弁護士コラム 離婚・男女問題SOS

副業で得た収入も財産分与の対象? 離婚時の財産分与における注意点

  • 財産分与
  • 副業
  • 不動産
  • 財産分与
更新日:2021年06月03日  公開日:2021年06月03日
副業で得た収入も財産分与の対象? 離婚時の財産分与における注意点

高所得者の夫婦が離婚をするときに気になるのが、財産分与としてどの程度の財産を分けなければならないかということでしょう。
財産分与とは、夫婦の共有財産を分ける制度のことですが、本業以外に副業をしていた場合、その収入も財産分与になるのでしょうか。

たとえば、副業が株取引だった場合、個人の才覚が大きく左右する副業であることは間違いなく、このような個人の能力で得た副業収入も財産分与の対象とされると、不満に思う方もいるかもしれません。

また、生前贈与された不動産での家賃収入など、入手するために配偶者のサポートは必要としていないと考えられるものについても、財産分与をしなくてはならないのでしょうか。
今回は、配偶者には知らせずに行っていた副業収入や生前贈与された不動産での家賃収入なども財産分与の対象となるのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、財産分与の対象は? 副業収入も含まれる?

財産分与とはどのような制度のことをいうのでしょうか。以下では、財産分与の概要と財産分与の対象となる財産などについて説明します。

  1. (1)財産分与とはどのような制度か?

    財産分与とは、夫婦が離婚したときに、夫婦の一方から他方に対して財産の分与を求める制度のことをいいます(民法768条1項)。財産分与には、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の三種類がありますが、メインになるのは清算的財産分与です。

    また、お互いの財産をどのような割合で分けるかについては、当事者が話し合いにより自由に定めることができますが、一般的には、2分の1の割合で分けることになります。夫がサラリーマンで、妻が専業主婦であるような家庭であっても、妻には2分の1の割合で財産分与を求めることが認められているのです。

  2. (2)財産分与の対象となる財産について

    財産分与の対象となる財産は、婚姻後に夫婦が協力して築いた財産(共有財産)が対象です。財産分与の対象となる財産の判断は、夫婦のどちらの名義であるかという基準ではなく、婚姻中の夫婦の協力により形成されたかどうかという実質的な基準によって判断されます

    したがって、副業で得た収入であっても、それが婚姻期間中の夫婦の協力によって形成されたものである限りは、財産分与の対象となります。

    代表的なものとしては、婚姻後に取得した以下の財産については、原則として財産分与の対象になると考えられます。

    • 現金、預貯金
    • 株式や投資信託などの有価証券
    • 不動産
    • 生命保険や個人年金の解約返戻金
    • 退職金
    • 住宅ローンや教育ローン
  3. (3)財産分与の対象とならない財産について

    共有財産以外の財産のことを特有財産といい、特有財産については財産分与の対象外となります。特有財産には、「夫婦の一方が婚姻前から有する財産」と「婚姻中自己の名で得た財産」があります。(民法762条1項)。

    具体的には、以下のような財産については、財産分与の対象とはならないと考えていいでしょう。

    • 結婚前に貯めた現金・預貯金
    • 親から相続した財産
    • 住宅購入時に親から受けた援助金
    • 別居後に取得した財産
    • 浪費やギャンブルのための借金

2、個人の能力で得た収入であれば対象から外せる?

冒頭で指摘したような、株取引や投資など、個人の能力によって結果が大きく左右されるもので財産形成がなされた場合、財産分与の対象となるのでしょうか。

結論としては、個人の特殊な能力によって財産形成がなされたとしても、婚姻期間中に築いた財産については、原則として共有財産として財産分与の対象となります

それでは、先ほど財産分与は原則2分の1ずつに分けると説明しましたが、副業収入まで半分に分けることになるのでしょうか。

  1. (1)財産分与は割合を考慮することが可能

    財産分与は、夫婦の財産形成や維持に対する貢献度に応じて財産を分ける制度でもあります。そのため、財産分与は当事者の同意による割合変更が可能です。

    そのほか、個人の特殊な能力や才能などによって財産を形成したという事情があるときには、財産分与の割合を修正することによって、対応することができます。

    裁判例でも、以下のような事情があるときには、財産分与の割合を修正することが可能であることを認めています(大阪高判平成26年3月13日)。

    ① 夫婦の一方が、スポーツ選手などのように、特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが、加齢によって一定の時期以降は同一の職業遂行や高額な収入を維持し得なくなり、通常の労働者と比べて厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合

    ② 高額な収入の基礎となる特殊な技能が、婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合

  2. (2)副業で得た財産についても割合で考慮されることがある

    上記のように、個人の努力や才能によって多額の財産が形成されたような場合には、財産分与割合が修正されることがあります。本業・副業にかかわらず、割合変更が可能なのです。

    婚姻期間中に購入した株がたまたま高騰したという場合には、本人の才能が寄与しているとはいえませんので、財産分与の割合が修正されるということはあまりないと考えられます。

    しかし、デイトレードといった個人の能力が重視される方法によって取引を重ねた結果、多額の資産を形成したというケースでは、財産分与の割合を修正し、有利な内容で財産分与を進めることが可能になることもあります。

3、生前贈与で受け取った不動産の家賃収入なども対象になる?

副業として不動産経営を行っているケースもあるでしょう。その不動産が親から贈与されたものだった場合、その賃料は財産分与の対象になるのでしょうか。

  1. (1)原則として財産分与の対象外

    親から贈与された財産や相続した遺産については、夫婦の協力とは無関係に取得した財産ですので特有財産に該当し、原則として財産分与の対象外となります。ここで気になるのは、賃貸不動産から発生する家賃収入の取り扱いです。

    家賃収入については、親から贈与された不動産と同様、原則として財産分与の対象外となります。

    ただし、家賃収入が特有財産であると主張するためには、家賃収入が入ってくる口座を生活費口座と区別して管理し、第三者から見ても生活費とは別のものであることを明確にしておくなどの対応をしておく必要があるでしょう。

  2. (2)例外的に財産分与の対象となるケースとは

    先述のとおり、親から贈与された不動産の家賃収入は原則、共有財産とはなりませんが、一部例外があります。

    たとえば、配偶者が不動産管理を代行していた、配偶者が主導で行ったリフォームによって入居率が大幅に上がった、などのように、配偶者の貢献によって、資産形成や維持が図られたという事情があるときには、家賃収入も財産分与の対象となると考えられます。

    もっとも、そのような場合であっても、財産分与の割合をどうするかについては、配偶者の貢献度に応じて個別具体的に判断していくことになりますので、必ずしも2分の1の割合となるとは限りません。

4、財産を多く獲得する方法はあるのか

このように、副業収入は本業収入と同様、財産分与において、割合を変更することができます。それでは、自分の取り分を多くする方法はあるのでしょうか。

  1. (1)財産隠しはリスクが大きい

    配偶者に副業収入を知られていない方の中には、「副業収入を隠すことで財産分与の対象から外せるのでは?」と考えている方もいるかもしれません。

    継続的に副業収入を得ている方は、金融機関や証券会社と取引があることが通常ですので、取引履歴など何らかの痕跡が残っています。そのため、財産分与の対象となる資産については、金融機関や証券会社に照会をかけることによって、容易に判明してしまいます。財産隠しをしていたとしてもそれだけ解決まで期間がかかるだけでなく、相手に対しても不信感を抱かれるだけですので、メリットはありません。

    財産分与の期限は離婚から2年ですが、財産隠しをしていたことによって財産分与の機会を奪われたという場合には、2年の期間が過ぎていたとしても、損害賠償請求によって財産分与相当額を請求されるリスクもあります
    そのため、財産隠しを考えるのではなく、財産分与の割合変更に焦点を当てて行動するべきです。

  2. (2)財産分与の割合で争うべき

    副業で得た財産については、適切に争うことによって、財産分与の割合で考慮をしてもらえることがあります。自己の努力や才能によって財産形成や維持をしたということを主張することによって、より多くの財産を残せるようにすることがよいでしょう。

    また、不動産などの特有財産によって財産を形成した場合は、前述のとおり、

    • 家賃収入だけを管理する口座を開設する
    • 不動産管理について、誰がどのようなことをしていたのか明確にする


    などの対応をしてくことが大切です。

5、財産分与については弁護士へ相談を

財産分与については適切な対策を講じることによって、有利な内容で進めることも可能になります。そのため、離婚を考えたときには、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)財産分与の解決の流れ

    財産分与については、まずは、夫婦が話し合いによって、どのような財産を、どのような割合で分けるのかについて決めることになります。話し合いで解決をしないときには、家庭裁判所に調停を申し立てて、調停での解決を図ります。

    一般的には、離婚に伴って財産分与を求めることが多いので、離婚調停において、離婚条件のひとつとして財産分与が争われ、調停でも解決できないときには、離婚訴訟を提起して、裁判によって解決することになります。

    財産を多く有している夫婦の場合には、財産分与で揉めることが多く、裁判にまで発展するケースも少なくありません。財産分与において副業収入を考慮してもらいたいと考えているのであれば、法的根拠に基づき相手と交渉していく必要がありますので、そのためには弁護士のサポートが不可欠です。

    共有財産と特有財産の判断については専門的な判断が必要となりますので、弁護士へ相談してください

  2. (2)離婚に関する問題全般を任せることができる

    離婚にあたっては、財産分与だけでなく、親権、養育費、慰謝料などのさまざま条件を決めなければなりません。また、離婚の方法としても、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の三種類があり、どのような方法で離婚すべきかについてもその夫婦によって異なってきます。

    離婚をするにあたっては、できる限り不利にならないように対策を練る必要があります。一人で悩んでいても解決策は見出せませんので、どのようなことができるかも含めて弁護士に相談をしてみましょう

6、まとめ

特別な事情があれば、離婚時の財産分与でも2分の1にしないことが認められるケースがあります。そのためには、弁護士と協力しつつ自己の貢献度を説得的に主張していかなければなりません。
せっかく築いた財産ですので可能な限りその財産を守れるように一緒に戦っていきます。まずはベリーベスト法律事務所へご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

同じカテゴリのコラム(財産分与)

PAGE TOP