エネ夫との別居・離婚を考えたら注意するべきポイント
妻の味方をせずに、妻を苦しめる敵となる夫のことを「エネ夫(えねお)」と呼ぶことがあります。当初は、我慢して生活してた妻も、次第にエネ夫との生活に疲れ果てて、別居や離婚を考えるケースも少なくありません。
しかし、そもそもエネ夫という理由で夫と離婚することができるのでしょうか。また、エネ夫と離婚する場合には、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
今回は、エネ夫との別居・離婚を考えたときに注意すべきポイントについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
目次
1、エネ夫とは
エネ夫とは、「enemy(エネミー:敵)」と「夫」を組み合わせた造語で、妻の味方をせずに、妻を苦しめる敵になってしまう夫のことをいいます。以下のような行為をする夫のことをエネ夫と呼ぶことが多いようです。
- 姑(舅)と一緒になって、妻のことを責める
- 夫に義両親が突然家に来るのをやめてほしいといっても一切対応してくれない
- 妻が姑(舅)からいじめられていると相談しても、妻の味方をするどころか反対に妻を責める
- 人前で妻のことを馬鹿にする
- ママ友のことをほめる一方、妻に対しては不満や悪口ばかり言う
このような特徴に当てはまる場合には、あなたの夫もエネ夫である可能性があります。エネ夫の特徴に該当するからといって、直ちに離婚した方がいいというわけではありませんが、エネ夫との生活に息苦しさやストレスを感じるのであれば、別居や離婚を検討する理由になるかもしれません。
2、夫から離れて暮らしたい! 別居は大丈夫?
エネ夫との生活に息苦しさやストレスを感じるときは、夫と別居するというのもひとつの選択肢になります。以下では、夫と別居する際の注意点を説明します。
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(1)離婚前に別居することは問題ないのか?
別居というと離婚を前提として行うものというイメージが強いですが、再構築を前提として行われることもあります。
お互いの気持ちを見つめ直して、関係を再構築するためにも、一時的に別居をすることは有効な手段となることもあります。一緒に生活していると相手の嫌なところばかり目に付いてしまいますが、お互いの距離を置くことで、お互いの大切さを再認識することができ、夫婦として再出発できる可能性もあります。
ただし、相手に相談することなく突然別居をしてしまうと、相手の気持ちが離れてしまい、そのまま離婚という事態にもなりかねません。そのため、再構築を目指して別居をする際には、夫とよく話し合ってから行うことが大切です。
他方、離婚を前提として別居をする際にも、突然、別居するというのはできる限り避けた方がよいでしょう。夫婦には、同居義務がありますので、勝手に家を出て行ってしまうと、「悪意の遺棄」に該当するとして、慰謝料を請求されるリスクがあります。そのため、別居時には、夫とよく話し合っておく方が良いと言えます。 -
(2)別居中は婚姻費用という生活費を請求できる
別居をしたくても別居中の生活費が不安だという方も多いと思います。そのような場合には、自身より夫の方が収入が高いという場合には、夫に対して、婚姻費用の請求を行うことができます。
夫婦は、別居をしていたとしても互いに協力して生活する義務がありますので、妻の収入が少ない場合、収入の多い夫に対して、別居中の生活費を請求することが可能です。婚姻費用は、お互いの話し合いで決めることができますが、金額で揉めているときは裁判所が公表している婚姻費用算定表を利用するとよいでしょう。
婚姻費用算定表は、お互いの収入と子どもの有無・人数に応じて、簡単に婚姻費用の相場を把握できるツールです。相場を踏まえて婚姻費用の話し合いをすれば、取り決めがスムーズに行える可能性が高くなります。 -
(3)DVやモラハラなどの場合は母子シェルターなども検討するべき
エネ夫からDVやモラハラなどを受けている場合には、別居先が夫に知られてしまうと、自宅に連れ戻されたり、さらなるDVやモラハラの被害を受けたりするリスクが生じます。
このような場合には、夫に無断で別居をしたとしても、正当な理由のある別居ですので「悪意の遺棄」に該当する可能性は低いです。そのため、できる限り夫に見つからないように別居の準備を進め、別居先も秘密にしておくようにしましょう。
また、緊急性の高い事案については、自治体の窓口で相談をすれば、母子シェルターを利用することも可能です。自治体によってはDV被害から母子を保護するためにさまざまな制度を設けているところもありますので、一度自治体に相談してみるとよいでしょう。
3、エネ夫を理由に離婚することは可能?
それでは、離婚を考えている場合、エネ夫であることを理由に離婚することはできるのでしょうか。以下では、離婚の手続きごとにエネ夫を理由とする離婚の可否を説明します。
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(1)協議離婚
協議離婚とは、夫婦で話し合いを行い、お互いに離婚に合意した上で離婚する方法です。
夫婦の合意があれば、どのような理由であっても離婚することができますので、協議離婚であれば、「夫がエネ夫である」という理由でも、夫が離婚に合意してくれるのであれば離婚可能です。
なお、離婚時には、養育費、慰謝料、財産分与などのお金に関する離婚条件を取り決めることがあります。口頭での合意だけで終わらせてしまうと、将来不払いが発生した時のリスクが大きくなりますので、必ず離婚協議書などの書面を作成しておくようにしましょう。さらに、離婚協議書を執行認諾文言付きの公正証書にしておけば、不払いがあっても直ちに強制執行が可能ですから、作成を検討しましょう。 -
(2)調停離婚
夫婦の話し合いでは離婚の合意に至らないときは、次の段階として、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。
離婚調停では、裁判官と調停委員が夫婦の離婚問題の解決に向けて、夫婦の話し合いの手助けをしてくれます。エネ夫と2人きりでは、妻が責められるだけで離婚の話し合いが進まない夫婦でも、第三者が間に入ってくれる離婚調停であれば、離婚の話し合いがスムーズに進む可能性が高まります。
離婚調停も協議離婚と同様に基本的には話し合いの手続きになりますので、お互いが離婚に合意していればどのような理由であっても離婚することができます。そのため、離婚理由が「エネ夫である」という場合でも、夫が離婚に合意してくれれば離婚可能です。 -
(3)裁判離婚
調停でも離婚の合意に至らないときは、最終的に、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。
離婚訴訟は、協議離婚や調停離婚のような話し合いの手続きではなく、裁判官が離婚の可否を判断する手続きです。その際には、以下のような法定離婚事由がなければ、離婚を認めてもらうことはできません。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神障害にかかり、回復見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
夫がエネ夫である=自身の味方をしてくれないというだけであれば、上記のいずれの理由にも該当しないでしょうから、それだけでは離婚は認められません。
しかし、エネ夫の具体的な内容が、夫からDVやモラハラを受けている、夫から生活費を渡してもらえないなどであったときには、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」や「悪意の遺棄」に該当し、離婚が認められる可能性があります。
別居期間の長さも法定離婚事由を補完する事情になりますので、離婚を前提に別居をするというのも裁判離婚に備えた有効な対策となります。
4、離婚するにあたっての注意点
離婚をする際には、さまざまな点に注意しなければなりません。特に、エネ夫と離婚する場合に注目して、注意点をご紹介します。
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(1)「エネ夫」を理由に親権や養育費などが有利になるわけではない
夫婦に子どもがいる場合には、どちらが親権者になるかを決めなければなりません。また、親権者になった方の親が通常、子どもと一緒に生活しますので、子どもの養育費の取り決めも必要になります。
エネ夫のせいで離婚に至ったという事情があったとしても、親権や養育費を定める際には相手がエネ夫であるという事情は考慮されません。そのため、エネ夫との離婚だからといって、親権や養育費が有利になるわけではありませんので、注意が必要です。 -
(2)離婚後の経済的な不安は財産分与や年金分割により解消できる
財産分与とは、婚姻期間中に形成した夫婦の共有財産を離婚時に清算する制度です。専業主婦であったとしても、原則として2分の1の割合で財産分与を受けられますので、婚姻期間が長ければ長いほど、離婚時の財産分与の金額も大きくなります。
年金分割とは、婚姻期間中の夫婦の厚生年金の保険料納付記録を分割して、自分の年金の基礎にすることができる制度です。夫より収入の少ない妻や専業主婦の方であれば、年金分割を請求することにより、将来もらえる年金を増やすことができます。
これらの制度を利用するためには、自分で請求しなければなりませんので、忘れずに請求を行いましょう。 -
(3)財産の使い込みがあった場合には財産分与で考慮する
夫婦の共有財産は、財産分与の対象になりますが、離婚前にエネ夫が勝手に財産を使い込んでしまうケースもあります。財産分与の対象となる財産は、基本的には夫婦が別居した時点に存在する財産が基準となりますので、別居後にエネ夫が財産を使い込んだとしても、財産分与でもらえる財産が減ってしまうということはありません。
財産分与をする際に、エネ夫の使い込みの分もしっかりと考慮して計算すれば、適正な財産分与を受けることが可能です。
ただし、適正な財産分与を実現するためには、相手の財産調査や財産の評価などを行わなければならず、財産分与に関する知識や経験が不可欠となります。そのため、財産分与の請求をお考えの方は、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。 -
(4)エネ夫だからといって常に慰謝料請求ができるわけではない
夫に対して慰謝料請求をするためには、夫がDV、不貞行為、モラハラなどの有責性のある行為をしたという事情が必要になります。そのため、エネ夫という理由で離婚に至ったとしても、これらの有責性を基礎づける事情がない場合には、慰謝料請求をすることができません。
どのような事情および証拠があれば慰謝料請求ができるかについては、弁護士にご相談ください。
5、まとめ
エネ夫の特徴に該当する夫と一緒に生活している方は、生活に息苦しさを感じたり、ストレスを抱えていたりする方も少なくありません。このまま一緒に生活しているのが難しいという場合には、離婚もひとつの選択肢になるでしょう。
エネ夫との離婚を決断した場合には、離婚の進め方や証拠収集などで弁護士のアドバイスやサポートが必要になります。そのため、エネ夫との離婚については、ベリーベスト法律事務所の弁護士にお任せください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
-
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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