弁護士コラム 離婚・男女問題SOS

貞操権とは? 交際相手が既婚者とは知らなかった場合、慰謝料は請求できる?

  • 不倫
  • 貞操権
  • 不倫
  • 慰謝料
更新日:2023年06月21日  公開日:2018年12月17日
貞操権とは? 交際相手が既婚者とは知らなかった場合、慰謝料は請求できる?

自分としては真剣に付き合っていると思っていたのに、実は交際相手が既婚者だったということもあります。そんなとき、相手の奧さんからすると、あなたが「不倫相手」ということになってしまうので、大変な問題です。
もっとも、交際相手が「独身」と偽っていた場合には、あなたの「貞操権」を侵害したとして慰謝料請求できる可能性があります。とはいえ、相手の奧さんから逆に慰謝料を請求されることもありますので、慎重に対応を検討する必要があります。

1、貞操権が侵害されるケースとは?

交際相手が独身だと思っていたから付き合いを続けていたのに、「実は結婚していて妻がいる」と判明した場合、「貞操権」の侵害を理由として、相手に慰謝料請求できる可能性があります。

貞操権とは、性的な自由に不当な干渉を受けない権利、純潔を侵害されない権利のことです。既婚者なのに相手が「独身」と偽って交際を継続していた場合、相手はあなたの性的な判断の自由を不法に侵害したことになるので、「不法行為」が成立する可能性があります。

貞操権侵害が不法行為となりうるのは、以下のようなケースです。

  • 既婚者なのに、そのことを隠して交際していた
  • 結婚する気持ちがないにもかかわらず、結婚の約束をした
  • 「もうすぐ離婚する」などと言って積極的にだましていた

そこで、交際中に相手がずっと「独身」と言い続けており、それがもっともらしくて、被害者がだまされても仕方がないと言えるような状況であったなら、慰謝料請求できる可能性があります。

2、貞操権を侵害された理由で、慰謝料請求できる?

ただし、相手が「独身」と説明していたからといって、必ずしも慰謝料請求が認められるわけではありません。
以下では、慰謝料を請求できるケースとできないケースを、それぞれみていきましょう。

  1. (1)貞操権侵害で慰謝料請求ができるケースとは

    貞操権侵害を理由に慰謝料を請求するには、以下のようなケースである必要があります。

    ●肉体関係があった
    貞操権侵害となるためには、肉体関係(性的関係、男女関係)があったことが必要です。たとえ交際していても、プラトニックな関係であれば基本的に貞操権侵害にはなりません。
    ただ、肉体関係がなくても、それに近い行為があれば貞操権侵害と認められる可能性があります

    ●男性側の悪質性が著しく強い
    次に、違法な貞操権侵害と言えるには、男性側の悪質性が著しく強いことが必要です。例えば以下のような事情があったら貞操権侵害と認められやすいです。

    • 結婚をほのめかしていた
    • 女性が未成年者であり、判断能力が不十分
    • 男性側から積極的に男女交際を誘った
    • 半ば無理やり性交渉を行った
    • 女性を妊娠させた
  2. (2)慰謝料を請求できないケース

    一方、以下のようなケースでは、貞操権侵害とは言えず、慰謝料請求ができない可能性が高いです。

    • 相手の男性とはプラトニックな関係であった
    • 女性が成人して思慮分別のある年齢である
    • 結婚の話はされたことがない
    • 女性側から積極的にアプローチして交際を始めた
  3. (3)貞操権侵害で慰謝料を請求する方法

    相手から「独身者です」などとだまされて交際を続けていたとき、慰謝料請求をするには、具体的にどのような手順で進めればいいのでしょうか?

    この場合、いきなり相手に「慰謝料を払ってほしい」と切り出すのではなく、先に証拠を集めましょう。例えば相手から婚約指輪をプレゼントされたとか、結婚を前提にした食事会を開いたなど、結婚を前提にした付き合いがあったことを示す証拠が必要です。そうでないと、相手は「始めから既婚と言っていた」などと言い出すことが多いからです。

    証拠を集めたら、相手に対し、慰謝料を支払ってほしいと伝えます。穏便に話し合いによって慰謝料を支払いそうな相手であれば、まずは電話などで言ってみてもかまいません(メールは、相手の妻に見られてトラブルになる可能性があるので、おすすめできません)。
    話し合いで慰謝料を支払ってもらえない場合には、内容証明郵便で「慰謝料請求書」を送りましょう。
    内容証明郵便には、請求する慰謝料の金額と支払期限、支払い方法などを書き入れて、相手に誠意ある対応がみられない場合には損害賠償請求訴訟も検討していることを記しておくと良いでしょう。
    相手男性と話し合い、慰謝料について合意ができたら「示談書」を作成し、合意した内容に従って慰謝料を支払ってもらいます。
    話し合いによっては解決できない場合、慰謝料請求訴訟を起こして損害賠償請求を行い、判決によって相手に慰謝料を支払わせることも視野に入れて検討すべきです。

  4. (4)貞操権侵害の慰謝料の相場

    貞操権侵害で慰謝料請求するとき、具体的にはどのくらいの金額が認められるのでしょうか?慰謝料の金額の相場をみてみましょう。
    慰謝料の金額はケースバイケースですが、貞操権侵害の慰謝料については以下のような要素が金額を左右します。

    ●男性が「独身」とうそをついていた態様
    例えば女性側の親と会ったり食事会を開いたり結婚式の予約をしたりなど、いかにも結婚するらしいと思わせていた場合などには違法性が高くなります。

    ●交際期間(女性をだまし続けていた期間)
    相手をだまし続けていた交際期間が長くなればなるほど違法性が高くなります。

    ●女性側が妊娠した
    だまされた女性が妊娠までしていた場合、精神的苦痛が大きくなるので慰謝料が高額になります。

    貞操権侵害の具体的な慰謝料額は、100万円〜300万円程度までになることが多いです。

婚約破棄や婚約解消のトラブルでお困りの方はご相談ください

3、既婚者と知った後も交際を続けたら、どうなる?

交際当初は相手が独身と思っていても、交際中に既婚者と判明することも多いです。そのようなとき、別れることができずに交際を続けてしまったら、どのようなリスクがあるのでしょうか?

先にも少し触れましたが、既婚者が配偶者以外の異性と性交することは「不貞行為」と評価されます。不貞行為は通常配偶者に対する「不法行為」にあたり、また、不貞行為をさせた既婚者の交際相手も家庭の平穏を壊したとして「不法行為」が成立します。
交際相手の男性が既婚とわかっても別れずに不倫関係を続けていると、相手の妻から慰謝料請求をされてしまう可能性が高くなります。なぜなら、知った時点から「故意」に不倫を行ったことになるからです。
不法行為には「故意」又は「過失」が要件となっています。
交際当初に相手が独身であると考えていたのであれば「故意」がありませんし、婚活パーティーで出会ったなど男性が巧妙に隠していた場合には「過失」も否定できるかもしれません。
しかしながら、相手男性が既婚と知ってしまった後にも肉体関係を続けると、それは明らかに「故意」に基づく不倫になってしまうため、不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされてしまうのです。
以上のようなことから、相手が既婚とわかったら、たとえ辛くてもすぐに別れてリスクを避けることが重要です。

4、貞操権侵害の慰謝料請求で弁護士に依頼するメリット

既婚男性からだまされて、貞操権侵害を理由に慰謝料を請求しようと思っても、ひとりでは不安を感じる方も多いでしょう。そんなときには、離婚や男女問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)貞操権侵害を弁護士に相談するメリット

    的確なアドバイスをもらえる
    貞操権侵害にもとづいて慰謝料請求をするときには、相手側の妻による慰謝料請求に注意が必要です。あなたとしては、貞操権侵害を受けた被害者と思っていても、相手の妻からしたら「単なる不倫相手」にしか見えないことが多いからです。あなたが「私はだまされていた」と主張しても、言い訳としか受け止められないことも多々あります。
    そこで、貞操権侵害で慰謝料請求するときには、専門家による詳細なアドバイスに従って、慎重に進めるべきです。弁護士に相談すると、あなたが不安に感じていることについて回答をもらえますし、もっともリスクが小さく実りの多い方法を提案してくれます。

    慰謝料請求の手続きを任せられる
    弁護士に相談すると、相手男性への慰謝料請求の手続きを任せることができます。そうすれば、面倒な相手とこれ以上関わらなくて済みますし、労力も省けて日常生活に専念できます。

    精神的に楽になる
    男女関係がもつれてトラブルになると、非常に大きなストレスの種になります。特にひとりで抱え込んでいると、そのストレスは尋常なものではなく、夜も眠れなくなる方が多いです。
    弁護士に慰謝料請求や相手の妻への対応についてすべて任せてしまえば「専門家が味方になってくれている」という安心感が強く、精神的に非常に楽になるものです。

  2. (2)弁護士費用の相場

    貞操権侵害にもとづく慰謝料請求の弁護士費用の相場は、以下のようになっています。

    ●法律相談料の相場
    30分5000円 ただし初回相談無料の事務所も多いです。

    ●着手金の相場
    交渉の場合、10万円程度~
    訴訟の場合、30万円程度~

    ●報酬金の相場
    得られた慰謝料額の10~20%程度

5、まとめ

未婚と信じていたのに、実は交際相手が既婚とわかったら、大きなショックを受けてしまうでしょう。しかも、交際相手の妻から「夫婦関係を壊した」などと言われて慰謝料請求をされるリスクもあるので要注意です。
このような最悪の結果を避けるには、弁護士に相談し、対応を依頼することが重要です。
ベリーベスト法律事務所には、貞操権侵害を始めとして、種々の男女問題を扱う弁護士が在籍しておりますので、お悩みの際にはお早めにご相談ください。

婚約破棄や婚約解消のトラブルでお困りの方はご相談ください

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

同じカテゴリのコラム(不倫)

PAGE TOP