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不倫相手が“同性”だった。不貞行為として離婚や慰謝料請求はできる?

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更新日:2022年09月13日  公開日:2021年05月18日
不倫相手が“同性”だった。不貞行為として離婚や慰謝料請求はできる?

配偶者の不倫が発覚し、さらには相手が同性だった場合、気持ちの整理がつかないのはもちろんのこと、夫婦生活を続けることを困難に感じる方もいらっしゃることと思います。

法律的には、同性不倫の場合は「不貞行為」に該当するかどうかが曖昧なため、離婚や慰謝料請求に関して、異性間の不倫の場合よりも難しい問題が存在します。

しかし、性的マイノリティーに関する理解が深まり、同性カップルの存在が当然視されつつある昨今の状況下で、令和3年2月には東京地裁で、同性間の性的関係について不貞行為にあたるとして損害賠償を認める判決がなされました。
この結果を受け、今後は同性不倫の場合でも、慰謝料請求が認められ、「不貞行為」に当たるとして離婚請求も認められる可能性が高まってきたと言えるでしょう。

本コラムでは、配偶者が同性と不倫していた場合における離婚請求・慰謝料請求について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、同性との不倫を理由とした離婚は認められる?

配偶者が同性と不倫していることが分かった場合、離婚ができるかどうかは、「協議離婚または調停離婚」と「裁判離婚」のどちらを目指すかによって変わります。

  1. (1)夫婦の同意があれば離婚は認められる

    協議離婚・調停離婚は、夫婦の話し合いにより、合意のうえで離婚をする手続きです。
    協議離婚は、任意での夫婦間の話し合いによるもので、調停離婚は裁判所の調停手続きという裁判所における話合いの手続きによって離婚成立を目指すものです。

    双方合意のうえで結婚をすることが自由であるのと同様に、夫婦の同意があれば、どのような理由であっても離婚が認められます。そのため、きっかけが同性との不倫である場合にも、協議離婚または調停離婚の手続きによるのであれば、夫婦の同意のみで問題なく離婚をすることができます。

  2. (2)裁判離婚には「法定離婚事由」が必要

    これに対して、配偶者が離婚を拒否する場合には、訴訟(裁判)を通じて離婚を実現するほかありません。 これを「裁判離婚」といいます。

    裁判離婚が認められるためには、以下のいずれかの「法定離婚事由」が存在することが必要です(民法第770条第1項)。


    • ① 不貞行為
    • ② 悪意の遺棄
    • ③ 3年以上の生死不明
    • ④ 回復の見込みがない強度の精神病
    • ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
  3. (3)同性との不倫は「不貞行為」に当たるか?

    同性との不倫を理由として、裁判を通じて離婚請求をする場合、上記の法定離婚事由のうち「不貞行為」に該当するかどうかが主な論点となります。

    元来、「不貞行為」とは、性行為(具体的には、性器の挿入行為)を指すものと理解するのが一般的であり、そのために不貞行為とは異性間における性的行為を意味するものと解されてきました。
    そのため、同性間での性的行為については、「不貞行為」に当たらないとの考えが有力でした。

    この「同性同士の性的関係が不貞行為に当たるか」という点に関して、冒頭でも紹介した東京地判令和3年2月16日は、男女間の行為に限らず、「婚姻生活の平和を害するような性的行為」も不貞行為に当たると指摘し、同性不倫に及んだ妻・相手女性側の損害賠償責任を認めたと報道されており、これを前提とすれば、同性との不倫も離婚事由である「不貞行為」に該当する可能性があることになります。
    あくまでも地裁におけるひとつの判断ですが、同性同士の不倫を理由とする離婚の争いにおいて、重要な動きであると言えるでしょう。

    もっとも、同性間の不倫(性的行為)が「不貞行為」であると認められなかったとしても、同性間での性的行為が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして離婚が認められたケースはあり、今後もこれに該当するとして離婚が認められる可能性がありますので、「不貞行為」にあたるかだけによって、離婚が認められるかどうかが決まるわけではありません

2、配偶者の不倫相手が同性だった場合の慰謝料請求について

前掲の東京地判令和3年2月16日を前提とすれば、配偶者が同性と不倫をした場合でも、慰謝料請求が認められる可能性があります。

  1. (1)そもそも「慰謝料」とは?

    「慰謝料」とは、不法行為(民法第709条)に基づき、被害者が受けた精神的損害を賠償する目的の金銭をいいます。
    よって、慰謝料請求が認められるためには、以下の不法行為の成立要件を満たす必要があります。


    • ① 加害者の行為
    • ② 加害者の故意または過失
    • ③ 被害者の(精神的)損害
    • ④ 行為と損害の因果関係
  2. (2)同性でも夫婦関係の平穏を乱したといえれば「不法行為」に当たる

    前掲の東京地裁判決は、夫が、妻の不倫相手である女性に対して行った「不法行為に基づく慰謝料請求」について、夫側の主張を認めたものです。
    この判決は、同性との不倫に当たる行為が「婚姻生活の平和を害するような性的行為」であって不貞行為に該当するとして、不法行為に基づく慰謝料請求を認めたと報道されています。

    「婚姻生活の平和を害する」という程度に至っているかどうかは、性的行為の頻度や内容、夫側が関係性をどこまで容認していたかなどの事情を総合的に考慮して判断されることになるでしょう。

    なお、文言として「不貞行為」に該当しないとしても、同性間での性的行為や友人関係を超えた親密な関係が婚姻生活の平穏を害したと評価できる場合には、不法行為と評価され、慰謝料請求が可能になる場合もありますので、「不貞行為」に該当するかがすべてではありません。

3、同性不倫に関する慰謝料請求の流れと注意点

同性同士の不倫のケースでも、基本的には異性間のケースと同様の流れで慰謝料請求を行うことになります。ただし、同性同士の不倫の場合、不貞行為の基準が異性同士の場合と比べて不明確なため、証拠収集に関して難しい部分が生じる可能性があると考えられます。

以下では、配偶者が同性と不倫していた場合における慰謝料請求の手続き・注意点を見てみましょう。

  1. (1)配偶者・不倫相手のどちらにも慰謝料を請求可能

    不倫(不貞行為)は、配偶者と不倫相手の共同不法行為ですので、不倫の慰謝料は、配偶者と不倫相手のどちらに対しても全額を請求できます。たとえば、被害者が受けた精神的損害が200万円相当の場合、配偶者に200万円を請求する、あるいは不倫相手に200万円を請求することもできます。
    ただし、この場合に、配偶者から200万円を得た場合には、不貞相手からさらに200万円取ることはできません。2人合計で200万円ということです。

    そして、配偶者と不倫相手の間について言えば、両者には責任の程度に応じて、慰謝料支払いに関する内部的な負担割合が存在します。そのため、どちらか一方のみが多く負担を負った場合は、もう一方へ負担を超える部分に返還をもう一方へ請求できます。これを求償権といいます。

    たとえば、配偶者に4割、不倫相手に6割の責任があると認められたとします。
    この場合、不倫相手があなたに200万円全額を支払うと、不倫相手は配偶者に対して80万円を求償できるのです。


    被害者 ⇒ 不倫相手に200万円を請求
    不倫相手 ⇒ 被害者の配偶者(恋愛の相手)に対して4割にあたる80万円を求償


    もし被害者が配偶者と離婚をしない場合には、不倫相手からの求償によって、結果的に家計からお金が出て行ってしまう可能性があることに注意しましょう。

  2. (2)慰謝料請求の基本的な手続き

    不倫相手に対する慰謝料請求は、まずは示談交渉から始まります。

    示談交渉は、内容証明郵便等による書面のやり取りや、対面での協議によって行われるのが一般的です。示談交渉では、話し合いの中で不倫相手に不倫の責任を認めさせ、適切妥当な金額の解決金を支払わせることが目標になります。

    しかし、不倫相手が「結婚していたとは知らなかった」などと主張し、不倫の責任を否定する場合があります。このようなケースでは、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起し、不倫の事実や不倫相手の責任を証拠により立証することが必要です。

    一方、配偶者に対する慰謝料請求は、離婚をする場合に離婚慰謝料として請求されるのが一般的です。その場合は、離婚に関する協議・調停・裁判の中で、慰謝料の支払いについても決めることになります。

  3. (3)慰謝料請求には証拠収集が重要

    慰謝料請求が訴訟に発展した場合、被害者は、不貞行為の事実を証拠により立証しなければなりません。

    しかし、前述したように同性同士の不倫の場合、不貞行為のボーダーラインが曖昧であり、また異性とは異なり、数時間ホテルに2人で滞在したことでは性的行為を推認させる力が弱いと考えられるため、友人関係を超えた親密な関係にあることの立証や、性的行為の具体的な内容などの立証をより具体的に求められる可能性が高いと考えられます。
    異性間の不貞行為に比べてハードルは高いですが、まずは証拠を探すところから始めましょう。

4、同性不倫による離婚時に決めておくべきこと

配偶者が同性と不倫したことを理由として離婚をする場合、後に配偶者との間でトラブルが生じないように、離婚条件を漏れなく決めておくことが大切です。

  1. (1)慰謝料以外に決めておくべき離婚条件

    慰謝料以外に、離婚時に定めておくべき離婚条件は以下のとおりです。

    ● 財産分与
    夫婦が婚姻中に獲得した財産を分割することをいいます。
    ● 年金分割
    夫婦が婚姻中に得た、将来の年金受給資格の厚生年金部分を分割することをいいます。
    ● 養育費
    夫婦間に子どもがいる場合は、非同居親から同居親に対して、子どもの養育に必要な費用を支払います。
    ● 親権
    子どもの養育監護・財産管理・子どもを代理しての法律行為などを対応する親権者を定めます。夫婦のどちらか一方のみが親権者となります。
    ● 面会交流の方法
    非同居親が子どもに会うための方法や頻度などを定めます。

  2. (2)金銭の支払いが遅延した場合の対処法

    協議離婚の場合には、上記の離婚条件は、夫婦間で合意が成立次第「離婚協議書」にまとめておきましょう。

    なお、財産分与・慰謝料・養育費などの財産的請求については、離婚合意が成立した後で、相手方が拒否してくる場合もあります。このような場合に備えて、離婚協議書を公正証書にし、その中に「強制執行認諾文言」を含めておくと安心です。


    【強制執行認諾文言】民事執行法 第22条 第5号
    金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述を記載されているもの


    強制執行認諾文言付きの公正証書は「執行証書」と呼ばれ、裁判などの手続きを経ずとも、直接強制執行の手続きに用いることができます。
    離婚協議書の公正証書化については、弁護士にご相談ください。

    参考:離婚協議書について詳しく知りたい方はこちら

5、まとめ

同性同士の不倫を「不貞行為」と認定した東京地裁の判決は画期的であり、性的マイノリティーに関する理解が深まりつつある現代の潮流に沿うものといえるでしょう。

もし配偶者が同性と不倫をしていることが判明し、離婚や慰謝料請求をしたい場合には、証拠を適切に収集することが何よりも大切です。
同性間の不倫の場合、異性間の場合と比較して証拠収集の難易度が高いケースが多いため、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。
離婚事件に関する経験を豊富に有する弁護士が、親身になってサポートします。

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この記事の監修
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所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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