公務員の配偶者との離婚「退職金など財産分与で注意するべきポイント」
離婚をしようと思っても離婚後の生活が不安でなかなか離婚に踏み切れない方もいるでしょう。
そのような場合には、適切な財産分与を求めることによって、そのような不安が解消されるかもしれません。
特に、公務員の配偶者と離婚をする場合には、退職金や共済金など財産分与の対象となる財産が高額になる傾向にあります。したがって、適切な金額をもらうことができるかどうかによって離婚後の生活が大きく変わる可能性があるのです。
今回は、公務員の配偶者と離婚をする場合の財産分与のポイントについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、公務員の場合に財産分与の対象となるもの
公務員の場合の財産分与については、一般的な会社員の夫婦とは異なる特殊性があります。
以下では、公務員の場合の財産分与について説明します。
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(1)財産分与とは
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が互いに協力して維持形成してきた財産を離婚時に清算する制度のことをいいます。夫が公務員、妻が専業主婦という家庭であっても、原則として2分の1の割合で財産分与を求めることができます。
公務員の場合には、一般の家庭よりも収入が高くなることがあるため、財産分与の金額も高額になる傾向があります。
財産分与によって、離婚後の生活が大きく変わる可能性がありますので、離婚の際には、適切な財産分与を求めていくことが重要になります。 -
(2)財産分与の対象になる財産とならない財産
財産分与の対象になる財産のことを「共有財産」といい、財産分与の対象にならない財産のことを「特有財産」といいます。
① 財産分与の対象になる財産
共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して維持・形成してきた財産のことをいいます。
共有財産であるかどうかは、当該財産の名義ではなく、夫婦の協力によって維持・形成してきたかという実質面で判断することになります。公務員の財産分与では、以下の財産が特に重要となります。
● 共済貯金
公務員の場合には、加入している共済組合を利用して貯金をしていることがあります。共済貯金は、給料から天引きされて積み立てられている貯金ですので、当然に財産分与の対象に含まれます。しかし、特殊な貯金ですので、財産分与の際に見落としをしているケースもありますので、忘れずに調査を行いましょう。
● 退職金
すでに支払われていた退職金については、問題なく財産分与の対象に含まれますが、まだ退職金が支給されていない場合には、財産分与の対象に含めるかどうかで争いになることがあります。
しかし、公務員の場合には、民間企業とは異なり、将来ほぼ確実に退職金を受け取ることができるといえますので、退職金が財産分与の対象に含まれることが多いです。
② 財産分与の対象にならない財産
特有財産とは、婚姻前から有する財産や婚姻中であっても夫婦の協力とは関係なく取得した財産のことをいいます。
たとえば、独身時代に貯めた預貯金や、婚姻中であっても親から相続した財産などは特有財産にあたりますので、財産分与の対象にはなりません。 -
(3)財産分与にも時効がある
財産分与は、離婚時に離婚と一緒に請求する場合には、時効が問題になることはありません。
しかし、財産分与について争いがあり離婚に含めて争っていくと、解決まで長期化する可能性があるという場合には、離婚だけ先に成立させることもあります。このような場合には、離婚後の財産分与を求めていくことになるでしょう。その場合、請求や交渉を後回しにしてしまうと、離婚時から2年で時効になります。
時効期間が経過後は、原則として財産分与を求めることができなくなりますので、忘れずに請求するようにしましょう。
2、共済組合などに貯蓄残高を確認する方法
公務員が加入する共済組合には、共済貯金という特別の貯蓄制度があります。共済貯金も財産分与の対象に含まれますので、以下では、共済貯金の概要と残高確認の方法について説明します。
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(1)共済組合の貯金とは
共済貯金とは、公務員が加入する共済組合が運用する貯蓄制度であり、共済組合に加入する公務員のみが利用することができるものです。
一般的な金融機関よりも金利が高めに設定されていますので、一般的な金融機関の定期預金などではなく、共済貯金を利用しているという公務員の方も多くいます。毎月の給料やボーナスから天引きされて積み立てをしていきますので、貯蓄期間が長い場合には、金額も相当高額になっていることがあるでしょう。 -
(2)共済貯金の残高確認の方法
財産分与をする際には、お互いに所有する財産を開示しあって、財産分与の対象となる財産を洗い出すことになります。
共済貯金の場合には、所属する共済組合によって扱いが異なりますが、年2回、積立金の確認のために、貯金残高通知書が送られてくることがあります。そのため、貯金残高通知書の内容を確認することによって、現在の共済貯金の残高を知ることができます。
しかし、相手に知られていないことをいいことに、共済貯金の存在を明らかにせず、開示に応じないケースがあるようです。共済貯金は、金額が高額になっていることもありますので、配偶者が公務員の場合には、必ず共済貯金のことを指摘して、残高通知書の提出を求めるようにしましょう。
また、離婚の話し合いを切り出す前に、共済貯金の残高通知書のコピーをとっておくということも有効な手段になります。
なお、相手が任意の開示に応じない場合には、裁判所の調査嘱託という手続きを利用することによって、直接共済組合から回答をもらうことが可能です。
3、退職金を財産分与の一部としてもらえるケース
配偶者が公務員の場合には、将来の退職金も高額になる傾向にあります。公務員の退職金については、どのような場合に財産分与の対象にすることができるのでしょうか。
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(1)退職金の性質
退職金は、給料の後払い的性質を有していますので、給料が財産分与の対象に含まれるのと同様に、退職金も財産分与の対象に含まれます。
しかし、退職金は、将来会社を退職した場合にもらえるものであり、離婚の時期によっては、退職金の支払いがかなり先になることもあります。退職理由(懲戒解雇など)や会社の経営状態によっては、支払われない可能性もあるなど、支給が不確実な財産であるという性質があります。 -
(2)公務員の退職金の特殊性
上記のように退職金は、支給が不確実な財産であるという性質上、常に財産分与の対象になるわけではありません。退職金がすでに支払われている場合には、問題なく財産分与の対象に含めることができますが、まだ支払われていない場合には、一定の条件を満たす場合に限り財産分与の対象に含めることができます。
未支給の退職金を財産分与の対象に含めるためには、将来退職金を受け取ることができる見込みがあることが必要になります。
具体的には、以下のように要素で判断していくことになります。- ① 退職金規定の有無
- ② 会社の経営状況
- ③ 支給対象者の勤務状況
- ④ 退職金が支払われるまでの期間
民間企業では、将来の会社の経営状態によっては支給が確実とはいえない場合もあることから、定年退職まで10年以上ある場合には、退職金を財産分与対象から除外する傾向にあります。
しかし、公務員の場合には、倒産というリスクは考えられず、勤続していればほぼ確実に退職金が支払われることから、退職まで10年以上あるような場合でも財産分与の対象として認められやすいといえます。
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4、年金分割についての確認も忘れずに
離婚後の生活を考えるにあたっては、財産分与だけでなく年金分割も重要になります。以下では、配偶者が公務員の場合の年金分割について説明します。
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(1)年金分割とは
年金分割制度とは、婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれの年金にすることができる制度のことをいいます。
年金分割によって、厚生年金支給額の計算基礎となる標準報酬記録が分割されますので、標準報酬総額が少ない方は、将来受け取る年金を増やすことができます。 -
(2)公務員の場合の年金分割
従来、公務員は、厚生年金ではなく、共済年金に加入していました。しかし、平成27年10月から年金制度の一元化によって、共済年金は厚生年金に統一されることになりました。
厚生年金に統一されたことによって、共済年金と厚生年金の2種類の加入期間があったとしても、どちらか一方の年金運営機関に年金分割の請求書を提出することによって、すべての加入期間に年金分割を請求したことになります。
年金分割の際に必要となる「年金分割のための情報通知書」についても、いずれか1つの年金運営機関に請求することによって、すべての情報を取得することができます。
5、離婚を切り出す前に、検討すべき4つのこと
離婚の際には、財産分与以外にも決めておかなければならないことがあります。以下では、離婚時に決めておくべき4つのことを説明します。
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(1)離婚後の生活
離婚をした場合には、それまで一緒に生活していた自宅を出て別々に暮らすことになります。離婚にあたって、自宅を出ていく方は、離婚を切り出す前に新たな生活の場所を確保するようにしましょう。
自分の実家が近くにあるという方は、しばらくの間実家にお世話になるというのもひとつの選択肢になります。アパートを借りて住む予定という場合には、すぐに入居できるとは限りませんので早めに動くことが重要です。
また、離婚後の生活場所の確保と並んで重要になるのが、離婚後の収入減の確保です。離婚前の別居中であれば、婚姻費用という生活費を配偶者からもらうことができますが、離婚後は、配偶者の扶養義務がなくなります。したがって、配偶者からの生活費の支払いは期待できません。
現在無職という方は、離婚後の収入確保のために就職先を探す必要があります。 -
(2)親権・養育費
夫婦に子どもがいる場合には、離婚にあたってどちらかを親権者に指定しなければなりません。親権を獲得することができなかった親に対しては、離婚後に定期的な面会交流を認めることによって、親権をめぐる争いがスムーズに解決することもありますので、検討してみるとよいでしょう。
また、監護親は、親権を獲得できなかった非監護親に対して、子どもの養育費を請求することができます。養育費の金額については、お互いの話し合いによって決めることができますが、金額の折り合いがつかないという場合には、裁判所が公表している養育費の算定表を利用することが有効な手段となります。 -
(3)慰謝料
離婚にあたって、有責性のある配偶者に対しては、慰謝料を請求することができる可能性があります。
有責事由としては、配偶者による不貞行為、DVなどが典型的なケースですが、これ以外にも個別具体的な事情によっては、慰謝料の請求が認められることがあります。
慰謝料を請求する場合には、慰謝料の発生の根拠となる事実を裏付ける証拠が必要になります。離婚を切り出してからだと証拠を収集することが困難になることもありますので、事前に収集するようにしましょう。 -
(4)弁護士への相談、依頼
公務員の配偶者との離婚を検討している場合には、早めに弁護士に相談をすることが重要です。
公務員との離婚では、財産分与が重要になるということは、すでに説明したとおりですが、適切な財産分与を実現するためには弁護士の知見を得たほうが進めやすいものです。財産分与で支払ってもらう金額は、どのような財産を対象にして、どのように評価するのかによって、大きく異なってきます。離婚後に不安のない生活を送るためにも、弁護士のサポートを受けながら財産分与の手続きを進めていくことをおすすめします。
また、依頼を受けた弁護士は、相手との交渉から調停、裁判まで離婚に関する一切の手続きを代理人として対応することが可能です。離婚をひとりで進めていくことは精神的に多大な負担が伴うケースは少なくありません。専門家である弁護士に任せることによって安心して離婚を進めていくことができます。
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6、まとめ
公務員との離婚を検討する場合は、一般的な会社員よりも財産分与の対象となりうるものが多いためしっかり確認することが重要です。離婚前の準備、実際にある財産の把握、交渉を適切に行うことができるかどうかによって、離婚後の生活が大きく変化する可能性が高いといえます。
公務員との離婚でお悩みの際は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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