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マリッジブルーで婚約破棄│慰謝料や損害賠償請求はどうなる?

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更新日:2024年01月16日  公開日:2024年01月16日
マリッジブルーで婚約破棄│慰謝料や損害賠償請求はどうなる?

婚約が成立し、結婚という人生の大きな節目が近づいてくると、不安や焦りから「本当にこの人と結婚してもよいのだろうか」などマリッジブルーに陥ることがあります。マリッジブルーを乗り越えて結婚できればよいですが、そのまま婚約破棄になってしまうケースもあるようです。

このようにマリッジブルーを理由に婚約破棄に至った場合には、婚約破棄をした相手に対して慰謝料などの損害賠償請求をすることができるのでしょうか。

今回は、マリッジブルーによる婚約破棄と損害賠償請求について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、マリッジブルーと原因

マリッジブルーとは、どのようなものなのでしょうか。また、マリッジブルーになる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

  1. (1)マリッジブルーとは

    マリッジブルーとは、主に結婚を控えた方が結婚後の生活について不安や焦りを感じ、気分が落ち込んでしまう症状をいいます。
    マリッジブルーは、男性と女性のどちらにも生じる可能性がある症状です。一般的には、女性の方が環境の変化が大きいためマリッジブルーになりやすいといわれています。

    マリッジブルーの症状は人それぞれですが、代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。

    • 気分が落ち込む、不安になる
    • イライラする
    • 食欲がない
    • 不眠になる
  2. (2)マリッジブルーになる原因

    マリッジブルーになる原因としては、以下のことが考えられます。

    ① 新婚生活への不安
    結婚することにより、仕事を辞めたり、名字が変わったり、引っ越しをするなど生活に大きな変化が生じます。
    これまで実家で生活、またはひとり暮らしが長い人は、初めて家族以外の人と生活することになりますので、慣れない新婚生活に不安を感じて、結婚すること自体に消極的になってしまいます。

    ② 結婚相手この人でよかったのかという不安
    結婚相手とは、今後長い間一緒に生活を共にしていくことになります。婚約当初は、この人以外に相応しい人はいないと思っていても、結婚式が近づくにつれて、「本当にこの人と結婚しても大丈夫?」など結婚相手に対して不安や不満を感じることがあります。このような不安や不満が積み重なるとマリッジブルーにつながります。

    ③ 結婚式の準備のストレスやすれ違い
    結婚式の準備は、たくさんの作業がありますので、パートナーと一緒に協力して進めていく方が多いでしょう。しかし、相手があまり協力的でないようなケースでは、ひとりで大変な作業をすべて行わなければならず、大きなストレスとなります。
    結婚式の準備でのストレスやすれ違いが続くと、結婚後も家事や育児に協力してくれないのではないかという不安からマリッジブルーに陥ります。

2、婚約破棄には正当な理由が必要

それでは、マリッジブルーを理由に婚約破棄をすることは可能なのでしょうか?

正当な理由がなければ婚約破棄により法的責任が生じる可能性があります。婚約破棄の理由として考えられるケースを見てみましょう。

  1. (1)性格の不一致

    マリッジブルーに多いのが、性格の不一致や婚約前の嘘が発覚したことによる婚約破棄です。

    結婚式や新婚生活の準備を進めていると些細なすれ違いが生じ、「この人と結婚しても大丈夫だろうか」などの不安が生じることがあります。また、結婚前に同棲をしていると生活習慣の違いなどから相手との結婚生活に不安を感じることもあります。

    このような性格の不一致は、婚約破棄の正当な理由にはなりませんので注意が必要です。

  2. (2)婚約中の浮気

    婚約中に、婚約者以外の第三者と性行為をすることは、婚姻中の第三者との性行為と同じく、不法行為となる場合があります。婚約相手が婚約者以外の異性と浮気をしたことが判明した場合には、婚約破棄をしたとしても正当な理由があると認められます。

    他方、浮気をした婚約者から「好きな人ができたから婚約を破棄したい」と申し出ることは、正当な理由のない婚約破棄になります。

  3. (3)婚約者からのDV

    婚約者から暴力を振るわれたり、虐待をされていたりする場合には、今後結婚して正常な夫婦生活を送ることが困難ですので、婚約を破棄する正当な理由となります。

    暴力を振るう婚約者は、一時的には反省しているように見えても、暴力を繰り返す傾向にあることが多いですから、結婚せずに、婚約破棄することに正当な理由があります。

  4. (4)婚約者の虚偽

    婚約者から嘘を吐かれていたという場合には、嘘の内容によっては婚約破棄の正当な理由になります。たとえば、以下のようなケースは婚約破棄の正当な理由となる可能性が高いです。

    • 借金はないと言っていたにもかかわらず、多額の借金を抱えていたことが判明したようなケース
    • 両親との同居をしなくてもよいと言われていたのに突然同居を求められたようなケース

3、婚約破棄をしたら発生する返還や費用

マリッジブルーによる婚約破棄がなされると、以下のような費用が発生します。

  1. (1)婚約指輪の返還

    婚約指輪を受け取った女性の側に婚約破棄の原因がある場合には、男性は女性に婚約指輪の返還を求めることができます。その際、すでに女性側が婚約指輪を処分していた場合には、婚約指輪の価格相当額の損害賠償請求も考えられます。

    他方、婚約指輪を贈った男性の側に婚約破棄の原因がある場合には、信義則上、男性が女性に対して婚約指輪の返還を求めることはできないと考えられます。

  2. (2)結納金の返還

    結納金とは、男性の家側から女性の家側に対して、結婚準備や両家の絆を深める目的で送られる金銭のことをいいます。
    結婚を前提の贈られるお金ですので、婚約破棄に至った場合には、結納金を受け取った女性側は、男性側に対して結納金の返還をしなければなりません。

    しかし、男性側に婚約破棄の原因がある場合には、信義則上、結納金の返還請求はできないとされています。

  3. (3)式場・新婚旅行のキャンセル費用

    婚約破棄により結婚式場や新婚旅行をキャンセルした場合には、キャンセル費用を請求されます。
    お互いの合意で婚約破棄をした場合には、キャンセル費用は、お互いが折半で負担するのが一般的ですが、どちらか一方に婚約破棄の原因があるようなケースでは、婚約破棄の原因がある側がキャンセル料を全額負担することも多いです。

  4. (4)新婚生活の家具・家電などの費用

    将来の新生活のために家具や家電などを購入していた場合には、家具家電の購入費用の負担も問題となります。

    家具や家電は、婚約破棄後もそのまま利用できるものがほとんどですので、どちらか一方が家具家電を引き取るのが一般的です。

  5. (5)新居の引っ越し費用

    すでに夫婦生活開始のために新居へ引っ越した後に、婚約破棄を行う場合もあります。お互いの合意による婚約破棄であれば、自分が支払った引っ越し費用は自分で負担するということも多いですが、どちらか一方に婚約破棄の原因がある場合には、責任のある側が相手に対して、引っ越し費用の負担を求めることが可能です。

4、一方的な婚約破棄には慰謝料や損害賠償請求も可能

正当な理由がなく、一方的に婚約破棄をされた場合には、前章でご紹介したものだけでなく、相手に対して慰謝料などの損害賠償請求が可能です

  1. (1)婚約破棄の慰謝料とは

    婚約をした男女は、結婚に向けて両親への挨拶、職場や友人への報告、結婚式場の予約などの準備を進めていくことになります。そのような状況で、突然、婚約破棄になれば、婚約破棄をされた方は多大な精神的苦痛を被ることになります。

    正当な理由なく一方的に婚約破棄をされた場合や婚約破棄の原因が相手にある場合には、婚約相手に対して、慰謝料の請求が可能です。請求できる慰謝料の金額は、ケースバイケースですが、以下の要素を踏まえて金額を決まります。

    • 交際期間
    • 婚約期間
    • 婚約破棄の原因
    • 婚約破棄の時期
    • 妊娠、出産の有無
    • 仕事の退職の有無
  2. (2)婚約破棄の慰謝料の請求方法

    婚約破棄の慰謝料を請求する場合は、まずは、相手との交渉により、金額や支払い方法などを決めていきます。慰謝料以外の財産的損害も請求する場合には、領収書やレシートなどの証拠を提示できるように準備しておくことが大切です。

    相手との交渉で合意に至ればよいですが、話し合いがこじれて解決が難しいという場合には、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。裁判では、慰謝料を請求する側において、婚約の成立や損害の発生などを主張立証していかなければなりません。

  3. (3)婚約破棄の慰謝料を請求する際の注意点

    婚約破棄の慰謝料を請求する際には、以下の点に注意が必要です。

    ① トラブル回避のために合意書を作成する
    婚約者との話し合いにより慰謝料に関する問題が解決した場合には、口頭での合意だけで済ませるのではなく、必ず合意書などの書面を作成しましょう。

    相手からの支払いをより確実なものにするのであれば、合意書は公正証書の形式で作成するのがおすすめです。

    ② ひとりで対応するのが難しい場合には弁護士に相談する
    婚約破棄の原因となった相手と交渉をするのは精神的にも非常に負担が大きいといえます。少しでも負担を軽減するためにも、ひとりで対応が難しいと感じる方は、弁護士に相談するのがおすすめです。

    弁護士であれば、本人に代わって相手との交渉を行うことができ、交渉で解決できない場合には裁判により解決を図ることもできます。婚約破棄の慰謝料相場を踏まえて交渉を進めることにより、スムーズな解決を図ることが可能ですので、まずは弁護士に相談するとよいでしょう

5、まとめ

マリッジブルーにより結婚生活に不安を抱いた方から婚約破棄を求められることがあります。マリッジブルーを理由にする婚約破棄は、多くのケースで正当な理由のない婚約破棄となりますので、婚約破棄をした相手に対して、慰謝料などの損害賠償請求が可能です。

一方的な婚約破棄にお困りの方や慰謝料などの損害賠償請求をご検討中の方は、実績豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士にお任せください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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