「別居期間が1年」が理由で離婚できる? 早期離婚に必要なこととは
夫婦の関係が悪化すると離婚を前提に別居を始めることがあります。別居後、お互いが離婚に合意できれば離婚は成立しますが、合意できない場合には、最終的に裁判所が離婚の可否を判断します。その際に考慮されるのが、夫婦の別居した期間の長さです。
では、夫婦が別居した期間が1年の場合には、離婚可能なのでしょうか。これから離婚をお考えの方にとっては、どのくらいの期間で離婚できるのかは気になるところでしょう。
今回は、別居期間1年で離婚できるのか、早期離婚に必要なことなどについて、ベリーベスト法律事務所に所属する弁護士が解説します。
1、「別居期間1年」が理由で離婚できる?
1年別居したという理由で、離婚は可能なのでしょうか。
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(1)選択する離婚手続きによって離婚の可否が変わる
離婚手続きには、「協議離婚」、「調停離婚」、「裁判離婚」の3種類があります。「別居の期間が1年」で離婚できるかどうかは、どのような離婚手続きを選択するかによって結論が異なってきます。選択した離婚手続きによっては、1年別居しただけでは、離婚が難しい可能性がありますので注意が必要です。
① 協議離婚
協議離婚は、夫婦の話し合いによって離婚を目指す方法です。協議離婚では、夫婦が離婚に合意できれば離婚が成立しますので、別居期間がどれだけあったかは問題となりません。
そのため、離婚の合意ができるのであれば、別居が1年であっても離婚をすることができます。② 調停離婚
調停離婚は、家庭裁判所の調停手続きによって離婚を目指す方法です。家庭裁判所の手続きとはいっても、協議離婚と同様に話し合いによって離婚を目指す手続きになります。
そのため、調停でも離婚の合意に至れば、1年の別居でも離婚をすることができます。③ 裁判離婚
裁判離婚は、家庭裁判所の裁判官に離婚の可否を判断してもらう手続きです。裁判離婚をするためには、以下の法定離婚事由が存在することが必要となります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
夫婦の別居期間の長短は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」の判断要素のひとつです。別居期間が長期間に及べば、裁判所が、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が存在すると認め、離婚を認めますが、通常、別居した期間が1年でそのほかに破綻を基礎づける事情がない場合には、離婚を認めてもらうのは困難といえます。したがって、早期の離婚を実現するためには、協議離婚か調停離婚を目指していきます。
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(2)自分が有責配偶者だと、別居が1年では離婚は難しい
有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させ、離婚原因となった配偶者のことです。典型的な例としては、不倫をした配偶者やDVをした配偶者などが挙げられます。自ら婚姻関係を破綻させたにもかかわらず、相手に対して離婚を請求するのは信義に反する行為ですので、原則として有責配偶者から離婚をしたいと請求することはできません。
ただし、以下のような条件を満たす場合には例外的に離婚が認められることもあります。- 別居期間が長期間に及ぶ
- 夫婦に成熟していない子どもがいない
- 離婚によって配偶者が過酷な状況におかれない
有責配偶者からの離婚請求に必要となる別居期間は、7~10年程度は必要と言えます。別居期間1年で、その他に離婚理由がない場合には、裁判所から裁判離婚を認めてもらえる可能性はほぼないと言わざるを得ません。
したがって、自分が有責配偶者である場合には、協議離婚や調停離婚を目指していくことになります。
2、裁判では別居何年で離婚が可能?
離婚裁判になった場合には、何年別居すればよいのでしょうか。
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(1)裁判では別居期間だけで判断されるわけではない
すでに説明したとおり、裁判で離婚をするためには、民法が規定する5つの法定離婚事由のいずれかが必要になります。そして、法定離婚事由のひとつである「その他婚姻を継続し難い重大な事由」の有無については、別居期間以外にも以下のようなさまざまな要素を踏まえて判断します。
- 夫婦の婚姻継続の意思
- 子どもの有無
- 婚姻中の夫婦の関係
- 婚姻期間
- 性生活の有無
このように、裁判で離婚できるかどうかは、さまざまな事情を踏まえて判断しますので、別居期間が○年あれば確実に離婚ができるというわけではありません。
たとえば、妻が病気がちな夫をないがしろにしていたなどの事情があったケースでは、別居期間が1年半であっても、離婚が認められました(大阪高裁平成21年5月26日判決)。他方、婚姻期間が30年あり、離婚に関する十分な話し合いが行われていないとされたケースでは、別居期間1年で離婚が認められませんでした(東京地裁平成17年3月14日判決)。 -
(2)別居期間以外の要因によって離婚できる期間が変わってくる
別居期間の長短は、裁判所が離婚を判断する際のひとつの要素になりますが、他の要素の有無によって、離婚に必要となる別居期間の長さが異なってきます。
以下では、離婚するまでが長引くケースと短くなるケースについて説明します。① 離婚するまでが長引くケース
- 離婚理由が単なる性格の不一致
- 相手が離婚に応じてくれない
- 有責配偶者からの離婚請求
- 婚姻期間が長い
- 離婚に関する十分な話し合いが行われていない
② 離婚するまでが短くなるケース
- 婚姻期間が短い
- 相手が離婚に同意している
- 夫婦関係が修復する余地がないほど悪化している
3、早期離婚を目指してやるべきこととは
早期に離婚することを希望する方は、以下のような対策を検討しましょう。
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(1)別居前に行うべき対策
まだ別居をしていないという方は、別居前に以下のような対策を行うとよいでしょう。
① 配偶者の有責性を基礎づける証拠収集
配偶者に不貞がある、配偶者が暴力を振るうなど、民法が規定する法定離婚事由がある場合には、裁判離婚が認められる見通しとなりますので、早期に離婚が成立する可能性があります。不貞や暴力など法定離婚事由が存在することは、証拠によって立証していかなければなりません。
たとえば、配偶者が不倫をしている疑いがある場合には、不倫相手とホテルに入る写真・動画、不倫相手とのメッセージのやり取りなどが証拠になります。また、配偶者から暴力を受けている場合には、暴力を振るわれる状況を撮影した動画・写真・録音データ、怪我の写真、医師の診断書などが証拠になります。
離婚の話し合いを有利に進めるためには、このような証拠が必要になりますので、別居の前に十分な証拠を集めましょう。
② 財産分与のための調査
婚姻期間の長い夫婦の場合には、夫婦の共有財産も多く築いており、財産分与の金額も高額になる傾向があります。財産分与で適正な金額をもらうためには、お互いの財産を把握することが重要です。
別居後では、相手の財産を調査するのが難しくなってしまいますので、離婚を決めた場合には、まずは、相手がどのような財産を持っているのかを調べてみるとよいでしょう。
③ 弁護士に相談
別居前に弁護士に相談するというのも早期離婚をするための有効な方法となります。
離婚する際には、離婚の可否だけではなく、慰謝料、財産分与、親権、養育費などさまざまな事項を決める必要があります。あらかじめ弁護士に相談をしておけば、ご自身のケースでどのような取り決めが必要になるのか、どのように話し合いを進めていけばよいのかをアドバイスしてもらうことができます。それによって、スムーズな話し合いが可能となり、より早期に離婚を成立させることが可能です。
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(2)別居後に行うべき対策
配偶者と別居をした後は、離婚に向けて本格的に手続きを進めていきます。早期離婚を希望される方は、弁護士に依頼をすることがおすすめです。
離婚をする場合には、まずは、配偶者との話し合いによって離婚を目指すことになります。しかし、別居をしている状態では、話し合いの機会を持つのも難しく、離婚に向けた話し合いがなかなか進展しないことがあります。また、当事者同士の話し合いでは感情的になってしまうことも話し合いが進まない原因です。
弁護士に依頼をすれば、代理人として夫婦の話し合いに参加してもらうことができますので、スムーズに離婚手続きを進めることが可能です。話し合いで解決できない問題であっても、弁護士なら離婚調停や離婚裁判などの法的手続きによって解決することができます。
ひとりで悩んでいても離婚問題を解決することは難しいため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
4、離婚前の別居でやってはいけないこととは?
離婚前に別居をする場合には、以下の点に注意が必要です。
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(1)まだ別居をしていない方の注意点
まだ別居をしていない方は、以下の点に注意して別居の手続きを進めていきましょう。
① 配偶者に無断で別居をしない
夫婦には、法律上同居義務が定められています。正当な理由なく同居に応じず、生活費も負担しない場合には、「悪意の遺棄」と判断され、離婚原因をつくった有責配偶者と認定されてしまうリスクがあります。
そのため、配偶者と別居をする際には、可能であれば、あらかじめ配偶者と話し合いを行い、同意を得た上で別居をする方が良いと言えます。ただし、配偶者からDVを受けているようなケースでは、別居の同意をもらうことは困難だといえますので、まずは自分の身を守るため同意なく別居しましょう。また、DVがないとしても、具体的な事案によって同意を取ることが困難であることはあります。ご不安であれば、早期に弁護士に相談したうえで、別居を進めましょう。
② 家庭内別居や単身赴任では別居と認められない
夫婦関係が悪化した場合には、家庭内別居という方法をとる方もいます。しかし、家庭内別居では、外見上は同居という形式をとっていますので、別居期間がいつからスタートしたのかが、不明確な状態です。別居期間は、裁判での離婚の可否を判断する重要な要素となりますが、これは家庭内別居の期間は含めないのが一般的です。離婚を目指すのであれば、家庭内別居ではなく正式な別居という形をとる必要があります。
また、単身赴任によって別居をしているケースもありますが、単身赴任による別居は仕事を理由とする別居ですので、離婚を前提とした別居とは区別されます。単身赴任中に離婚を前提とした別居をスタートさせる場合には、メールや手紙などを送り、離婚を前提とした別居をスタートさせたことを明確にしておくようにしましょう。
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(2)すでに別居している方の注意点
すでに別居をしている方は、以下の点に注意が必要です。
①異性と恋愛関係にならない
配偶者と別居をしていたとしても離婚するまでは夫婦ですので、配偶者以外の異性との間で性的関係を持ってしまうと不貞行為に該当します。
不貞行為をしてしまうと、有責配偶者にあたり自ら離婚を請求することができなくなってしまいます。また、配偶者からは、不貞行為を理由とする慰謝料を請求されるリスクも生じます。
そのため、異性と恋愛関係になるのは、配偶者と離婚するまでは控えるのが賢明です。
② 生活費の請求を忘れない
別居中であっても夫婦であることには変わりありませんので、収入の少ない方が多い方に対して、婚姻費用という生活費を請求することができます。
単なる性格の不一致による離婚だと裁判で離婚が認められるまでに数年の別居期間が必要になりますので、長期間の別居に備えて、しっかりと生活費を請求していくようにしましょう。
5、まとめ
別居期間1年で離婚ができるかどうかは、どのような離婚手続きを選択するかによって異なってきます。裁判離婚では、別居期間1年では離婚が可能と判断される可能性は低いですが、それ以外の方法であれば別居期間1年でも十分に離婚は可能です。
ベリーベスト法律事務所には、離婚問題に関する経験や実績の豊富な弁護士を中心とする離婚専門チームがあります。別居期間が短い事案についても適切に離婚まで導くことが可能ですので、まずは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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