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将来の養育費を一括でもらうことはできる? 離婚後の養育費未払いを防止する対処法

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更新日:2022年10月24日  公開日:2018年03月23日
将来の養育費を一括でもらうことはできる? 離婚後の養育費未払いを防止する対処法

養育費は、子どもが社会人として独立自活できるまでに必要とされる費用です。

子どもは愛情だけでは育つことはできません。健康を保ち教育を行うためには、一定以上のお金が必要です。親は、子どもに対して扶養義務を負っているので、養育費を分担すべき義務があります(民法877条1項)。夫婦は、離婚したとしても、子供の親であることにかわらないので、離婚後も双方子供の養育費を分担して負担すべき義務があるのです。

養育費は、通常月々の分割で支払われ、離婚後に長期間支払いが継続することからトラブルになるケースが少なくありません。そこで今回は、養育費の未払いを防ぐ方法から、未払いとなった場合の対処法についてまで、弁護士が詳しく解説します。

1、日本における養育費の今

日本における養育費の今
  1. (1)養育費未払いの現状

    日本の養育費の支払い等の状況について、厚生労働省が発表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」をみてみましょう。

    離婚時に養育費の取り決めをしたケースは、母親が親権を得たケースで42.9%、父親が親権を得たケースで20.8%と、過半数を割る結果となっています。取り決めをしなかった理由は母親が親権を得たケースのトップは「相手に関わりたくない」、父親が親権を得たケースのトップは「相手に支払う能力がないと思った」でした。

    しかし取り決めだけをしても、支払ってくれなければ意味がありません。同報告書によれば、離婚後、別れた父親が養育費を支払い続けている割合は24.3%でした。さらに別れた母親が養育費を支払い続けている率になると3.2%にまで落ち込みます。

    参考:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」


    近年ひとり親家庭の貧困が問題なっており、養育費の未払いは未来を担う子どもにとって大問題です。

  2. (2)養育費の未払いに陥る理由

    弁護士事務所では、養育費をできれば払いたくないと考えているからの相談を受けることもあります。その理由は家庭環境などにより異なるものですが、主に以下の理由を挙げるケースが多いようです。

    • 養育費を支払うと生活ができない
    • 再婚して扶養家族が増えた
    • 親権者が有責配偶者だったため、お金を渡したくない
    • 養育費を支払っても子どもと面会できないため愛情が薄れた
    • 親権者が再婚したため経済的な余裕ができている

    しかし、どのような理由があろうと、養育費の支払いは親となった方の義務であるという事実は変わりありません。

2、養育費を決めたときにできる未払い対策

養育費を決めたときにできる未払い対策

では、どうしたら、相手が養育費の支払いを止めてしまった場合も、しっかり養育費を受け取ることができるのでしょうか。

その明暗は、「養育費を取り決めたとき、どのように対応したか」によって決まります。


  1. (1)離婚協議書を作る

    子どものために養育費を確保するのであれば、まずは何より、離婚する前にしっかり養育費の支払いについて話し合い、約束しておくことが大切です。特に協議離婚の場合は、離婚することに気を取られ、離婚後の養育費支払いについて十分な話し合いをせずに離婚に至ってしまうケースが多いので注意が必要です。話し合いを行った場合は、合意した内容を「離婚協議書」の形で書面にして残しておくことが大切です。

    離婚協議書とは、決まりがあるわけではありませんが養育費や財産分与などの内容や支払期限などを明記した書面です。離婚協議書には、合意内容を記載し、各当事者が署名と押印を行い、合意した日時を記載した書面を2部作成し、それぞれが1部ずつ保管しておきます。

    もし書面を作成せず、口約束でしかなかった場合、約束をした証拠がないため、再び交渉しなおすことになってしまう可能性があります。しかし、離婚協議書を作成することで、養育費の金額や支払期限などについての証拠を残すことができます。離婚後、養育費が一度も支払われなかった場合も、裁判等離婚協議書を根拠に養育費支払いの合意が認められれば、未払い時までさかのぼって請求できる可能性もあります。

    しかし、確実に養育費を受け取るためには、離婚協議書だけではやや心もとない点もあります。それは、養育費が未払いとなってしまったとき、離婚協議書だけでは強制執行はできないためです。この場合、調停や裁判を通じて請求を行う必要があり、実際に支払われるまでにかなりの時間がかかることになります。

  2. (2)離婚協議書を公正証書にする

    協議離婚後、万が一、養育費が未払いとなってしまったとき、すぐに強制執行ができるようにしておく方法があります。それは、一定の条件を満たした公正証書を作成しておく方法です。

    公正証書とは、法務大臣が任命する公証人が作成する公文書です。公証役場で作成できます。

    公正証書を作成するメリットは、公正証書に相手方の支払がない場合に強制執行に服する旨の条項を入れることにより、相手方が養育費を支払わない場合に、裁判を経なくても、強制執行ができる点です。この点、養育費について公正証書を作成しても、強制執行に服する旨の条項がない場合には、強制執行ができないでの注意が必要です。公正証書作成の際は、弁護士に相談することをおすすめします。

  3. (3)調停調書の効力とは?

    離婚する際、相手に支払い能力があるにもかかわらず、離婚協議書や公正証書の作成を渋ったり、そもそも養育費などの条件でもめたりしてしまった場合は、調停を起こして離婚するという方法が考えられます。

    調停で離婚が成立した場合は、調停調書が作成されます。調停調書には確定判決と同一の効力を持ち、公正証書と同様に、裁判を経ることなく、強制執行をすることができます。

    万が一、養育費の未払いが起こった際も、素早く強制執行手続きを行うことができるというわけです。

3、養育費を払ってくれないときにすべき手続き

養育費を払ってくれないときにすべき手続き

離婚する際、どれほど注意深く交渉をして養育費の約束をして、書面を作成したとしても、支払いが滞ってしまうことは少なくありません。そこで、ここでは養育費が未払いとなった後の手続きについて解説します。

  1. (1)まずは話し合いで請求を

    公正証書や調停調書がある場合でも、まず相手に連絡をとって催促してみる方法が考えられます。強制執行によって養育費を回収するには費用がかかりますし、悪意なく、単純にうっかり振込を忘れていた場合には、支払いがないことを伝えれば支払われることもありえます。

    ただし、催促した後いつまでも待たされる可能性もあるので、催促をする場合は、「〇日までに支払ってください」など期限を区切って伝えることをおすすめします。

    伝えた期限までに支払いがなければ、次は内容証明郵便を使って支払いを請求することが考えられます。内容証明郵便を使用することにより、あなたの本気度を示すことができ、さらに、相手に支払いを請求したという証拠を残すことができます。このとき、内容証明郵便には、相手が受け取ったという証拠も残すために配達証明を一緒に付けることをおすすめします。

    あなた自身が支払ってくれるように頼んでも、柳に風のような態度をとる相手の場合は、弁護士に依頼して弁護士の名義で内容証明郵便を送付することが考えられます。通常、弁護士が内容証明郵便で通知書を送付するときは、約束が守られない場合、法的手段を取る可能性があると通知するので、相手にプレッシャーを与えることができ、すぐに支払ってくれるケースもあります。

  2. (2)履行勧告

    また、調停調書がある場合は、家庭裁判所に申し立てをして、家庭裁判所から相手に履行勧告をしてもらうことができます。履行勧告とは、裁判所が直接相手へ、約束したことを守るように伝えてくれる制度です。履行勧告の申出は、口頭や電話でもでき、費用もかかりませんが、相手が勧告に応じない場合は、支払を強制することはできません。

  3. (3)強制執行

    任意の交渉や履行勧告をしても、相手方が養育費を支払ってくれない場合には、裁判所の力を借りて強制執行をする必要があります。
    強制執行には、種類があるのですが、ここでいう強制執行とは申立てにより裁判所が相手の財産を差し押さえて、その財産の中から支払いを受けるための手続きです。養育費を請求する場合、一番多いのは、相手の給与を差し押さえるケースです。

    強制執行を申し立てて相手の給与を差し押さえる場合は、相手の住所を管轄とする地方裁判所へ申し立てます。裁判所から差押命令が出て、相手に差押命令が出たことが送達され、その後1週間経過したときは、自ら取り立てることができます。

    もし、相手が自営業などの場合は、相手の給与を差押えることは難しくなりますが、売掛金債権の差し押さえを行うことができる場合もあります。

    いずれにしても債権を含めた差押え可能な資産があるかどうかを調べておかなければ、強制執行手続きが徒労に終わってしまう可能性がありますので、事前に資産の調査が必要となります。

    なお、既にお伝えした通り、強制執行に服する旨の条項を入れた公正証書や調停調書を作成していない場合は、すぐに強制執行することはできません。まずは調停や裁判をする必要があります。

  4. (4)将来の養育費は差し押さえ可能?

    通常、差押えは、既に発生したが支払われていない分についてのみ行うことができます。しかし、養育費については、特別に将来分についても差押えをすることができます。したがって、一度強制執行手続きをすれば、未払いがあるたびに強制執行手続きをする必要はなく、継続して養育費分を給与から回収することが可能となります。なお、将来分を一括で回収することまでは認められていません。

    もし、相手が転職を繰り返す可能性があったり、自営業の場合は、養育費の取り決めをする時点で、将来にわたる全額を不動産などで受け取るなどの方法を検討したほうが良いこともあります。すでに離婚されていて、養育費が未払いとなっている場合は、行政が運営する養育費相談支援センターや弁護士に相談してみることもおすすめします。

4、まとめ

まとめ

今回は、養育費について説明しました。もし相手が養育費の支払いを怠り、そのことにもっともらしい理由を付けたとしても、あきらめるのはまだ早いです。任意の交渉が無理でも、裁判所を利用すれば、回収できる可能性があります。
もし、あなた自身が養育費の回収に関する手続きを行うことが難しいときや、スムーズに強制執行などの申し立てができない場合は、まずは弁護士に相談してみてください。
無料相談を活用するのもよいでしょう。法律の知識や豊富な経験によって、あなたの正当な要求が叶うよう、全力でサポートしてくれるはずです。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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