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パートナーに副業の収入がある場合の養育費の計算方法は?

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更新日:2021年09月07日  公開日:2021年09月07日
パートナーに副業の収入がある場合の養育費の計算方法は?

夫婦に子どもがいる場合には、離婚にあたって親権者をどちらか一方に決めなければならず、その際に養育費の金額も決めるのが一般的です。

養育費の金額を決めるにあたって重要となるのが、夫婦それぞれの年収がいくらかということです。養育費は、夫婦それぞれの年収に応じて決定されるため、養育費の金額を正確に計算するためには、夫婦それぞれの年収を正確に把握する必要があります。

一般的な給与所得者の場合であれば、源泉徴収票によって年収額は明らかになりますが、副業をしていて給料以外に収入がある場合には、養育費の計算にどのような影響があるのでしょうか。
今回は、パートナーに副業収入がある場合の養育費の計算方法や収入が虚偽であった場合の対応方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、基本となる養育費の算定方法を解説

副業収入がある場合の養育費の計算方法を説明する前に、まずは基本的な養育費の算定方法について説明していきましょう。

  1. (1)養育費とは何か

    養育費とは、未成熟子が社会人として独立し生活することができるようになるまで必要となる費用のことです。具体的には、衣食住のための費用、医療費、教育費などが含まれます。

    養育費の支払い終了時期については、未成熟子が成人に達したときまでとする扱いが一般的ですが、父母の学歴や経済レベルに応じて、それとは異なる取決めをすることもあります。たとえば、以下のような取決めをするケースもあります。


    • 未成年者が満18歳に達する日の属する月まで
    • 未成年者が満22歳に達する日の属する月まで
    • 未成年者が大学またはこれに準ずる高等教育機関を卒業する日の属する月まで
  2. (2)養育費の計算方法とは

    養育費の金額については、夫婦が話し合って自由に決めることができますが、養育費の相場がわからず、話合いが進まないという場合もあるでしょう。
    そのような時には、裁判所が公表している養育費の算定表を用いたり、算定表のもととなっている標準算定方式に基づく計算をして算出するなどして、養育費の相場を知り、話し合いを進めていきましょう。

    ① 養育費の計算方法
    養育費の標準的な算定方法としては、子どもが義務者と同居していたと仮定して、親の収入の中で子どものために費やす金額はどの程度かを計算します。
    そして、その金額(子どもの生活費)を、権利者と義務者の収入割合で分けて、義務者が負担すべき子どもの生活費(養育費)を算定します。

    具体的には、以下の3つの計算式によって具体的な養育費を算定します。

    【基礎収入の計算】
    基礎収入=額面給与×0.38~0.54(基礎収入割合)
    ※基礎収入割合は、給与額によって異なります。

    【子どもの生活費】
    子どもの生活費=義務者の基礎収入×{子どもの生活指数÷(義務者の生活費指数+子どもの生活費指数)}

    【義務者が負担すべき養育費】
    養育費=子どもの生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

    上記は、給与収入の場合の計算方法です。
    事業収入の場合には、上記の【基礎収入の計算】部分が異なります
    すなわち、【基礎収入の計算】式が、基礎収入=総収入×0.48~0.61となります。

    総収入は、確定申告書の「課税される所得金額」に扶養控除や配偶者控除、青色申告特別控除額等を加算して算出します。

    ② 養育費の算定表で養育費計算を簡単に
    上記の標準算定表式の考え方を踏まえて、簡単に養育費の算定を可能にしたのが、裁判所が公表している養育費の算定表です。算定表を用いれば、子どもの人数と夫婦の収入をみながら、簡単に養育費の相場が把握できます。
    たとえば、夫の年収が1000万円で、妻が専業主婦(収入0円)、子どもが1人(0歳~14歳)であったとすると、養育費の相場は12万円~14万円です。

    なお、ベリーベスト法律事務所では、簡単に養育費の相場を知ることができるツールとして養育費計算ツールを公表しています。養育費の金額でお悩みの方は、こちらもご利用ください。

    ③ パートナーの収入が高い場合の注意点
    家庭裁判所で調停を行う際には、義務者の収入が、給与収入だけの場合は2000万円まで、事業収入だけの場合は1567万円までの場合には、算定表をもとに協議しますので、当事者間で話し合う際にも非常に参考になります。

    しかし、義務者の年収が高い場合には、算定表に金額が載っておらず、金額がすぐにはわかりません。また、算定表のもととなる標準算定方式にそのまま従って計算をすると、高額な養育費が算定されることになりますが、子どもの養育費としてそのような高額な費用が常に必要になるとはいえません。
    そのため、パートナーの収入が高い場合には、実際の養育状況などの個別事情も加味して養育費の金額が修正されることがありますので注意が必要です。

    収入が高い配偶者がいる場合には、算定表や標準算定方式から単純に養育費を計算することが難しく、不適当な場合もありますので、弁護士にご相談されることをおすすめします

    参考:養育費計算ツール|算定表に基づき無料で計算します。

2、副業の収入がある場合、養育費はどう計算する?

パートナーに副業収入がある場合には、養育費の計算はどうなるのでしょうか。
以下では、パートナーに副業収入がある場合の養育費の計算方法について紹介します。

  1. (1)副業がある場合、収入がわかる書類はどれ?

    一般的な会社員の場合には、源泉徴収票に書かれている「支払金額」を見れば、養育費の算定に必要となる年収を知ることができます。しかし、副業をしている場合には、会社から交付される源泉徴収票には、副業収入が記載されていませんので、それ以外の資料を準備しなければなりません。

    副業収入がある場合には、確定申告が必要になりますので、確定申告書の控えや課税証明書を見ることによって、給与収入と副業収入の金額を知ることができます。

    不動産、株、FXなどによって高額な副業収入を得ている場合には、副業収入がわかる資料を要求しないと、適切な養育費の金額が請求できなくなってしまうといったリスクがありますので注意しましょう。

  2. (2)副業がある場合の計算方法とは

    養育費の算定表は、給与所得と事業所得のいずれか一方を得ている場合には問題なく利用することができますが、給与所得と事業所得の両方を得ている場合には、そのまま算定表にあてはめて計算することができません。そのため、副業収入がある場合の養育費は、以下のいずれかの方法によって計算します。

    ① 算定表で事業収入を給与収入に換算して給与収入と足す
    夫が1000万円の給与収入と500万円の事業収入を得ており、妻は専業主婦(収入0円)、子どもは1人(0歳~14歳)という家庭を例にして計算してみます。

    事業収入を給与収入に換算する最も簡単な方法は、算定表を利用する方法です。
    算定表には、給与収入の欄と事業収入の欄があります。500万円の事業収入は、650万円の給与収入と等しいことから、500万円の事業収入を650万円の給与収入に換算します。そして、1000万円の給与収入との合計である1650万円を夫の給与収入として算定表にあてはめて計算します。この場合の養育費の相場としては18万円~20万円になります。

    ② 算定表で給与収入を事業収入に換算して事業収入と足す
    上記と同様の例を前提とすると、1000万円の給与収入は、763万円の事業収入に等しいことから、1000万円の給与収入を763万円の事業収入に換算します。そして、500万円の事業収入との合計額である1263万円を夫の事業収入として算定表にあてはめて計算します。

    この場合の養育費の相場としては、18万円~20万円となり、①②いずれの方法でも同様の結果となります。

    [参考:養育費・婚姻費用算定表|最高裁判所]

3、養育費を計算したら、まずは話し合いを

標準算定方式や算定表によって養育費の金額が計算できた後は、どのように養育費の金額を決めていけばよいのでしょうか。

  1. (1)養育費の決め方

    算定表に基づいて養育費の計算ができたら、その金額をベースにして夫婦で話し合いを行います。離婚について話し合いをする際には、養育費のほか、親権者や財産分与、慰謝料、年金分割などその他の離婚条件についても話し合います

    当事者同士の話合いで合意ができれば、協議離婚として離婚をすることになります。その際には、取り決めた離婚条件について後日争いが生じないように、離婚協議書や公正証書を作成しておくとよいでしょう。

    話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員を介して話し合いを行います。その中で養育費の取決めをしますが、その際にも算定表が話合いの基礎となります。
    また、調停で離婚について合意できず、離婚訴訟となった場合には、訴訟において養育費についても主張立証を行いますが、その際も算定表を基礎に判断がなされます。

  2. (2)パートナーの収入がわからない場合の対処法

    話合いや調停になっても、パートナーが収入に関する資料を提出してくれないということもあるでしょう。しかし、正確な養育費を算定するためには、お互いの収入金額がわかる資料が必要不可欠ですので、パートナーから資料の提出がなければ算定することができません。
    まずは、パートナーを説得して、任意に収入証明資料を提出してもらえるように働きかけるようにしましょう。

    それでも相手が収入資料を提出しないという場合には、家庭裁判所の調停や裁判の際に、調査嘱託を利用したり、弁護士に依頼している場合には弁護士会照会によって収入に関する資料を入手できる場合もあります

4、収入が虚偽であったことがわかったときは、養育費の増額は可能?

相手から虚偽の収入証明資料が提出されたため、低い収入をベースに養育費の取決めがなされたという場合には、後日養育費の増額をすることは可能でしょうか。

  1. (1)養育費の取決めをする前に収入が虚偽であるとわかった場合

    養育費の取決めをする前に収入が虚偽であるとわかった場合には、正確な収入資料の提出を求めて、それをベースに養育費を計算することになります。
    調停や裁判で虚偽の収入資料が提出された場合には、その収入資料が虚偽の資料であると主張し、真の収入を主張立証する必要があります。

  2. (2)養育費の取決め後に収入が虚偽であるとわかった場合

    養育費の取決めをして離婚をした後に、パートナーの収入が虚偽であることが判明した場合にはどうすればよいのでしょうか。

    養育費の金額が決まった後でも、取り決めたときに前提とした事実に変更がある場合には、その変更が当時予測できないものであり、かつ、これを考慮しなければ著しく公平を害するという場合には、養育費の金額変更が可能です。これを「事情変更」といいます。

    パートナーの収入資料が虚偽であることが判明したということは、事情変更にあたりますので、家庭裁判所に調停を申し立て、本来の収入に基づいた養育費の金額を求めることが可能です。
    ただし、本来の収入金額を明らかにするためには、権利者の側から証拠を提出する必要がありますので、弁護士に相談をしながら進めていくとよいでしょう

5、不利な離婚をしたくないなら、弁護士に早めに相談を

離婚協議は自分だけでも進めることはできますが、適切な養育費・婚姻費用、慰謝料などを得るためには、法律の専門家である弁護士のサポートが重要です。

弁護士に依頼をすることによって、パートナーに副業がある場合の計算を正しく行えるだけでなく、収入資料の開示を拒んでいる場合でも調査嘱託や弁護士会照会などの方法を駆使して副業収入の金額を明らかにできる可能性があります。

副業収入を得ている方は、不動産、株、有価証券などの多くの資産を保有していることがありますので、財産の調査や評価を適切に行うことによって、財産分与で得られる金額の増額も期待できるでしょう。

ベリーベスト法律事務所では、離婚問題に関するご相談については、初回60分無料で対応しています。養育費を始めとする離婚問題でお悩みの方は、お気軽にご相談ください

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp
  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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