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離婚したら養育費はいくら? 養育費の相場や決め方を解説

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更新日:2024年11月06日  公開日:2024年10月30日
離婚したら養育費はいくら? 養育費の相場や決め方を解説

子どもがいる夫婦が離婚する場合、子どもの養育費を決める必要があります。養育費は、子どもの成長にあたって重要なお金になりますので、相場を踏まえて適正な金額を取り決めることが大切です。

養育費の算定においては、裁判所の養育費算定表が用いられますが、具体的な事情によっては相場よりも高い金額が認められる可能性があります。適正な養育費の金額を定めるためにも、養育費の算定要素をしっかりと理解しておきましょう。

今回は、離婚時の養育費の相場と決め方について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

目次を

1、養育費の相場はいくら?

厚生労働省が行った「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要」によると、母子世帯および父子世帯における令和3年度の子どもの数別養育費の状況(推計値)は、以下のようになっています。

母子世帯
1世帯平均月額
父子世帯
1世帯平均月額
平均 5万485円 2万6992円
子ども1人 4万468円 2万2857円
子ども2人 5万7954円 2万8777円
子ども3人 8万7300円 3万7161円
子ども4人 7万503円 0円
子ども5人 5万4191円 0円
不詳 3万9062円 1万円

養育費の相場は、子どもの人数によって変わってきますが、母子家庭での平均額は約5万円、父子家庭での平均額は約2万7000円となっています。養育費の金額は、基本的には双方の収入をベースに決めることになりますので、一般的に所得の高い方である父が親権者となる場合の方が、養育費の金額が少なくなっています。

なお、同調査によると、母子世帯は119.5万世帯、父子世帯は14.9万世帯で、離婚後に母親が親権を得ていることが多く、父親から母親に対して養育費が支払われることになるケースがほとんどといえるでしょう。

2、養育費の算定方法とは? モデルケース

そもそも養育費とはどのようなお金なのでしょうか。以下では、養育費の定義や算定方法を説明し、具体的なケースにおける養育費の金額を紹介します。

  1. (1)養育費の定義

    養育費とは、子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要となる費用のことをいいます。養育費には、主に以下のような費用が含まれています。

    • 衣食住に必要な費用
    • 教育費
    • 医療費
    • 交通費
    • 子どもの娯楽費やお小遣い


    離婚によって夫婦は、他人になりますので、お互いを扶養する義務はありません。しかし、離婚しても子どもの親であることには変わりありませんので、非監護親(同居していない親)は、親として養育費の支払義務を負います。

  2. (2)養育費の算定方法

    養育費の算定方法には、法律上の決まりはありませんので、当事者の合意が得られればどのような方法でも決めることができます。
    しかし、養育費の相場がわからなければ話し合いで決めるのも困難といえますので、裁判所の養育費算定表を用いて養育費の金額を取り決めるのが一般的です。

    養育費算定表とは、子どもの人数・年齢および父母の年収(給与所得者・自営業者別)から簡易・迅速に相場となる養育費の金額を導くことができるツールです。養育費算定表は、裁判所の調停・審判や裁判手続きでも利用されています。この養育費算定表を用いることで相場を踏まえて適正な養育費を定めることが可能になります。

    なお、ベリーベスト法律事務所では、養育費の相場を簡単に計算できるツールを提供していますので、こちらの計算ツールもご利用ください

    参考:養育費計算ツール

  3. (3)養育費算定の具体例

    ① モデルケース1
    子ども2人(0~14歳)、権利者の収入0円(専業主婦(主夫))、義務者の収入600万円のケースでは、養育費の相場は、10~12万円になります。

    ② モデルケース2
    子ども2人(0~14歳)、権利者の収入300万円、義務者の収入600万円のケースでは、養育費の相場は、6~8万円になります。

    ③ モデルケース3
    子どもの2人(第1子15歳以上、第2子0~14歳)、権利者の収入0円(専業主婦(主夫))、義務者の収入600万円のケースでは、養育費の相場は、12~14万円になります。

    ④ モデルケース4
    子どもの2人(第1子15歳以上、第2子0~14歳)、権利者の収入300万円、義務者の収入600万円のケースでは、養育費の相場は、8~10万円になります。

3、養育費が相場より高くなる要素とは?

以下のような要素がある場合には、養育費の金額が相場よりも高くなる可能性があります。裁判所の判断による増額を目指す場合には、要点をおさえた主張と証拠の提出が必須です。

  1. (1)当事者が合意できる場合

    裁判所の調停や審判の手続きで養育費の金額を定める場合、養育費算定表から導かれる養育費の相場が基準となります。そのため、原則としては養育費算定表に基づく金額により定まり、特別な事情がある場合に、相場を上回る金額となることがあります。

    もっともかし、当事者が合意できるのであれば、相場を上回る金額を定めることも可能です。後述するとおり、調停ではなく、裁判外での話し合いで決まった場合には、将来の不払いのリスクに備えて、公正証書にしておきましょう。

  2. (2)教育費が高額になる

    養育費算定表では、子どもが公立の学校に通った場合の標準的な養育費が考慮されています。そのため、公立の学校に通っているなど標準的なケースに該当する場合には、学校にかかる費用を理由として相場を上回る養育費を請求するのは困難です。

    しかし、以下のような事情がある場合には、養育費算定表で考慮されている標準的な教育費を上回る費用がかかりますので、相場よりも高い養育費を請求できる可能性があります

    • 子どもが私立の学校に通っている
    • 大学への進学を予定している
    • 進学のために学習塾に通っている
    • 海外への留学を予定している
  3. (3)医療費が高額になる

    養育費算定表では、健康的な子どもが必要となる標準的な医療費も考慮されています。そのため、子どもが転んでひざを擦りむいた場合の治療費、風邪をひいた場合の風邪薬代などの日常的な医療費が生じたとしても直ちに増額ができるわけではありません。

    しかし、以下のような事情がある場合には、養育費算定表で考慮されている標準的な医療費を上回る費用がかかりますので、相場よりも高い養育費を請求できる可能性があります

    • 子どもが難病にかかっていて定期的な通院が必要になる
    • 子どもが大きな怪我をして入院や手術に多額の医療費が必要になる

4、養育費の決め方とは?

養育費は、どのような方法で決めればよいのでしょうか。以下では、一般的な養育費の決め方を説明します。

  1. (1)父母間での話し合い

    養育費の金額は、まずは父母で話し合いをします。当事者が合意をすればどのような条件でも取り決めることができますが、お互いの主張が対立するようなケースでは、裁判所の養育費算定表を利用するとよいでしょう。相場を踏まえて金額の話し合いをすれば、スムーズな取り決めが期待できます。
    また、当事者同士の話し合いでは、養育費の金額以外にも以下の事項を決める必要があります。

    • 養育費の支払期間(始期と終期)
    • 養育費の支払い時期
    • 支払い方法(振込先など)


    取り決めた内容については、後日、争いが生じないようにするためにも口約束ではなく必ず書面に残しておくようにしましょう。

  2. (2)公正証書の作成

    当事者間での話し合いで合意が成立した場合、合意書を作成することになりますが、養育費の支払いをより確実なものにするためには、公正証書にするのがおすすめです

    公正証書とは、公証役場の公証人が作成する公文書で、当事者間で作成する私文書に比べて高い証拠力が与えられています。また、公正証書で強制執行認諾文言を設ければ、相手が養育費の支払いを行った場合、裁判手続きを経ることなく直ちに強制執行の申し立てを行い、相手の財産を差し押さえることが可能です。

    強制執行認諾文言付公正証書は、万が一の場合に迅速に強制執行が可能になるとともに、相手にとってもきちんと支払わなければ財産を差し押さえられてしまうというプレッシャーを与えることができます。

  3. (3)養育費請求調停の申し立て

    当事者同士の話し合いでは合意に至らないときは、家庭裁判所に養育費請求調停の申し立てを行います。離婚調停をしている場合には、別途養育費請求調停を申し立てる必要はなく、離婚調停の中で話し合うことができます。

    調停では、基本的には養育費算定表による相場をベースにした話し合いが進められていきます。相場を上回る養育費を請求する場合には、養育費算定表では考慮されていない特別な事情があることを主張していく必要があります。

    調停で合意に至ると調停成立となり、合意内容が調停調書にまとめられます。将来的に不払いとなった場合には、調停調書に基づいて差押えを行うことができます。

  4. (4)養育費の審判・離婚訴訟

    調停でも養育費の合意に至らない場合には、調停不成立となり、養育費請求調停を行っていた場合には、自動的に審判の手続きに移行します
    養育費請求調停ではなく、離婚調停の中で話し合いを行っている場合には、離婚訴訟(裁判)の中で一緒に判断されます。

    審判や離婚訴訟(裁判)は、調停のような話し合いの手続きではなく裁判官が一切の事情を考慮して、適切な養育費の金額を決めてくれます。審判・裁判で決められる養育費の金額は、特別な事情がない限りは、養育算定表をベースにした金額になります。

5、弁護士からのメッセージ

養育費は、子どもの健全な成長・発達にとって重要なお金になりますので、離婚時に相場を踏まえた適正な金額で定めることが大切です。養育費の相場については、養育費算定表で把握することができますが、特別な事情がある場合には、個別具体的に金額の修正をしていかなければなりません。
しかし、それには専門的な知識や経験が不可欠となりますので、適正な養育費を定めたいという方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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