納得できない高額な慰謝料を請求された場合、不倫による慰謝料の減額交渉と回避するための方法
ある日突然、夫(妻)から高額な不倫を理由とする慰謝料を請求されてしまった……!
そんなとき、たとえ心当たりがなくても焦ったり慌てたりしてしまうものです。心当たりがあれば、なおさらでしょう。
不倫を理由とする慰謝料請求の知らせが来たら、まずは落ち着いてください。そもそもあなたが潔白であれば慰謝料請求に応じる必要は一切ありません。もしそうでなくても、あまりに高額で合理的な金額を逸脱した請求は減額・回避できる可能性があります。
慰謝料の請求減額・回避の事例を参考に不倫を理由とする慰謝料の減額についてご紹介します。弁護士に依頼することで、慰謝料は適切な金額に是正できるかもしれません。
突然の不倫を理由とする慰謝料請求に対応するためにも、まずは、どのような状況のときに慰謝料を請求されるのかを理解しておく必要があります。また、どのような事情があれば払わなければならない慰謝料額を少しでも抑えることができるのかということも知っておきましょう。
1、不倫を理由とする慰謝料を請求されたら
あなたが不倫をしたことを理由に慰謝料請求をされたとしても、状況によっては慰謝料請求そのものが認められなかったり、請求された金額を減額させることができる場合もあります。
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(1)慰謝料請求をされるまでの流れ
- ①(あなたが不倫する)
- ②配偶者があなたの不倫を疑う
- ③★あなたと配偶者が話し合う
- ④配偶者が弁護士に相談、依頼する
- ⑤★その弁護士が、あなたに対し、不倫を理由とする損害賠償請求をする旨の通知を発送、それがあなたのもとへ到着する
- ⑥あなたが別の弁護士に相談、依頼する
- ⑦★弁護士同士で話し合いをする
- ⑧★配偶者が調停を申し立てる
- ⑨★調停が成立せず訴訟に移行する
慰謝料を請求される場面としては、上記流れの中で★で示した時点が代表的です。
多くの場合、まずは当事者同士で話し合いをし、そこで折り合いがつかなければ弁護士を交えて再度話し合い、それでもまとまらなければ裁判手続をとる、という流れをたどることになります。
なお、不倫を理由とする配偶者からの慰謝料請求は、離婚とセットで請求されるのが通常ですが、本稿ではあくまで不倫を理由とする慰謝料請求に関する説明にとどめます。
ア 当事者同士での話し合い
配偶者があなたの不貞行為を疑い、あるいは、集めた証拠(SNSやメールのやりとり、興信所から得た報告等)を見てあなたの不貞行為があったことを確信して、あなたに対して話し合いの中で慰謝料を求めてきます。
あなたがその内容に納得するのであればそれを支払っても問題ありません。ただし、応じる義務はありませんので、そもそも不貞行為の事実がない、あるいは、配偶者から提示された金額が妥当なのかわからないといった場合には支払いを拒否する、待ってもらうこともあり得ます。
イ 弁護士を挟んでの話し合い
当事者同士での話し合いがまとまらなかった場合、配偶者が弁護士に依頼をし、その弁護士から不倫を理由とする損害賠償請求をする旨の通知が送られてくることもあります。
それに対して、あなた本人が自分で対応することも可能ですが、多くの弁護士は知識もあり交渉に長けていますので、あなたが特別交渉に自信があるのでない限り、あなたも弁護士に依頼をした上で、当事者に代わって弁護士同士で話し合いをしてもらうのが良い選択といえるでしょう。
この場合、弁護士が当事者に代わって交渉を進めることになりますが、当事者本人が納得しなければ、弁護士が勝手に話を進めてしまうということはありません。当事者同士の話し合いと同様、お互いに納得しなければ、交渉がまとまることはありません。
ウ 調停申立・訴訟への移行
いずれの話し合いでもまとまらなければ、調停を申し立てられることが考えられます。
慰謝料請求をする配偶者側としては、簡略化すると、①あなたが不倫(不貞行為)をしたこと、②あなたの不倫(不貞行為)によって損害(多くの場合は精神的苦痛)が発生していることを示すことになります。
離婚とともに行う調停は家庭裁判所で行われ、裁判官や調停委員という第三者を交えますが、結局は当事者同士の話し合いです。これがまとまらなければ、訴訟においてお互いの主張の当否を裁判所に判断してもらうことになります。 -
(2)慰謝料請求を拒否できるケースとは?
慰謝料請求をする場合、話し合いにせよ、訴訟にせよ、あなたが認めない限り、不倫があったという事実を請求する配偶者側が証明しなければなりません。
そのような中で、慰謝料請求を拒否できるケースは以下のとおりです。
●あなた自身が不倫をしていない
ここでいう「不倫(不貞行為)」とは夫婦間の貞操義務に違反する行為のことで、配偶者以外の者と肉体関係を持つことです。あなた自身が不倫をしていないのであれば、請求に理由がないので堂々と支払いを拒否しましょう。
なお、肉体関係を伴わないものであっても、夫婦関係を侵害や破壊する可能性があると認められる行為をしている場合、それにより婚姻関係を悪化させたといえれば、不倫があったことを理由とするものではなくとも、慰謝料請求が認められる可能性があるので注意が必要です。例えば、特定の相手と継続的に二人きりで出かける、キスやハグを一度だけではなく繰り返し行うといったことがそれに当たります。
●離婚に合意したり、婚姻関係が破綻していた以降から不倫相手と付き合いだした
民法上、不倫を理由とする慰謝料請求ができるのは、婚姻関係にある者には、共同生活を維持するという権利又は法的保護に値する利益があり、この権利又は利益を不倫によって侵害したからです。あなたが不倫をする前に、配偶者と離婚することに合意して話し合いを進めていたり、不倫以外の別の事情で夫婦関係が破綻していた場合には、権利も法的保護に値する利益もないので、不倫を理由として慰謝料を支払う必要はありません。
●不倫を理由にした慰謝料請求の時効が経過している
不倫を理由とする慰謝料請求にも時効があります。配偶者が、あなたが不倫をしている事実を知ってから3年です(民法724条)。
ただし、配偶者とあなたが離婚しない間は、時効は完成しません。離婚をしてから6ヶ月以内にその請求がなければようやく時効が完成することとなります(民法159条)。すなわち、離婚後6ヶ月間、配偶者から何も請求されなければ、時効が完成します。
なお、時効はあなたが「時効の期間が経過したので、慰謝料は払いません」と主張すること(時効の援用)によって成立しますので、注意が必要です。
●配偶者が不倫相手を特定できていない、証拠がない中で慰謝料請求をしている
たとえ配偶者が「不倫された!」と精神的なショックを受けていても、離婚調停や離婚訴訟などになったとき、慰謝料請求が認められるためには配偶者があなたの不倫を証明する必要があります。あなたが実際に不倫をしていたとしても、証拠を一切残していないと言い切れるときは、慰謝料請求を回避できる可能性が高まります。ただし、興信所を利用したり、SNSのやりとりを記録したりなど、不倫の証拠を集める方法は様々あります。その上、配偶者としては、話し合いの中で手持ちの証拠を正直に全て出してくれるとは限りません。相手が一切証拠を出してこないからといって油断をすることは禁物です。
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(3)慰謝料請求額を減額できるケースを知っておこう
もしあなたが不倫をしていて、もう言い逃れできないと明確になっている場合は、まずは素直に謝罪しましょう。
しかし、離婚してもいい、謝りたくないという方もいるかもしれません。その場合、支払うべき慰謝料をできるだけ少なくしてもらえるよう行動することが重要です。
●収入や資産がないことを伝える
ない袖は振れないという言葉があるとおり、ないお金を払うことはできません。交渉の段階であれば、本当に資産や貯蓄がない場合は、その事実を示し、配偶者に諦めてもらうことも一つの手でしょう。
ただし、噓をついたり資産隠しを行うなどをして、不当に支払を免れようとしていたことが判明した場合は、それ自体が悪質とみなされ、慰謝料額が上乗せされる危険が高まりますので注意してください。また、訴訟では最終的に支払えるかどうかは関係なく、諸般の事情を考慮して慰謝料額が定められますので、資産がないことを減額を求める材料にできるのは交渉の段階に限られます。
●弁護士に依頼する
あなたが不倫をしていて慰謝料を請求されてしまった場合、おそらく一番の味方になってくれるのが弁護士でしょう。契約内容にもよりますが、あなた自身が交渉の場に立って対応するという時間からも解放されますし、過剰な請求を回避できるよう、的確な対応をしてくれるはずです。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
2、不倫を理由とする慰謝料額はどう決まる?
実際に請求された額は適正な金額でしょうか?相手が怒りに任せて過剰な請求をしてくるケースは少なくありません。理論的かつ冷静に対応するためにも、相場を知っておくことは重要なポイントとなります。
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(1)慰謝料の相場とは?
不倫を理由とする慰謝料の相場は、その後離婚するかどうかでも大きく変わります。
- 離婚しない場合……50万~100万円
- 不倫が原因で別居に至った場合……100万~200万円
- 不倫が原因で離婚した場合……200万~300万円
なお、離婚や別居に至った場合は、慰謝料のほかにも、婚姻費用分担や財産分与、養育費などのお金がかかる点にも注意が必要です。
※あくまで相場となりますので、個別の事情により金額は変動します。具体的な金額については、法律の専門家である弁護士へ確認することをおすすめします。 -
(2)慰謝料額が上下するポイント
大きな幅がある慰謝料額ですが、それは、各家庭の経済状況や、不倫の悪質性によって慰謝料額が変わるためです。具体的には、以下のような事由(1つだけでなく、各事案に応じて認められる事由を総合的に考えて)から慰謝料額が増減します。
<慰謝料の増額事由>
- 婚姻期間が長い
- 不倫期間が長い
- あなたと配偶者の間に子どもがいる
- あなたから不倫相手を誘った
- 不倫発覚後、配偶者に対して真摯な対応をしなかった
- 不倫相手が妊娠した、出産した子を認知した
- 配偶者があなたの不倫によって精神疾患をわずらった
<慰謝料の減額事由>
- 不倫期間が短く、回数も少ない
- 配偶者が離婚を求めていない
- 不倫開始時には夫婦関係が悪化していた
- 反省した態度を示している
- 今後不倫をしない旨を誓約している
- 関係性の悪化の原因が不倫以外にもある
※ただし、不倫を理由とする慰謝料の減額事由になるだけで、慰謝料全体としては影響を与えないこともあります。
不倫の期間の長さ、不倫の回数の多さについて、絶対的な基準はありません。もっとも、裁判例をみてみると、期間としては2~3ヶ月、回数としては1~2回程度であれば短い、少ないと評価される傾向にあります。
慰謝料の金額は法律で明確に決められているものではありません。個別の事案によってその金額は増減します。また、交渉次第で増額することもありますし、減額も可能です。不安な場合は、交渉する前に、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
3、不倫を理由とする慰謝料を請求されたときすべきこと
まずは慌てず、落ち着きましょう。たとえあなたに非がなくとも、口論になるなど、泥沼化してしまうと、後々後悔する結果となりかねません。
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(1)まずは話し合いを通じて現状の確認を
最初は、配偶者が何を根拠にあなたが不倫をしていると主張しているのか、しっかり確認しましょう。もしあなたが不倫をしていることを示す確実な証拠を配偶者が持っている場合は、速やかに謝罪したほうが傷は浅く済みます。
もし、証拠や根拠もなくあなたが不倫をしたと決めつけて配偶者が慰謝料を請求している場合、それを拒否することも可能です。もしあなたが不倫をしていないのでしたら、冷静に落ち着いてその事実を伝える必要があるでしょう。また、配偶者は別の理由であなたに対して慰謝料を請求しているのかもしれません。あなたが現在置かれている位置、配偶者の求めていることを早い段階で探ってみる必要があります。 -
(2)請求額の確認
配偶者がいくら請求しているかによって、対処法は変わります。「2、不倫を理由とする慰謝料額はどう決まる?」で挙げた相場よりも低い金額であれば、争わずに素直にあなた自身がしてしまったことを認め、支払うのも一つです。
争えば事態が大きくなりがちです。会社や地域の人などにも知られ、仕事をし続けることが難しくなることもあり得ます。自らの行いを認めているのであれば、将来のために、穏便にやり過ごすことも、ときには必要でしょう。 -
(3)減額ができるポイントを主張する
もし請求された金額が高額すぎる場合や、配偶者もまた有責となる要素がある場合は、減額に向けた交渉を行います。口論となったり水掛け論になったりすることを避けるため、話を整理しながら冷静にやり取りを行うことをおすすめします。
可能であれば、弁護士などの専門家に依頼する、あなた方夫婦の関係にとって中立な立場の人物に立ち会ってもらって交渉することも視野に入れましょう。
話し合いでの交渉が決裂した場合は、相手が配偶者であればまずは調停手続を利用することになります。調停でも話し合いがまとまらない場合は、訴訟となります。いずれの場面でもできるだけ速やかに弁護士に依頼した方がいいでしょう。裁判の場では法律の専門知識が求められるため、たとえあなたが正当な主張をしても、負けてしまう可能性があるためです。以下の「不倫・浮気の慰謝料を請求された方へ」のページでは、より詳しく慰謝料請求に関するポイントや注意点を解説しています。あわせてご一読ください。
4、離婚と慰謝料請求の両方を回避するには?
浮気をしてしまったものの、離婚はしたくないと考えている方もいるでしょう。確かに離婚は、さまざまなリスクが伴います。社会的な地位という面もありますし、子どもがいれば、会う機会が限定されてしまうこともあり得ます。
では、どうしたら離婚と慰謝料の支払いを避けることができるでしょうか。
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(1)なによりも誠意ある対応を
前述したとおり、なによりもあなた自身が行ったことを認め、謝罪しなければ、夫婦関係の回復はできません。配偶者の怒りは正当なものですから、まずはその怒りを受け止め、ひたすら謝罪することが第一歩となります。
慰謝料額の相場でも挙げたとおり、離婚を回避することで払うべき慰謝料の金額を減額できる可能性が高まります。 -
(2)不倫関係の解消などを誓約する
慰謝料を請求してきた配偶者から、「離婚が回避されれば慰謝料はいらない」と言ってくることがあります。多くのケースで、慰謝料を請求しない代わりに、不倫相手との交際を解消することや、二人きりで会うことなどの禁止を求めてくるでしょう。
納得できる内容でしたら、それらの条件を了承してもかまいません。しかし、それに応じたらどうなるのか、という見極めが難しい場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。よくわからないままその場を収めるために、配偶者が提示する条件を了承し、提示された書面(誓約書など)に署名・押印してしまうと、後々、不利な内容に従う(違約金を支払うなど)必要が生じることもあり得ます。
いずれにせよ、誓約書など書面を書かなければならない場面で不安を感じたときは、書面に署名・押印をする前にまずは弁護士にアドバイスを求めることをおすすめします。
5、まとめ
今回は、納得できないほど高額な不倫相手の慰謝料を請求された場合、減額交渉や支払いを回避ができるかどうかについてお送りいたしました。
もし、あなた自身が潔白の場合は、堂々と潔白を主張しましょう。そうでない場合も、慌てず、減額するための交渉を行うことをおすすめします。対応が難しい場合や、相手が弁護士を立ててきた場合は、離婚問題に関して豊富な経験と実績を持つ弁護士に相談してみることを強くおすすめいたします。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
-
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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