養育費を払わないとどうなる? 今までどおり払えないときの減額方法
減給や降格、健康状態の悪化など、人生においてはさまざまなアクシデントが起こるものです。転職をすることで、年収が下がることもあるでしょう。
その結果、「今までどおりに養育費を払うと生活できない」「養育費を払わないで済む方法はないのだろうか」「離婚後の再婚をきっかけに減額したい」と考える方も少なくありません。
養育費が払えないままの状態が続くと、どのような展開が待ち受けているのか、不安になっている方もいるはずです。
実は、養育費を払わないで放置していると、給与を差し押さえられたり、ときには罪に問われたりする可能性があります。そのような事態に陥らないよう、適切に対応することが大切です。
本コラムでは、一度取り決めた養育費を払えない場合の注意点や減額するときの手続き方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、養育費の支払いは義務 「生活が苦しい」という言い訳は通用しない
ときどき、「自分の生活が苦しいから養育費を払えない」という方からのご相談をお受けすることがあります。そもそも生活が苦しいという理由で養育費を払わなくて済むものなのでしょうか。
法律上、そういった言い訳は許されません。養育費の支払いは子どもに対する扶養義務の一環です。
「生活保持義務」といい、「自分と同じレベルの生活をさせる」高いレベルの義務であるため、自分の生活レベルを落としてでも子どもに生活保障をしなければなりません。
次のような理由も、養育費を払えない理由にはならないのです。
- 住宅ローンの支払いがある
- 借金がある
- 家賃が高い
- 交際費がかかる
これらは、「養育費を払わない理由として、すべて通用しない」と考えていただくのがよいでしょう。
参考:養育費の基礎知識
2、養育費を支払わなかったらどうなる? 刑事罰を科される可能性も
養育費を払わなかったとしたら、どのようなペナルティーがあるのか、みていきましょう。
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(1)給与や預貯金の差し押さえ
養育費を払えないからといって、未払い状態のままにしていると、「給料」や「預貯金」などの財産を差し押さえられる可能性があります。離婚時に養育費の支払いを「公正証書」で取り決めていたら、相手は公正証書を使ってすぐに強制執行(差し押さえ)の申し立てをすることもできます。
離婚調停や離婚訴訟で養育費が決まった場合も同じです。給料、預貯金、生命保険や火災保険、株式、不動産や車などの財産が差し押さえ対象となります。給料を差し押さえられることになれば、会社にも養育費滞納を知られることとなるでしょう。
養育費の約束事を公正証書にしていなくても、相手が調停(養育費請求調停)や審判をすれば養育費の支払い義務が確定します。すると結局は、調停調書や審判書を使って差し押さえをされてしまうでしょう。
差し押さえをするとき、従来の民事執行法では債権者が債務者の財産を個別に特定する必要がありました(養育費問題の場合、債権者は親権者や子どものことを指します。債務者は、養育費の支払い義務者を指します)。しかし、令和2年4月の法改正により、債権者は金融機関や年金事務所などに預金口座や勤務先について「情報照会」ができるようになっています。
元配偶者に勤務先や預金口座を知られていないとしても、情報照会を通して勤務先が判明し、給与差し押さえの手続きが容易に行うことができるようになっているのです。 -
(2)刑事罰
従来、養育費を払わないことに対して、刑事罰が適用される可能性はありませんでした。ただ、令和2年4月の民事執行法改正以降は、養育費を払えない場合に懲役刑や罰金刑が下される可能性が生じてきているため、注意が必要です。
改正民事執行法では、裁判所の「財産開示手続き」に協力しなかった債務者に適用される刑事罰が新設されたのです。財産開示手続きとは、債権者が債務者の財産内容を調べるために裁判所に申し立てを行い、裁判所から債務者へ財産開示を促したり命じたりする手続きです。
養育費を滞納すると、相手はあなたの財産を差し押さえるための「調査」を行います。そのとき、相手は裁判所に申し立てて、あなたへ「財産開示」を求めることができます。財産開示命令が出ているのに無視した場合や虚偽の報告をした場合、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金刑」が適用される可能性があります。
従来は「30万円以下の過料」という軽い行政罰しかありませんでしたが、令和2年4月から適用される改正法では刑事罰に変更されて厳しくなっています。
つまり、今は養育費を払えないまま放置して裁判所からの呼び出しや命令を無視し続けていると、一生消えない「前科」がつくリスクがあるのです。
3、一度取り決めた養育費を減額できる?
そうはいっても、「年収が下がり、収入が減ってしまってどうしても払えない」などのように、やむを得ない事情により養育費を払えなくなってしまった場合もあるでしょう。そのような場合、一度取り決めた養育費の金額を減額できる可能性はあります。
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(1)養育費の減額が認められる場合
●やむを得ない事情で収入が減った、なくなった
病気やけが、リストラなどのやむを得ない事情によって収入が減ったりなくなったりした場合には、養育費の減額を求めることができます。たとえば、生活保護を受給するようになったら、基本的に養育費支払い義務はありません。
サラリーマンだけではなく、自営業者が経営努力をしているにもかかわらず、景気変動によって赤字が続いている場合などでも減額できる可能性があります。ただし、わざと仕事を減らして収入を下げたり赤字にしたりしている場合には減額されません。
●再婚して家族が増えた
養育費の支払い義務者が再婚したような場合、養育費の減額を求めることができます。新しい家族の扶養義務が生じるため、以前の子どもに支払う養育費を減額せざるを得ないためです。
●子どもが養子縁組した
以前の子どもが養子縁組すると、一次的には養親が子どもを養育すべき義務を負うので、実親は養育費を払わなくて良くなります。
たとえば、親権者となった前妻が再婚して子どもと再婚相手(新しい夫)が養子縁組した場合には、養育費を支払う義務がなくなります。このとき、「再婚しただけ」では養育費支払い義務はなくなりません。「養子縁組した場合」に限られるので注意しましょう。
なお、前妻が再婚相手と別れて、子どもと再婚相手の養子縁組が解消されたら、実親の養育費支払い義務が復活します。
●相手の収入が増えた
養育費の金額は支払う側と受け取る側の収入のバランスによって決定され、受け取る側の収入が上がると養育費は下がります。よって、離婚後に相手の収入が大きく上がれば、養育費を減額できる可能性があります。 -
(2)養育費の減額が認められない場合
●今払っている養育費の金額が相場より高いと気づいた
養育費の相場の金額は、基本的に支払う側と受け取る側の年収によって決まります。ただし、自分たちでそれより高い金額を定めてもかまいません。
いったん納得して決めた内容は有効なので、離婚時に調停などで相場より高い養育費の金額を定めた場合、後になって「相場より高いなんて知らなかったので減額してほしい」と主張しても、これを理由に減額が認められる可能性は少ないでしょう。
●面会交流させてもらえない
離婚後によくあるのが、「子どもと会わせてくれない」というトラブルです。「面会させてもらえないなら養育費を払わない」という方が少なくありません。
心情的には理解できるのですが、法律上は面会交流と養育費はワンセットとはされていません。相手が面会交流させてくれなくても、養育費は払わなければならないのです。
●収入が減るとわかっていて、あえて転職した
養育費の金額は、支払う側の収入が下がれば減額を求めることができるのが基本です。しかし、支払いをしなければならない立場の方が「収入が減る」とわかっていて不必要な転職をしても、養育費を減額できない可能性が高いと考えてください。養育費の減額が認められるのは、「やむを得ない減収の場合」なのです。
●養育費を払いたくないので、わざと仕事をしていない
養育費を払いたくないからといってわざと仕事をせず、「無職だから養育費を払わない」と主張しても支払い義務は免除されません。調停を申し立てられたら、平均賃金などを参考に養育費の相場金額を算定して支払い命令を下される可能性があります。
4、養育費の減額を求める手続きの流れと弁護士に相談すべき理由
やむを得ない減収や再婚、子どもの誕生などの事情で養育費を減額したいときには、以下のような流れで対応しましょう。
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(1)まずは話し合い
養育費を減額したいなら、相手(親権者や監護者)と話し合いましょう。相手が減額を受け入れれば、合意によって養育費を減額できます。
納得できる金額を設定できたら、新たに「養育費に関する合意書」を作成し、合意内容を書面化しましょう。 -
(2)話し合いがまとまらなければ、養育費減額請求調停を申し立てる
相手が話し合いに応じてくれない場合や金額を定められない場合、家庭裁判所で「養育費減額請求調停」を申し立てましょう。調停では、調停委員がふたりの間に入って調整してくれますし、相場の金額も提示してもらえます。双方が納得できれば、調停が成立して養育費を減額できるでしょう。
調停が不成立になった場合には「審判」になって裁判所が新しい養育費の金額を決定してくれます。減額すべき事由があれば減額された金額を適用してもらえるでしょう。 -
(3)養育費の減額交渉を弁護士に相談するメリット
●妥当な金額を定めやすい
養育費を減額したいと思っても、「いくらが相当か」ということがわからない方が多いものです。弁護士に相談すれば、妥当な養育費の金額を把握することができます。
●相手も話し合いに応じてくれやすくなる
親権者に対していきなり「養育費を減額したい」と言っても、感情的になられて話し合いが進まないケースも多々あります。そのようなときでも弁護士が間に入れば、相手も感情を抑え、落ち着いて話に耳を傾けてくれやすくなりますし、話し合いがまとまる可能性も高まるでしょう。
●調停や審判を有利に進められる
話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所で「養育費減額調停」「養育費減額審判」をしなければなりません。弁護士に相談すれば、調停や審判にどのように臨めばよいのかといったアドバイスを受けることができますし、当日同席することも可能です。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
5、まとめ
たとえ自分の生活が苦しくても、養育費の支払いは義務です。自分の理想どおりに暮らせないからといって、身勝手に養育費を払わないでいると、刑事罰を科される可能性もあります。
しかし、借金してまでその義務を果たさなければならないというものではありません。やむを得ない事情により、取り決めた養育費の金額を払えない場合には、減額できる可能性があります。
一度取り決めた養育費を払えない状況になり、お困りのようでしたら、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
養育費問題の経験豊富な弁護士が詳しくご事情をお伺いして、養育費を減額するためのサポートをいたします。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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