既婚者と交際した場合の法的リスクとは!?

あなたが既婚者と交際しているのなら、それは「彼女のいる彼氏」と付き合っているのとは全く別の問題です。
結婚している相手との交際は不倫であり、もし肉体関係を持ってしまうと、法律用語で不貞行為というものにあたります。そして、交際相手の配偶者から慰謝料請求を受けるリスクがあります。
本コラムでは、既婚者と交際をした場合の法的リスクについて弁護士が解説していきます。
目次
- 1、意外と知らない、結婚している夫婦が担っている法的な義務とは?
- (1)夫婦の貞操義務
- (2)夫婦の同居、協力、扶助の義務
① 同居義務
② 協力・扶助の義務 - (3)婚姻費用分担の義務
- (4)同氏(名字)の義務
- 2、既婚者との交際が交際相手の配偶者にバレたら、慰謝料請求を受けるリスクがあります
- 3、不貞行為の証拠とは?
- (1)不貞行為の証拠となるもの
① 写真や動画
② LINE(ライン)やメールの履歴
③ ホテルや旅行の領収書
④ 探偵や興信所の調査結果
⑤ 不貞を認める念書など - (2)不貞行為の証拠とならないもの
- (1)不貞行為の証拠となるもの
- 4、不倫の慰謝料請求を受けるまでの流れや相場
- 5、不倫の慰謝料請求をされたら弁護士に相談を
- 6、まとめ
1、意外と知らない、結婚している夫婦が担っている法的な義務とは?
結婚は、未婚のカップルの交際とは異なって、法律上のさまざまな権利や義務を伴う法律関係が生じています。
まずは、既婚者にはどんな義務や権利が発生しているのか、独身男女の交際とどう違うのかを見ていきましょう。
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(1)夫婦の貞操義務
貞操義務とは、夫婦が互いに性的純潔を保つ義務、つまり、既婚者となった後は配偶者以外の人と性的交渉を持たない義務のことです。
この貞操義務に反して不貞行為をすると、民法で定められた離婚原因となります。なお、貞操義務違反者は自分の配偶者に対して慰謝料を支払う義務が生じます。 -
(2)夫婦の同居、協力、扶助の義務
① 同居義務
夫婦には、同居し、互いに協力し、扶助しなければならないという義務があります。(ただし、同居については、本人の自由意思が尊重される側面もあります)
② 協力・扶助の義務
扶助義務とは、自分の生活を保持するのと同程度の生活を保持させる義務と考えられています(生活保持義務といいます)。いわば、ひとつのパンを夫婦で均等に分ける義務であり、配偶者同士はお互いを養い合う義務があるということです。 -
(3)婚姻費用分担の義務
この生活保持義務を具体的な権利関係として言い換えたもののひとつが、婚姻費用分担義務です。収入の少ない側が多い方に生活費を請求できる権利で、子どもがいれば、子の生活費も含まれます。主に、夫婦が別居した際に問題となりますが、同居しているままでも、夫が突然生活費を入れなくなった場合などに、収入の少ない妻が婚姻費用の支払いを求めるケースなどもあります。
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(4)同氏(名字)の義務
日本では、外国人との婚姻などの例外的なケースを除いて、夫婦は同じ名字を名乗る義務があります。夫婦同氏(ふうふどうし)の原則といいます。
同氏であればよいので、夫ではなく妻の名字に合わせることも可能です。
現在、法律で夫婦別姓を全く認めない国は日本だけだと言われており、反対を唱える運動もありますが、現行法では、夫婦同姓が夫婦の義務のひとつと規定されています。
2、既婚者との交際が交際相手の配偶者にバレたら、慰謝料請求を受けるリスクがあります
既婚者と不貞行為をしてしまうと、交際相手の配偶者から慰謝料の請求を受けるリスクがあります。
では、不貞行為とはどのような行為なのか、デートやキスは慰謝料請求の対象になるのか説明していきます。
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(1)不貞行為とは
不貞行為とは、どの程度の関係を指すのでしょうか。
この点について、最高裁判所は、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいうと示しています。
なお、「自由な意思に基づいて」という文言は、意思に反する性交渉、たとえば強姦された場合などは除くということです。 -
(2)どんなケースで慰謝料請求を受けるか
不貞行為に該当するのは、基本的には肉体関係がある場合です。
既婚者である夫が知らない女性と親しくデートしたり、ましてやキスをしていれば妻が腹を立てるのは当然ですが、法律上の不貞行為は性交渉の有無で判断されることが多いと言えます。
たとえば、食事やデート、キス、抱き合うなどではいずれも不貞行為にあたらず、慰謝料請求ができないケースが多いと言えます。ただし、多数回のキスをしたり、裸で抱き合うなどの行為がある場合には、不貞行為、つまり、肉体関係があった場合に慰謝料の請求を受けるということです。
3、不貞行為の証拠とは?
既婚者との不貞行為を原因として慰謝料を請求するには、証拠が大きな意味を持ちます。それでは、不貞の証拠とはどのようなものを指すのでしょうか。
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(1)不貞行為の証拠となるもの
① 写真や動画
最近は、スマートフォンなどで簡単に自分の写真撮影ができるようになり、性交渉の場面を撮影した写真や動画がスマートフォンに残っている場合があります。
こうしたデータで本人であることが特定できれば、決定的な証拠となります。
なお、完全に性交渉の場面が写っていなくても一緒にラブホテルにいるとか、一緒に旅行している写真などは、不貞行為があったことを推認させる有力な証拠となる場合があります。
② LINE(ライン)やメールの履歴
既婚者と交際相手との連絡はLINE(ライン)やメールが用いられることが多く、妻に浮気がばれるきかっけも、LINE(ライン)の履歴を見られたからというケースがよくあります。
LINE(ライン)やメールで性交渉に関する会話がある場合は重要な証拠になりますし、そうでなくても、頻繁に会う約束をしている場合や親密度の高いやりとりがあれば、やはり不貞行為をにおわせる証拠となります。
③ ホテルや旅行の領収書
ビジネスホテルならともかく、ラブホテルとなると性交渉の目的で利用したことが強く推認されます。旅行も、宿泊を伴う場合は、不貞の可能性を示す証拠のひとつになります。
④ 探偵や興信所の調査結果
いわゆる興信所や探偵に浮気調査を依頼した報告書を証拠とすることもよくあります。探偵によって違いはありますが、既婚者と女性が待ち合わせている場所から浮気の現場、自宅へと尾行して、自宅の住所、表札まで記録に収めて証拠とする場合もありますし、GPS機能で追跡してホテルの利用を確認することもあります。
⑤ 不貞を認める念書など
既婚者男性が、妻に不貞がばれて問い詰められた際に、「確かに〇〇さんと交際して浮気をしました、もうしません」といった内容の書面を作成してしまうことがあります。こうした書面は、よほど特殊な状況(たとえば反社会勢力の団体に脅されている状況とか、自分の意思でほぼ行動できない場合)でもない限り、その内容は真実だと解されますので、不貞の証拠となり得ます。 -
(2)不貞行為の証拠とならないもの
既婚男性と女性が食事をしている写真や、レストランの領収書などは、交際を裏付けるとしても、不貞を推認させるとまではいえません。そのため、これらの写真や領収書だけでは不貞行為の証拠として十分とはいえません。
もっとも、あまりにも頻度が高いとか、そのころから帰宅が遅くなったり、外泊が増えるようになったなどの別事情とあいまって、不貞を示唆する証拠の一部となる可能性はあるでしょう。
そのほか、女性から既婚者である男性へのプレゼントなども、妻からすれば腹立たしいものでしょうが、それだけでは不貞を認定する証拠にはなりません。もっとも、レストランの領収書と同じように、親しい交際関係にあることを示すことには違いありませんから、それ以外の状況証拠とあわせて立証のひとつの材料にすることは考えられます。
4、不倫の慰謝料請求を受けるまでの流れや相場
慰謝料を請求される場合、それはどのような方法で請求され、慰謝料の金額としてはどれくらいが相場なのか見ていきます。
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(1)不倫の慰謝料請求の流れ
不倫の慰謝料請求は、相手男性の妻から突然の電話やメールがくる場合、内容証明郵便などで慰謝料請求書が届く場合、そして、調停や裁判にいきなり呼び出される場合と、ケース・バイ・ケースです。
最初から弁護士が代理人として連絡してくる場合もあれば、途中から弁護士が入ってくる場合もあります。いずれにしても、放置していると不利になることが多く、なんらかの対応は必要です。 -
(2)慰謝料金額の相場
不倫慰謝料の金額相場は、50~500万円程度とされていますが、300万円を超えることは実際にはめったにありません。
実際の慰謝料金額は、さらに以下のような事情をもとに決定されます。 -
(3)慰謝料額のポイント
不貞に至る経緯や事情は人それぞれですが、一般に、以下のような事情が慰謝料の金額に影響します。
- 不倫が既婚者との配偶者との夫婦関係に与えた影響
- 不倫の程度、頻度
- 不倫期間の長さ
- 婚姻期間の長さ
- 既婚者と配偶者との間の子どもの有無
- 既婚者や不倫相手の経済状況、職業や社会的地位
- 不倫女性の妊娠の有無、出産の有無
- 既婚者の配偶者に不倫が発覚してからも関係を続けたか
- 既婚者との交際に至った経緯
つまり、婚姻期間が長く、夫婦の信頼関係も築かれており、夫婦間に子どももいる状況で夫が浮気をすると、妻の衝撃はより大きいと考えられ、慰謝料の金額が高くなる傾向にあります。
また、不貞期間が長く、多数回の性交渉を行っており、さらに不貞相手との間に子どもまで生まれてしまったような展開ともなれば、妻の心痛は尋常ではないだろうと思われ、慰謝料の金額が高くなる傾向にあります。
妻の心痛の度合いがどれくらいで、それを慰めるための金額はいくら程度が妥当と考えるかが、慰謝料の金額に反映されるという仕組みなのです。 -
(4)不倫が原因で交際相手の夫婦が離婚に至る場合の慰謝料の相場
慰謝料相場は、不貞によって婚姻関係がどのような影響を受けたかによって、おおまかな相場が形成されています。
もっとも相場が重くなるのは、既婚者との不貞によって夫婦関係が完全に破たんし、修復できずに離婚してしまった場合です。この場合の慰謝料相場は、一般的に200万円から300万円程度です。 -
(5)交際相手が離婚しない場合の慰謝料の相場
不貞によって離婚までは至らなかった場合の慰謝料相場はやや低くなります。
離婚しなくても夫婦仲に亀裂が入り、別居してしまった場合の相場は、一般的に100万円から200万円程度です。
別居もせず、なんとか夫婦関係を修復した場合の慰謝料相場は50万から100万程度とされています。
これらの相場と、(3)で列挙したようなさまざまな事情を考慮して、最終的に金額を決定することになります。
5、不倫の慰謝料請求をされたら弁護士に相談を
不倫によって交際相手の妻から慰謝料を請求されたら、早期に弁護士に相談することをおすすめします。ここでは、弁護士に相談するメリットや弁護士が行うことについて解説していきます。
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(1)弁護士に依頼するメリット
不貞の慰謝料請求に慌てた状態で対応すると、うっかりこちらに不利な発言をしたり、相手に有利な証拠を与えてしまったりする場合もあります。
また、不貞相手の妻とやりとりすることは、精神的なストレスも非常に大きく、日常生活にも影響が出るほど疲れ切ってしまうことも珍しくありません。
早期に弁護士へ依頼することによって、相手方との交渉をスムーズに進めていけるというメリットがありますが、それだけでなく自分のストレスを大幅に軽減できることも弁護士に依頼して得られる大きなメリットと言えます。 -
(2)慰謝料請求された場合に弁護士が行うこと
弁護士は依頼を受けた場合、まずは既婚者との不貞交際に走ったきっかけから慰謝料請求に至るまでの事情を丁寧にうかがいます。
そのストーリーの中では、必ずあなたに有利な事情もあるはずですから、それらを中心に相手との交渉を行い、できるだけあなたの事情に沿った主張を行っていきます。
また、慰謝料の金額が決まれば、今後一切これ以上の請求をしないという内容の示談書を残すことが重要です。
こうした書類も弁護士が不足のない内容できちんと作ってくれますから安心です。
6、まとめ
このように、既婚者との交際はさまざまなリスクをはらんでおり、何よりも不貞行為をすると不法行為として交際相手の妻に対して賠償責任が生じてきます。軽い気持ちで付き合い始めたら、ある日突然、多額の慰謝料を請求する内容証明郵便が届くことになるかもしれません。
不倫関係は他人に相談することが難しい問題です。ベリーベスト法律事務所は、不貞慰謝料請求をされた場合のご相談と解決実績が多数あります。
初回相談60分間無料で、親身になってお悩みをうかがいますので、既婚者との交際で慰謝料請求をされた方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
-
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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