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乳幼児期の子どもの面会交流を決める際に知っておくべきことや注意点

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更新日:2021年06月10日  公開日:2021年06月10日
乳幼児期の子どもの面会交流を決める際に知っておくべきことや注意点

乳幼児期の子どもがいる夫婦が離婚をした場合には、一般的に母親が親権者となって子どもを引き取ることが多いでしょう。離婚後に元夫から子どもとの面会交流を求められたとしても、子どもが幼い場合には、母親としては子どもへの負担を考えて面会交流を拒否したいと考えることもあるかもしれません。

しかし、幼児期の子どもとの面会交流は、単に子どもが幼いからといった理由で制限することは認められていません。そのため、子どもの利益を一番に考えてどのような方法が望ましいかを慎重に検討する必要があります。

今回は、乳幼児期の子どもの面会交流を決める際に知っておくべきことや注意点についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、乳幼児期の子どもの特徴

乳幼児期の子どもとの面会交流を考えるにあたっては、乳幼児期の子どもの特徴を理解しておくことが大切です。以下では、乳幼児期前期と後期に分けて乳幼児の子どもの特徴について説明します。

  1. (1)乳幼児期前期(0歳~3歳)の特徴

    乳幼児期前期は、0歳から3歳までの時期を指します。
    乳児期(0歳~1歳6か月)の子どもは、親や周囲の人に助けてもらいたくさんの愛情を得ることによって人に対する信頼感を高めていきます。そして、少しずつ情緒を分化させることによって自己の感情や行動を表現することができるようになります。

    また、幼児期前期(1歳7か月~3歳)の子どもは、自律性が発達する時期になりますので、以下のような特徴があります。

    • 自分と他者を区別して、分離不安に対処する
    • 自己主張が激しくなって、しつけをしようとする親に抵抗する
  2. (2)乳幼児期後期(4歳~6歳)の特徴

    乳幼児期後期は、4歳から6歳までの時期を指します。
    乳幼児期後期の子どもは、自発性が発達する時期になりますので、以下のような特徴があります。

    • 保護者や養育者から離れてある程度一人でいられる
    • 外界に対する認知が自己中心的であるため、現実と空想の境目が曖昧になりやすい
    • 相手の気持ちを理解しながら他人と関わることができる

2、両親の別居・離婚による、乳幼児期の子どもへの影響

乳幼児期の子どもには上記のような特徴があることから、この時期に両親が別居や離婚をすると子どもの精神には以下のような影響を生じることがあります。

  1. (1)乳幼児期前期(0歳~3歳)における別居・離婚の影響

    乳児期(0歳~1歳6か月)の子どもが両親の別居や離婚に直面した場合には、以下のような反応を示します。

    • 不安や恐れを示す
    • 食事、排せつ、睡眠の習慣に影響を及ぼす


    また、幼児期前期(1歳7か月~3歳)の子どもが両親の別居や離婚に直面した場合には、以下のような反応を示します。

    • 主たる養育者から離れたときに分離不安を示す
    • かんしゃくを起こしたり、無気力になる
    • 両親の間の緊張、怒り、暴力などに敏感になる
  2. (2)乳幼児期後期(4歳~6歳)における別居・離婚の影響

    乳幼児期後期(4歳~6歳)の子どもが両親の別居や離婚に直面した場合には、以下のような反応を示します。

    • 両親の別居について、いつかは仲直りしてくれるはずだと空想する
    • 親の別居が自分の責任だと感じる
    • 親から捨てられてしまうのではないかという恐怖を感じる

3、乳幼児期の子どもに面会交流させるべき?

乳幼児期の子どもとの面会交流を求められた場合には、親権者としてはそれに応じるべきなのでしょうか。

  1. (1)そもそも面会交流に応じるべきか

    乳幼児期に両親からの愛情を受けることによって、子どもの社会性や知的能力の発達によい影響を与えることになることから、乳幼児期の面会交流は、子どもの健全な発育に必要だといえます

    しかし、離婚の理由が配偶者からの暴力であったり、配偶者による連れ去りの危険がある場合には、面会交流を実施することによって子どもの利益が害される可能性があります。そのため、このようなケースでは、面会交流に応じるかどうかは慎重に判断しなければなりません。

    したがって、面会交流に応じるべきかどうかは、離婚理由や状況によってケースバイケースといえるでしょう。ただし、面会交流を拒否した場合には、相手との間にトラブルを生じる可能性がありますので、これまでの相手の言動から不安に感じる点があり、面会交流を拒否したい場合は弁護士に相談するのも一つの手です。

  2. (2)乳幼児期に面会交流を行うリスク

    乳幼児期の子どもは、精神的にも肉体的にもまだまだ未熟ですので、面会交流を行う場合にはその点に十分に配慮して行う必要があります。
    監護親から離れて非監護親と面会を行うことは分離不安を生じるリスクがありますので、監護親が近くに同席するなどの配慮も必要になってくるでしょう。また、乳幼児期は体調を崩しやすい時期でもありますので、子どもの異変を感じた場合には、面会交流の中止や延期措置をとるなど柔軟に対応することも必要です。

    参考:面会交流とは?取り決めの際のポイントを解説

4、乳幼児期の面会交流においても子どもの意思は重視される?

面会交流を実施するか否かの判断にあたっては、子どもの意思も考慮した上で判断されます。しかし、乳児や幼児期前期の子どもは、自己の確立が十分ではなく、言語的表現力が乏しいため、子どもの意思をくみ取ることが困難です。また、幼児期後期の子どもは、ある程度自己を確立してきているとはいえ、思考力や表現力はまだまだ不十分です。そのため、乳幼児期の子どもの意思については、ほとんど考慮されることはありません。
乳幼児期の面会交流においては、子どもの意思というよりも何が子どもの利益になるかという視点から判断していく必要があります。

5、乳幼児期前期での面会交流は早すぎる?

乳幼児期前期の子どもを抱える方は、まだ面会交流は早すぎるのではないかと感じることもあるでしょう。しかし、以下のように、面会交流の開始時期には特に決まりはありません。

  1. (1)面会交流の開始時期に決まりはない

    子どもの社会性や知的能力の発達において、非監護親からの刺激は非常に重要であると考えられています。乳幼児期においても子どもの健全な発育にとって非監護親との交流は重要であると考えられていることから、乳幼児期前期であるからといって面会交流を制限する理由にはなりません。
    子どもが幼いうちから非監護親と交流を始めることによって、子どもは親として認識しやすくなります。将来の非監護親との良好な関係を継続するためにも早い時期からの面会交流は行うべきであるといえるでしょう。

  2. (2)乳幼児期前期の面会交流の注意点

    乳幼児期前期の子どもとの面会交流については、注意が必要な点があります。
    乳幼児期前期の子どもは、肉体的にも精神的にも未熟であることから、非監護親と二人だけで面会をすることは難しく、監護親も同席して行うことが多いでしょう。非監護親は、乳幼児との接し方に不慣れなことが多いので、ミルクや離乳食の与え方やおむつ交換など監護親が手助けしてあげる必要があります。

    離婚の理由や経緯などによっては非監護親と監護親に対立が生じており、同席での面会交流が難しい場合があります。そのような場合には、祖父母などの第三者の協力を得て行うなどの工夫も必要になります。
    当事者が遠方に住んでいるような場合には、子どもが落ち着いて面会できる年齢に達するまでは、写真やプレゼントのやり取りといった間接的な面会交流を行うというケースもあります。

6、乳幼児期の子どもの面会交流の頻度

面会交流の頻度については、当事者が自由に取り決めることができます。一般的な面会交流の頻度としては、月1回程度が目安といわれることが多いです。
もっとも、乳幼児期の子どもは体調を崩しやすいという特徴がありますので、面会交流の頻度を取り決めたとしても、子どもの体調に配慮して柔軟に変更する余地を残しておくようにしましょう。

7、乳幼児期の子どもの面会交流の場所

乳幼児期の子どもとの面会交流の場所としては、以下の場所が候補に挙げられます。

  1. (1)自宅

    監護親や非監護親の自宅での面会交流であれば、落ち着いた環境で面会できるので乳幼児期の子どもでも不安なく実施できるでしょう。
    しかし、監護親と非監護親に感情的な対立がある場合には、自宅に相手を立ち入らせることに対して拒否感を抱くこともあるため、避けた方がよいかもしれません。

  2. (2)ショッピングモールなどのキッズスペース

    最近では、大型ショッピングモールなどで子どもが遊ぶことができるキッズスペースが設けられている所があります。そのような場所であれば、子どもも楽しみながら面会を行うことができます。
    ご自宅の近くに利用できる施設がある場合には、検討してみるとよいでしょう。

  3. (3)児童館や子どもセンター

    お住まいの地方自治体が運営している児童館や子どもセンターなども面会交流の場所としては適しています。本やおもちゃなどが準備されており、子どもと遊びながら面会を行うことができますし、周囲の人の目があることから非監護親による連れ去りなどの心配もないでしょう。

  4. (4)家庭裁判所の児童室

    当事者間で面会交流の取り決めができない場合には、家庭裁判所の面会交流調停が利用されることがあります。
    その際には、非監護親と子どもとの試行的面会交流として、家庭裁判所の児童室が面会交流場所として利用されます。継続的に利用できる場所ではありませんが、離婚調停や面会交流調停などを利用中の方は、検討してみるとよいでしょう。

8、乳幼児期の子どもの面会交流の日時

乳幼児期の子どもとの面会交流においては、子どもや監護親の生活スタイルを考慮して面会交流の日時を決める必要があります。
乳幼児期の子どもとの面会交流は、監護親が立ち会うことが多くなりますので、監護親の休日などを優先するようにしましょう。そして、乳幼児期の子どもは、長時間の面会をするだけの体力が備わっていませんので、2時間程度の短時間の面会交流から始めるようにしましょう。そして、子どもの成長に合わせて徐々に時間を延ばしていくようにするとよいでしょう。

9、まとめ

乳幼児期の子どもの面会交流は、さまざまな事情に配慮しながら、調整する必要があります。
しかし、当事者間に感情的な対立があったりする場合には、なかなか相手と折り合いがつかず面会交流の実施が困難なケースも存在します。そのような場合には、ベリーベスト法律事務所の弁護士へご相談ください。お子さまの利益や福祉を最優先にして、弁護士が面会交流の調整から養育費の問題まで全力でサポートします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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