離婚後でも養育費は請求できる! 養育費をもらう方法や相場を解説
子どものいる夫婦が離婚するときに、一刻も早く別れたいがために離婚時に「養育費はいらない」と言ってしまうケースや、そもそも養育費に関する取り決めをしないで別れてしまうケースもあります。
しかし養育費は、子どもにとって大事なものです。離婚後、そのことに気付いて「やはり養育費を請求したい」と考える方もいるでしょう。
本コラムでは、離婚後に養育費をもらえるのかどうか、また養育費を請求する方法や相場について、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。
1、離婚後に養育費を請求することはできるのか
離婚するときに養育費について話し合いをしなかったために、離婚後に子の養育のため経済的に苦しくなり、養育費について取決めをしなかったことを後悔するケースは少なくありません。
しかし、取り決めなかったからといって全く請求できないわけではなく、養育費は離婚後も請求することができます。
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(1)養育費の話し合いをしないまま離婚する夫婦も多い
厚生労働省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、離婚時に養育費の取り決めをしていないと答えた世帯は、母子世帯51.0%、父子世帯69.0%と、いずれも養育費の取り決めをしていると答えた世帯の割合(母子世帯で46.8%、父子世帯28.2%)を上回りました。
この結果から、養育費について取り決めをしないまま別れる夫婦は決して少なくないことがわかります。 -
(2)離婚後も両親は未成熟子の扶養義務がある
しかし、夫婦間に子どもがいれば、離婚後も両親それぞれに子どもが経済的に自立するまで扶養する義務があります(民法第766条第1項,民法第877条第1項参照)。そのため、親権者でなくても、親であれば、離婚後も養育費をきちんと支払っていかなければならないのです。
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(3)養育費をもらうのは子どもの権利
養育費を実際に請求するのは親権者ですが、養育費をもらうのは親権者でなく子どもの権利です。
養育費を受け取ることで、子どもが離婚後も経済的に安定した生活を送ることができるだけでなく、離れて暮らす親の愛情も感じることができるでしょう。
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2、過去の養育費も請求することは可能か?
では、離婚後から養育費を請求するまでの期間にかかった養育費についても、請求することはできるのでしょうか。
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(1)過去に遡って養育費の請求が認められることは少ない
養育費の支払いが認められるのは、原則として養育費を請求した時点以降の分のみです。そのため、たとえば平成29年2月1日に離婚が成立し、平成30年2月1日に養育費請求の調停の申立てを行い、5月1日に請求が認められたとしても、実際に受け取ることができる養育費は、原則として平成30年2月1日以降の分のみとなります。
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(2)証拠があれば過去に遡って養育費を請求できることも
しかし、一般的には、養育費請求の調停を申し立てるよりも前に養育費を請求していれば、その時点に遡って養育費を請求することができると考えられています。もっとも、これは調停申立前の請求が立証可能であることが前提です。調停申立前に請求していたことを証明する証拠としては、たとえば、相手方に送信した養育費を請求する内容のメールやLINEが考えられます。
また、請求時以前に遡って養育費の請求を認めた裁判例も少ないながら存在します。 -
(3)無制限に養育費を請求することは認められない
ただし、過去に遡って養育費を請求できるケースでも、あまりに多額の養育費の請求を求めると、相手にとってかなりの経済的負担を強いることになり、相手にとって酷であると考えられます。そのため裁判例では、過去の養育費請求をある程度限定しているされること場合が多いようです。
3、離婚後の養育費は子どもが何歳までもらえる?
離婚後に子どもが養育費をもらえるのは、原則として成人に達するまでです。しかし、昨今では高校卒業後に大学などに進学することが一般的になっているため、離婚後に養育費をもらえる期限は子どもがどういう進路を歩むかによって異なり得ます。
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(1)離婚後に養育費がもらえるのは原則成人に達するまで
養育費の終期は、原則として扶養を要しない状態になったときであるといわれています。つまり、離婚後に養育費をもらえるのは、原則として成人するまでと考えられています。
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(2)成人に達する前でも養育費の支払が終了する場合も
子どもが高校卒業後に就職すれば、高校を卒業した時点で経済的に自立することになり親が扶養する必要はなくなります。この場合、離婚後に養育費を受け取ることができるのは高校卒業する年(18歳)の3月までと考えられます。
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(3)22歳3月末(大学卒業)まで養育費をもらうケースも
一方、最近では高校卒業後に大学に進学することが一般的になっています。子どもが大学在学中は、まだ経済的に自立できているとは言えません。ですから、当事者間で合意ができた場合には、大学を卒業するまで(22歳の3月まで)養育費を受け取ることが可能です。
当事者間で合意ができずに裁判所が決める場合には、親の学歴、職業、資力や子どもの希望、親の意向から大学進学が当然であると考えられるようなときは、成人に達しても養育費をもらえることがあります。
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4、離婚後、自分や相手方が再婚した場合でも養育費は請求できるか?
離婚後、非監護親・監護親がそれぞれの道を歩んでいるうちに新たな出会いがあり、再婚に至ることは珍しくありません。最近では、離婚後に子連れ同士で再婚して、いわゆる「ステップファミリー」となる家族も増えています。
自分や相手方が再婚した場合でも養育費の請求は可能なのでしょうか。ここでは、親権者が母親、非親権者・養育費支払義務者が父親の場合で考えてみます。
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(1)母親が再婚した場合
母親が再婚した場合、子どもは再婚相手と養子縁組をすることがあります。そうなると、親権者と養親が一次的扶養義務を負うことになり、子どもにかかる教育費や衣食住にかかる費用は親権者と養親が主に負担することになります。そのため、この場合、非親権者は、原則として養育費の支払義務を負いません。
他方で、養子縁組をしていない場合には、非親権者は従前どおり養育費の支払義務を負うこととなります。もっとも、その場合でも、親権者が再婚したことは、再婚後に非親権者が支払う養育費の額を判断する際に考慮されることにはなります。 -
(2)父親が再婚した場合
一方、父親が再婚した場合でも、父親が子どもの本当の父親であり扶養義務があることに変わりはないために、引き続き養育費の支払義務は発生します。たとえ父親と再婚相手との間に子どもが生まれたとしても、離れて暮らす子どもの扶養義務は免れません。
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(3)養育費が減額される可能性はある
母親が再婚した場合は、再婚前に比べて経済状況が良くなる場合が多いことから、父親から養育費の減額請求をされる可能性があります。
一方、父親が再婚した場合でも、場合によっては再婚相手や再婚相手との間に生まれた子どもを扶養しなければならない状態となるため、養育費の減額請求をしてくる可能性は十分考えられるでしょう。
5、離婚後の養育費の相場は?
養育費の金額については、特に法律では決まりがありません。そのため、養育費の具体的な金額は双方の経済状況をみながら話し合いで決めることになります。
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(1)実際に支払われている養育費の金額
令和4年度の司法統計によると、未成年の子どもがいる母親を監護者と定めたときに、父親から母親に支払われる養育費の金額でもっとも多くを占めるのは月額4万円以下(39.5%)、次いで多いのが月額2万円以下(27.1%)となっています。
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(2)養育費の金額は別居親と同水準の生活ができることが原則
養育費の金額については、子どもが非親権者である養育費支払義務者と同じ水準の生活ができる金額であることが大前提となります。
そのため、非親権者は収入が少ないからという理由で養育費を低い金額に設定することはできず、自分の生活水準を落としてでも、子どもが同程度の生活を維持できる程度の養育費を捻出することが必要です。 -
(3)実務では「養育費算定表」が利用されている
現在、養育費を算定するために東京・大阪の裁判官が共同研究を行い作成した「養育費算定表」が調停や審判で広く利用されています。
算定表では、養育費の支払義務者と権利者の年収、子どもの人数と年齢などから養育費の範囲を定めており、算定表を利用することで類似の事案では同程度の養育費の額が決められ、不公平にならないようにしています。
6、離婚後に養育費を請求する方法は?
離婚後に養育費を請求する際には、まず元夫婦間で協議を行うことになります。どうしても協議が整わない場合は、裁判所に調停または審判を申し立てることになります。
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(1)元夫婦間で離婚後の養育費について協議を行う
まずは元夫婦間で話し合いの場を持ち、養育費の金額について協議を行います。
具体的な養育費の金額は、双方の現在の収入状況や子どもの人数、進学状況、健康状態などを総合的に考慮して決定します。合意できた内容は公正証書の形にしておくと、支払が滞った場合にスムーズに強制執行ができます。 -
(2)養育費請求調停を申し立てる
協議が整わない場合は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。
調停では、調停委員が当事者双方から収入の状況や子どもの状況などに関してヒアリングを行い、解決策を提示します。ここで当事者双方が合意すれば調停調書が作成され調停は終了しますが、合意ができなかった場合は審判に移行し、裁判官が判断を行うことになります。 -
(3)養育費の支払が滞ったときは履行勧告や強制執行も
養育費の取り決めをしたのに支払が滞ったときは、裁判所に申し出ることによって裁判所から履行勧告や履行命令を出してもらうことができます。また、強制執行をして相手方の給与や財産を差し押えて、そこから養育費を支払わせることも可能です。
7、離婚後の養育費について弁護士に相談・依頼するメリット
離婚前には養育費の取り決めをしなかったけれど、離婚後に冷静に考えてみるとやっぱり養育費が必要だ…と考えるならば、弁護士に相談されることをおすすめします。
離婚後に養育費のことを弁護士に相談・依頼するメリットとしては、以下の3つがあげられます。
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(1)より適切な金額の養育費を獲得できる可能性がある
離婚問題を豊富に取り扱っている弁護士であれば、過去の事例から「これくらいの養育費が得られるだろう」と予測することができるので、個々の状況に合わせてより適切な金額の養育費を獲得できる可能性が高くなります。
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(2)養育費の増額に関する交渉もしやすい
離婚後、将来的に「子どもが私立の学校に通うことになった」「自分の収入が減った」などの理由で養育費の増額が必要になるときがあるかもしれません。当事者同士であれば協議が難航する可能性がありますが、弁護士に依頼をすれば相手方に養育費増額に関する交渉をしやすくなります。
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(3)離婚後に養育費の支払が滞った場合も速やかに対応ができる
もし離婚後に養育費の支払が滞ることがあっても、対応をしてもらえます。履行勧告や強制執行の申し出は裁判所に対してする必要がありますが、その手続も弁護士に任せれば自分で行う必要はありません。
ベリーベスト法律事務所では、養育費を受け取れずに困っている方をサポートしております。約束したのに支払われない、元配偶者と話したくないために督促を諦めているなど、離婚後の養育費の支払いについてお悩みを抱えている場合は、弁護士に任せてみませんか。
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8、まとめ
離婚後に養育費を請求するにあたっては、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。また元配偶者と養育費の取り決めについて協議を進めるのに、なかなかスムーズにいかないこともあるでしょう。
離婚後に「養育費を請求したい」と考えたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、養育費未払いに関するご相談は初回60分間無料です。
「離婚後に養育費を請求したい」「相手が離婚後しばらく経って養育費を払ってくれなくなった」などのお悩みがありましたら、いつでもお気軽にベリーベスト法律事務所までご相談ください。知見豊富な弁護士が、親身になってサポートいたします。
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- 2010年12月16日
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