セックスレスが不倫を正当化する理由になるケースは少なく、慰謝料請求を拒否できる可能性は低いです。

ただし、不倫より前に婚姻関係が破綻していれば慰謝料請求を拒否できる場合があります。また、慰謝料を支払うべき場合でも、減額交渉の余地がある場合もあります。

1. （1）セックスレスとは

   「セックスレス」について、確立された定義や基準は存在しませんが、一般的には特別な事情がないのに長期間にわたって性交渉がない夫婦の状態を指します。
   数か月程度にわたり、夫婦間で性交渉がない状態が続いていれば、セックスレスといえるでしょう。

2. （2）セックスレスでも、婚姻関係が破綻していなければ不倫は違法

   セックスレスであるからといって、それだけで配偶者以外の異性と性交渉をしてよいことにはなりません。夫婦は互いに貞操義務を負い、配偶者以外の異性との性交渉をしてはならないと考えられています。
   
   セックスレスであっても、不倫の時点で婚姻関係が継続していて夫婦であれば、貞操義務は存続します。したがって原則として、セックスレスの状況でも不倫をすれば貞操義務に反する行為であり、配偶者から慰謝料を請求されれば拒否できません。

3. （3）婚姻関係が破綻していれば、慰謝料請求を拒否できる

   ただし例外的に、形式的には婚姻が継続していても、実質的に見れば婚姻関係が破綻している場合には、配偶者以外の異性との性交渉があっても不貞行為に該当しない場合があります。したがって、配偶者以外の異性と性交渉をした時点で婚姻関係が破綻していれば、配偶者から慰謝料を請求されても拒否できる可能性があります。
   
   婚姻関係が破綻しているかどうかは、夫婦関係の実質に着目して判断されます。
   たとえば別居期間が長期間にわたっている場合婚姻関係が破綻していると評価される可能性があります。
   
   セックスレスも、婚姻関係が破綻しているかどうかを判断するための考慮要素のひとつになり得ますが、現在の裁判実務においては、セックスレスだけで婚姻関係の破綻が認められることは期待できません。
   慰謝料請求を拒否するためには、セックスレス以外の事情も併せて主張し、婚姻関係が破綻していたことを示す必要があります。

4. （4）慰謝料が発生する場合でも、減額交渉の余地はある

   不倫慰謝料の支払いを拒否することができないとしても、配偶者が主張する金額どおりに支払わなければならないとは限りません。
   
   不倫慰謝料の金額は内容によりますが、離婚しない場合で数十万円から200万円程度、離婚する場合で100万円から300万円程度といえます。
   具体的な金額は、不貞行為の頻度・回数・期間、婚姻期間の長さ、未成熟の子どもの有無など、個々の事情によって異なります。
   
   配偶者が提示する慰謝料の額が適正な水準よりも高い場合は、減額交渉の余地があります。弁護士のサポートを受けながら、配偶者に対して慰謝料の減額を求めましょう。
   
   以下の「不倫・浮気の慰謝料を請求された方へ」のページでは、より詳しく慰謝料請求に関するポイントや注意点を解説しています。あわせてご一読ください。

セックスレスが続く状態に嫌気が差して、配偶者と離婚したいと考えている方がいらっしゃるかもしれません。セックスレスを理由に離婚できるのでしょうか。

1. （1）配偶者と合意すれば離婚できる

   離婚は、夫婦間の合意があれば、どのような理由であっても可能です。したがって、セックスレスを理由に離婚したい場合も、配偶者との合意があれば離婚できます。
   離婚協議または離婚調停を通じて配偶者を説得し、離婚に向けた合意を目指しましょう。

2. （2）「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たれば離婚できる

   配偶者に離婚を拒否されても、法定離婚事由（民法第770条第1項各号）が存在する場合には、裁判所に離婚裁判を提起すれば判決によって離婚が認められます。
   
   法定離婚事由のひとつとして挙げられるのが「婚姻を継続し難い重大な事由」（同項第5号）です。夫婦の関係性を総合的に判断し、修復が見込めないほど婚姻関係が破綻していると評価される場合には、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして離婚が認められる可能性があります。
   
   ただし前述のとおり、セックスレスであるというだけでは、婚姻関係の破綻（＝婚姻を継続し難い重大な事由）が認められる可能性は低いでしょう。別居期間の長さやDV・モラハラなど、婚姻関係の破綻を示す別の事情も併せて主張する必要があるでしょう。

3. （3）不倫した側からの、離婚の請求は認められにくい

   婚姻関係が破綻しているなど、婚姻を継続し難い重大な事由が存在する場合でも、自ら不倫をした側は、離婚裁判を通じて離婚を請求しても認められにくくなります。
   離婚の原因を作った側（＝有責配偶者）の請求を認めて離婚を成立させることは、信義則（民法第1条第2項）の観点から問題があると判断されるためです。
   
   有責配偶者の離婚請求が全く認められないわけではありませんが、別居が長期間に及び未成熟の子どもがいないなど、厳しい条件を満たすことが求められます（最高裁昭和62年9月2日判決）。

4. （4）不倫した側も、親権・養育費・財産分与などを主張可能

   不倫をした側は、離婚に当たって配偶者に慰謝料を支払う義務を負いますが、その他の離婚条件については通常どおりの権利を主張することが可能です。
   
   たとえば子どもの親権については、養育の実績などを考慮して、不倫をした側に親権が認められるケースもあります。養育費については、不倫をしたかどうかにかかわらず、父母の収入バランスや子どもの人数・年齢などを考慮して金額を決めるのが一般的です。
   財産分与についても、基本的には婚姻中に取得した財産を半分ずつに分けることになります。
   
   ご自身の不倫を理由に離婚せざるを得なくなった場合でも、良い条件で離婚を成立させるために、弁護士のサポートを受けながら交渉などを行いましょう。

セックスレスが原因で不倫をした側が配偶者と離婚したい場合には、以下の対応を検討しましょう。

1. （1）離婚協議・離婚調停で配偶者を説得する｜条件面での譲歩も検討すべき

   自ら不倫をした側からの離婚請求は認められにくいので、合意による離婚を目指すべきです。
   
   そのためには、離婚協議や離婚調停を通じて配偶者を説得するほかありません。
   配偶者が希望する離婚条件を受け入れると、離婚することを説得できる可能性が高まります。各種の離婚条件につき、ご自身の中で優先順位を付けて、譲歩できるところは譲歩することを検討しましょう。

2. （2）配偶者と別居する｜ただし無断別居は禁物

   自ら不倫をした側が離婚を目指すためには、配偶者と別居することも選択肢のひとつです。別居が続けば配偶者が離婚を受け入れる可能性もありますし、別居が長期間に及べば裁判で離婚が認められる可能性が出てきます。
   
   ただし、離婚について話し合うことなく、突然に別居を開始すると、配偶者の態度を固くさせ、離婚に応じてもらえなくなる可能性が高まることもあります。まずは話し合いを始め、長期化しそうであれば別居を開始するなどを検討するとよいでしょう。

セックスレスが原因で不倫や離婚に関するトラブルが発生したら、弁護士に相談することをおすすめします。

不倫や離婚に関するトラブルについて、弁護士に相談することの主なメリットは以下のとおりです。

セックスレスが原因で不倫をした場合でも、状況などによっては慰謝料の拒否・減額の余地があります。ただし、状況などを踏まえて判断する必要があるため、弁護士に相談するようにしましょう。不倫・離婚のトラブルを深刻化させることなく解決するには、できる限りお早めに弁護士へご相談ください。

セックスレスが理由であっても、不倫は原則として不貞行為に当たるため、不倫をした側は慰謝料請求を拒否できない可能性が高いです。ただし減額交渉の余地はあるので、慰謝料請求を受けたら弁護士に相談しましょう。
また、セックスレスの配偶者と離婚したい場合にも、慎重に手続きを進める必要があるため、弁護士へのご依頼をおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、不倫・離婚のトラブルに関するご相談を受け付けております。経験豊富な弁護士が、トラブルの解決に向けてサポートいたします。セックスレスを原因とする配偶者とのトラブルにお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。