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二重取りになるのはなぜ? 不貞行為の慰謝料を双方に請求できるのか

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更新日:2024年02月28日  公開日:2023年02月20日
二重取りになるのはなぜ? 不貞行為の慰謝料を双方に請求できるのか

配偶者が不倫をしていることを知った場合には、配偶者だけでなくその不倫相手に対しても、不貞行為による慰謝料請求を行うことができます。

しかし、双方に慰謝料請求をすることができるとはいっても、慰謝料の二重取りとなってしまい、慰謝料請求が認められない場合もあるため、注意が必要です。

本コラムでは、配偶者と不倫相手の双方に不貞行為の慰謝料を請求する場合の注意点や、慰謝料の二重取りについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、不貞行為をした配偶者や不貞相手に慰謝料請求できる根拠

不貞行為(不倫)をした配偶者や不貞相手に対しては、どのような根拠で慰謝料請求をすることができるのでしょうか。まずは、不貞行為をした相手に対して行える慰謝料請求について、基本的な事項について説明します。

  1. (1)不貞行為とは

    不貞行為とは、配偶者以外の第三者と自由な意思に基づいて肉体関係(性交渉)を持つことをいいます。

    法的には、不貞行為とは、肉体関係を持つことをいいますので、キスやデートだけでは不貞行為にはあたりません。

    一般の方は、「不倫」という言葉を使われることも多いですが、「不倫」という場合には、必ずしも肉体関係を伴わないことも多く、「不貞」と「不倫」とは別のものとご理解いただくのが良いでしょう。

  2. (2)慰謝料請求の法的根拠

    不貞行為の慰謝料請求は、民法709条の不法行為を法的根拠として請求します。不法行為に基づく慰謝料請求を行うためには、故意または過失に基づいて他人の権利または法律上保護される利益を侵害したといえることが必要になります。

    婚姻している夫婦は、お互いに配偶者以外の人と性交渉をしないという貞操義務を負っていますし、夫婦は平穏に婚姻生活を送るという利益を有しています。不貞行為は、この義務に反するものであり、被害者である配偶者が婚姻生活を平穏に送る利益を侵害することから慰謝料請求が認められるのです。

    次に、故意・過失が問題となります。夫婦の片方については、自身が既婚者であることを知らないことは通常あり得ませんから、故意が認められます。一方で、不貞相手は、既婚者であることを知らない場合や、知らなかったことが客観的な事情に照らして無理もないと判断される場合があります。この場合には、故意・過失がないと判断され、慰謝料請求が認められない可能性があります

    不貞相手に慰謝料請求をする場合に、不貞相手が「既婚者であったことを知らなかった」と言い訳をすることがあるかもしれません。これは、不法行為の要件である「故意または過失」を否定しているということです。

2、慰謝料の二重取りに該当して請求できないケース

前述の通り、不貞行為に基づく慰謝料請求は、不貞行為をした有責配偶者とその不貞相手に対して行えます。ただし、請求内容によっては、二重取りに該当して請求が認められない場合があることに注意が必要です

  1. (1)慰謝料請求が配偶者と不貞相手に請求できる理由

    不貞行為は、配偶者と不貞相手の2人がいなければ行えない不法行為であり、2人で共同で被害者に対して損害を与えるものです。となります。そのため、配偶者と不貞相手は、共同で不法行為をした不真正連帯債務者という関係になります。
    そのため、有責配偶者と不貞相手の2人は、共同で行った不法行為によって生じた損害について連帯して慰謝料全額を支払う義務を負います。したがって、慰謝料を請求する方は、どちらに対しても慰謝料の全額を支払うように請求することができます。

  2. (2)慰謝料の二重取りと考えられてしまうケース

    配偶者と不貞相手の双方に全額の慰謝料請求をすることができるといっても、慰謝料の二重取りができるわけではありません。

    たとえば、あなたが被害を受けた不貞行為による慰謝料の適切な金額が200万円であるとした場合、配偶者と不貞相手の双方に対して、200万円を請求することもできます。しかし、その請求はどちらも認められるということではなく、どちらか一方から200万円の支払いを受けた場合には、適切な金額を超えてさらに受け取ることはできません(二重取りはできません)ので、他方への請求は認められないということになります。

    もちろん、200万円の範囲内であれば、配偶者から100万円、不貞相手から100万円などそれぞれからいくら受け取るかは自由です。双方からのトータルで200万円を超えて受け取ることはできないという意味です。

    なお、不貞行為による慰謝料金の相場は、夫婦の婚姻期間、子どもの有無、不貞行為の回数・期間などによって異なります。その中でも離婚をするかどうかが金額を左右する大きな考慮要素となります。離婚をしない場合には、数十万円から100万円程度、離婚をする場合には100万円から200万円程度が相場と言えます。

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3、二重取りにあたらず、それぞれから慰謝料を受け取れるケース

以下のようなケースでは、二重取りにはあたらず配偶者と不貞相手の双方から慰謝料を受け取ることができます。

  1. (1)当事者間の合意によって支払いをしたケース

    慰謝料の金額の相場というものは、あくまでも裁判になった場合に認められるであろう金額を想定したものになります。そのため、当事者間の交渉によって慰謝料の金額を決める場合には、相場をベースとして慰謝料額を定めてもよいですし、相場を超える金額を定めることもできます

    したがって、裁判になれば慰謝料額が200万円と判断される見通しである事案であったとしても、有責配偶者と不貞相手の2人が合意するのであれば、双方から200万円ずつ合計400万円の支払いを受けることも可能です。

  2. (2)配偶者の支払った慰謝料が不貞行為の慰謝料以外も含まれる場合

    不法行為をした配偶者と離婚をする場合には、有責配偶者に対して離婚慰謝料を請求できます。離婚理由が不貞行為だけでなく、暴力やモラハラなど他の事情もある場合、離婚の際の慰謝料には、不貞行為によるものだけでなく、暴力やモラハラといった他の事情も考慮されて含まれていると言えます

    たとえば、配偶者が不貞をしたが、それ以前から暴力やモラハラもあったため離婚をしたという事案において、離婚慰謝料として200万円が支払われたとします。不貞行為単体で見ても、適切な慰謝料額が200万円だとしても、配偶者から支払われた200万円が不貞行為による慰謝料だけではありませんから、不貞行為による慰謝料として適切な200万円全額が支払われたわけではないと言えるのです。したがって、不貞相手に対して慰謝料請求を行うことができ、その請求は認められる可能性があります。

  3. (3)不貞相手が複数いる場合

    配偶者に不貞相手が複数いるという場合には、それぞれの不貞相手に対して、不貞行為の慰謝料の請求が行えます。この場合には、別々の不法行為が成立しますので、それぞれの不貞相手に慰謝料請求することができます

    ただし、不貞相手が複数いた場合に精神的なショックは増大するかもしれませんが、それによって生じる離婚という結果については不貞相手の人数によって変わるものではないとも言えます。そのため、相当な額が200万円であるとしても、単純に3人だからそれぞれ200万円で総額600万円となると言うことではありませんので注意が必要です。

4、離婚に伴う慰謝料請求を検討するときは弁護士に相談を!

離婚に伴う慰謝料請求をお考えの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)適切な慰謝料の相場を知ることができる

    不貞慰謝料の金額は、夫婦の婚姻期間、子どもの有無、不貞行為の回数・期間、夫婦生活への影響などの事情から決まります。したがって、事案によってその金額はケース・バイ・ケースです。

    適切な慰謝料相場を知らずに、相場よりも低い金額で示談をしてしまうと本来もらえるはずの慰謝料をもらえない、などの不利益を被ることがあります。また、相場を大きく超える金額で請求すると相手に支払いを拒否されてしまい交渉が長期化するリスクもあります。

    そのため、このようなリスクを回避するためには、慰謝料額の相場を知ることが大切です。弁護士にご相談すると、ご自身の場合の慰謝料額の見通しについて確認することができますし、証拠や請求方法に関するアドバイスも受けることができます。まずは、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  2. (2)相手との交渉を任せることができる

    不貞行為をした配偶者やその不貞相手に対して、慰謝料請求をする場合には、不貞行為という行為の性質から相手に対する怒りや嫌悪感などが出てしまい、どうしても感情的になってしまう方が多いです。感情的になってしまうと、スムーズな話し合いは難しく、金額などの条件について合意できない可能性も高くなってしまいます。また、感情を抑えきれず、外部に公表するなどあなた自身が不法行為をしてしまえば、あなたが請求できる金額が相殺されてしまう可能性もあります。

    弁護士に依頼をすれば、相手との交渉をすべて任せることができます。あなた自身で交渉をするストレスから解放されるだけでなく、スムーズな話し合いが期待できるでしょう。弁護士であれば、慰謝料の相場を意識した上で交渉を進めることができますので、より法的に適切な金額で示談をすることができる可能性が高くなります。

  3. (3)有利な条件で離婚をすることができるようにサポートできる

    配偶者による不貞行為が判明した場合には、離婚を選択する夫婦も少なくないでしょう。その際には、慰謝料だけではなく、養育費、婚姻費用、財産分与などを決めなければなりません。離婚後の経済的な不安を和らげるためには、少しでも有利な条件で離婚をすることが重要です。

    このような離婚条件を適切に定めるためには、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。不貞相手に対する慰謝料請求だけでなく離婚についてもサポートすることができますので、離婚を検討されている方も弁護士にご相談ください。

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5、まとめ

配偶者による不貞行為(不倫)が判明した場合には、不貞配偶者とその不貞相手の双方に対して不貞慰謝料の請求をすることができます。

どちらに対しても満額の慰謝料を請求することができますが、二重取りに該当すると、配偶者と不貞相手の双方から満額の慰謝料を受け取れない点に注意が必要です。

慰謝料請求は相場を理解したうえで請求することが大切ですので、慰謝料請求をお考えの方は、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

不倫慰謝料について知見・経験豊富な弁護士が、ベストな結果が得られるように尽力いたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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