離婚時に決めた養育費、子どもの大学進学をきっかけに増額可能?
子どもが私立中学・高校や大学に入学する場合、入学金や授業料の負担がかなり大きくなります。離婚して単身で子どもを育てている方にとっては、進学費用の負担は重くのしかかってくることでしょう。
進学などによって子どもを養育するための費用が増えた場合、離婚した元配偶者に対して、養育費の増額を請求できる場合があります。
この記事では、離婚時に取り決めた養育費を後から増額するための要件や手続きなどについて、弁護士が解説します。
1、一度決めた養育費を増額してもらうことはできる?
離婚時に養育費を取り決めた場合、その合意内容は夫婦双方を拘束します。
しかし、離婚後に一定の事情変更が発生した場合には、離婚時に合意した養育費の増額が認められる可能性があります。
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(1)そもそも養育費とは?
「養育費」とは、離婚後に子どもと同居しない親(非監護親)が、親の子どもに対する扶養義務の一環として、子どもと同居する親(監護親)に対して支払う金銭をいいます。
配偶者と離婚したとしても、親子関係は変わらず存続し、親は子どもを育てていく義務(扶養義務)を負います。
実際に子どもと同居しない非監護親は、子どもを育てるためのお金を「養育費」として監護親に支払うことで、親としての扶養義務を果たす必要があるのです。参考:養育費についての基礎知識
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(2)事情変更があれば養育費の増額が可能
子どもにかかる養育費は、日々刻々と変わる子どもの状況に応じて増えたり減ったりしますので、離婚時にすべてを取り決めておくのは不可能です。また、親の収入バランスにも変化が生じる可能性があり、その場合には養育費を調整するのが合理的といえるでしょう。
そのため、離婚後に何らかの経済的な事情の変化が発生した場合には、養育費の金額を変更することが認められる可能性があります。このような事情変更の典型例が、子どもの進学です。
離婚時に取り決める養育費は、多くの場合「養育費算定表」に基づいて計算されます。この養育費算定表に基づいて計算される金額には、公立の小学校・中学校・高校への進学費用が含まれています。
しかし、家庭によっては私立の学校に通ったり、大学に進学したりするケースもあるでしょう。その場合には、離婚時に取り決めた養育費の金額以上に費用が必要になるため、元夫婦間で新たに分担を話し合う必要があります。
2、養育費が増額できるケースと特別費用の考え方
前述のとおり、養育費の増額は、子どもの状況や親の収入バランスなどの経済状況の変化が発生した場合に認められる可能性があります。
さらに、突発的に大きな費用が発生する場合には、月額の養育費とは別枠で「特別費用」の分担が認められることもあります。
以下では、養育費の増額や特別費用の分担が認められるケースの具体例を見てみましょう。
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(1)養育費の増額が認められる場合の例
養育費の増額が認められるのは、主に「子どもの養育に必要な費用が増えた場合」と「元夫婦間の収入バランスが変化した場合」の2つに大別されます。
① 子どもの養育に必要な費用が増えた場合
毎月の養育に必要な費用が増えた場合、養育費の増額が認められる可能性が高いです。典型的には、教育費の増加が考えられます。
たとえば、私立学校への進学・大学への進学・留学などによって教育費が増えた場合、それに伴って養育費の増額が認められる可能性が高いでしょう。
なお、養育費の増額に関する話し合いをスムーズに進めるため、あらかじめ、子どもの進学方針について、元夫婦間でよく話し合うことをお勧めいたします。
② 元夫婦間の収入バランスが変化した場合
親は共同で子どもを扶養する義務を負うところ、扶養義務の負担割合は、夫婦間の経済力のバランスによって決まります。
そのため、離婚後に元夫婦間の収入バランスに変化が生じた場合には、それに伴って養育費の金額も調整する必要があります。
元配偶者が支払う養育費の増額を求める場合には、「自分の収入が減った」もしくは「元配偶者の収入が増えた」またはその両方の事情が存在することが必要です。 -
(2)月額の養育費とは別に「特別費用」が認められることがある
養育費は基本的に毎月定額が支払われますが、子どもを養育するため、一時的に大きな金額の出費が発生する場合、月額の養育費だけでは費用を賄いきれないケースがあります。
その場合に、非監護親にも公平に費用を負担してもらうのが「特別費用」の考え方です。
特別費用に当たる費用の例としては以下のものが挙げられます。
- 進学時に発生する費用(入学金、学用品費など)
- 突発的な医療費(入院費、手術費など)
特別費用の分担については、協議または審判によって個別に決定されるのが一般的ですが、前もって負担割合を夫婦間で決めておくこともできます。
たとえば、離婚協議書で特別費用の負担割合を夫(非監護親)6:妻(監護親)4などと決めておきます。
この場合、実際に子どもの入学金が100万円発生したとすれば、離婚協議書での合意内容に従い、夫が妻に対して「特別費用」として60万円を支払います。
そして、妻が自分の負担分である40万円と併せて、計100万円の入学金を支払えば精算完了です。
3、養育費の増額を求める方法・増額事例
養育費の増額を求める方法としては、「協議」と「調停・審判」の2通りが考えられます。
それぞれの手続きの概要と、実際に増額に至った事例を紹介します。
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(1)元配偶者との協議により養育費を増額する
養育費の支払いは元夫婦間の約束ごと(契約)なので、元夫婦双方が同意すれば、その内容を自由に変更することができます。そのため、まずは元夫婦間で話し合いを行い、合理的な養育費の金額を合意によって定めることを目指すべきでしょう。
協議によって養育費の増額について合意できれば、手続きの手間や費用がもっとも少なく済みますし、増額後の養育費がきちんと支払われる確率も上がります。
もし元配偶者が養育費の増額協議に応じない場合には、弁護士に交渉の代理を依頼することが有効です。弁護士から連絡をすれば、元配偶者が心理的なプレッシャーを感じて、交渉のテーブルにつく姿勢を見せる可能性があります。 -
(2)養育費増額調停・審判を申し立てる
養育費の増額に関する協議がまとまらない場合には、裁判所に「養育費増額調停」を申し立てましょう。
養育費増額調停では、調停委員が元夫婦双方の言い分を公平に聞き取ったうえで、養育費の増額に関する落としどころを探り、合意(調停)の成立を目指します。第三者である裁判官・調停委員の仲介によって、当事者同士の場合よりも冷静な話し合いをしやすい点が、養育費増額調停のメリットです。
なお、養育費の増額について元夫婦間で合意が調わない場合には、調停は不成立となります。その場合、裁判所が「審判」の形で、合理的な養育費の金額についての裁定を行うことになります。
4、進学費用や養育費についてのお悩みは弁護士に相談を
離婚後に養育費の増額を求める場合は、増額が正当であることを根拠づける資料を集めて、元配偶者や裁判所などに提示することが大切です。
さらに、元配偶者の出方を見ながら適切な落としどころを探るためには、先例や養育費の実務を踏まえた交渉戦略も求められます。
弁護士にご相談いただければ、事実関係や元配偶者の態度などを踏まえて適切に交渉を進めることができます。また、調停に発展した場合には、提出書類の準備や期日への出席を弁護士が代行するため、依頼者の負担は大きく軽減されるでしょう。
子どもの進学費用がかさんでしまい、養育費の増額を求めたい場合には、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
5、まとめ
教育費の増加や、元夫婦間の収入バランスの変化などの事情変更があれば、離婚後であっても養育費の増額を請求できます。また、協議・調停・審判を通じて、適正妥当な養育費の増額を実現するためには、弁護士へ相談をお勧めいたします。
ベリーベスト法律事務所では、依頼者の抱える事情や希望について丁寧なヒアリングを行い、少しでもご相談者様の生活が楽になるように、親身になってサポートいたします。
生活が苦しく、養育費の増額をご希望の方は、お早めにベリーベスト法律事務所にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
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