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年金分割の見込額を知りたいときの手続きの流れや注意点とは?

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更新日:2024年02月14日  公開日:2021年06月15日
年金分割の見込額を知りたいときの手続きの流れや注意点とは?

離婚をするときには、親権や養育費、財産分与など、とても多くのことを取り決めることになります。年金分割もそのひとつです。

年金分割という言葉からは、「将来もらえる年金額を夫婦で分ける」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかし、実際の制度はもう少し複雑な内容となっています。また、年金分割をすることによって将来どのくらい年金をもらうことができるかどうかも個別事情によりますので、なかなか分かりづらいものです。

本コラムでは、年金分割の見込額を知りたいときの手続きの流れや注意点についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、年金分割とは

年金分割とは具体的にはどのような制度なのでしょうか。以下では、年金分割の基本的知識について説明します。

  1. (1)離婚における年金分割制度とは

    年金分割とは、夫婦が離婚をしたときに、婚姻期間中の厚生年金または共済年金の分割を受けることができる制度のことをいいます。

    公的年金制度は3階建て構造となっています。
    1階部分が国民年金(全ての国民に共通の年金)、2階部分が厚生年金保険(民間サラリーマンが加入)と共済年金(公務員などが加入)、3階部分が厚生年金基金や国民年金基金という構造です。

    この3階建て構造のうち、年金分割の対象となるのは、いわゆる2階部分の厚生年金と共済年金に限られますので、1階部分の国民年金や3階部分の厚生年金基金などは対象外となります。

    参考:離婚時の年金分割について

  2. (2)年金分割と財産分与の関係

    夫婦が離婚をしたときに、お互いが築いた財産を分ける制度として、財産分与というものがあります。
    かつて、年金分割の制度が施行されるまでは、年金についても財産分与の一部として扱われていました。しかし、年金分割制度が施行された現在では、年金分割は財産分与とは別の問題として扱われています。

    参考:離婚時年金分割と財産分与の関係

  3. (3)夫が会社経営者の場合の年金分割は?

    年金分割の対象が厚生年金と共済年金に限られるため、たとえば夫が会社経営者であるような場合には、年金分割の対象にならないと思われている方もいらっしゃいます。
    しかし、結論から言えば、夫が会社経営者であったとしても年金分割が可能な場合があります。それは、会社自体が厚生年金に加入しているような場合です。

    会社経営を個人事業主として行っている場合には、厚生年金に加入することはできませんので、年金分割の対象となるものはありません。他方、会社経営を法人として行っている場合(夫が代表取締役など)には、国民年金だけでなく厚生年金の加入義務もありますので、年金分割が受けられます。

    このように、個人経営か法人経営かによって年金分割ができるケースが異なりますので、夫が「国民年金しか加入していないから分けるものはない」と言っていたとしても、実際にどの年金に加入しているかはご自身で確認したほうがよいでしょう。

    なお、年金分割だけでは、老後の資金としては十分とはいえません。離婚後に必要なお金については、財産分与で確保するようにしましょう。

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2、年金分割制度の利用者推移

年金分割制度のうち離婚分割(合意分割)の制度は、平成19年4月から施行されました。そして、平成20年4月には3号分割もできるようになりました。

離婚分割(合意分割)とは、夫婦が離婚をしたときに、当事者の合意または裁判所の決定によって婚姻期間中の厚生年金保険料納付記録の分割を行うことをいいます。
これに対して、3号分割とは、夫婦が離婚をしたときに、一方の請求のみで、平成20年4月1日以降の3号被保険者期間の厚生年金保険料納付記録の分割を行うことをいいます。

このような年金制度の利用者の推移をまとめたのが次の表です。

● 厚生年金保険における離婚等に伴う年金分割の状況
離婚等に伴う保険料納付記録分割件数の推移

年金分割総数離婚分割3号分割のみ〈参考〉離婚件数
平成20年度13,10513,07233256,515
平成21年度15,00414,850154257,472
平成22年度18,67418,282392250,599
平成23年度18,23117,462769241,370
平成24年度19,36118,2521,109237,242
平成25年度21,51919,6631,856234,341
平成26年度22,46819,9802,488228,435
平成27年度27,14923,4483,701228,879
平成28年度26,68221,9464,736219,351
平成29年度26,06320,4795,584214,069
平成30年度28,79321,8416,952212,871

(参考:以下を参考に作成)
厚生労働省 平成23年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
厚生労働省 平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
厚生労働省 平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

この表からもわかるとおり、離婚件数自体は、徐々に減少しているにもかかわらず、厚生年金保険の年金分割件数は増加傾向にあります。

制度が導入された平成20年度は、離婚分割が1万3,072件、3号分割が33件で合計1万3,105件であったのに対して、平成30年度は、離婚分割が2万1,841件、3号分割が6,952件で合計2万8,793件となっています。

厚生年金保険の年金分割の件数は、わずか10年の間に2倍以上になっていることからも、年金分割制度の利用者が増加していることがわかります

3、実際の年金分割後の年金見込額はどれくらい?

では、実際に年金分割をしたときに将来もらうことができる年金額にはどの程度の影響があるのでしょうか。

  1. (1)将来の年金額を半分にするわけではない

    年金分割は、将来の年金額自体を分割すると誤解している方もいますが、実際には、年金額の算定基礎となる保険料納付記録を分割する制度です。

    つまり、年金分割の割合を50%と合意したときには、婚姻期間中に夫が支払った厚生年金保険料納付記録の半分を妻がもらうことができ、結果として、厚生年金保険料の半分を妻が支払っていたことを前提に年金額が計算されることになるのです。

  2. (2)具体的な見込み額について

    老後に受け取ることができる老齢厚生年金の金額については、加入期間の平均給与額である「平均標準報酬月額」と厚生年金保険の加入月数を基準として計算されますが、実際の計算式は、過去の給与額を現在の物価に引き直したり、生年月日による例外があるなど、非常に複雑です。

    そのため、具体的な見込み額を確認するためには、年金事務所に対して「年金分割のための情報提供請求書」を提出します
    この年金分割のための情報提供請求書を提出することで、年金分割後の見込み額を知ることができるのは、50歳以上の方又は障害年金の受給権者のみです。

    この条件を満たす方が、「年金分割のための情報提供請求書」の提出によって知ることができる年金見込額は、以下の3つです。

    1. ① 年金分割を行わない場合
    2. ② 分割の割合を50%とした場合
    3. ③ 分割の割合を本人の希望する割合とした場合


    また、「年金分割のための情報提供請求書」の所定の欄に分割後の年金見込額を知りたい旨記載する必要がありますので、提出の際は忘れないようにしましょう。

  3. (3)情報通知書を請求するとき必要なものや注意点とは?

    上記のように分割後の年金見込額を知りたいときや年金分割をしようとするときには、「年金分割のための情報通知書」の取得が必要になります。その際に必要となるものや注意点は、以下のとおりです。

    ① 「年金分割のための情報通知書」の取得方法
    「年金分割のための情報通知書」とは、年金分割の対象期間、夫婦それぞれの標準報酬総額、按分割合の範囲などが記載されています。

    「年金分割のための情報通知書」を取得するためには、「年金分割のための情報提供請求書」に必要事項を記入し、最寄りの年金事務所の窓口に提出します。
    「年金分割のための情報通知書」の請求は、夫婦のどちらか一方だけでも請求することができます。

    請求にあたっては、以下の書類が必要になります。

    • 年金分割のための情報提供請求書
    • 請求者の年金手帳または基礎年金番号通知書
    • 戸籍謄本など(婚姻期間を明らかにするための資料)


    ② 請求にあたっての注意点
    年金分割は、離婚をした日の翌日から2年に請求しなければなりません

    「年金分割のための情報通知書」は、請求してから3~4週間程度で日本年金機構から送られてきます。そのため、取得には時間がかかりますので、離婚してから時間がたっているという方は、すぐに手続きをするようにしましょう。

    また、年金分割後の見込み額を知るためには、年金分割のための情報提供書の記入をする際に、その旨を記入する必要がありますので忘れないようにしてください。

4、年金分割だけでは老後の資金としては不十分

年金分割を受けたとしても、具体的な年金額は大きく増額されないことが多く、年金分割を受けただけでは、老後の生活をする資金の確保として十分なものとはいえません。

そのため、年金分割と並行して、財産分与の話合いを行い、財産分与によってしっかりとお互いの財産を分けることによって老後の資金を確保するようにしましょう。

5、まとめ

年金分割は、制度がとても複雑で計算も非常に難しいため、当事者だけでは正確に判断することは困難といえます。また、年金分割のみならず、離婚するときは財産分与など、取り決めておくべき事項がたくさんありますので、弁護士のサポートを受けることが重要です
ベリーベスト法律事務所では、離婚問題についての経験豊富な弁護士が離婚でお悩みの方をサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください

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この記事の監修
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所在地
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設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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