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妊娠中の婚約破棄は慰謝料請求できる? 養育費の請求についても解説

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更新日:2024年03月05日  公開日:2024年03月05日
妊娠中の婚約破棄は慰謝料請求できる? 養育費の請求についても解説

妊娠中に婚約破棄をされてしまうと精神的苦痛も大きく、相手に対して責任を追及したいと考える方も多いでしょう。

婚約破棄をされたものの、婚約破棄に正当な理由がなかった場合には、相手に対して慰謝料などの損害賠償請求ができる可能性があります。また、子どもが生まれた場合、相手に対して子どもの養育費を請求できる可能性が生じます。

本コラムでは、妊娠中の婚約破棄における慰謝料や養育費の請求について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、婚約破棄で慰謝料請求するためのポイント

婚約破棄を理由として慰謝料請求をするためには、以下のポイントを押さえておきましょう。

  1. (1)婚約が成立していること

    婚約とは、男性と女性が将来の婚姻を約束することです。
    婚姻は、市区町村役場に婚姻届を提出することにより成立しますが、婚約にはそのような手続きはありません。あくまで男女の合意により成立するというのが婚約の特徴です。

    そのため、婚約破棄で慰謝料請求をする場合、前提として婚約が成立していたかどうかが問題になるケースがありますが、一般的には以下のような事情を総合考慮して婚約の成否を判断します。


    • 婚約指輪や結婚指輪の購入
    • 両親への結婚のあいさつ
    • 結婚式場の下見や予約
    • 新婚旅行の予約
    • 友人や職場への結婚の報告
    • 新婚生活に向けた引っ越しや家具家電の購入
    など
  2. (2)婚約破棄に正当な理由がないこと

    婚約破棄とは、当事者の一方の申し出により婚約を取りやめることです。
    よく似た言葉として「婚約解消」がありますが、婚約解消は、お互いの合意により婚約を取りやめることいいます。したがって、婚約破棄と婚約解消はお互いの合意の有無という点において違いがあります。

    婚約破棄をされたとしてもすべてのケースで慰謝料請求ができるわけではありません。慰謝料請求ができるのは、正当な理由のない婚約破棄をされたケースです。
    正当な理由のない婚約破棄としては、以下のものが挙げられます。


    • 単に結婚したくなくなったという理由での婚約破棄
    • 不貞行為をした婚約者からの婚約破棄
    • 他に好きな人ができたという理由での婚約破棄
    • 親に結婚を反対されたという理由での婚約破棄
    • 性格が合わないという理由での婚約破棄


    なお、婚約破棄による慰謝料請求にあたっては、どちらが婚約破棄を言い出したかではなく、婚約破棄に正当な理由があるかどうかがポイントになります。そのため、慰謝料を請求する側が婚約破棄を申し出たとしても、相手の不貞行為などが婚約破棄の理由であれば、相手に対して慰謝料請求が可能です。

2、妊娠中の婚約破棄。相手に対して責任を追及できる?

では、妊娠中に婚約破棄をされた場合、相手に対してどのような責任を追及することができるのでしょうか。

  1. (1)婚約破棄による精神的苦痛に対する慰謝料

    正当な理由のない婚約破棄をされた場合には、それにより生じた精神的苦痛に対する慰謝料請求をすることができます。慰謝料相場は、ケース・バイ・ケースになりますが、慰謝料の金額は、以下のような要素を考慮して判断することになります。


    • 婚約破棄に至った経緯
    • 婚約破棄の理由
    • 婚前交渉の有無(妊娠、堕胎、出産の有無)
    • 交際期間の長短
    • 職場の退職の有無
    など


    妊娠中の婚約破棄であれば、女性側が被る精神的苦痛が大きくなりますので、一般的なケースに比べて慰謝料が増額される可能性があります

  2. (2)中絶費用

    妊娠中の婚約破棄において、婚約破棄をされたのが妊娠22週未満であれば、人工妊娠中絶手術をすることも可能です。婚約破棄による状況の変化など、さまざまな事情から中絶手術を検討する場合もあるかもしれません。

    その際の中絶費用については、当事者が折半で負担するのが基本になりますが、不当な婚約破棄により中絶を余儀なくされたという場合には、相手に中絶費用全額の負担を求めることができる可能性があります。
    なお、中絶による精神的苦痛は、婚約破棄の慰謝料で評価される事情になりますので、婚約破棄の慰謝料と別に中絶の慰謝料を請求するのは難しいでしょう。

  3. (3)婚約破棄により生じた経済的損害

    不当な婚約破棄があった場合には、慰謝料以外にも以下のような経済的損害が発生します。


    • 結婚式場のキャンセル費用
    • 新婚旅行のキャンセル費用
    • 婚約指輪の購入代金
    • 同居のために契約した物件の初期費用
    • 同居のために購入した家具家電などの購入費用
    • 退職に伴う収入減少


    このような経済的損害についても不当な婚約破棄をした相手に対して請求することができます。

  4. (4)子どもに対する養育費

    婚約破棄をされたとしても、子どもを出産した場合には、子どもの父親である相手に対して、養育費の請求をすることができます。
    ただし、未婚の状態で出産すると子どもと婚約者の男性との間には、法的な親子関係は発生しませんので、そのままだと養育費を請求する権利がありません。そのため、後述するような「認知」の手続きが必要になります。

    子どもへの認知がなされれば、子どもと父親との間に法的な親子関係が発生しますので、相手に対して、養育費を請求することが可能です。養育費の金額は、双方の収入に応じて話し合いで決めていくことになりますが、話し合いで決められないときは、家庭裁判所の調停または審判を利用し、双方の収入を基礎に決定されることになります。

3、養育費を請求するために必要な「認知」とは

上述のとおり、養育費を請求するためには、婚約者から「認知」を受ける必要があります。

  1. (1)認知とは

    認知とは、婚姻していな男女間に生まれた子どもと父親との間に、法律上の親子関係を発生させる制度をいいます。母親は、出産という事実により当然に子どもとの間に親子関係が発生しますので、認知は主に父親が子どもに対して行うものになります。

    認知により法律上の親子関係が生じれば、父親には子どもに対する扶養義務が発生しますので、養育費を請求することが可能となります。

  2. (2)認知を受ける方法

    子どもの認知をしてもらう方法には、以下の方法があります。


    ① 胎児認知
    認知は、子どもが生まれるまえの胎児の段階でも行うことができます。このような認知を「胎児認知」といいます。

    胎児認知をするためには、母親の同意が必要で、認知をする父親が市区町村役場に認知届を提出して行います。胎児の段階で認知をすれば、出生日から子どもと父親との間で親子関係が生じます。
    なお、父親が認知に応じてくれなかったとしても、胎児の時期には、後述するような強制認知(認知の訴え)を行うことができません。

    ② 認知届による任意認知
    子どもが生まれた後であれば、母親の同意なく、認知をする父親が市区町村役場に認知届を提出することで認知を行うことができます。認知届の提出時期にかかわらず、認知の効力は子どもの出生時にさかのぼって生じます。

    ③ 認知調停
    相手が任意認知に応じてくれない場合には、家庭裁判所に認知調停の申し立てを行います。認知の訴えにあたっては調停前置主義が採用されていますので、必ず認知調停を申し立てる必要があります。

    認知調停での話し合いの結果、認知の合意が形成された場合には、合意に相当する審判により認知の効力が生じます(審判認知)。

    ④ 認知の訴え
    認知調停で合意に至らなかった場合は、裁判所に認知の訴えを提起します。認知の訴えでは、生殖上の父子関係を明らかにするためにDNA鑑定が行われ、その結果に基づき、裁判所が親子関係の有無について判断を行います。

4、妊娠中の婚約破棄で慰謝料請求する場合に、弁護士に相談するメリット

妊娠中に婚約破棄をされて、相手に対する慰謝料請求などを検討している場合には、弁護士に相談することをおすすめします

  1. (1)不当な婚約破棄であるかどうかを判断してもらえる

    婚約破棄を理由として、慰謝料請求をするためには、婚約破棄に正当な理由があるか、ということがポイントになります。また、その前提として、婚約が成立していることも重要です。

    これらのポイントを判断するにあたっては、法的知識や経験が必要になりますので、一般の方では正確に判断することが難しいといえます。弁護士であれば、相手に対する責任追及の前提である、婚約破棄の不当性や婚約の成否について判断することができますので、まずは弁護士にご相談ください。

  2. (2)代理人として交渉してもらえる

    不当な婚約破棄であった場合には、相手に対して慰謝料などを請求していくことになります。しかし、妊娠中の婚約破棄は肉体的にも精神的にも非常につらい状況ですので、自分だけで相手と交渉を行うことが困難といえるでしょう。

    そのような場合でも、弁護士に依頼をすることで、弁護士は本人に代わって相手との交渉を行うことができますので、交渉による負担は大幅に軽減されるでしょう。また、弁護士が代理人として交渉をすることで、有利な条件で示談できる可能性も高くなります。

  3. (3)子どもの認知の手続きも任せることができる

    子どもを出産する場合には、子どもの認知や養育費の請求に関する手続きなども発生します。相手が誠実に対応してくれればよいですが、不当な婚約破棄の事案では、認知や養育費の支払いを相手が拒否することも少なくありません。

    このような場合には、強制認知の手続きにより子どもとの間に法的親子関係を発生させたうえで、養育費の請求を行うことになりますが、弁護士に依頼すれば、これらの複雑な手続きについても任せることができます。

5、まとめ

妊娠中に婚約破棄された場合、婚約破棄の原因が不当な理由であれば慰謝料請求をすることが可能ですまた、子どもを出産する予定である場合には、養育費の請求や認知請求の手続きを進めなければなりません

このような手続きを自分だけで進めることに少しでも不安がある場合には、まずは弁護士に相談するようにしましょう。婚約破棄を理由とする慰謝料請求をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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