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離婚届を勝手に出すのは違法? リスクと正しい進め方を弁護士が解説

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更新日:2025年09月10日  公開日:2025年09月10日
離婚届を勝手に出すのは違法? リスクと正しい進め方を弁護士が解説

離婚の話し合いが進まず、いつまでたっても離婚ができない状態が続くと「離婚届を勝手に出してしまおう」と考える方もいるかもしれません。

しかし、勝手に離婚届を出して離婚をしても無効になってしまうことに加えて、有印私文書偽造罪・電磁的公正証書原本不実記録罪などの刑事罰の対象になるリスクがあります。そのため、離婚届を勝手に出すのは絶対にやめましょう。

今回は、離婚届を勝手に出すリスクと正しい離婚の進め方について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、離婚届を勝手に出すことは可能? 法律上のルール

離婚の話し合いが進まないときに離婚届を勝手に出すことは可能なのでしょうか。以下では離婚届に関する法律上の基本的なルールを説明します。

  1. (1)勝手に出した離婚届は無効

    離婚届を勝手に出したとしても、役所は必要事項が記入されているかどうかの形式的なチェックしかしませんので、記載内容に不備がなければ離婚届は受理されます。
    しかし、有効に離婚を成立させるには、離婚届の提出時に夫婦双方に離婚する意思がなければなりません。そのため、勝手に出した離婚届では相手の離婚意思を欠き、離婚が無効と判断される可能性が高いと言えます。

  2. (2)離婚届を勝手に出される可能性があるときは「離婚届不受理申出制度」を利用する

    勝手に出された離婚届であれば離婚は無効になりますが、一度受理された離婚を無効にするには、離婚無効調停や離婚無効訴訟により争わなければならず、時間と手間がかかります。
    そのため、相手が勝手に離婚届を提出する可能性がある場合は、「離婚届不受理申出制度」を利用するのがおすすめです。

    離婚届不受理申出制度とは、役所に「離婚届を受理しないでほしい」と申し出ておくことで、本人による届け出であることが確認できなければ離婚届が受理されない制度です。
    離婚届不受理申出制度の利用は無料で、取り下げない限り無制限に効果が持続します。

2、勝手に離婚届を出した場合に起こるリスク

離婚が進まないからといって勝手に離婚届を出すと以下のようなリスクが生じます。

  1. (1)離婚が無効になるリスク

    勝手に出した離婚届で成立した離婚は、法的には無効です。
    相手が離婚届を勝手に出されたことに気づけば離婚無効調停や離婚無効訴訟を起こされるリスクがあります。
    裁判で離婚届が勝手に出されたことが立証されれば、離婚が無効だと判断される可能性が高いと言えます。

  2. (2)罪に問われるリスク

    勝手に離婚届を出すと、以下のような犯罪が成立する可能性があります。

    • 有印私文書偽造罪(刑法159条):相手に無断で離婚届に相手方の署名をする行為(3月以上5年以下の拘禁刑)
    • 偽造有印私文書行使罪(刑法161条):偽造した離婚届を役所に提出する行為(3月以上5年以下の拘禁刑)
    • 電磁的公正証書原本不実記録材(刑法157条1項):偽造した離婚届で戸籍に虚偽の内容を記載される行為(5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)


    このような罪を犯すと、逮捕・起訴されて前科になるリスクがあります。

  3. (3)慰謝料を請求されるリスク

    離婚届を勝手に出す行為は、刑法上の犯罪に該当する違法な行為です。勝手に離婚届を出されたことを理由に精神的苦痛を被った配偶者から、慰謝料を請求されるリスクがあります。
    離婚届を勝手に出した目的が不倫相手と結婚するためなど悪質なケースでは、高額な慰謝料を請求されるおそれもあります。

3、離婚の成立要件は? 有責・無責配偶者の影響

有効に離婚を成立させるためにはどのような要件を満たす必要があるのでしょうか。また、有責配偶者と無責配偶者とでは離婚手続きにどのような影響があるのでしょうか。

  1. (1)離婚の成立要件とは?

    離婚を有効に成立させるためには、以下の要件を満たす必要があります。

    ① 離婚意思の存在
    夫婦双方に婚姻関係を解消の意思があることが必要です。離婚意思は、離婚届を作成した時点ではなく、離婚届を出す時点で必要になります。

    ② 離婚届の提出
    離婚届に必要事項を記載して、役所に提出する必要があります。


    夫婦の話し合いで離婚の合意が成立したときは、離婚届を作成し、それを役所に提出すれば離婚成立となります。
    協議離婚であれば、有責・無責にかかわらずお互いが離婚に合意できれば離婚することが可能です。

  2. (2)有責配偶者と無責配偶者とでは離婚にどのような影響がある?

    有責配偶者とは、離婚の原因を作った責任のある配偶者のことをいいます。具体的には、不倫、DV、モラハラなど婚姻関係を破綻させる行為をした人のことです。
    これに対して、無責配偶者とは、婚姻関係の破綻について責任のない配偶者のことをいいます。

    以下では、有責配偶者と無責配偶者とで、離婚にどのような影響が生じるのかをみていきましょう。

    ① 有責配偶者からの離婚請求は原則として認められない
    有責配偶者による離婚請求は、原則として認められません。
    自ら婚姻関係を破綻させたにもかかわらず、相手に離婚を求めるのは信義誠実の原則に反すると考えられるからです。協議離婚や調停離婚であれば有責配偶者であっても離婚は可能ですが、裁判では離婚は認められにくくなります。

    ② 偶者でも相手が離婚に合意しないときは調停・裁判をしなければならない
    無責配偶者であっても相手が離婚に応じてくれないときは、調停や裁判などの法的手続きが必要になります。
    裁判離婚になれば法定離婚事由がなければ離婚は認められませんが、相手が不貞行為をしたとか、暴力をふるったという事情があって、有責配偶者であれば、法定離婚事由にあたりますので離婚が認められる可能性が高いでしょう。

    ③ 有責配偶者は離婚慰謝料の支払いが必要
    有責配偶者は、相手から離婚を請求された場合、離婚慰謝料の支払いが必要になります。
    離婚慰謝料の相場は、どのような有責事由があるのかによって変わってきますが、一般的には100~300万円程度です。

    ④ 有責配偶者であっても財産分与や親権、養育費の判断でただちに不利になるとは言えない
    有責配偶者は、原則として離婚請求ができず慰謝料の支払いが必要になるなど離婚にあたっては不利な状況ではありますが、財産分与や親権、養育費の判断においてただちに不利になるとは言えません。
    ただし、財産分与については慰謝料的な財産分与として金額や財産分与の割合が修正されることがあります。親権の判断においても、不貞の際に子どもを同席させた、子どもの目の前で暴力を振るったなど、離婚の原因となる行為によって、子どもに対しても悪影響を与えていたという場合には、不利になります。

4、離婚に合意できない場合の正しい進め方

夫婦の話し合いでは離婚の合意に至らなかった場合、以下のような方法で離婚手続きを進めていきます。

  1. (1)一方的な離婚届の提出ではなく、調停や裁判による解決が必要

    夫婦の話し合いがまとまらず離婚ができないからといって、勝手に離婚届を出してはいけません。話し合いがまとまらない場合は、次の段階として家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。

    離婚調停では家庭裁判所の調停委員が関与して離婚の話し合いを進めてくれますので、夫婦だけで話し合いよりも離婚の合意に至る可能性が高くなります。しかし、離婚調停は、話し合いの手続きですので、離婚の合意がまとまらないときは調停不成立となってしまいます。

    調停が不成立になったときは最終的に家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。離婚訴訟では、裁判所が離婚の可否を判断しますがその際に重要になるのが法定離婚事由の有無です。以下のような法定離婚事由がなければ裁判で離婚することはできません。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 3年以上の生死不明
    • 回復の見込みのない強度の精神障害(2024年5月の民法改正により削除予定)
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由


    このように協議で解決できないときは法的手続きを利用することで離婚できる可能性があります。離婚届を勝手に出すことはやめましょう。

  2. (2)有責配偶者であっても離婚できる可能性がある

    有責配偶者による離婚請求は、原則として認められませんが、絶対に離婚できないというわけではありません。相手が離婚に合意してくれれば有責配偶者でも離婚ができます。また、離婚に応じてくれないときでも、以下のような条件を満たせば例外的に裁判での離婚請求が認められる可能性があります。

    • 別居期間が相当長期間にわたっていること
    • 未成熟子(生活の自立が困難な子ども)がいないこと
    • 相手方配偶者が精神的、経済的に著しく困窮しないこと
  3. (3)協議離婚で弁護士に依頼するメリット

    協議離婚であっても弁護士に依頼することには以下のメリットがあります。お早めに弁護士に相談、依頼して進めるのがおすすめです。

    ① 離婚の進め方についてアドバイスを受けられる
    離婚の進め方には、大きく分けて協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。
    有責配偶者であるか無責配偶者であるかによって、離婚の進め方は大きく異なり、取り決めるべき離婚条件も具体的な状況によって変わってきます。
    適切な方法および条件で離婚をするためには専門家のアドバイスが必要ですので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

    ② 相手との交渉や法的手続きを任せられる
    離婚をするには相手との話し合いが必要になりますが、相手と話し合うのが苦痛であったり、自分ひとりで対応するのが不安だという方は弁護士に依頼するとよいでしょう。
    弁護士に依頼すれば、相手との交渉を代わりに行ってもらうことが可能です。
    相手と顔を合わせる必要はありませんので、離婚に関する負担を大幅に軽減することができます。
    また、話し合いが決裂したときは離婚調停や離婚裁判などの法的手続きが必要になりますが、弁護士がいればこのような法的手続きも任せることが可能です。
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5、まとめ

離婚届を勝手に出す行為は法的リスクが大きく、離婚が無効になり、刑事責任を問われる可能性があります。離婚の話し合いがまとまらないときでも調停や裁判などの法的手段により離婚が可能ですので、勝手に離婚届を出すのではなく調停や裁判などを検討しましょう。

トラブルを回避し、自分にとって有利な条件で離婚を進めるためには、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。離婚をお考えの方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。

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この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
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