離婚時の財産分与は税金がかかるの? 課されるケースや注意点を解説

離婚時の財産分与に対しては、原則として税金は課されません。
ただし、財産分与の内容等によっては、例外的に課税されることがあるので注意が必要です。弁護士や税理士のアドバイスを踏まえて、課税についても注意しながら適切に財産分与を行いましょう。
本記事では、離婚時の財産分与に対する課税の有無や条件、財産分与に関する注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
目次を
1、離婚時の財産分与は原則として非課税|ただし例外に要注意
離婚に伴って財産分与を受ける場合、(元)配偶者から財産をもらうことになりますが、原則として贈与税が課されることはありません。
財産分与は贈与ではなく、権利(財産分与請求権)に基づいて受け取ったものと考えられるためです。
ただし、次の項目で紹介するように、財産分与に対して何らかの課税が行われるケースもあります。予期せぬ税金が課されないように、財産分与の方法などをよく検討しましょう。
2、離婚時の財産分与に課税される場合の具体例
以下に挙げる場合には、離婚に伴う財産分与に対して税金が課されてしまいます。
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(1)課税逃れを目的に離婚した場合|贈与税
贈与税や相続税を免れるために離婚したと認められる場合は、財産分与によって譲り受けた財産全体に贈与税が課されます。
実際には離婚する意思がないのに、課税逃れだけの目的で離婚した場合は、財産分与請求権が発生せず、非課税の前提が崩れてしまうからです。 -
(2)高額すぎる財産分与を受けた場合|贈与税
離婚に伴って高額過ぎる財産分与を受けた場合は、標準的な額を超える額に対して贈与税が課されます。
超過分については、財産分与の名を借りた贈与であるとみなされるためです。
財産分与の標準的な額がいくらであるかは、夫婦の具体的な状況によって変わるので一概に言えません。財産の取得に対する夫婦双方の貢献度などが総合的に考慮されます。
なお、財産分与の割合は本来、夫婦間の協議等で自由に決めることができます。
財産分与は、夫婦が婚姻期間中に築いた財産をわけるもので、原則としてその割合は半々です。理由があって半々とはならないこともままありますが、50%を大幅に超える額の財産を分与した場合には、贈与税が課される可能性が高まるのでご注意ください。 -
(3)不動産の財産分与を受けた場合|登録免許税
不動産の財産分与を受けた場合は、法務局で所有権移転登記手続きを行う必要があります。
所有権移転登記手続きに当たっては、収入印紙等で登録免許税を納付しなければなりません。登録免許税の税率は、不動産の価額(原則として固定資産税評価額)の2%です。 -
(4)購入時から値上がりした財産を分与した場合|所得税・住民税
財産分与をした側に対しても、分与した財産が購入時から値上がりしていた場合は、譲渡所得税や住民税が課されます。
以下の式によって計算した課税譲渡所得金額がプラスであれば、その金額が課税対象となります。課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
(a)収入金額
原則として、譲渡の対価として買主から受け取る金銭の額です。財産分与の場合は、分与時における時価が収入金額とみなされます。
(b)取得費
譲渡した財産の購入、設備の備付け、改良などに要した費用です。たとえば不動産であれば、購入代金、建築代金、購入手数料、設備費、改良費などが含まれます。
ただし、建物などの減価償却資産については、購入代金または建築代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引くことができます。
(c)譲渡費用
財産を譲渡するために直接かかった費用です。たとえば不動産であれば、仲介手数料、印紙代、土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用などが含まれます。
(d)特別控除額
居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除など、特例によって控除できる額です。
参考:「No.3302 マイホームを売ったときの特例」(国税庁)
土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、分離課税といって給与所得などの他の所得と区分して計算します。ただし、確定申告の手続は、他の所得と一緒に行うことになります。
売った土地や建物の所有期間が、売った年の1月1日現在で5年を超えるかどうかにより、適用する税率が異なります。
所有期間が5年以下の場合(短期)の税率は30%、所有期間が5年を超える場合(長期)の税率は15%で、別途2.1%の復興所得税が課税されます。住民税については、短期の場合は9%、長期場合は5%となります。
住民税も所得税と同様に、給与所得などの他の所得と区分して計算します。
3、財産分与を行う際の税金に関する注意点
財産分与に伴う不利益な課税を避けるためには、以下のポイントに注意しながら、財産分与の内容や時期などを適切に判断しましょう。
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(1)極端に高額の財産分与は避けるべき
財産分与の割合が50%を大幅に超えていると、贈与税が課される可能性が高くなります。
財産分与に対して贈与税が課される場合は「一般税率」が適用されます。年間110万円の基礎控除がなされた後、残額に対して下表の税率による贈与税が課されます。基礎控除後の課税価格 税率 控除額 200万円以下 10% - 300万円以下 15% 10万円 400万円以下 20% 25万円 600万円以下 30% 65万円 1000万円以下 40% 125万円 1500万円以下 45% 175万円 3000万円以下 50% 250万円 3000万円超 55% 400万円 ※贈与税額=基礎控除後の課税価格×税率-控除額
たとえば、不動産を含む財産の大部分の分与を受けた結果、多すぎると判断された金額が4000万円に上ったとします。
この場合、課される贈与税の額は1739万5000円と非常に高額です。贈与税額
=(4000万円-110万円)×55%-400万円
=1739万5000円
このように、高すぎる金額の財産分与を受けると、予期せず高額の贈与税を課されてしまうおそれがあります。予期せぬ贈与税を避けるためには、極端に高額の財産分与は避けた方がよいでしょう。
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(2)自宅は離婚成立後に分与すると、3000万円特別控除を受けられることがある
最近では不動産価格が上がっているため、自宅の不動産を財産分与すると譲渡所得が発生し、所得税や住民税が課されてしまうことが多くなっています。
居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除(マイホームを売ったときの特例)の適用を受ければ、譲渡所得から最大3000万円を控除することが可能です。
ただし3000万円特別控除は、親子や夫婦など特別の関係がある人に対して自宅の不動産を譲渡した場合には適用できません。
したがって、離婚成立前に自宅の不動産を財産分与した場合は、3000万円特別控除を受けることができません。
これに対して、離婚が成立した後に自宅の不動産を財産分与した場合は、3000万円特別控除を受けることができます。
自宅の財産分与に伴って譲渡所得が発生しそうな場合は、3000万円特別控除の適用を受けるために、離婚成立後に財産分与を行うことも検討するとよいでしょう。
参考:「No.3302 マイホームを売ったときの特例」(国税庁) -
(3)慰謝料として不動産を譲り受けると、不動産取得税が課されることがある
財産分与ではなく、不貞行為などの慰謝料の名目で自宅などの不動産を譲渡する例が稀に見られます。
財産分与として不動産を譲り受けた場合は、原則として不動産取得税は課されず、登録免許税の負担のみで済みます。
これに対して、慰謝料として不動産を譲り受ける場合は、不動産取得税が課されてしまいます。
不動産取得税の税率は原則として、不動産の価額に対して4%です(土地と住宅については、軽減税率として3%が適用されます)。
不動産取得税の課税を避けるためには、慰謝料としてではなく、財産分与として不動産を譲り受けることを検討しましょう。
ただしその場合も、高額過ぎる財産分与として贈与税が課されるリスクに十分ご注意ください。
4、財産分与に関するトラブルや疑問点を弁護士に相談するメリット
離婚協議の中で財産分与について揉めてしまっている場合や、財産分与の具体的なルールや注意点を知りたい場合などには、弁護士に相談しましょう。
財産分与について弁護士に相談することには、主に以下のメリットがあります。
- 財産分与の方法の選択肢について、具体的なアドバイスを受けられる
- 配偶者が所有する財産を調査してもらえる
- 不動産や非上場株式などの価値を算定する方法を知っている
- 配偶者との交渉を任せられるため、ストレスが軽減される
- 裁判手続きの対応も一任できる
ご自身にとって有利な内容で財産分与を行いたいなら、弁護士のサポートが大いに役立ちます。離婚時の財産分与に関するお悩みは、早い段階で弁護士へご相談ください。
お悩みの方はご相談ください
5、まとめ
離婚に伴う財産分与については、原則として贈与税が非課税とされています。ただし、例外的に贈与税などの税金が課されるケースもあるので注意が必要です。
財産分与に関する予期せぬ課税を避けるためには、弁護士や税理士のアドバイスを受けましょう。
ベリーベスト法律事務所は、財産分与を含む離婚に関するご相談を随時受け付けております。
離婚案件を豊富に経験している弁護士が、適切な内容でスムーズに財産分与ができるようにサポートいたします。グループ内には税理士も在籍しているため、連携した対応が可能です。
離婚時の財産分与について揉めている方や、財産分与に関する税金について疑問点がある方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
以下のページでは財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。

- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
-
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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