「これって仮面夫婦の特徴?」 離婚しないメリットとデメリット
外では普通の夫婦として振る舞っていても、実際にはお互いに全く関心を失っている夫婦の形があります。それは「仮面夫婦」と言われる状態かもしれません。
仮面夫婦のまま、相手との婚姻生活を続けるのもひとつの方法ですが、離婚して新たな人生を歩んでいくのも選択肢として考えられます。
本コラムでは、仮面夫婦に至ってしまう原因や特徴、離婚するときのメリット・デメリットについて、ベリーベスト法律事務所の離婚問題に詳しい弁護士が解説します。
「お互いに干渉しない夫婦で、これは仮面夫婦と言える状態にあるかも」「相手と離婚したらどうなるのだろうか」と、パートナーの関係性にお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
1、そもそも仮面夫婦とは?
「仮面夫婦」という言葉を聞いたことがあり、何となくイメージはできるけれど、具体的にどういったものか分からないという方もいらっしゃるでしょう。まずは、仮面夫婦とはどのようなものか、確認します。
「仮面夫婦」とは、対外的には夫婦として振る舞うけれど、実際にはお互いへの愛情や家族としての親密な関係が失われている夫婦のことです。法律用語ではなく、一般的な言葉です。
仮面夫婦の場合、もちろん戸籍上は夫婦ですし、親戚付き合いや近所付き合い、子どもの学校関係のやり取りや他の保護者との付き合い、夫婦ぐるみの付き合いなども何ら変わりなく行うことが通常ですし、他者からは「仲の良い夫婦」と思われていることも多いです。実家の親にも不仲と知られておらず、夫婦円満と思われているケースもあります。
しかし、実際には夫婦としての実態や愛情などが全くなくなっており、家ではお互いに接触することがほとんどありません。
DVのように暴力を振るったり、あるいは激しい喧嘩をしたりすることは少なく、お互いに全く没交渉で「家庭内別居」の状態になっているケースも多いです。
2、仮面夫婦の6つの特徴
「もしかして、自分たちも仮面夫婦かも」と思った方がいらっしゃるかもしれません。
以下では、仮面夫婦の特徴を挙げます。
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(1)互いに関心を持たない
仮面夫婦の場合、お互いに関心を失っていることがほとんどです。
相手がどのようなことに関心を持っているのか、どんな仕事をしているのか、どんな人付き合いをしているのか、何を食べているのか、健康状態など、全く関心を持たず、完全に放置します。「相手が家にいない方が気楽で良い」と思っていることも多いです。
相手に対して怒りを感じることも少なく、互いに干渉することもありません。特に、日頃から、お互いに目も合わせないことも一般的ですし、互いに顔を合わせないよう、生活時間帯をずらしていることもあります。 -
(2)愛情がない
夫婦関係を維持していくために「愛情」は非常に重要ですが、仮面夫婦の場合、互いへの愛情はほとんど完全に失われてしまっています。
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(3)会話がない
仮面夫婦になると、夫婦間の会話がなくなり、「おはよう」や「いってきます」などの、基本的なあいさつすらもしなくなります。話すとしても、たとえば子どもの学校の連絡事項のような、必要最低限の事務的なことだけになりますし、それすら話さなくなることもあります。
子どもがいるときには普通に話をするけれども、子どもがいない場所では一切話さない、というパターンもあります。
メールや電話、LINEなどのやり取りも行わず、あるいはやり取りするとしても、やはり必要最低限の連絡事項に限られることもあります。 -
(4)セックスレス
仮面夫婦の場合、夫や妻に対する関心も愛情も失っているので、そもそもスキンシップを取りたくないと感じることも多いです。セックスレスになることはもちろん、肩をたたいたり、手をつないだり頭を触ったりするという軽いスキンシップでさえも、嫌悪してしまうケースが多いです。
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(5)対外的には仲が良さそうに振る舞う
仮面夫婦の大きな特徴として、対外的に仲の良さそうな夫婦を演じることが挙げられます。
不仲な夫婦は、外に出ても喧嘩をしてしまったり、そもそも一緒に外に出なかったりすることが多いですが、仮面夫婦の場合、そうではありません。
友人の結婚式、実家への里帰り、保護者会、学校行事、地域行事への参加など、円満な夫婦や家庭を演じます。2人でスーパーに買い物に行ったり、SNSなどで夫婦円満をアピールしたりするケースも見られます。周囲の人や親族からは「仲の良い夫婦」「すてきな夫婦」などと思われていることもよくあります。 -
(6)生活費の支払いや家事などは変わらず行っている
一般的に、夫婦が不仲になると、生活費を渡さなくなったり、家事や育児を放棄してしまったりすることが多いですが、仮面夫婦の場合、そういったことはあまりありません。夫は妻に生活費を渡しますし、妻は普通に家事や育児をしていることが多いです。
そこで、一般的な不仲な夫婦の事案よりトラブルが大きくなりにくく、表面的には平穏に暮らしていることが多いです。
あくまで一例ですが、以上のような仮面夫婦の特徴に当てはまる点がある場合、一見大きなトラブルが起こっていなくても、夫婦関係に亀裂が入っている可能性があり、要注意です。
離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。
3、仮面夫婦となってしまう6つの原因
このような仮面夫婦になってしまうのは、どういったきっかけによるものでしょうか?
以下でよくある理由を見ていきましょう。
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(1)生活リズムが合わない
夫婦の生活リズムや生活スタイルが合わなくなると、だんだんと疎遠になって、仮面夫婦状態に陥りやすいです。どちらかの単身赴任がきっかけで仮面夫婦になってしまうこともあります。
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(2)セックスを拒絶された、セックスレスになった
相手にセックスを拒絶されたことがきっかけで、仮面夫婦になってしまうこともあります。性交渉を誘って断られるとショックを受けますし、相手に対する親密な感情が失われるからです。
また、仕事が忙しいなどの理由で、自然とセックスレスになったことによって仮面夫婦になる例もあります。特に、長期的にセックスレスになってしまったら、自然と相手に対する気持ちや夫婦関係が希薄になり、仮面夫婦になりやすいです。 -
(3)浮気、不貞
配偶者以外の人を好きになってしまった場合や不貞関係になった場合、配偶者への愛情が薄れてしまうことがあります。この場合、離婚は大変だからと夫婦関係は継続しつつも、相手への気持ちはなくなり、家庭内別居状態となることがあります。
また、相手が浮気したことがきっかけで、相手を信用できなくなったケースでも、仮面夫婦になることもあります。 -
(4)結婚後の変化
結婚当初は相手を愛おしく思っていても、結婚後、人はどんどん変わっていくものです。外面だけではなく、内面も変わっていくでしょう。その変化についていけない場合、許容できない場合などにも、仮面夫婦になりやすいです。
転職や減収、子どもの誕生、子育てなどで状況が変わったときに、すれ違いが生じやすくなります。 -
(5)そもそも相手に無関心
夫婦の中には、結婚当初から相手に無関心、ということもあります。お見合い結婚や親の決めた結婚、仕事上の立場を良くするための政略結婚、あるいはいわゆる授かり婚などで多いパターンです。
ただ、この場合、当初から相手に恋愛感情がなく、無関心なので、ストレスも感じにくく、仮面夫婦を心地良く感じていることもあります。 -
(6)価値観の違い
夫婦は違う人間ですから、価値観も異なるものです。しかし、根本的な問題で価値観が違うと、相手を受け入れられないことがあります。
子どもの教育上の問題などで夫婦が衝突したり、相手の言動にいちいち賛同できなかったりして衝突を繰り返すと、そのうち「この人に話しても無駄だ」と思い、仮面夫婦状態になってしまいます。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
4、仮面夫婦でも離婚しない7つのメリット
仮面夫婦状態になったとき、あえて離婚しないメリットはどのようなところにあるのでしょうか?
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(1)生活費の問題
まずは、生活費の問題があります。特に、経済力のない専業主婦・主夫などの場合、たとえ仮面夫婦であっても、夫/妻と結婚している方がお金の苦労をせずに済みます。
もしも離婚したら、ひとりで生活費を工面しなければなりません。子どもを引き取ってシングルマザー・シングルファーザーになったら、貧困状態に陥ってしまう可能性もありますし、相手からの養育費も十分でないことも多いです。養育費の支払いが途中で止まってしまうリスクも考えられます。 -
(2)子どもの問題
子どもがいるので離婚しないという仮面夫婦も多いです。
仮面夫婦の場合、子どもの学校行事には夫婦で参加しますし、子どもの前では普通の夫婦と同じように振る舞っていることが多いです。これは、離婚することによる子どもへの影響を心配しているからだと思います。
喧嘩を避けて仮面夫婦として過ごし、お互いが我慢して子どもを成人まで育てようと考えている夫婦もいます。 -
(3)家事を任せられる
仮面夫婦であっても、一方が一応きちんと家事や育児をしている事例が多いです。他方にしてみると、一方が家のことをきちんとしてくれるので、生活しやすい面があり、あえて離婚しない理由になります。
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(4)世間体を維持できる
離婚すると世間体が悪いと考える方はいまだに多いです。仕事上でも職場に離婚を知られていろいろと噂されるかもしれませんし、友人からも「なんで離婚したの?」と聞かれるかもしれません。実家の両親や親族から「体裁が悪い」と文句を言われたり、変に気を使われたりすることもあります。
このようなことが煩わしく、離婚をしない仮面夫婦の方も多いです。仮面夫婦は、外では仲良さそうに振る舞っているので、世間体は維持できますし、周囲との人間関係も上手に築いていけるものです。
特に、社会的地位の高い方や名誉を重んじる方、堅い職場の方などは、離婚を嫌い、夫婦の形を継続することを希望する傾向にあります。 -
(5)遺産相続、年金
高齢の夫婦にも仮面夫婦のケースがあります。
この場合、離婚して財産分与を受けるか、仮面夫婦を続けて遺産相続をするか、どちらが得か考える方もいます。
また、日々の生活についても、離婚してそれぞれが年金をもらうより、夫婦一緒に年金をもらって生活した方が得だということもあります。そうした金銭的な判断により、あえて離婚に進まずに仮面夫婦を続ける方が多くなります。 -
(6)配偶者控除
仮面夫婦であっても、法律婚をしている以上、年末調整の際に「配偶者控除」を受けて、税金を減額してもらうことができます。このことも、あえて離婚しないメリットと言えるでしょう。
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(7)離婚トラブルを避けられる
離婚となると、子どもの親権者や養育費、財産分与、年金分割や子どもとの面会交流など、さまざまなことを決めなければなりません。夫婦で意見が合わず、トラブルになることも多いですし、離婚調停や離婚訴訟に発展し、泥沼化することもあります。
仮面夫婦ならば、こういったトラブルに巻き込まれることなく、一応平穏に生活することができますし、相手に財産を分与する必要もありません。
5、仮面夫婦が離婚しない4つのデメリット
次に、仮面夫婦の状態のまま、離婚しないことのデメリットを見てみましょう。
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(1)充実した時間を過ごせない
夫婦や親子などの家族関係が良いと何をしても楽しいものです。旅行に出掛けたり、おいしいものを食べたり、プレゼントを贈り合ったり美しいものを見に行ったり、すてきな音楽を聴いたりして、さまざまなことを共有できます。
子どもの成長を共に見守り、時には共に困難に立ち向かい、戦友のようになれるのが夫婦です。ところが仮面夫婦になると、こういったことは不可能で、心や感情の動きもない、無味乾燥な時間が過ぎていくだけです。充実した時間を過ごせないことは、離婚しない一番のデメリットと言えるでしょう。 -
(2)仮面夫婦が周囲にバレる可能性
仮面夫婦は、外面を良くしていることが多いので、周囲からは「仲の良い夫婦」と思われていることが多いです。しかし、勘の良い人には感づかれることがあります。
その場合、周囲に変な噂が広まることもありますし、親や親戚に心配されたりして、うっとうしい思いをすることもあるでしょう。 -
(3)子どもが気づく可能性
仮面夫婦は、子どもの前では仲良さそうに振る舞っていることも多いのですが、子どもは大人が思っている以上に、周囲の様子をよく見ています。自分がいないとき、両親の雰囲気が違うことを察知して離婚を心配することもあります。
また、子どもは、両親の不仲を自分のせいだと思い込み、何とか両親の間を取り持とうと必死になることが多く、ストレスを溜めます。仮面夫婦を察知した周囲の人から、親の不仲のことを尋ねられて、子どもがショックを受けることもあります。
結局、親としては「子どものために離婚しない」つもりでも、子どもの方は、そのことによって傷ついたり不利益を受けたりするのです。 -
(4)生活費の負担
仮面夫婦も夫婦である以上、お互いに扶養する義務があり、婚姻費用を分担しなければなりません(民法752条、760条)。そのため、収入の多い側は、相手の生活費も負担しなければならないので、離婚した場合と比べると自由になる財産が少なくなるでしょう。
6、仮面夫婦でいることがツラいと感じた場合の対処方法
仮面夫婦をずっと続けていると、時にはツラく感じてくることがあるものです。何のために生きているのか分からないこともありますし、自分の人生を豊かに過ごしたい、と希望することもあるでしょう。
そのような場合、何をすべきかご紹介します。
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(1)周囲の人たちに相談する
まずは、実家の両親や信頼できる友人など、周囲の人に相談してみることが考えられます。仮面夫婦であることはなかなか打ち明けにくいものですが、人に話すことで気持ちが楽になることも多いです。
世間体を気にしていた方であっても、話してみると意外と周囲が親身になってくれるので、前に進もうという気持ちになれることがあります。 -
(2)離婚カウンセラーや弁護士に相談する
周囲に信頼できる人がいない場合や、周囲から変な噂が広まるのが嫌な方は、専門家に相談することをおすすめします。たとえば、離婚カウンセラーに相談をすると、夫婦の事情によって、復縁あるいは離婚の方法や考え方など、さまざまなアドバイスを受けることができます。
離婚も視野に入れて考える場合には、弁護士への相談も効果的です。
弁護士に相談すると、離婚によってどういった影響があるのか、離婚後どのように生活していけば良いのか、離婚の方法などの必要事項を確認できますし、離婚の交渉を依頼することも可能です。
弁護士に相談したからと言って、必ず離婚に向けて進まないといけないわけではなく、反対に離婚を思いとどまるように言われることもあります。
悩まれたときには、間違った判断をしないためにも、まずは専門家に相談しましょう。 -
(3)家庭内別居のルールを作る
仮面夫婦の場合、相手と中途半端に関わりを持っていることがツラいケースがあります。
その場合には、いっそのこと、はっきり「家庭内別居」のルール作りをしてしまうのもひとつの方法です。たとえば、「子どもの学校行事には参加する」「お互いの生活に干渉しない」など、相手と関わりを持たずに生活をするための取り決めをします。
子どもが小さい場合、「子どもが成人したら離婚する」「大学生や高校生になったら離婚する」、などの取り決めをしておくこともできます。ルールを定めておくことにより、少しは心安らかに生活できるようになります。 -
(4)一時的に別居する
相手と一緒に同居生活を継続することが苦しい場合、一時的に別居してみることもひとつの解決方法です。
別居状態がお互いに心地良ければ、そのまま継続することもできますし、一定期間が経過したら離婚してしまうこともできます。
反対に、やっぱり夫婦に戻りたいと思い、復縁することも可能です。お互いの気持ちを整理するため、一時的な別居は有効な手段です。
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7、まとめ
仮面夫婦の場合、すぐに離婚する必要はありません。しかし、離婚という選択をすることが自分自身のためにも、相手や子どものためにもなるケースがあります。
離婚にあたっては、さまざまな準備が必要です。後悔しない離婚を実現するには、弁護士に頼ってみることもご検討ください。
ベリーベスト法律事務所は離婚専門チームを組成しており、離婚問題に知見のある弁護士が多数在籍しています。新たな道へ踏み出すサポートをいたしますので、離婚を決断している方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
弁護士が親身にお話を伺いながら、適切な条件で離婚が成立するように尽力いたします。
- 所在地
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