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離婚時に財産分与をしない方法はある? 資産を守るためのポイントとは

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更新日:2024年11月14日  公開日:2021年11月29日
離婚時に財産分与をしない方法はある? 資産を守るためのポイントとは

離婚時に、夫婦が婚姻中に築いた共有財産を公平に分けることを「財産分与」といいます。

財産分与に関しては、ご自身で稼ぎ出した財産を分けるということに納得ができず、「できることなら財産分与しないで離婚したい」とお考えの方や、財産分与の協議がまとまらずにお困りの方もいるでしょう。

実際に、財産分与を拒否することは可能なのでしょうか。また、財産分与の協議で停滞してしまっている場合は、どう対処したらよいのでしょうか。

本コラムでは、財産分与におけるルールや離婚時に財産分与しない方法、拒否できるケースがあるのかなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、財産分与の請求を拒否することはできる?

財産分与とは、夫婦が婚姻中に取得した共有財産を、離婚時に公平に分ける手続きです(民法 第768条第1項)。では、配偶者から離婚時に財産分与を請求された場合に、財産分与を拒否することはできるのでしょうか。

  1. (1)財産分与を請求されたら拒否できない

    財産分与請求権は、離婚の当事者である夫婦の双方に認められた法律上の権利です。
    したがって、財産分与したくないとしても、原則として配偶者からの請求を拒否することはできません。

  2. (2)除斥期間が経過していれば拒否できる

    財産分与請求権は、「離婚の時から2年」という除斥期間が設けられています(民法第768条第2項但し書き)。つまり、2年の間に権利を行使しなければ、財産分与請求権は消滅します
    そのため、除斥期間経過後であれば、財産分与を拒否することが可能です。


    「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。

    適切な分配・損をしないために離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください

2、財産分与の割合の決め方・手続き

前述したように、財産分与を拒否することは、原則的にはできません。では、財産分与の割合を自由に決めることはできるのでしょうか。

  1. (1)財産分与は基本的に2分の1ずつ

    財産分与の権利は、夫婦双方で等しいと考えるのが原則のため、財産分与の割合は基本的に2分の1ずつとなります。一方が主婦(主夫)であるなど、定期的な収入を得ていないようなケースであっても、原則として割合は変わりません。

  2. (2)協議によって割合・配分を変更することは可能

    財産分与の方法は、第一義的には協議によって決定します。

    したがって、法的な権利としては2分の1ずつであっても、夫婦が合意すれば異なる財産分与の割合を定めることもできます。極端な話、財産分与したくない旨を主張し、相手がそれを受け入れれば、財産分与をせずに済むのです。

  3. (3)財産分与の協議がまとまらない場合

    配偶者からの財産分与の請求に対して、財産分与したくない旨を主張した場合や割合について合意が得られない場合、当然ながら財産分与の協議はまとまりません。

    このような場合は、離婚前であれば「夫婦関係調整調停」を、離婚後であれば「財産分与請求調停」を裁判所に申し立てることを検討します。

    調停では、調停委員が夫婦双方の言い分を公平に聴き取り、財産分与に関する話し合いの仲介を行います。客観的な第三者が仲介に入ることで、当事者同士のみよりも冷静な話し合いになることが期待できるでしょう。
    最終的に、裁判官が提示する調停案に合意した場合、調停は成立となり、夫婦は調停調書記載の離婚条件に拘束されます。

    一方、調停案について合意に至らない場合、調停は不成立となります。夫婦関係調整調停の場合は、離婚裁判を提起することができます。裁判になった場合は、判決によって財産分与の割合が決まることになります。
    財産分与請求調停の場合は、自動的に「審判」手続きが開始され、裁判官が一切の事情を考慮したうえで、解決案を提示します。なお、審判が行われる場合は、財産分与の原則に戻り、2分の1ずつの財産分与割合が定められるのが一般的です。


    「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。

    適切な分配・損をしないために離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください

3、相手が把握していない財産は申告しなくてもよい?

財産分与をしたくないと考えている場合、相手の知らない財産であれば、言わずに隠しておけばよいと思うかもしれません。
しかし、財産隠しにはリスクがあるため、たとえ財産分与したくないと考えている場合でも、決しておすすめはできません。

  1. (1)共有財産と特有財産|共有財産はすべて財産分与の対象

    前提知識として、財産分与の対象となる財産を整理しておきましょう。

    ● 共有財産
    共有財産は、財産分与の対象となります。

    財産分与の対象になるものの具体例 共有財産:夫婦が婚姻中に協力して形成した資産のこと 現金や預貯金・家電や家具・不動産・宝石や時計・株や有価証券・生命保険や学費保険・自動車や自転車・年金・退職金

    夫婦が婚姻中に得た財産は、原則として共有財産となります。夫婦どちらか一方の名義で得た財産、たとえば、会社から受け取った給与や退職金、単独名義の不動産なども、共有財産に含まれます(民法第762条第2項)。
    また、資産と同様に住宅ローンなどの債務も共有財産として、財産分与の対象になり得ます。

    なお、具体的にどの財産を分与するかについては、夫婦間の協議によって決定するのが原則です。たとえば、特定の財産を財産分与したくないという理由で、他の財産を代わりに財産分与することを相手に主張すれば、受け入れられる可能性もあるでしょう。

    ● 特有財産
    特有財産は、財産分与の対象外です。
    夫婦の一方が婚姻前から有する財産は、特有財産にあたります。

    財産分与の対象にならないものの具体例 特有財産:結婚前に取得した個人的な資産のこと 結婚前の預貯金・結婚前に購入した自動車や自転車・結婚前に購入した家電や家具・両親からの生前贈与・結婚前に購入した不動産・結婚前に購入した宝石や時計

    また、婚姻中に得た財産であっても、純粋に自分だけが得たと評価できる財産は、特有財産となります。たとえば、相続によって得た財産、肉親から贈与された財産などです。

  2. (2)調査嘱託・弁護士会照会により開示を請求される場合がある

    財産分与したくないことを理由に、財産分与の対象である共有財産を隠したとしても、相手から財産の開示を請求される可能性があります。

    ① 調査嘱託(家事事件手続法第258条第1項、第62条)
    財産分与請求調停の手続き内で、裁判所が金融機関等に対して、財産分与義務者の所有する財産について照会を行う場合があります。

    ② 弁護士会照会(弁護士法第23条の2)
    弁護士は受任している事件については、弁護士会に対して、金融機関等に財産分与義務者の所有する財産について照会し、報告するよう求めることができます。

    どちらの開示請求についても、請求を受けた金融機関等は原則として開示義務を負うので、たとえ財産を隠したとしても、情報が開示されるおそれがあることを認識しておきましょう

  3. (2)調査嘱託・弁護士会照会により開示を請求される場合がある

    財産分与したくないことを理由に、財産分与の対象である共有財産を隠したとしても、相手から財産の開示を請求される可能性があります。

    ① 調査嘱託(家事事件手続法第258条第1項、第62条)
    財産分与請求調停の手続き内で、裁判所が金融機関等に対して、財産分与義務者の所有する財産について照会を行う場合があります。

    ② 弁護士会照会(弁護士法第23条の2)
    弁護士は受任している事件については、弁護士会に対して、金融機関等に財産分与義務者の所有する財産について照会し、報告するよう求めることができます。

    どちらの開示請求についても、請求を受けた金融機関等は原則として開示義務を負うので、たとえ財産を隠したとしても、情報が開示されるおそれがあることを認識しておきましょう

  4. (3)財産の開示を怠った場合のリスク

    財産分与したくないがために、共有財産の開示を怠り、後でそのことが判明した場合、財産分与がやり直しになってしまいます。
    また、不開示によって被った損害の賠償を請求されるおそれもあります(民法第709条)。そのため、たとえ財産分与したくないとしても、共有財産を隠す行為は慎むべきでしょう。

4、ケースによっては財産分与をせずに済む可能性がある?

財産分与は原則として拒否できない旨を解説してきましたが、特別な事情がある場合なども同様なのでしょうか。疑問が生じやすいケースを例に、財産分与をせずに済む可能性があるかについてみていきましょう。

  1. (1)プレナップ(婚前契約・夫婦財産契約)を結んでいた場合は?

    結婚する前に、夫婦の財産関係について「プレナップ」(婚前契約・夫婦財産契約)を締結するケースがあります。
    プレナップには、生活費の分担などのほか、離婚時の財産分与の方法に関する規定が置かれることがあり、そのような規定は基本的に有効と考えられます。

    したがって、プレナップで「離婚時の財産分与は一切行わない」と定めておけば、財産分与をせずに済むでしょう。ただし、婚姻届を提出する前にプレナップを締結しなければなりません。また、プレナップを登記していなかった場合は、取り決めた内容は夫婦の承継人や第三者に対抗できないため注意が必要です。

  2. (2)財産分与したくないことを理由に離婚を拒否した場合は?

    そもそも離婚をしなければ、財産分与を行う必要はありません。
    しかし、財産分与したくないという理由で離婚を先延ばしにすることは、本末転倒と言わざるを得ません。
    冷え切った夫婦関係を清算して、新たなスタートを切るためにも、財産分与したくないことを理由に離婚を拒否するのは得策ではないでしょう。

  3. (3)配偶者に浪費癖がある場合は?

    配偶者に浪費癖があることを理由として、財産分与したくない旨を主張するケースがありますが、残念ながらそのような主張は通りません。

    財産分与によって得た財産は、分与を受けた人が自由に処分できるのであって、分与をした側に使途をコントロールする権利はないからです。浪費癖を理由に財産分与したくない旨を主張しても、かえって離婚協議を無益に長引かせるだけとなるため、メリットがあるとは言えません。

5、財産分与したくない場合は弁護士に相談を

原則として、財産分与を拒否することはできませんが、事情によっては財産分与の割合を変更できる可能性があるほか、前述したように、例外的ではあるものの財産分与をする必要がないケースもあります。

弁護士にご相談いただければ、ご事情やご状況をしっかりヒアリングしたうえで、対応策を検討することが可能です。また、財産分与がやむを得ない場合でも、できる限り望む財産を手元に残せるように、代理人として配偶者と慎重に協議を行います。

当事者である夫婦のみで話し合いを進めようとしても、感情的になってしまうことが多いでしょう。結果として、離婚問題が長引いてしまう、意図しない条件にまとまってしまうなどの不利益を被る可能性が高まります。

冷静に相手と協議し、適切な判断と決断を下すためにも、弁護士のサポートを得ることをおすすめします。

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6、まとめ

離婚時に配偶者から財産分与を請求された場合、原則として拒否することはできず、婚姻中に取得した共有財産を2分の1ずつ分けなければなりません。

しかし、除斥期間が経過している場合・プレナップが存在する場合・財産分与請求権が放棄された場合など、例外的ではありますが、財産分与をする必要がないケースも存在しています。

離婚時に配偶者から財産分与を請求されたものの、「財産分与をしたくない」「渡したくない財産がある」「財産分与の協議が進まない」などのお悩みを抱えている場合には、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください

お客さまにとって、可能な限り有利な結果を得られるように、離婚問題の対応実績が豊富な弁護士が親身になってサポートいたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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