「お金が原因の離婚」散財や浪費は理由になる?

配偶者が生活費を渡してくれない、ギャンブルで浪費をしているなどお金の問題で離婚を考えている方も少なくないでしょう。
お互いの話し合いで離婚をできればよいですが、相手が離婚に同意してくれない場合には、そもそもお金のトラブルを理由に離婚をすることはできるのでしょうか。また、離婚をするにあたってどのような準備をしておけばよいのでしょうか。
今回は、お金が原因での離婚の方法と離婚時の注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、「お金」が原因で離婚する夫婦は多い? 司法統計で見る離婚の原因
世の中の夫婦はどのような原因で離婚をしているのでしょうか。
裁判所が公表している司法統計のうち「令和2年度 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所(第19表)」によると、裁判所に申立てのあった婚姻関係事件のうち、離婚原因として多いものとしては、以下のようになります。
- ① 性格が合わない(9240件)
- ② 精神的に虐待する(3159件)
- ③ 異性関係(2132件)
- ④ 家族親族と折り合いが悪い(1964件)
- ⑤ 浪費する(1883件)
- ⑥ 性的不調和(1749件)
- ⑦ 暴力を振るう(1454件)
- ⑧ 同居に応じない(1359件)
- ⑨ 家族を捨てて省みない(764件)
- ⑩ 生活費を渡さない(686件)
- ⑪ 病気(571件)
- ⑫ 酒を飲みすぎる(381件)
- ① 性格が合わない(1万6304件)
- ② 生活費を渡さない(1万3235件)
- ③ 精神的に虐待する(1万948件)
- ④ 暴力を振るう(8576件)
- ⑤ 異性関係(6505件)
- ⑥ 浪費する(4020件)
- ⑦ 家庭を捨てて省みない(3013件)
- ⑧ 性的不調和(2808件)
- ⑨ 家族親族と折り合いが悪い(2647件)
- ⑩ 酒を飲みすぎる(2618件)
- ⑪ 同居に応じない(722件)
- ⑫ 病気(660件)
お金に関する離婚原因だけを見ると、男性側では「浪費をする」が5番目に多い離婚原因であり、「生活費を渡さない」が10番目に多い離婚原因となっています。また、女性側では、「生活費を渡さない」が2番目に多い離婚原因であり、「浪費する」が6番目に多い離婚原因となっています。
お金に関する離婚原因は、男性側でも女性側でも多い離婚原因のひとつになりますが、主に女性側がお金の問題に悩んでいることがわかります。
2、金銭トラブルを理由に離婚することは可能?
それでは、浪費などの金銭トラブルを理由に、離婚をすることはできるのでしょうか。
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(1)協議離婚や調停離婚であれば離婚は可能
離婚の方法には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。
離婚をする場合には、まずは夫婦の話し合いによって離婚の合意を目指す協議離婚を進めていくことになりますが、協議離婚の場合には、夫婦が離婚に合意をしていればどのような理由であっても離婚をすることができます。浪費などのお金のトラブルであってもお互いが離婚に納得しているのであれば離婚は可能です。
夫婦の話し合いで解決することができない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。離婚調停も話し合いの手続きであるため、調停において離婚の合意が成立すれば、どのような理由であっても離婚をすることが可能です。
これに対して、裁判離婚の場合には、以下のような民法所定の法定離婚事由が存在していなければ離婚をすることができません。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 配偶者が強度の精神障害になり、回復見込みがないこと
- 婚姻を継続しがたい重大な事由
そのため、裁判離婚になった場合には、浪費などのお金のトラブルが上記の法定離婚事由に該当するかどうかがポイントとなります。
-
(2)お金のトラブルは法定離婚事由に該当するのか
では、夫婦間のお金のトラブルは、民法所定の法定離婚事由に該当するのでしょうか。以下では、法定離婚事由に該当すると認められる可能性があるものと、認められない可能性が高いものについて紹介します。
① 法定離婚事由に該当する可能性がある「お金」のトラブル
法定離婚事由に該当する可能性があるお金のトラブルとしては、以下のものが挙げられます。- 生活費を渡されない 夫婦には、互いに協力して扶助する義務があります(民法752条)。正当な理由なく、協力扶助義務を放棄した場合には、法定離婚事由である「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
- ギャンブルによる散財、浪費 ギャンブルをすること自体は、法定離婚事由には該当しません。しかし、ギャンブルにのめり込むあまり、家計に深刻なダメージを与えていたり、借金を繰り返していたりするような場合には、夫婦の協力扶助義務に違反する結果、「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
- 異常なまでに金銭管理をする 配偶者が異常なまでに厳しく金銭管理を行い、自由に使うお金がないという場合にも、「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。「お金を渡しているからいいだろう」と反論されるかもしれませんが、夫婦の協力扶助義務としては、相手も自分と同等の生活をすることができる内容のものでなければなりません。
夫が主たる家計の担い手であるにもかかわらず、妻に対して十分な生活費を渡さないという場合には、夫婦の協力扶助義務を果たしたとはいえませんので、法定離婚事由に該当する可能性があります。
また、ギャンブルによる散財・浪費によって、夫婦関係が修復困難な程度まで破綻していると認められる場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性もあります。
また、異常なまでの金銭管理は、モラハラに該当する可能性もありますので、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚を主張できる可能性もあります。
② 法定離婚事由とは認められない可能性が高い「お金」のトラブル
夫婦間にお金のトラブルがあったとしても、それが単なる金銭感覚のズレであった場合には、法定離婚事由とは認められない可能性が高いです。
単なる金銭感覚のズレといえるケースとしては、以下のものが挙げられます。
- 妻が自炊して節約をしているにもかかわらず、夫は外食をしてばかりいる
- 趣味にお金をかけている
- 後輩へのおごり癖がある
3、お金が原因で離婚したいときに準備しておくべきこと
お金が原因で離婚をする場合には、以下のような準備が必要になります。
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(1)証拠を準備する
お互いの話し合いによって離婚をすることができればよいですが、相手が離婚を拒否している場合には、離婚調停、離婚裁判といった法的手続きが必要になってきます。
離婚裁判をすることになれば、法定離婚事由に該当する事情があることを証拠によって立証することができなければ、裁判官に離婚を認めてもらうことができません。そのため、離婚手続きを有利に進めるためにも、事前に証拠を収集することが重要となります。
浪費などのお金のトラブルを原因として離婚をする場合には、以下のような証拠を準備するとよいでしょう。- 生活費が振り込まれていないことがわかる預貯金通帳
- 浪費がわかるクレジットカード明細、キャッシング明細
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(2)離婚後の生活の準備をする
お金のトラブルで離婚する場合には、自身で自由になるお金がないということも考えられます。離婚後は、新たな住居の初期費用、引っ越し費用、家具家電の購入費用などの出費が予想されますので、あらかじめ離婚後の生活に必要となる支出を計算し、ご自身の収入の範囲内で生活することができるかどうかをシミュレーションしてみるとよいでしょう。
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(3)弁護士に相談をする
お金のトラブルを原因として離婚をすることができるかどうかは、そのトラブルが法定離婚事由に該当するかどうかがポイントとなります。その判断には、法的評価を伴いますので、まずは弁護士に相談をしてみましょう。
ご自身のケースが法定離婚事由に該当するかどうかによって、今後の離婚の進め方が変わってきます。離婚にあたっての注意点や請求できるお金についても弁護士からアドバイスを受けることができますので、離婚を考えた場合には、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。
4、財産分与や慰謝料請求はどうなる? 離婚するときに考えるべきお金のこと
お金のトラブルが原因で離婚をする場合には、財産分与や慰謝料はどのようになるのでしょうか。
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(1)財産分与や慰謝料の請求は可能だがハードルが高い
財産分与は、離婚理由に関係なく、請求することができますので、お金のトラブルが原因で離婚をする場合であっても、財産分与を求めることが可能です。しかし、浪費などお金のトラブルが原因で離婚をする場合には、離婚時(別居時)において、夫婦の共有財産がほとんどないということも考えられますので、その場合には、財産分与できる財産がないという事態はあり得ます。
また、相手に浪費などがありそれが離婚原因になった場合には、慰謝料を請求することができますが、相手に慰謝料を支払うだけの資力がなければ、実際に支払ってもらうことは難しいといえます。
このようにお金が原因での離婚の場合には、離婚時のお金の取り決めについてはハードルが高くなることが予想されます。 -
(2)子どもがいる場合には養育費の請求も可能
夫婦に子どもがいる場合には、離婚時にどちらか一方を親権者に指定することになります。
親権者に指定された監護親は、非監護親に対して養育費を請求することができますので、離婚時には養育費の金額や支払い方法などを話し合う必要があります。
このほかにも、年金分割や面会交流などについても取り決める必要がありますので、一人では不安だという場合には、弁護士のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。 -
(3)相手が将来破産した場合はどうなるのか?
お金のトラブルで離婚をした場合には、婚姻期間中に借金を抱えた相手が離婚後に自己破産を選択することもあります。
相手が自己破産をした場合には、離婚時に慰謝料や財産分与の取り決めをしたとしても、支払われないまま免責されてしまいますので注意が必要です。自己破産のおそれがあるという場合には、分割での支払いではなく、できる限り一括での支払いを求めるようにしましょう。
なお、養育費については、自己破産をしたとしても免責されることはありませんので、ご安心ください。
5、まとめ
浪費などのお金のトラブルが原因で離婚を考える夫婦も多くいます。お金のトラブルは、裁判離婚できる場合とできない場合がありますので、ご自身のケースがどちらにあたるかをしっかりと見極めた上で離婚を進めていくことが大切です。そのためには、専門家である弁護士のサポートが不可欠といえるでしょう。
お金のトラブルでの離婚をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
-
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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