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離婚調停で聞かれる10の事|調停の流れから調停委員と話す際の注意点

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更新日:2025年09月24日  公開日:2025年09月24日
離婚調停で聞かれる10の事|調停の流れから調停委員と話す際の注意点

離婚調停では、調停委員が関与して、離婚に向けた話し合いが行われます。その際、調停委員から当事者に対して、さまざまな質問がなされることはご想像のとおりです。

その質問内容は、大きく分けると「離婚の原因」、「子の親権や養育」、「財産分与などの金銭関係」に分類できます。あらかじめどのように回答するかを準備しておくことでスムーズに話し合いを進められるでしょう。

本コラムでは、離婚調停で聞かれる10の事と離婚調停の流れ、注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の離婚男女問題専門チームの弁護士が解説します。

目次を

1、離婚調停で聞かれる10の事

離婚調停で聞かれる事としては、主に以下の10項目が挙げられます。

  • ① 離婚の原因
  • ② 夫婦関係の現状
  • ③ 離婚の意志の強さ
  • ④ 親権の希望
  • ⑤ 子どもの養育環境
  • ⑥ 養育費の金額希望
  • ⑦ 財産分与の希望、共有財産の状況
  • ⑧ 慰謝料請求の有無、金額の希望
  • ⑨ 婚姻費用
  • ⑩ 離婚後の生活・収入


ただし、いずれの項目についても希望しなければ聞かれないことがあるため、離婚調停を行う前に話し合うべき項目か否かをしっかり見極めておく必要があります

本章では、これらの10項目を「離婚に関する質問」、「子の養育に関する質問」、「金銭に関する質問」の3つに分類して説明します。

  1. (1)離婚に関する質問

    離婚調停では、離婚に関する質問として、以下の3つの事項が聞かれます。

    ① 離婚の原因
    離婚調停の申立書には、「申立ての動機」欄がありますが、該当項目に丸をする形式ですので、申立書の記載だけでは詳細な離婚の原因を知ることができません。そのため、離婚調停では、申立人が離婚を決断するに至った原因や経緯について詳しく聞かれます

    ② 夫婦関係の現状
    夫婦が同居しているか、別居をしているかによって今後の離婚の進め方が変わってきますので、現在の夫婦の生活状況が聞かれます。
    また、後述する金銭に関する質問にも関係してきますが、現在、生活費をもらっている(支払っている)のかも確認されます。

    ③ 離婚の意志の強さ
    離婚調停の申立てをした夫婦であっても、話し合いの結果、離婚ではなく夫婦関係の修復を選択するケースもあります。離婚か関係の修復かでは、調停の進め方が変わってきますので、初回調停では、離婚の意志の強さが確認されます

  2. (2)子の養育に関する質問

    夫婦に子どもがいる場合には、子の養育に関する質問として、以下の3つの事項が聞かれます。

    ④ 親権の希望
    子どもがいる場合、どちらか一方の親を親権者に指定しなければなりません。そのため、離婚調停では、親権の希望の有無が聞かれるケースが一般的です。
    双方が子どもの親権を希望する場合には、家庭裁判所の調査官が関与して、子どもの意向調査などが行われることもあります。

    ⑤ 子どもの養育環境
    夫婦が別居をしている場合、現在どちらが子どもと一緒に生活しているのか、子どもの養育環境に問題がないかどうかが聞かれます。
    子どもと離れて暮らす親としては、子どもが問題なく生活できているかどうかが重要な関心事になることでしょう。相手を納得させるために調停委員から詳しく事情が聞かれる可能性があります。

    ⑥ 養育費の金額希望
    離婚をして親権を獲得した親が基本的には子どもと一緒に生活することになりますので、非監護親に対して、子どもの養育費を請求することができます。基本的に養育費の金額は、夫婦の話し合いで自由に決めることが可能です。そのため、離婚調停では、養育費の希望金額を聞かれるケースがほとんどです。
    お互いの希望額に大きな差があれば、養育費算定表による相場を踏まえて金額が話し合われます。

  3. (3)金銭に関する質問

    離婚をする際には、財産分与、慰謝料などの離婚条件の取り決めが必要になります。このような離婚条件を取り決めるために必要になりますので、金銭に関する質問として、以下の4つの事項が聞かれます。

    ⑦ 財産分与の希望、共有財産の状況
    財産分与とは、離婚時に夫婦の共有財産を原則として2分の1の割合で分ける制度です。
    離婚調停では、財産分与を希望するかどうか、どちらか一方でも希望する場合には夫婦それぞれの共有財産の状況が聞かれます
    適正な財産分与を実現するためには、夫婦双方がすべての財産を開示することが重要です。相手が財産隠しをしている疑いがあるときは、調査嘱託などの手段を利用して、相手の財産を明らかにすることもあります。

    ⑧ 慰謝料請求の有無、金額の希望
    相手に有責性(DV、モラハラ、不倫など)がある場合には、慰謝料を請求することができます。慰謝料の請求を希望する場合には、どのような理由で慰謝料を請求するのか、どのくらいの金額を請求するのかなどを聞かれます。
    離婚調停では、裁判とは異なり証拠による立証は不要です。しかし、相手が有責性を否定する場合には、調停委員が状況を判断し相手を説得するための材料として証拠の提出を求められることもあります。

    ⑨ 婚姻費用の取り扱い
    現在別居をしている場合、収入の少ない方が多い方に対して婚姻費用と呼ばれる生活費を請求することができます。
    離婚調停では、婚姻費用を請求するかどうか、どのくらいの金額を求めるかを聞かれることも多いです。双方の言い分が異なる場合には、離婚調停とは別に婚姻費用の分担請求調停を申し立てる必要があります。いずれにしても婚姻費用の分担請求調停は早めに申し立てておくのがよいでしょう。

    ⑩ 離婚後の生活・収入
    離婚後は夫婦が別々に生活していくことになり、今後は養育費を除き相手から金銭的な援助を受けることができません。そのため、離婚後の生活や収入に関して、どのような考えを持っているのかが聞かれます。

2、調停委員と話す際の注意点

離婚調停では、相手と直接顔を合わせて話し合いをするのではなく、調停委員を介して話し合いが行われます。そのため、当事者が主に話をするのは調停委員になりますので、調停委員と話をする際には、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)客観的事実を述べる

    離婚の原因や経緯などを聞かれると、「つらかった」、「大変だった」、「悲しかった」など主観的な意見ばかり述べてしまいがちです。しかし、調停委員が聞きたいのは、当事者の主観的な意見ではなく、何があったのかという客観的な事実です。

    そのため、調停委員と話をする際には、「○○という言葉をかけられた」、「家事や育児に協力してくれなかった」など客観的な事実を中心に話をしていくようにしてください。

    自分だけではうまく調停委員に事実を伝えられないという場合には、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。弁護士に依頼すれば調停期日に同席してもらえるため、調停委員に客観的事実をしっかりと伝えることが可能です。

  2. (2)礼儀正しく話す

    調停委員の質問には、感情的にならず冷静に礼儀正しく話すことが大切です。

    調停委員に対して悪態をつくと、調停委員からの印象が悪くなってしまいます。相手も人間ですから、今後の調停の進行にあたってあなたの味方になってくれない可能性があることは否定できません。

    また、調停期日の時間は限られています。長々と感情論に終始してしまうとあっという間に調停期日が終了してしまい、本題に入ることができません。調停で決めたい内容をメモして挑むとよいでしょう。

  3. (3)主張の優先順位をつける

    離婚をする際にはさまざまな離婚条件の取り決めが必要になります。しかし、すべて自分の希望どおりの条件で離婚するのは困難です。

    調停は、お互いに譲歩し合って、問題を解決する手続きになりますので、希望する条件について優先順位をつけることが大切です。優先順位の低い条件に関しては、譲歩姿勢を示すことで、相手や調停委員に与える印象もよくなり、優先順位の高い条件に関して、自分の希望をかなえられる可能性が高くなります。

    なお、適正な離婚条件や金額の相場を判断するには、離婚問題についての知見が豊富な弁護士のアドバイスが不可欠です。離婚を検討した段階で弁護士に相談してみることをおすすめします。

  4. (4)誠実に答える

    調停委員からの質問には嘘をつかず誠実に回答することが大切です。

    嘘の回答をしてその後に嘘が明らかになれば、あなたに対する印象が悪くなってしまいます。また、これまで正直に回答してきた内容についても虚偽ではないかと疑われてしまうリスクがあることは言うまでもありません。

    調停委員から質問された内容が、あなたにとって都合が悪い情報が含まれていたとしても決して嘘はつかずに誠実に回答するようにしてください。

  5. (5)メモを残す

    離婚調停では、離婚の合意に至るまで長い時間がかかるケースが多いものです。1回の調停期日で終了することは少なく、複数回の期日を重ねることになります。

    次の調停期日までは、1か月から1か月半程度の期間が空いてしまいます。前回話し合った内容を忘れないようにするためにも、調停期日では必ずメモをとるようにしてください

3、離婚調停の流れ

以下では、離婚調停の流れと離婚調停の必要書類・費用、期間を説明します。

  1. (1)離婚調停の申立てから終了までの流れ

    離婚調停の申立てから終了までの一般的な流れは、以下のとおりです。

    ① 裁判所に離婚調停の申立書を提出
    当事者同士の話し合いでは離婚の合意に至らなかったときは、家庭裁判所に離婚調停の申立てをします。離婚調停の申立ては、離婚調停の申立書などの必要書類を裁判所の窓口で提出するまたは郵送するといういずれかの方法で行います。提出先は、相手の住所地にある家庭裁判所です。

    ② 裁判所から調停期日の呼出状が届く
    離婚調停の申立てが受理されると、初回の調停期日が決められ、当事者双方に調停期日の呼出状が届きます。初回の調停期日は、申立てから約1か月後に指定されるケースが多いです。

    ③ 調停期日
    当事者は、指定された日時に家庭裁判所に行き、調停期日を行います。家庭裁判所の調停室付近には、申立人と相手方で別々の控室が用意されているので時間厳守で待機しておきましょう。

    調停期日は、基本的には当事者同士が直接話し合うわけではなく、交互に調停委員のいる部屋に呼ばれます。30分程度話をして相手と交代し、調停委員がそれぞれの話を交互に聞く、という流れを繰り返すことで話し合いが進んでいきます。

    前述のとおり、1回の調停で話し合いが終わることはほとんどありません。当日の話し合いが終わると、次回期日を決めて、この日の調停は終了となります。

    ④ 調停の終了
    当事者の合意が成立した場合には、調停成立により離婚調停が終了します。

    離婚調停で合意した内容については、調停調書にまとめられ確定判決と同様の効力を有します。そのため、養育費などの金銭債務の不払いがあった場合には、裁判をすることなく直ちに強制執行の手続きを行うことができます。

    他方、調停期日を重ねても合意成立の見込みがない場合には、調停不成立となり、離婚調停が終了します。引き続き離婚を希望したり、特定の条件を相手に求めたりする場合には、別途家庭裁判所に離婚訴訟を提起しなければなりません。

  2. (2)離婚調停の必要書類・費用、期間

    ① 離婚調停の必要書類・費用
    離婚調停の申立てに必要になる書類および費用は、以下のとおりです。

    【必要書類】
    • 申立書
    • 事情説明書
    • 進行に関する照会回答書
    • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
    • (年金分割を請求する場合)年金分割のための情報通知書
    • (養育費を請求する場合)収入がわかる資料(源泉徴収票、給与明細など)
    • (財産分与を請求する場合)夫婦の財産がわかる資料(通帳の写し、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書など)

    【費用】
    • 収入印紙:1200円分
    • 連絡用の郵便切手:1000円程度(裁判所によって異なる)


    ② 離婚調停の期間
    離婚調停は、1か月から1か月半に1回のペースで行われ、3~6回程度の期日で解決に至るケースが多いです。そのため、離婚調停の申立てから解決までの一般的な期間としては、6か月から1年程度といえます。

    ただし、事案によっては1年を超える期間を要するケースもありますので、あくまでも目安として考えておいてください。

4、離婚調停で弁護士のサポートを受けるメリット

以下のようなメリットがありますので、離婚調停をお考えの方は、弁護士によるサポートを受けることをおすすめします。

  1. (1)調停期日に同席してくれるため不安を軽減できる

    弁護士に依頼すれば調停期日に弁護士が同席してくれます。
    初めての調停で裁判所という不慣れな環境だと、不安や緊張から調停委員に伝えたいことを十分に伝えられない方も少なくありません。弁護士がいれば、当事者からの説明では不十分な部分については弁護士が補足してくれますし、法的観点から適切な主張をしてもらうことができます。
    自分で対応するのが不安だという方は、弁護士に対応を任せるとよいでしょう。

  2. (2)適正な離婚条件で合意を成立させることができる

    離婚をする際には、親権、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流、年金分割などの離婚条件の取り決めが必要になります。
    それぞれの離婚条件には、決め方や相場となる金額などがありますので、それらを理解していなければ不利な条件で合意をしてしまうリスクがあります。弁護士がいれば相手から提示された離婚条件が適正なものであるかどうかを判断できますので、不利な条件で離婚に応じてしまうリスクを回避することができます。

  3. (3)離婚訴訟を踏まえた対応ができる

    離婚調停はあくまでも話し合いの手続きですので、離婚の合意がまとまらなかった場合は調停不成立となり、離婚調停が終了します。
    離婚調停終了後は、離婚訴訟の提起が必要になりますが、離婚訴訟では、法定離婚事由がなければ離婚をすることができません。法定離婚事由に該当する事情があるかどうかは、法的観点からの検討が必要になりますので、弁護士でなければ判断が難しいといえるでしょう。
    調停段階から弁護士に依頼をしていれば、将来の離婚訴訟を踏まえた対応が可能です。明確な法定離婚事由がある事案であれば、早期に離婚訴訟に切り替えた方が解決までの期間を短縮できる可能性もあります。

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5、まとめ

離婚調停は、当事者本人だけでも対応可能な手続きですし、調停委員に聞かれる事は、ある程度決まっています。したがって、事前に準備をしておくことで、スムーズに話し合いを進めることができるでしょう。

しかし、弁護士のサポートがあった方が有利に進められる可能性が高くなります。自分だけでは不安な方は、弁護士への依頼をおすすめします。

また、離婚問題に対応した経験が豊富な弁護士であれば、親権や金銭面など譲りたくない条件を通すためにどうすればよいか、ご自身の要望が法的に適切かどうかのアドバイスが可能です。ベリーベスト法律事務所では、離婚・男女問題専門チームに所属する弁護士が、ご相談を承ります。調停を視野に入れて離婚を検討している方、調停を申し立てられてしまった方は、初回60分無料相談が可能なベリーベスト法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
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※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
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