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成人年齢の引き下げにより、養育費の支払い義務は18歳までになる?

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更新日:2023年03月20日  公開日:2023年03月20日
成人年齢の引き下げにより、養育費の支払い義務は18歳までになる?

令和4年4月1日に施行された改正民法によって、法律上の成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。

養育費の取り決めをする場合、「子どもが成人するまで」といった期限を設けることも多いです。そのため、「法律上の成人年齢が引き下げられたことに伴い、養育費をもらうことができる年齢が変わるのか?」と心配されている方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、成人年齢引き下げと養育費の関係について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、成人年齢引き下げにより、養育費の支払期間はどうなる?

まず、養育費の支払期間に関する考え方の基本や、成人年齢の引き下げが養育費の引き下げに与える影響について解説します。

  1. (1)そもそも養育費は何歳まで支払われるのか?

    養育費の支払期限をいつまでにするかは、法律によって明確に定められているわけではありません。

    養育費は、未成熟子に対する扶養義務の履行として支払われるものです。
    「未成熟子」とは、経済的・社会的に自立していない子どものことをいいます。そのため、未成年であったとしても就職して自立している場合には、未成熟子にはあたりません。
    逆に、年齢は成人であったとしても、学生など親の扶養を必要とする場合には未成熟子にあたることになります。

    養育費の支払期限については、「子どもが成人するまで」と取り決めをすることも多いですが、子どもの年齢のみならず自立の程度に応じて取決めを行います。
    これまで多かったのは「成人まで」、「20歳まで」「22歳まで(大学を卒業する年齢まで)」です。

  2. (2)成人年齢の引き下げで、養育費は18歳までしか支払われない?

    令和4年4月1日施行の改正民法により、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
    「成人年齢の引き下げにより、養育費の支払い終期も18歳までになるのではないか?」と心配されている親権者の方も多いでしょう。

    しかし、法律上の「未成年者」と養育費の支払いが必要となる「未成熟子」は同一ではありません。したがって、成人年齢が引き下げられたからといって、養育費の支払い終期が必ず18歳になるわけではないのです。
    養育費の支払い終期については、これまでと同様に、子どもの個別事情に応じて決められることになります。

2、養育費の支払いを「子どもが成人するまで」と取り決めていた場合

すでに離婚して養育費の支払いを取り決めているケースで、養育費の支払い終期に関して「子どもが成人するまで」と取り決めている場合は、成人年齢の引き下げによって養育費の支払い終期が20歳から18歳に変更されるのかどうかが問題となります。
「成人」「成年者」と「成熟子」は同一ではないとしても、取り決めにおいては「成人」という言葉を使用しているからです。

法務省の見解としては「養育費の取り決めをした時点では成人年齢が20歳であったことから、民法改正によって成人年齢が引き下げられたとしても、これまでどおり20歳まで養育費の支払い義務を負う」としています。
したがって、民法改正前に養育費の支払い終期を「子どもが成人するまで」と取り決めていたとしても、成人年齢の引き下げによる影響はないと考えられます。

ただし、民法改正後に養育費の支払い終期を「子どもが成人するまで」と定めた場合には、支払い終期は20歳ではなく18歳となる点に注意してください。

3、これから養育費の取り決めを行うときの注意点

では、これから養育費の取り決めを行うという方は、どのような点に注意すべきなのでしょうか。解説していきます。

  1. (1)取り決めるべき事項を明確に定める

    養育費の内容をめぐって、後日にトラブルが生じないようにするためにも、取り決めるべき事項は、明確に定めておくことが大切です。

    ① 1か月あたりの金額
    養育費は1か月ごとの支払いが原則となるため、「月額いくらを養育費の金額とするのか」を決める必要があります。

    養育費の月額については、裁判所が公表している養育費算定表を利用しましょう。
    養育費算定表を利用することによって、当事者の収入と子どもの年齢・人数に応じた養育費の相場がわかるため、スムーズな取り決めが可能となります。

    なお、ベリーベスト法律事務所では、養育費の相場を簡単に算出できる「養育費計算ツール」をご用意しております。登録不要・無料でご使用いただけますので、ぜひご活用ください。

    ② 支払期間
    養育費の支払いは、夫婦が離婚をした時点から支払いが始まります。
    一方で、「いつまで支払うか」という期限については、夫婦の話し合いで決めることになります。子どもの状況や進学希望の有無などをふまえながら、適切な終期となるように話し合いを進めていきましょう。
    養育費は子が未成熟であって経済的に自立していない場合に支払われるものであるため、子が青年に達したとしても、経済的に未成熟である場合には、養育費を支払う義務を負うことになります。そのため、成人年齢が18歳になったからといって、支払期間を18歳に達するまでとすべきということではありません。両親の学歴から、大学に行くことが当然視されるのであれば、大学卒業をするであろう「22歳に達した後の3月まで」と定めることも多いです。後々紛争にならないためにも、「成人に達するまで」といった曖昧な表現とはせず、「18歳になるまで」など明確に定めることをおすすめします。

    ③ 支払い方法
    養育費の支払い方法は、指定された口座への振り込みによって行うのが一般的です。
    取り決めの際には、銀行名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義を明示しましょう。

    ④ 支払い時期
    養育費の支払いを毎月いつまでに行うのか、具体的な日付についても取り決めておいてください。

  2. (2)公正証書を作成する

    養育費の取り決めをした場合には、口頭で合意を締結するのではなく、書面を作成してその内容を記録に残しておくことが大切です。

    書面を作成する場合には、公正証書の形式で残しておくことをおすすめします。
    一般的な合意書では、相手が養育費の支払いを怠った場合に、裁判を起こして判決を得てからでなければ、強制執行の手続きをすることができません。しかし、公正証書を作成し、その内容に強制執行認諾文言を入れておくと、不払いとなった時に、裁判をせずとも、相手の財産を差し押さえて未払いの養育費を強制的に回収することが可能になります。
    万が一の場合に面倒な裁判手続きをスキップできるという点でも、公正証書にしておくメリットは大きいです。

    また、公正証書にしておくことによって、相手に対して「養育費を支払わなければ財産を差し押さえられるかもしれない」というプレシャーを与えることができます。
    そのため、養育費の未払いが発生するという事態を回避できる可能性が高くなります。

4、成人年齢引き下げにあわせて押さえておきたい養育費のポイント

成人年齢の引き下げ以外にも押さえておくべき、養育費に関するポイントを解説します。

  1. (1)養育費の増額や期間の延長をしたい

    養育費の取り決めをした後に、お互いの経済状況や家庭環境に変化が生じることがあります。また、「受験のために塾に通いたい」「大学に進学したい」などの希望がある場合には、毎月の養育費だけでは足りないという状況になる可能性もあるでしょう。

    養育費の取り決めをした当時には予測することができない事情が生じたことによって、養育費の金額を変更しなければ著しく公平を害するという場合には、養育費の増額や期間延長が認められることがあります。
    まずは、当事者同士で話し合って、養育費の増額や期間延長を決めていきましょう。
    もし当事者同士の話し合いでは結論が出ないという場合には、家庭裁判所に養育費増額調停の申し立てをすることができます。

  2. (2)成人年齢引き下げを理由に、相手の支払いが止まった

    民法改正前に「成人に達するまで」として取決めをしていた場合、民法改正による成人年齢の引き下げによって、本来は20歳まで支払わなければならないにもかかわらず、子どもが18歳になった時点で養育費の支払いがストップするという方もいらっしゃることでしょう。

    前述したように、成年年齢引き下げによって養育費の支払い終期が変わることはありません。養育費の支払いが一方的に止まってしまった場合には、相手に対して法務省の見解を伝えたうえで、本来の支払い終期まで養育費の支払いを求めていくようにしましょう。
    それでも支払いがないという場合には、強制執行に向けた手続きを進めていく必要があります。

  3. (3)養育費の請求には時効が存在する

    養育費の支払いが止まった状態で放置していると、時効によって養育費を請求する権利が消滅します。

    養育費の時効期間は、5年です(民法第166条第1項第1号)。これは、当事者間で裁判外で合意した場合も、調停、審判、裁判によって定まった場合も同様です。
    ただし、調停や審判、裁判においては、その時点での未払い分についても支払うことが合意されたり、判断されたりします。その未払い分については、時効は10年です(民法第169条)。

    時効が成立する前であれば、時効の更新や完成猶予といった手段によって権利の消滅を防ぐことができます。未払いの養育費があるという場合には、早めに対応する必要があるため、まずは弁護士に相談してください。

5、まとめ

令和4年4月1日施行の改正民法により、成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。しかし、成人年齢が引き下げられたからといって、養育費の支払い終期が必ず18歳になるわけではありません。

成人年齢の引き下げを理由に、養育費の支払いを拒否されている、養育費の支払い終期の取り決めでもめているなど、養育費にまつわるお悩みを抱えている場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、離婚時のサポートはもちろんのこと、離婚後に養育費の見直しを行いというケースや、未払い養育費の回収サポートも行っております。

離婚・養育費問題は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご連絡ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
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  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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