりやすく、冷静な話し合いが難しくなります。

    示談を焦ると、「交渉に応じなければ周囲にバラす」など、脅迫とも取られうる言葉を発してしまいがちです。脅迫は犯罪となり得ます。絶対にやめましょう。

5、浮気相手との示談交渉で弁護士に依頼するメリット

示談交渉そのものは、問題がこじれることがなければ個人でも十分対応できると考えておられるでしょう。しかし、あらかじめ弁護士に相談したり、依頼したりすることは、あなたにとって大きなメリットがあります。具体的に、どのようなメリットがあるのでしょうか。

  1. (1)法的知識を駆使して話し合いに臨める

    弁護士は、法律の専門家であり、交渉のプロです。誤った内容や、あなたが不利となる文章、さらには後々無効となってしまいそうな文言を示談書に盛り込んでしまう可能性をあらかじめ防ぐことができます。将来を見据え、より適切な内容を盛り込んだ示談書の作成が可能となります。

    あらかじめ示談書の内容をチェックしてもらい、アドバイスを得ておけば、あなた自身が交渉するときにも、自信を持って対応できます。

  2. (2)うまく交渉を進めるためのアドバイスをもらえる

    話し合いがこじれてしまうと、そこから再び冷静な話し合いをすることは格段に難しくなると考えてよいでしょう。その段階になってから弁護士に依頼しても、手遅れということにもなりかねません。

    特に不倫問題や慰謝料請求に対応した経験が豊富な弁護士であれば、浮気相手との示談交渉をスムーズに進めるための有益なアドバイスを受けられます。また、相手が示談を拒否したときの対処法なども相談できます。

  3. (3)代理で相手と交渉してくれる

    あなたからの依頼を受けた弁護士は、あなたに代わって示談交渉をすることができます。弁護士に依頼する最大のメリットといってよいでしょう。わざわざあなた自身が浮気相手に会う必要もありません。通知書の作成から示談交渉、示談の締結、慰謝料支払いの受領まで、すべて弁護士に任せてしまうことも可能です。

  4. (4)示談書について、法的に不備の無い内容の書類を作成してくれる

    交渉そのものをあなたが行うとしても、法的に問題のない書類作成だけを弁護士に依頼することもできます。万が一、話し合いがこじれてしまい、裁判に至ってしまったとしても、弁護士であればその次の対処方法まで相談したり、対応を依頼したりすることができます。

6、まとめ

今回は、不倫相手への慰謝料請求を示談で進める方法と気をつけるべきポイントについて、お送りしました。

離婚はしないという選択をした場合は、裁判所に関わるようなおおごとにしたくないという方は少なくありません。しかし、やはり慰謝料請求については、法律に関わる問題となります。相手女性との交渉も難航することが少なくなく、かえってあなたと配偶者との関係性がこじれてしまうことにもなりかねません。

可能な限り、不倫慰謝料請求の経験が豊富な弁護士に相談し、対策していくことをおすすめします。ご依頼者様の事情により状況は異なりますので、ネット上の弁護士回答ではうまく交渉できないこともあるでしょう。まずは、無料相談窓口などを利用して、弁護士へご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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