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財産分与の調停を優位に進めるには? 財産分与調停の流れを解説

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更新日:2024年10月09日  公開日:2020年10月01日
財産分与の調停を優位に進めるには? 財産分与調停の流れを解説

離婚をする際、これまでの婚姻生活で築き上げた財産をお互いの家庭での貢献度に応じて分けるのが「財産分与」です。
まずは離婚協議で財産分与の内容について話し合いますが、ここで合意に至ることがなければ、家庭裁判所において「調停」へと進むことになります。
財産分与に関する調停手続きは、離婚前と離婚後で大きく異なりますので注意が必要です。
調停をできる限り優位に進めるためには、まず正しい知識の理解が前提となります。

本記事では、調停でできるだけ有利な条件で財産分与を受ける方法や、基本的な手続きの概要について、弁護士が解説します。

1、財産分与の対象となるもの

財産分与とは、夫婦が共同生活の中で築き上げた財産を離婚時に分配する手続きです。

  1. (1)財産分与の種類

    ●清算的財産分与
    夫婦が婚姻中に築いた財産を清算する財産分与です。一般的に「財産分与」という場合、清算的財産分与を指します。

    ●扶養的財産分与
    離婚後相手が困窮する可能性がある場合、扶養のために行う財産分与です。

    ●慰謝料的財産分与
    不倫などによって相手に精神的苦痛を与えた場合に行われる、慰謝料的な意味合いを含めた財産分与です。

  2. (2)財産分与の対象

    財産分与の対象になるのは、「夫婦の共有財産」です。
    具体的には不動産や預貯金、株式、保険、近い時期に受け取る退職金などが該当します。たとえどちらかの「名義」になっていても、実質的にはふたりが共同で得たものは「夫婦共有」となり財産分与対象になります。
    一方で、どちらかが婚姻前から持っていた財産や親から引き継いだ財産は「特有財産」となるので財産分与の対象になりません。
    借金、住宅ローンなどの債務について、遊興費などの個人的な借金は財産分与対象になりませんが生活費のための借り入れは財産分与対象になります。


    「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。

    適切な分配・損をしないために離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください

2、財産分与請求で調停を申し立てる二つの方法

財産分与を請求するときには、基本的に夫婦が自分たちで話し合いを進めます。協議しても解決できない場合、家庭裁判所へ「調停」を申し立てます。財産分与を請求するための調停手続きは、離婚前と離婚後で大きく異なります。

  1. (1)離婚前の場合

    離婚協議中に財産分与の方法で意見が割れてしまったら「協議離婚」は難しくなります。協議離婚するには夫婦がお互いに離婚することに同意して離婚届を作成しなければならないからです。合意できなければ、離婚条件をまとめた「離婚協議書」も作成できません。

    そこで財産分与を含めた離婚条件を決定するために「夫婦関係調整調停(離婚調停)」を申し立てなければなりません。離婚調停では、財産分与や慰謝料請求、親権や養育費などの離婚条件全般について話し合って決定します。
    離婚調停で合意ができたら離婚が成立します。調停による離婚を「調停離婚」といいます。

  2. (2)離婚後の場合

    離婚後に財産分与を請求する調停は「財産分与調停」です。
    財産分与調停は、財産分与の条件のみを話し合う調停です。離婚調停のように親権や養育費、慰謝料などの他の離婚条件についての話し合いはなされません。財産分与の条件について合意ができたら調停が成立し、相手から給付を受けられます。

  3. (3)財産分与を調停で請求するメリット

    ●第三者が間に入るのでまとまりやすくなる
    調停では、裁判所の「調停委員」が当事者の間に入って話を進めます。自分たちだけではもめてしまって話が進まないケースでも、第三者が仲介することで冷静になり合意しやすくなる可能性があります。
    また調停委員は調停官(裁判官)と協議しながら調停を進行させるため、法律に従った適切な財産分与を実現しやすくなるメリットもあります。

    ●相手と顔を合わせる必要がない
    調停を利用すると、調停委員が夫婦の間に入って話を進めるため、相手と直接顔を合わせる必要がありません。精神的な負担も減ります。

    ●強制執行が可能となる
    調停で合意ができると「調停調書」が作成されますが、この調停調書には「強制執行力」が認められます。相手が約束通りに支払いをしないときには、調停調書を使って差し押さえや登記移転などの強制執行が可能になります

    ●財産を開示させやすくなる
    財産分与の話し合いの際、相手に渡したくないばかりに財産を隠してしまうケースがあります。しかし、調停中は相手に預貯金や株式などの財産を隠している疑いがあれば、調停委員から相手に提出を促してもらえます。さらに、裁判所へ「調査嘱託」を申し立てて金融機関などへの情報照会手続きをしてもらえる可能性もあります

3、財産分与の調停の流れ

財産分与に関する調停の基本的な流れをみていきましょう。

  1. (1)財産分与の時期

    離婚前に財産分与を請求する場合、離婚と同時に財産分与を行います。
    離婚後の財産分与請求の場合には「離婚成立後2年以内」に行う必要があります。ただし離婚後2年以内に調停を申し立てれば、成立時に2年を超過していても財産分与を受けられます。
    離婚後2年が経過しそうな状態であれば、権利が失われないうちに早めに家庭裁判所で財産分与調停を申し立てましょう

    申し立てる調停の名前は、離婚前であれば「夫婦関係調整調停」、離婚後であれば「財産分与請求調停」です。申し立て方法や流れは基本的に同じなので、以下ではまとめて解説します。

  2. (2)申し立て方法

    調停を申し立てるときには、必要書類と費用を用意して管轄の家庭裁判所へ提出します。
    管轄は「相手方の住所地の家庭裁判所」となります。

    必要書類は以下の通りです。


    • 申立書(夫婦関係調整調停の場合には「夫婦関係調整調停申立書」、財産分与請求調停の場合には「財産分与請求調停申立書」)
    • 夫婦の戸籍謄本
    • 財産目録
    • 財産に関する資料(預貯金通帳のコピー、不動産の全部事項証明書、株式取引に関する書類など)


    申立書は、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。申立書には、名前や住所といった基本情報のほか、申し立ての趣旨と理由についても記載しなければなりません。具体的には、共有財産の内訳や希望する財産分与の割合、分け方などです。


    参考:家庭裁判所|財産分与請求調停の申立書

    調停は、申立書の内容をベースに進められるので、主張したいことや事実は、明確かつ論理的に記載しましょう。逆に、事実の書き忘れがあった場合や、自身に不利になるような内容を書いてしまった場合、調停の結果に影響を及ぼすおそれがあるので注意する必要があります。
    書き方や書くべき内容に迷う場合は、弁護士に相談すると良いでしょう。


    申し立てにかかる費用は以下の通りです。


    • 1200円の収入印紙
    • 連絡用の郵便切手


    上記をそろえて家庭裁判所に提出すれば、調停を受け付けてもらえます。

    なお、申立先は相手の住所地を管轄する家庭裁判所です。
    同居している状況であれば大きな問題にはなりませんが、一方が実家に戻っている、別居し遠方に引っ越しているといったケースでは、調停のたびに出向くことになります。時間がかかるのはもちろんのこと、旅費などもかかるため、事前に管轄の家庭裁判所を調べておくようにしましょう。

    参考:家庭裁判所|裁判所の管轄区域

  3. (3)調停の流れ

    申し立てをすると、1~2週間で家庭裁判所から調停の呼び出し状が届きます。
    指定された日時に家庭裁判所へ行くと、相手方も来ていてお互いが異なる待合室で待機します。
    その後、調停委員から交互に呼び出しを受けて財産分与についての話を進めます。

    1回で解決できない場合、何回か調停期日を入れて調整していきます。最終的に合意ができれば調停が成立し、調停調書が作成されて調停が終了します。離婚調停の場合には、調停成立と同時に離婚も成立します。

    調停にかかる期間は、平均的に3~6か月程度で、出席回数は3~5回程度となるケースが多いでしょう。

4、財産分与の調停を優位に進めるためのポイント

財産分与調停を有利に進めるには、以下のような点に注意しましょう。

  1. (1)財産分与の基本的な割合

    財産分与の基本的な割合は、夫婦それぞれ2分の1ずつです。専業主婦(主夫)の場合や共働きで収入格差がある場合でも2分の1が原則です。ただし、一方の特殊なスキルや資格などによって通常より著しく高い収入を得ていた場合などには割合が調整される可能性があります。

  2. (2)相手の全財産を開示させる

    適切に財産分与を受けるには、相手にすべての夫婦共有財産を開示させなければなりません。財産隠しがあれば、その財産が対象から外れて、受け取れる額が減ってしまいますので、見落としがないよう注意しましょう。相手に財産を隠す様子があれば、金融機関や保険会社などへ照会を行って調査する必要があります。
    今は個人情報の扱いに慎重な機関が多く、たとえ夫婦であっても情報開示に応じてもらえないケースがほとんどです。自分で調べるには限界があるので、財産隠しの疑いがあれば弁護士に相談することも検討しましょう

  3. (3)特別な貢献があれば、適切に主張する

    相手よりも自分の方に財産形成に対する特別な貢献があれば、わかりやすく主張しましょう。たとえば相手が浪費していた、刑務所に入っていた、あるいはあなたが特殊なスキルやビジネスの才覚によって莫大(ばくだい)な財産を得た場合などです。
    主張が認められれば2分の1を超える分与を受けられる可能性もあります。

  4. (4)特有財産の立証資料を準備する

    婚姻前から持っている財産や婚姻中に相続や贈与を理由として自己名義で得た財産である「特有財産」は財産分与対象になりません。ただ、「特有財産」と証明できなければ「共有財産」の扱いとなり、相手に半分渡さないといけない可能性があります。
    そうした不利益を避けるため、特有財産である事実を証明できる資料を用意しましょう。たとえば独身時代の日付の入っている預貯金通帳や金融機関、生命保険会社からの通知書、不動産登記簿謄本などです。
    自分では何を集めれば良いかわからないときにも、弁護士からのアドバイスが有効になります。

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5、調停でも話し合いがまとまらなかった場合

  1. (1)調停と訴訟・審判の違いとは

    調停は、あくまでも話し合いによる合意を目指す手続きです。調停委員や裁判官は、助言、解決案は提示するものの、財産分与の金額や支払い方法を決定することはありません。
    そのため、納得ができない内容であれば、拒否することが可能です。
    一方で、訴訟は審判に至った場合は、裁判所が最終的な判断を下すことになります。有利な結果を得るためには、適切な主張や立証を行う必要があるため、個人で対応するのは難しく、弁護士のサポートは必須といえるでしょう。


    では、離婚調停や財産分与調停において、調停成立が難しくなるのはどのようなケースなのでしょうか。また、不成立になった場合の流れはどのように進むのでしょうか。続いて説明していきます。

  2. (2)調停での合意が難しいケース

    以下のようなケースでは、離婚調停や財産分与調停を行っても合意できない可能性があります。


    • 相手が財産隠しの疑いがあり、調査をしても財産内容が明らかにならない
    • 財産分与割合についてどうしても合意できない
    • 特有財産か共有財産かについて争いがある
    • 財産の評価方法で争いがある


    調停でも合意ができない場合、離婚調停か財産分与調停かで流れが異なります。
    離婚調停の場合、調停が不成立になって手続きが終了します。離婚を進めたいなら、別途家庭裁判所で「離婚訴訟」を提起しなければなりません。


    一方、財産分与調停の場合には、調停が不成立になると「審判」へと移行し、家庭裁判所が財産分与の方法を決定します。


    訴訟も審判も話し合いではなく「裁判所が資料にもとづいて判断する」手続きです。書面審理となるので、有利な結果を獲得するには適切な主張と立証を進めなければなりません。一般の方では対応困難となる可能性がありますので、弁護士への依頼をおすすめします

6、財産分与調停で弁護士が必要な理由

財産分与を請求する調停で弁護士をつけると、以下のようなメリットを得られます。


  • 時期に応じた適切なアドバイスを受けられる
  • 相手の財産調査ができる
  • 調停委員に対する的確な対応が可能となる
  • 特有財産性を証明しやすくなる
  • 適切な財産分与割合について根拠をもって主張できる
  • 弁護士が対応すると、依頼者は手間と時間を省ける
  • 精神的にも楽になる


このようなメリットがありますので、財産分与を請求するときには必ず弁護士に依頼しましょう。

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7、まとめ

財産分与について夫婦間で話し合っても解決できない場合、家庭裁判所で離婚調停や財産分与調停を進めましょう。弁護士が代理人に就任していたら、有利な条件で財産分与を受ける可能性が高くなります。ベリーベスト法律事務所では、夫婦や離婚の問題に積極的に取り組んでいますので、お悩みの際にはぜひとも一度、ご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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