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面会交流調停の流れとは? 決定内容を守ってもらえない場合の対処法も解説

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更新日:2022年06月15日  公開日:2021年01月28日
面会交流調停の流れとは? 決定内容を守ってもらえない場合の対処法も解説

離婚して、子どもと別居することになってしまった場合、別居親は、子どもと定期的に会うために、同居親に対して子どもとの「面会交流」を要求できます。

とはいえ相手が面会交流に応じない場合も少なくありません。
特に父親が元妻である母親に子どもとの面会を求めると、父親と子どもの関係性などにおいて問題がなくても、断られてしまうケースがあります。

そのように面会交流に関しての話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所で「面会交流調停」を申し立てるという方法をとることができます。この方法においては、面会交流の実現に向けて、裁判所が話し合いを調整してくれます。
本記事では、面会交流調停の流れや有利に進める方法を、弁護士が解説します。

1、面会交流とは

そもそも面会交流とはどういうものなのでしょうか? まずは基本的な内容について見ていきましょう。

  1. (1)面会交流は子どものために行う

    「面会交流」とは、離婚後や別居中に子どもと一緒に住んでいない親が子供と面会や通信などの手段で交流することです。

    離婚後や別居中に、一方の親が子どもと一緒に暮らさなくなると、子どもは別居親とは日常的に触れ合い、交流することができなくなってしまいます。原則として、子どもの健全な成長にとっては、継続して両親と交流し、両親それぞれと良い関係を築くことが重要だと考えられています。

    民法766条1項では、子の監護について必要な事項として、離婚時に協議すべき事項とされています。


    民法第766条1項
    父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。


    このように、面会交流は子の利益のために行うものですから、現在では、面会交流が子の利益・福祉を害さない場合には、原則として面会交流は行われるべきであると考えられることが増えてきています。

  2. (2)監護親と非監護親

    子どもと一緒に住んで身の回りの世話をする親のことを監護親(かんごしん)と呼ぶことがあります。
    通常は親権者が監護親となりますが、離婚の際に親権と監護権を分けた場合には監護権者が監護親となります。非監護親とは、子どもと別居している親のことを指します。

    監護親、非監護親という表現は、非常に分かりにくいと思いますので、以下では、子どもと一緒に暮らしている親を「同居親」、別に暮らしている親を「別居親」と呼びます。

  3. (3)面会交流で取り決める内容

    面会交流方法を決めるときには、以下の内容について話し合って合意をします。

    ①面会交流の日時、頻度
    たとえば『毎月第1日曜日の午前10時から午後8時まで』など、日時や頻度を決めます。

    ②面会交流場所、受け渡し場所
    レストラン、遊園地など会う場所を定めることができます。
    受け渡し場所については、自宅まで送迎する、駅の改札やデパートの前で待ち合わせるなど状況に応じて決定します。

    ③連絡をとりあう方法
    メールや電話など、何かあったときのために連絡をとりあう方法を決めておきます。
    子どもが小さいうちは両親が連絡を取り合う方法としますが、子どもが大きくなれば、別居親と子どもが直接連絡を取り合うという方法をとることも考えられます。

    以上の内容を取り決めますが、面会交流は、子どもために行うものです。親の都合を優先して子どもを傷つけては意味がありません。いうまでもなく、方法を決定するときには、子どもの都合や気持ちを最大限に尊重することが重要です。

  4. (4)面会交流の決め方

    面会交流方法を決めるときには、基本的には両親で話し合います。
    合意できない場合や一方が話し合いに応じてくれない場合には、家庭裁判所に「面会交流調停」を申し立てましょう。調停でも合意できない場合には、審判に進み、裁判所が判断します。

  5. (5)面会交流が認められないケース

    上述したとおり、面会交流は子どもの福祉のために重要なものですから、原則的に面会交流は行うべきと考えられています。
    しかしながら、以下のような場合には、子どもの福祉に反するため、裁判所が面会交流を認めない可能性があります。


    • 別居親が子どもに暴力を振るう
    • 15歳以上の子どもが明確に面会交流を拒絶している
    • 子どもが乳幼児で同居親の協力が不可欠だが、従前のDVなどの影響で同居親の協力を期待できない
    • 別居親が同居親の悪口をしつこく子どもに吹き込む
    • 別居親が薬物を乱用しているなど、子どもに悪影響を与えるおそれが高い
    • 別居親が子どもを連れ去る危険性が高い

    解説:面会交流の基礎知識

2、面会交流の内容を決める「面会交流調停」とは

同居親と話し合っても面会交流の方法を合意できない場合には、家庭裁判所で面会交流調停を申し立てるという方法があります。

面会交流調停とは、裁判所の「調停」を利用して面会交流の方法を話しあうための手続きです。調停委員が間に入り、父母の間を調整してくれます。相手と直接顔を合わさずに済み、調停委員が面会交流の実施に向けて同居親を説得してくれる可能性もあります。
自分たちでは合意できない場合でも、調停委員の調整によって面会交流について合意できる可能性があります。当事者間の話し合いではらちがあかない場合には、調停を利用することも一つの方法です。

  1. (1)面会交流調停を検討するケース

    ①相手が面会交流を拒否する
    面会交流を求めても、正当な理由なく拒絶される場合です。

    ②面会交流を求めても無視される
    面会交流を要求しようとしてメールや電話をしても、無視されるなら面会交流調停を申し立てましょう。

    ③子どもの養育環境が心配
    子どもが虐待を受けていないか気になる、相手が再婚して子どもが放置されている可能性があるなどのケースです。

  2. (2)申立てに必要な書類と費用

    ①必要書類
    • 申立書(原本と写し)
    • 事情説明書
    • 連絡先等の届出書
    • 子どもの戸籍の全部事項証明書
    • 進行に関する照会回答書


    その他、家庭裁判所によって異なる書類が必要になる可能性があります。


    ②費用
    • 収入印紙1200円(対象となる子1人につき)
    • 連絡用の郵便切手


    郵便切手の額や組み合わせは家庭裁判所によって異なるので、申立て前に確認しましょう。

  3. (3)面会交流調停の回数や期間

    調停は1か月から1か月半に1回程度の頻度で開かれます。
    平均的には3~5回程度、期間としては半年程度で終わりますが、親同士の対立が激しい場合には、調査官による調査や環境の調整のために1年以上かかる可能性もあります。

  4. (4)面会交流調停が不成立になったら

    調停を行ってもお互いの意見が合わずに合意できない場合、面会交流調停は「不成立」となります。

    この場合、「審判」に進み、家庭裁判所が面会交流の方法を定めます。
    審判では、特に障害となる事由がなければ、何らかの方法による面会が認められることが多い傾向にあります。ただ、審判で裁判所が判断した場合よりも、調停で合意した場合の方が、同居親が決定内容を守ることが多い傾向にありますのでできれば調停の段階でお互いが納得できる条件を定めるのが好ましいといえます。

3、面会交流調停の取り決めが守られない場合の対処法

面会交流調停や審判で決定したにもかかわらず相手が守ってくれない場合には、以下のような手段を行うことが考えられます。

  1. (1)履行勧告を申し出る

    履行勧告とは、家庭裁判所から相手に「裁判所で決まったことを守ってください」と促してもらう手続きです。強制力はなく、相手が守らなくてもペナルティーがありません

  2. (2)再度、面会交流調停を行う

    前回の調停や審判から時間がたち、取り決めた方法が不相当になって実施が難しくなってしまった場合には、再度面会交流調停を申し立てる方法もあります。

  3. (3)間接強制の申立てをする

    家庭裁判所の調停や審判で面会交流について決まった内容については、強制執行が可能であると考えられています。
    ただし、子どもを無理やりに連れてきて会うという直接的な強制執行は許されていません。面会交流を阻む同居親に対して、会わせないことについてお金を支払わせるという間接強制によるべきであると考えられています。

    家庭裁判所で間接強制を申し立て、認められたら差し押さえの手続きを進めます。もっとも、間接強制決定が出されるには、調停や審判での条項において、実施する日時や引き渡しの方法について定められていることが必要となりますので、調停や審判の時点から間接強制を見据えた条項にしておくことが重要です。

  4. (4)損害賠償請求

    面会交流について調停や審判で決定したにも関わらず、同居親が理由なく拒絶し、協議にも応じない場合には、不法行為と評価され、損害賠償請求が可能な場合があります。
    ただ、損害賠償請求をしても、面会交流が実現するわけではありません。相手の態度がさらにかたくなになる可能性も高く、また、子の福祉にとって利益になるとは考えにくいものであるため、慎重な判断が必要です。

4、面会交流調停を有利に進めるには

面会交流を有利に進めるには、以下のように対応しましょう。

  1. (1)面会に障害がないことを強調する

    面会交流に障害がないことを説得的に伝えることが重要です。


    • 従前、子どもとの関係が良好だったこと
    • 自身にDV、虐待などの問題行動が一切ないこと
    • 連れ去りの可能性がないこと
    • 同居親が理由なく拒絶していること


    上記内容を中心に感情的にならずにお話しし、調停委員に「面会交流に障害がない」と思ってもらえるようにしましょう
    なお、面会交流は養育費と引き換えではありませんが、きちんと支払っている方が調停委員の印象は良くなります。

  2. (2)家庭裁判所調査官へ調査を求める

    面会交流調停では、家庭裁判所調査官が調査を行うケースがよくあります。
    調査が行われると子どもの現状がわかって、面会を実施すべきかどうか、どのように行うべきかが明らかになる可能性があります。
    同居親が面会を拒絶していたり、子どもの状況に不安を感じたりしたら、調査官調査を行うように求めることもよいでしょう

  3. (3)調査官とうまくコミュニケーションをとる

    調査が開始されると、調査事項によっては、別居親にも聞き取りが行われる可能性があります。
    家庭裁判所調査官は、心理学、社会学、社会福祉学や教育学などの専門的な知識や技法を使って、家庭内の問題の解決に向けた調査を行います。調査官調査の調査報告書は、審判の際の裁判官の判断や、調停の流れに大きく影響を与えるものですので、良い印象を持ってもらえるようにしましょう。

    また、上記の面会交流について障害がないことについてもお話しし、実際に状況を示すなどして、「問題のない親だから積極的に面会交流を行うべき」と報告してもらえるような態度で臨むことが重要です。

  4. (4)合理的な面会交流方法を提案する

    たとえば遠方に住む子どもと「毎日会いたい」など、およそ実現不可能な要求をしても実現できません。およそ実現不可能な要望は、子どもの福祉にも反するものになるでしょうから、調停委員や調査官の印象も悪くなります。合理的で実現可能な面会方法を検討するのがよいでしょう。

  5. (5)子どもの都合や気持ちを尊重する

    当然ですが、子どもの都合や気持ちを無視した面会交流を行うべきではありません。
    面会交流は子どもの福祉のために行うためのものであることを念頭に置き、自分の都合よりも子どもの都合や希望を優先する姿勢が大事です。

  6. (6)弁護士に依頼する

    同居親の態度が強硬な場合には、審判となることを見据えて、早くから弁護士に依頼することを検討すべき場合もあります。
    弁護士にご依頼いただいた場合には、弁護士があなたの主張を整理して進めていきますので、面会交流すべきであることや、障害となる事情がないことについて適切な主張を行うことができます。

  7. (7)面会交流調停を弁護士に依頼した場合の費用

    面会交流調停を弁護士に依頼すると、通常、着手金と報酬金が発生します。
    一般的には、着手金が15~30万円程度、報酬金としても同額程度からが相場となるでしょう。
    具体的な金額は、弁護士事務所によって異なりますので、詳細は各弁護士事務所にご確認ください。

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5、まとめ

面会交流の方法でもめてしまったら、家庭裁判所で面会交流調停を申し立てることも検討しましょう。事案に応じた適切な解決が図れる可能性があります。

面会交流調停を行う場合、ご自身で対応することも不可能ではありません。しかし、ご本人で対応される場合、調停委員や調査官が聞きたい事項を過不足なく説明することが難しく、重要な事実を伝えられないままに調整されてしまうことにもなりかねません。必要な事実を適切なタイミングで主張し、面会交流を実現するために、弁護士にご依頼されることもご検討ください

ベリーベスト法律事務所では、面会交流など離婚にまつわる問題や男女問題について多くの実績がございます。お困りの際にはぜひ一度、ご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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