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托卵妻と離婚できる? 子どもとの親子関係や養育費について解説

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更新日:2025年06月26日  公開日:2025年06月25日
托卵妻と離婚できる? 子どもとの親子関係や養育費について解説

「子どもの顔が自分に全然似ていない」「妻と性行為をした時期と出産予定時期が合わない」という場合、妻に托卵(たくらん)されている可能性があります。

托卵とは、妻が夫以外の男性との間の子どもを夫に育てさせることをいう俗語です。本来は、カッコウなどの鳥が他の鳥の巣に卵を産み、その親鳥に育てさせる習性を表す言葉ですが、人間関係においては比喩的に用いられています。

托卵は、法定離婚事由に該当する可能性があります。妻が離婚を拒否していても離婚できる可能性が高いと言えます。しかし、托卵が判明した時期によっては法的な親子関係を否定できず、養育費の支払い義務が続くことがありますので注意しなくてはなりません。

今回は、托卵妻と離婚する方法や子どもとの親子関係、養育費の支払い義務などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

目次を

1、妻の托卵が原因で離婚はできる?

妻の托卵が発覚した場合、それを理由に離婚することはできるのでしょうか。以下では、托卵妻との離婚の可否およびその方法について説明します。

  1. (1)托卵は法定離婚事由に該当する可能性あり

    托卵は、下記のとおり、法律上離婚が認められる原因として定められている法定離婚事由(「不貞」)に該当しますので、托卵を理由として離婚することが可能です。

    托卵は、婚姻中の不貞行為を裏付ける事実です。托卵妻は、婚姻中に夫以外の男性と性行為をしているということになりますので、法定離婚事由の一つである「不貞行為」に該当します。また、性行為が婚姻前であったとしても、夫を騙して他人の子どもを育てさせていたという点で法定離婚事由の一つである「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります

    このように托卵は法定離婚事由に該当する可能性が高いため、妻が離婚を拒否していたとしても離婚することができる可能性が高いです。

  2. (2)托卵をした妻に対しては慰謝料請求も可能

    托卵した妻は、夫以外の男性と性行為をしたことを隠し、夫を騙して他人の子どもを育てさせていたのであって、故意又は過失によって夫の権利や法律上保護される利益を侵害しています。よって、夫は托卵妻に対して不法行為に基づく慰謝料請求が可能です。

    ただし、托卵妻に対して慰謝料請求するには、托卵の証拠が必要です。DNA鑑定により自分と子どもとの間に血縁関係がないことを明らかにしてから請求されるのがよいでしょう。

    なお、不貞行為による離婚慰謝料の相場は100~300万円程度です。托卵の場合は不貞行為に加えて夫を騙して他人の子どもを育てさせていたという点で悪質性が高いとも言えますので、一般的な相場よりも高額になる可能性もあります。

  3. (3)托卵をした妻と離婚する方法

    托卵した妻と離婚する方法には、「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つの方法がああります。

    まずは夫婦で離婚の話し合い(協議離婚・交渉)をし、合意した場合は解決。不合意の場合は調停の申し立てを行い、離婚調停へ進む。調停も不成立の場合は離婚裁判(訴訟)を提起し、敗訴した場合は不成立となる。

    ① 協議離婚
    協議離婚とは、夫婦が話し合いにより離婚をする方法です。離婚の方法の中でももっとも一般的な方法であり、離婚する夫婦のほとんどが協議離婚により離婚しています。
    夫婦の話し合いにより離婚の合意がまとまったときは、婚姻届に記入をして市区町村役場に提出すれば離婚成立となります。
    なお、協議離婚をする際には、離婚時の合意内容まとめた離婚協議書を作成するようにしてください。

    ② 調停離婚
    調停離婚とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して離婚する方法です。
    協議離婚の方法では離婚の合意に至らない場合、家庭裁判所に離婚調停の申立てをする必要があります。離婚調停では、夫婦が直接顔を合わせることはなく調停委員を介して話し合いが進められますので、感情的な対立を防ぐことができてスムーズな話し合いが可能です。離婚および離婚条件について夫婦が合意できた時点で離婚調停成立となり、合意内容が調停調書にまとめられます。

    ③ 裁判離婚
    裁判離婚とは、家庭裁判所の訴訟手続きを利用して離婚する方法です。
    離婚調停が不成立になった場合、家庭裁判所に離婚訴訟を提起する必要があります。離婚訴訟では、裁判所が離婚の可否を判断しますが、離婚を認めてもらうには以下の法定離婚事由のうちいずれかの事由が存在する必要があります。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 3年以上の生死不明
    • 強度の精神病にかかり回復の見込みがない(民法改正により削除予定です)
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由


    托卵は、法定離婚事由のうち「不貞行為」および「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性が高いため、托卵があったことを証拠により立証できれば裁判離婚できる可能性は高いと言えます。

2、托卵が判明した子どもとの親子関係を否定する方法

結婚している男女間に生まれた子どもは、法律上夫の子どもと推定されますので、托卵による子どもであっても法律上は夫の子どもとして扱われます。そのままでは、子どもに関する養育費の支払い義務が夫側に生じたり、子どもに夫の財産の相続権が認められたりして、不都合なケースが生じてしまいます。

法律上の親子関係を否定するためには、以下のような方法をとることができます。

  1. (1)嫡出否認の訴え

    嫡出否認の訴えとは、嫡出子としての法律上の推定がおよぶ子どもとの間の親子関係を否定する手続きです。

    婚姻中に生まれた子どもは夫の子どもであると推定されますので、托卵による子どもとの親子関係を否定するには、嫡出否認の訴えが必要になります。嫡出否認の訴えには調停前置主義が適用されますので、裁判所に訴えを起こす前に必ず「嫡出否認の調停」を申し立てなければなりません。

    調停による話し合いの結果、托卵による子どもであるとの合意ができ、必要な調査(DNA鑑定)によりそのことが明らかになるなど裁判所が当事者の合意が正当であると認める場合には、合意に相当する審判が行われます。
    他方、托卵による子どもであるとの合意が得られない場合は、調停不成立となり「嫡出否認の訴え」により争うことになります。

    なお、嫡出否認の訴えは子どもの出生を知ったときから3年以内に行わなければなりません。托卵に気づいたのが子どもが生まれてから3年以上経過してからだと、嫡出否認の方法により親子関係を否定することができませんので注意が必要です。

  2. (2)親子関係不存在確認の訴え

    親子関係不存在確認の訴えとは、戸籍上の親子(父子)関係が存在しないことを確認するための裁判手続きです。

    嫡出否認の訴えには、3年という期限があるため、自分の子どもではないと気づいたときにはすでに3年を経過しているケースが多く、嫡出否認の訴えを利用できるケースは限られています。親子関係不存在確認の訴えであれば、嫡出否認の訴えのような期限は設けられていませんので、いつでも利用することが可能です。

    ただし、親子関係不存在確認の訴えは、以下のような、嫡出子として推定されない子どもとの親子関係を否定する場合に利用できる手続きです。

    • 婚姻前に妊娠した子ども
    • 婚姻中でも夫婦が会えない状況(海外出張、単身赴任、服役中など)で妊娠した子ども
    など


    そのため、托卵による子どもの場合には、DNA検査により生物的な親子関係がないことが判明したとしても特別な事情がない限りは、親子関係不存在確認の訴えを利用することはできません。

    嫡出否認や親子関係不存在確認の訴えについては嫡出否認・親子関係不存在のページでも詳しく解説しています。

3、親子関係が解消できない場合の養育費の取り扱い

嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認の訴えができない、という場合、托卵による子どもとの親子関係が解消できません。そのような場合、離婚後の養育費の取り扱いはどうなるのでしょうか。

  1. (1)【原則】托卵による子どもでも養育費の支払い義務がある

    嫡出否認の訴えの期限が過ぎてしまって嫡出否認の訴えができず、親子関係不存在確認の訴えを使える事情もない場合、DNA検査により生物的なつながりがないことが判明しても、法律上の親子関係を解消することはできません。

    このような場合、托卵による子どもであっても法律上は親子として扱われます。そのため、離婚後、法律上の父親は托卵による子どもの養育費を支払わなければなりません

  2. (2)【例外】権利の濫用にあたれば養育費の支払いを拒める

    離婚した妻から托卵による子どもの養育費を請求された場合、法律上の親である以上、養育費の支払いを拒むことができないのが原則です。

    しかし、以下のような事情がある場合には、元妻による養育費請求は権利の濫用であると主張することで例外的に養育費の支払いを拒める可能性があります。

    • 妻が托卵の子どもであることを隠していたため、夫が親子関係を否定する手段を失った
    • 夫はこれまで十分な養育費を支払っている
    • 妻が子どもを監護する費用を負担できるだけの収入がある
    • 離婚に伴い妻が財産分与を受けた

4、妻の托卵が判明したときは弁護士に相談を

妻の托卵が判明した場合、離婚や親子関係の問題などを適切に処理する必要がありますので、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)妻の托卵が判明したときの対処法をアドバイスできる

    妻の托卵が判明し、離婚を検討中の方は、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

    法律上の親子関係を否定するには、嫡出否認の訴えを利用しなければなりませんが3年という期限があるため、托卵を知った時期によっては利用できないケースがあります。また、托卵による子どもでも親子関係が否定できなければ原則として養育費の支払い義務が生じますが、権利の濫用にあたれば例外的に拒絶できるケースもあります。

    このように托卵による離婚の事案では一般的な離婚の事案とは異なり、子どもとの間に生物学的な親子関係がないため、問題が非常に複雑です。問題を適切に処理するには専門家である弁護士のサポートが不可欠ですので、まずは弁護士に相談するようにしてください。

  2. (2)代理人として妻と交渉ができる

    托卵妻との離婚を決断したときは、まずは話し合いにより離婚を目指していきます。
    しかし、妻に騙されて他人の子どもを育てさせられた夫には、多大な精神的苦痛を被っており、冷静に妻と話をするのが困難だという方も多いでしょう。弁護士に依頼すれば妻との交渉をすべて弁護士に任せることができますので、精神的負担を最小限に抑えることができます。弁護士への依頼も検討されるとよいでしょう。

    弁護士が代理人として離婚交渉を担当すれば、法的に適切な条件で合意ができますので、自分で交渉するよりも有利な条件で離婚できる可能性が高くなるといえます。

  3. (3)調停や訴訟などの法的手続きも適切に対応できる

    托卵妻が離婚に応じてくれないときは、家庭裁判所に離婚調停の申し立てや離婚訴訟の提起などの法的手続きが必要なります。

    また、托卵による子どもとの親子関係を否定するには嫡出否認の訴えをする必要がありますが、それには調停および訴訟の手続きが必要です。

    このように托卵の事案ではさまざまな法的手続きが複雑に絡み合っていますので、適切に対応するには弁護士のサポートが不可欠です。特に、嫡出否認の訴えには3年という期限がありますので、托卵に気づいたときはすぐに弁護士に相談するようにしましょう。

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5、まとめ

托卵は、法定離婚事由である「不貞行為」および「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しますので、妻が離婚を拒否していても裁判手続きにより離婚できる可能性が高いです。

また、托卵による子どもとの間には生物学的なつながりがありませんので、法律上の親子関係を否定するには嫡出否認の訴えを提起する必要があります。

このように托卵が明らかになったときはさまざまな手続きを検討しなければなりませんので、離婚をお考えの方は、すぐにベリーベスト法律事務所までご相談ください。
なお、ご来所いただいての弁護士相談だけでなく、お客さまのご都合に合わせてZoomや電話を活用したオンライン相談も可能です。

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この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
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  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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