離婚調停では女性が有利? 親権・財産分与等のためのポイント

離婚調停では女性有利と言われることがあります。しかし離婚調停は、調停委員が公正中立な立場で対応しますので、性別を理由に有利・不利になることはありません。
また、親権、養育費、慰謝料などの離婚条件に関しては、女性有利になることもありますが、収入や生活状況などを考慮した結果です。
このように離婚調停では、性別によって有利・不利が決まるわけではないため、ご自身に有利に進めるためには、ポイントを押さえて調停に対応していくことが大切です。
本コラムでは、離婚調停を有利に進めるための7つのポイントについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、なぜ離婚調停で女性が有利と言われるのか?
離婚調停で女性有利と言われることがあります。なぜそのように考える方が多くなる結果が出やすいのでしょうか。その理由について解説します。
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(1)性別による有利、不利はない
離婚調停は、性別を理由に有利・不利になることはありません。
なぜなら、離婚調停は、基本的には話し合いの手続きであり、お互いが合意しなければ離婚や離婚条件が決定することはないためです。また、調停では、調停委員が話し合いを進めていきますが、調停委員は公平中立な立場になりますので、性別によって扱いを変えることはありません。
離婚調停が女性有利と言われるのは、収入や育児への貢献度などから女性が有利な条件になることが多いのがその理由だと考えられます。ただし、これは「女性」という性別に基づいたものではなく、男性であっても結果的に有利な条件となるケースもあります。 -
(2)育児に従事しているほうが親権を獲得しやすい
離婚調停で、子どもの親権が争点になった場合、女性有利になりやすいのが実情です。なぜなら、子どもが幼いうちは母が子どもの世話をしていることが多く、裁判所が監護実績を重視する結果、母親が親権者になるのが望ましいと考えられるケースが多いからです。
母親のほうが子どもと一緒に過ごしている時間が長く、監護の継続性という観点から、離婚後も母が親権を持って監護していくのが適当と考えられることが多いです。特に乳児については授乳など母が必須であることが考慮されることもあります。
最近は、父親の育児参加も多くなり、母親よりも父親の方が育児をしていることも増えています。その場合には父親が親権者として適切と考えられ、父親が子どもの親権を獲得することも増えています。 -
(3)所得が大きい側が財産分与や養育費の負担が大きくなりやすい
男性と女性を比べると、一般的に男性のほうが多く収入を得ており、男性名義の財産が多い傾向があります。養育費や婚姻費用を決める際には、お互いの収入によって金額を定めることになりますので、収入の多い男性が不利になったと感じやすいでしょう。
また、財産分与では、婚姻期間中に築いた夫婦の共有財産を分けることになります。そのため、名義財産が多い男性から女性に財産を支払うケースが多いため、男性のほうが不利に感じるかもしれません。
2、離婚調停を有利にする7つのポイント
離婚調停を有利に進めるためには、以下の7つのポイントを押さえておくことが大切です。
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(1)条件の優先順位を決めておく
離婚調停では、離婚をするかどうかだけでなく、親権、養育費、財産分与、慰謝料などの離婚条件についての話し合いも行われます。
離婚調停は1回当たり約2時間と限られた時間しかありません。したがって、効率よく調停を進めるために、あらかじめ自分が希望する離婚条件やその優先順位を明確にしておくことが大切です。離婚条件について優先順位を決めておくことで、ご自身の希望を叶えつつ、よりスムーズに話し合いを進めていくことができるでしょう。 -
(2)慰謝料や財産分与に関する証拠を準備しておく
財産分与を求める場合には、相手方が資料を出してこない場合など、どのような財産があるのかを明らかにするための証拠が必要となる場合があります。また、慰謝料を請求するのであれば、DVや不貞行為といった相手の有責性を裏付ける証拠が必要です。
このような証拠がなければ調停委員も財産分与や慰謝料の支払いに関して相手を説得することはできません。事前に証拠を集めておくことが大切です。 -
(3)親権の獲得を希望するなら育児関与の実績をつくっておく
どちらが子どもの親権者にふさわしいかについては、さまざまな事情を考慮して判断されます。中でも、これまでの育児の実績は重要な要素です。
離婚調停が始まってから育児に関与しても遅いため、子どもの親権の獲得を希望するなら、普段から積極的に育児に関与することが大切です。十分な育児の実績があれば、女性だけではなく男性でも親権を獲得できる可能性があります。 -
(4)感情的にならない
離婚調停では、当事者が対面で話し合うことはありません。調停委員がいる部屋に交互に呼ばれるかたちで調停委員を介して話し合いが進められます。そのため、当事者同士の話し合いよりも感情的になることは少ないでしょう。
しかし、相手からウソの主張やおとしめるような発言があると感情的になってしまい、調停委員に対して厳しい口調になる方もいらっしゃいますが、そのような行動はNGです。調停委員に悪態をついたとしても有利な結果にはならず、調停が長引いてしまう原因になってしまいます。
相手からの発言によっては感情的になってしまう心情も十分に理解できますが、調停を有利に進めたいなら我慢することも大切です。 -
(5)主張書面や証拠は事前に提出する
前述のとおり、1回あたりの調停の時間は2時間程度と限られています。これまでの生活や離婚理由となる事情を口頭ですべて伝えるのは難しいものです。調停委員も口頭で説明されただけでは、正確に事実を把握することができず、事実関係を誤解したまま話し合いが進められてしまうリスクがあります。
このようなリスクを回避するためには、調停で主張したい事実については、主張書面にまとめて事前に裁判所に提出することを検討しましょう。調停委員も事前に主張書面に目を通してから調停期日に臨むことで、要点を絞って話し合いを進め、効率的に調停を進行することができるでしょう。 -
(6)調停委員を味方につける
調停委員は、公正中立な立場ですので、基本的にはどちらか一方の味方をすることはありません。
しかし、調停委員もひとりの人間ですので、当事者の態度や境遇によっては好感や同情を抱くことがないとは言い切れません。調停委員から好感を得ることができれば、相手に対して説得的に話してくれることも考えられます。
調停委員からの心証を悪くしないよう、言葉遣いや態度に気をつけ、誠実な態度で接するようにしましょう。 -
(7)弁護士への依頼を検討する
調停を有利に進めたいなら弁護士に依頼することも有効な手段となります。離婚問題はどうしても感情的になりやすく、また理路整然とご自身の状況を説明することは非常に難しいものです。
弁護士に依頼することで後述するようなメリットがあります。離婚調停に関する負担を軽減し、少しでも有利な条件で離婚を成立させるためにも、弁護士への依頼を検討することをおすすめします。
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3、離婚調停を弁護士に依頼するメリット
離婚調停を弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。
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(1)証拠収集のアドバイスがもらえる
離婚調停を有利に進めるためには、自己の主張を裏付ける証拠の有無が重要なポイントになります。財産分与や慰謝料が争点になっているケースはもちろん、養育費が争点になるケースでも証拠が重要になるケースもあります。弁護士に離婚調停について相談すると、どのような証拠が必要にあるかどうか、どのような方法で証拠を集めればよいのかについてのアドバイスを受けることができますので、適切な証拠を集めることができるでしょう。
証拠収集は、離婚調停を申し立てる前から始める必要があります。配偶者との離婚を決意したときは、離婚を切り出す前に、一度弁護士に相談することをおすすめします。 -
(2)申立準備段階からサポートが受けられる
離婚調停の申立てにあたっては、申立書や事情説明書の作成、戸籍謄本や年金分割のための情報通知書の取得など様々な準備が必要です。仕事や家事・育児で忙しい状況で、これらの準備をすべてひとりで行わなければならないのは大きな負担となるでしょう。
弁護士に依頼すると、離婚調停の申立書類の準備を任せることができますので手続き的な負担を大幅に軽減することができます。また、調停申立の際に、弁護士が、これまでの夫婦の生活や離婚原因について記載した書面を作成して提出することで、調停委員に予め事情を把握してもらうことができ、調停のスムーズな進行が期待できます。 -
(3)代理人として調停の出頭を任せられる
離婚調停を弁護士に依頼すれば、実際の調停期日に弁護士が同行します。法的な問題については弁護士が話すことはもちろん、自身の味方が隣にいることは非常に心強く感じるでしょう。
また、調停成立の場面では、ご本人の出席が必須となりますが、それ以外の期日であれば、弁護士が代理人として出席すれば、ご本人が欠席しても調停を進めることができます。
初めての調停では不安や緊張から言いたいことを十分に伝えられず、調停が終わってしまうことがあるようです。しかし、弁護士がいれば、不安や緊張が解消され、十分にお話しできるでしょう。自分だけで調停を行うのが不安な場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
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4、離婚調停が不成立になったら│裁判離婚
繰り返しになりますが、離婚調停は、話し合いの手続きです。したがって、お互いの合意が得られない場合には、調停不成立となって手続きが終了します。この場合には、家庭裁判所に離婚裁判を提起する必要があります。
離婚裁判では、民法で定められている、以下の法定離婚事由がなければ離婚を認めてもらうことができません(民法第770条1項)。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
離婚裁判は、通常の裁判と同様に、書面と証拠の提出を行って、最終的に裁判所に判断してもらう手続きです。調停とは異なり、期日に行ってお話しする手続きではありません。そのため、専門家である弁護士のサポートが必須と言えます。
また、法定離婚事由の有無の判断や法定離婚事由の存在を裏付ける証拠の収集については、専門家である弁護士のサポートを受けることが重要です。
5、まとめ
離婚調停は女性有利と言われることがありますが、性別のみによって有利・不利が決まることはありません。離婚調停を有利に進めるには、いくつかポイントがありますので、少しでも有利な条件で離婚をしたいという場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、離婚トラブルに関する豊富な知見を持つ弁護士が法律相談をお受けしております。離婚を検討した段階でお気軽にご相談ください。証拠の集め方や離婚の進め方、決めるべきことなどはもちろん、実際に弁護士に依頼すべきタイミングなども含めたアドバイスを行います。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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