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離婚時の財産分与に「税金」はかかる? 対策と注意点を弁護士が解説

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更新日:2024年10月09日  公開日:2021年01月07日
離婚時の財産分与に「税金」はかかる? 対策と注意点を弁護士が解説

離婚するとき、婚姻中に築いた財産をふたりで分け合う手続きとして「財産分与」を行います。

この財産を渡す、受け取るという行為には、税金がかからないかと不安に思う方もいるでしょう。離婚した後に税金の請求がくるとなると、それなりの準備も必要です。

この記事では、離婚時の財産分与に関する税金について、財産を渡す側と受け取る側に分けて、計算方法や税金対策を解説します。

1、離婚するときの財産分与に税金はかかるのか

まず、財産分与とはどのようなものなのか、改めて確認したうえで、税金との関係を見ていきましょう。

  1. (1)財産分与とは

    財産分与とは、離婚のときに、夫婦がそれまで共に築いてきた共有財産を双方で分けることです。その根拠は民法768条で、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と明記されています。

    条文の文言からは、協議離婚の場合にだけ適用されるかのように見えますが、調停離婚や裁判離婚など、どんな形式の離婚でも財産分与を請求することが可能です。

    また、分与の対象となる夫婦共有の財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産をいいます。夫婦ふたりで協力して築いた財産に限られるので、婚姻前からそれぞれが所有していた財産や、遺産相続によって得た財産などは、夫婦共有財産に含まれません。

    なお、分与の割合は、基本的に二分の一ずつとされています。たとえ妻が専業主婦だった場合でも、夫が働いて財産を貯めることができたのは妻の内助の功のおかげだと考えられるからです。

    そのため財産分与は、夫婦それぞれの収入額に関わらず、原則としては半分ずつに分けることになります。ただし、財産形成の貢献度に著しい偏りがある場合は、分割の割合が異なるケースもあるため、注意が必要です。

    参考:財産分与の基礎知識

  2. (2)財産分与に税金はかかるのか

    財産分与は、本来夫婦の共有財産であったものを離婚のときに分ける手続きです。言い換えれば、もともと自分の財産だったものを本来の名義に変更するだけともいえます。したがって、原則として、離婚時の財産分与に税金はかかりません
    ただし、例外的に離婚時の財産分与の際に税金がかかるものもあります

    「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。

    適切な分配・損をしないために離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください

    参考:離婚に関する税金についてのよくある質問

2、渡す側が知っておきたい税金と計算方法

まずは、財産を渡す側の立場からみていきましょう。財産を渡すときには、譲渡所得税がかかる可能性があります。

  1. (1)譲渡所得税

    ●対象
    譲渡所得税の課税対象は、土地や建物などの不動産、株式やゴルフの会員権などに限られます。現金は譲渡所得税の対象外です。

    ●譲渡所得税を課せられるケース
    課税対象となる不動産などを譲渡した場合でも、譲渡所得税がかかる場合と、かからない場合があります。

    ポイントは、購入時の価格と財産分与時の価格です。
    土地や建物など譲渡対象物を分与譲渡したときの価格が、購入したときの価格よりも高い場合、譲渡所得税を課せられます。

    一方、分与時の価格が購入時よりも低い場合は、原則、譲渡所得税はかかりません。

    ●税金の計算方法
    譲渡所得税は、5年の譲渡対象物の所有期間を基準として、税金の計算方法が異なります。具体的には、以下の2種類です。

    • 長期譲渡取得……譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの
    • 短期譲渡取得……譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの


    なお、譲渡所得税には、所得税・復興特別所得税・住民税の3つの税金があるため、それぞれ計算しなくてはなりません。3つの税金の合計が、譲渡所得税等となります。

  2. (2)長期譲渡所得税等の計算方法

    まず、長期譲渡所得税等の具体的な計算方法についてみていきましょう。以下の計算式で税額を算出します。

    • 所得税……課税長期譲渡所得金額(譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除)×15%
    • 復興特別所得税……所得税×2.1%
    • 住民税……課税長期譲渡所得金額×5%


    さらに、所得税や住民税の計算で必要な、課税長期譲渡所得金額の計算に用いる各項目について詳細をみておきましょう。

    譲渡価額とは、土地や建物の売却代金などを指します。取得費は、不動産の購入代金、購入手数料、改良費などです。そして、譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用を指しており、測量費や売買契約書の印紙代などが含まれます。

    また、特別控除とは、特例として一定の範囲内で非課税となる場合のことをいい、財産分与でマイホームを分与するときは、最大3000万円の特別控除を受けることが可能です

    たとえば、課税長期譲渡所得金額が6000万円だった場合を考えてみましょう。その場合、以下のように計算します。

    • 所得税……6000万円×15%=900万円
    • 復興特別所得税……900万円×2.1%=18万9000円
    • 住民税……6000万円×5%=300万円
    • 長期譲渡所得税等……900万円+18万9000円+300万円=1218万9000円
  3. (3)短期譲渡所得税等の計算方法

    短期譲渡取得税等の計算方法は以下の通りです。

    • 所得税……課税短期譲渡所得金額×30%
    • 復興特別所得税……所得税×2.1%
    • 住民税……課税短期譲渡所得金額×9%


    先ほどと同じように、課税短期譲渡所得金額が6000万円だった場合を考えてみましょう。すると、計算は以下のように行います。

    • 所得税……6000万円×30%=1800万円
    • 復興特別所得税……1800万円×2.1%=37万8000円
    • 住民税……6000万円×9%=540万円
    • 短期譲渡所得税……1800万円+37万8000円+540万円=2377万8000円

3、受け取る側が知っておくべき税金と計算方法

次に、受け取る側が知っておくべき税金についてみていきましょう。
受け取る側に考えられる税には、贈与税と不動産取得税の2種類があります。

  1. (1)贈与税

    結論から言うと、基本的には財産分与を受けても贈与税を支払う必要はありません。財産分与はあくまで夫婦の共有財産の清算にすぎず、自分たちの財産を分割するだけだからです。

    ただし、次のいずれかに該当すると、例外的に贈与税の対象となる可能性があります。

    ①財産分与の額が多すぎる
    財産分与は原則として夫婦で折半します。しかし、一方が譲り受ける財産が多すぎると、財産分与の範囲を超えた贈与だと判断されるかもしれません。贈与だと判断された場合、例外的に贈与税がかかるので注意が必要です

    ②偽装離婚など、財産分与の形をとった贈与である
    偽装離婚は法的に認めらません。したがって、偽装離婚だと判断されると離婚時の財産分与の税制適用は受けられないため、離婚によってもらった財産のすべてに贈与税がかかります。

  2. (2)不動産取得税

    財産分与によって不動産を取得した場合、不動産取得税がかかるかが問題となります。

    結論としては、不動産を受け取った側は、基本的に不動産取得税を支払う必要はありません。贈与税の場合と同じく、財産分与は自分の財産を分割しただけであり、新たに財産を取得したわけではないからです。

    ただし、譲り受ける財産が財産分与の相場からして多すぎる場合には、例外的に不動産取得税がかかる場合があります。

    不動産取得税の金額は、固定資産課税台帳に登録されている固定資産税評価額の3%です。なお、3%は住宅として利用される土地や建物で、住宅以外の建物の場合は4%となります。

    また、不動産の登録免許税や不動産を取得した後の毎年の固定資産税は発生するため、注意が必要です。それぞれ、計算方法は以下のようになります。

    • 登録免許税……固定資産税評価額の1000分の20(100円未満の金額は切り捨て)
    • 固定資産税……固定資産税評価額×1.4%(標準税率)


    たとえば、固定資産税評価額1億円の住宅用建物について税金を計算すると、以下のようになります。(各種特例は考慮していません。)

    • 不動産取得税……1億円×3%=300万円
    • 登録免許税……1億円×1000分の20=200万円
    • 固定資産税……1億円× 1.4%=140万円

4、税金を減らすことはできる? 税金対策の方法と財産分与の注意点

では、財産分与に関わる税金を節税するためにはどうしたらよいのでしょうか。
主な方法としては以下の4つが考えられます。

  1. (1)金銭で財産分与を行う

    前述のとおり、譲渡所得税や不動産取得税は特定の対象物の譲渡・取得に課せられるものです。金銭の分与であれば、これらの税金を課せられることはありません。

  2. (2)特別控除を受ける

    先ほど触れたとおり、居住用財産(マイホーム)を譲渡した場合、その譲渡益が最高3000万円までは税金がかかりません。

    ただし、この特別控除は夫婦間や親子間での譲渡の場合には適用されないため、離婚後に所有権を移転させて、相手に引き渡す必要があります。

  3. (3)軽減税率の特例を受ける

    不動産を売却した年の1月1日現在で、当該建物の所有期間が10年を超えている場合、一部税率が軽減されます。

    • 所有期間が5年超~10年以下の場合……所得税15%、住民税5%
    • 所有期間が10年を超える場合……所得税10%、住民税4%
  4. (4)配偶者控除(贈与税の特例)を受ける

    婚姻期間が20年以上である夫婦が、居住用不動産を譲渡・取得するために金銭の贈与を行う場合、基礎控除110万円に加えて最高2000万円の配偶者控除が適用できるので、2110万円分までは税金がかかりません。

    したがって、20年以上婚姻関係を続けている夫婦であれば居住用不動産の財産分与の際は、2110万円を婚姻関係中に贈与し、それ以外の部分については離婚成立後に財産分与すると節税になります

5、弁護士に相談すべき理由

これまで見てきたように、財産分与の計算はそもそもかなり複雑な上に、財産分与にまつわる税金の計算はさらに複雑です。しかし、離婚を考える夫婦が冷静にお金について話し合うことは困難といえます。

共有財産を分ける以上、片方の取り分が増えれば他方が減ってしまいますから、交渉のストレスも高いでしょう。しかし、財産分与や慰謝料など、お金にまつわる大事な取り決めなので、離婚後の人生を考えると損することは避けたいものです。

弁護士に相談すれば、適切な財産分与や交渉の仕方まで丁寧にサポートを受けられます。また弁護士は、財産分与だけでなく、離婚時の親権や養育費、慰謝料についての取り決めや話し合いなどにも対応し、調停や裁判となった場合は依頼人の代理人として出席することが可能です。

離婚についてお悩みの場合、まずは弁護士へご相談ください

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6、まとめ

本記事では離婚の際に行う財産分与の税金について解説しました。

原則として離婚時の財産分与には税金がかかりませんが、税金がかかってしまう例外があります。その上、税金は計算方法などが非常に複雑で、専門家の目を通して検討したほうが安全です。

また、離婚を考えている夫婦にとってお金について話し合うことはなかなかハードルが高く、財産分与の前提となる、共有財産の開示の点から問題となる場合も少なくありません。

早めに弁護士に相談することで、注意すべきポイントがわかるだけでなく、法的なアドバイスに基づいた対処が可能となります。

ベリーベスト法律事務所では、離婚時の財産分与の経験豊富な弁護士が在籍し、グループ内の税理士と提携して業務にあたっています。ぜひ一度ご相談にお越しください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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