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“共有名義の住宅ローン”財産分与で損をしないために知っておきたいこと

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更新日:2022年09月09日  公開日:2018年06月13日
“共有名義の住宅ローン”財産分与で損をしないために知っておきたいこと

離婚することは決まっても「財産分与の方法が決まらない…」ということはよくあります。

たとえば夫婦が共同で住宅ローンを組んでいるときには、自宅不動産をどのようにして分けたら良いか、また離婚後の不利益を小さくするためにも、残ローンの取扱い方などについて、押さえておく必要があります。

今回は、住宅ローンが共同名義の家を財産分与するときの取扱いや、損をしないための対処方法を、解説します。

1、財産分与とは

財産分与とは、夫婦間の経済的格差を調整するために、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を,離婚する際に又は離婚後に分けることを言います。
離婚するときに、夫婦で築いてきた財産などを財産分与しなければならない場合があります。対象になる財産は、原則として、夫婦の共有に属する財産(共有財産)と名義は夫婦の一方に属しますが、実質的には夫婦が協力して得た財産(実質的共有財産)となります。

夫婦が婚姻期間中に購入した自宅不動産も、特有財産として取得したり、贈与を受けたりした場合を除き、夫婦共有財産となるので、財産分与の対象となります。

2、財産分与の割合

ただ、不動産の場合、夫婦の名義が1対1になっているとは限りません。たとえば、夫が8割、妻が2割などにしていることもあるでしょう。
このような場合には、財産分与の割合がどうなるのかが問題です。

夫婦が財産分与するときには、不動産の持分に従って分けるものであると思われるかもしれません。たとえば先の例の場合、夫が8割、妻が2割の権利を取得するという考えです。しかし、これは間違いです。
財産分与の割合は、財産形成等の寄与度によって、決めることが多く、特別な事情がない場合は、2分の1を割合とするケースが多いからです。つまり、名義の割合でではなく、実質的な共有持分の割合となります。

また、専業主婦の場合でも、現在では、家事労働を高く評価するようになったこと、夫が働いて収入を得ることができるのも専業主婦の貢献のおかげだと考えられていることから、2分の1の寄与度を認める裁判例も増えてきました。
共有不動産を財産分与するときには、実質的共有持分割合にしたがって、財産分与の方法を決めていくことになります。

3、財産分与で住宅ローンなどのマイナスの負債の取扱い

  1. (1)基本的に、負債は財産分与の対象にならない

    自宅不動産の場合、住宅ローンを組んで購入しているケースが多いです。
    こうしたマイナスの負債がある場合、財産分与の際に考慮するのでしょうか?

    従来は、婚姻中に夫婦の一方が負担した負債については、原則として他方が責任を負担することはありませんでしたが、最近では、負債についても財産分与の対象となると考える事例も出てきました。
    しかし、夫の名義でサラ金やカードローン、クレジットカードなどで借金をしていても、その半額を妻に支払わせるために、妻も債務者の名義人とすることは、原則として債権者と妻の承諾がなければできません。なぜなら、借金をした場合、債権者は債務者を信用して貸付をしているものであり、離婚という事情によって債権者の同意なしに義務者が変更されることは相当ではないからです。

    同じことが、住宅ローンでも言えます。
    夫婦が共同で住宅ローンを組んだ場合、たとえ離婚したとしても、住宅ローン名義を「夫婦半額ずつ」に変えてもらうことなどは、債権者と妻の協力がなければできません

    ただし、住宅ローンについては、オーバーローンになっていないケースでは、住宅ローンを考慮して財産分与を行うことができます。以下では、オーバーローンになっていないケースとオーバーローンになっているケースに分けて、不動産の財産分与の方法を検討していきましょう。

  2. (2)オーバーローンになっていない場合

    ●オーバーローンとは
    オーバーローンというのは、住宅の価値がローン残額の金額を下回っていることです。その場合、住宅を売却しても、ローンを完済することができません。
    これに対し、オーバーローンになっていないということは、住宅を売却すると、住宅ローンを完済できるということです。この場合、住宅には「プラスの価値」があると考えられます。つまり、住宅の評価額から住宅ローン残高を差し引いた金額が、通常は財産分与の対象となるのです。
    たとえば、5000万円の評価額の住宅があり、残ローンが3000万円の場合、5000万円-3000万円=2000万円が財産分与の対象となります。住宅や住宅ローンの「名義」は関係ありません。

    ●どちらかが家に住む場合
    財産分与をする場合には、この2000万円を夫婦で半額ずつに分けるとの方法があり得ます。
    たとえば、上記の財産分与になると、他に積極財産がなければ、夫がこのまま住宅に住んで家を全部取得し、妻に対して代償金として1000万円を支払うことになります。妻が取得するならその反対です。ローンは、家に住む側がすべて負担することが前提です。そして夫婦の共有名義になっている場合、将来住宅ローンを完済したときなどに、家を取得した人の方にすべての名義を移す必要があります。
    なお、住宅ローン返済中に家の名義を移すことも可能ですが、そうすると金融機関との間で契約違反となってしまう可能性があります。

    ●任意売却する場合
    また、住宅を市場で売却して、入ってきた2000万円を自分たちで分けることも可能です。このように、残ローンのある物件を売却する手続きを、通常、任意売却と言います。

  3. (3)オーバーローンの場合

    住宅ローンがオーバーローンの場合、住宅の評価額から残ローンの金額を引くと、住宅の価値はマイナスになってしまいますから、原則として、住宅は財産分与の対象となる財産とはならないと考えられています。このような場合には、住宅ローンはそのままになることを前提にして、住宅の取扱いを決定するしかありません。

    たとえば、夫が家に住み続けるとしても、妻の住宅ローンはなくなりませんし、その逆も同じです。
    任意売却をしても残ローンが残るので、夫婦間で単独で支払う者を決めたとしても、依然として名義人である限り、残ローンを支払う義務を負い続けます。

4、共同名義の住宅ローンの問題点

共有名義の住宅ローンがある場合、財産分与をするときに注意しなければならないことがいくつかあります。

それは、主に住宅にどちらかが住み続ける場合の問題です。住宅ローンが共同名義の場合、離婚後も家に住まない方は住宅ローンを負担することになります。すると、家に住まない方が途中で支払いをしなくなったとき、金融機関が家を競売にかけて売却してしまう可能性が発生するので、「自分だけきっちり住宅ローンを支払っていたら大丈夫」というわけにはいかないのです。
反対に、家に住まない方にしてみると、自分が居住していないにもかかわらず、住宅ローンだけを負担する状態になってしまいます。

また、そうであれば、住宅ローンの名義人をすべて家に住む方の配偶者に揃えたら良いと思うかも知れませんが、それについては金融機関が納得しない可能性が高いです。金融機関は、当初に債務者それぞれの収入や年齢等の条件を検討して融資額を決定しているので、離婚したからと言って大幅に借入額を増額することは認めない場合が多いからです。

このように、住宅ローンが共同の家を財産分与しようとすると、金融機関との関係で問題が発生するため、思うように話を進めることはかなり難しくなることがあります。

5、共同名義の住宅ローンで考えられる財産分与の解決方法

それでは、住宅ローンが共同名義になっている場合、どのようにして解決すれば良いのでしょうか?

  1. (1)どちらか一方が家に居住する場合

    大きな方向性として、どちらか一方が住宅に居住し続けるか売却するかという選択肢があります。オーバーローンでなく、どちらか一方が居住する場合には、基本的に他方に対して代償金を支払う必要があります。そして、残ローンは家に住む方が支払い、後に名義変更します。

    ただ、オーバーローンの場合には、この方法で解決することはできません。
    もっとも良いのは、住宅ローンの名義を変更することです。1人に揃えられるならそれがベストですから、金融機関と交渉してみるのも1つの方法です。たとえば、家を取得する側が他の保証人や担保を入れることで、借り増しできるケースもあります。

    それが無理なら、事実上、住宅に住む方が、住宅に住まない方の分の住宅ローンの全部や一部を負担するという方法で解決せざるを得ないでしょう。金融機関との関係上、住宅ローン名義を変えることができないので、事実上相手の名義の住宅ローンも負担するということです。

  2. (2)任意売却する方法

    住宅ローンがある家を財産分与するときにおすすめの方法は、任意売却です。

    任意売却は、先にも少し説明しましたが、ローン残額が残っている不動産について、借入先の金融機関の了承を得て市場で売却することです。任意売却をすると、競売よりも高く売れることが多いので、夫のローンも妻のローンも多めに返済することができます。これによってローンを完済できたら、プラスになった分を2人で平等に半分ずつに分ければ良いのです。

    もし残債が残ったら、完済できなかった分のローンが残ることになります。誰のローンをどれだけ残すかは、ケースバイケースです。その場合、夫婦は、それぞれが離婚後も自分名義の残債を返済していかなければなりません。
    本来であれば、夫婦の残ローンが同じ金額だけ残るようにできるのがベストであり、それであれば、離婚後にも自分名義のローンを返済していけば良いだけなので面倒なことはありません。

    ただ、<金融機関がそうしたローン返済方法に納得しない可能性もあり、夫婦の残ローンの金額がそれぞれ別になってしまうケースや、どちらか一方だけを完済するケースもあり得ます。そのような場合には、残債を平等に負担するために夫婦間で調整が必要になることもあります。

6、弁護士に財産分与の方法を相談するメリット

離婚の際に夫婦共同の住宅ローンを組んでいると、法律関係が非常に複雑になることがおわかり頂けたと思います。住宅ローンがあるなどの困難が伴う離婚では、法律の専門家である弁護士に相談すると、さまざまなメリットを得られるものです。

  1. (1)適正な方法で財産分与ができる

    法的に適正かつ妥当な方法で、財産分与をすることができます。たとえば、どちらかがどうしても家に住みたい場合、どのような解決方法をとればお互いに適正ない形になるのかなどなど、法律家としての知恵を借りることができます。

  2. (2)その他の離婚問題にも適切に対応できる

    離婚時には、財産分与だけでなく、子どもの親権や養育費、慰謝料請求、年金分割、離婚前の婚姻費用なども問題となります。弁護士に相談をすると、こういった他の法律問題についても法律的に適切な考え方基づいて説明を受けられるので、素人判断で不利な解決をしてしまう危険性もなくなります。

  3. (3)さまざまな手続きを任せられる

    さらに、協議離婚の公正証書作成を依頼することもできますし、離婚の協議がスムーズに進まなかった場合には、家庭裁判所における離婚調停や離婚裁判などの手続きも依頼することができますので、手続き面でも安心です。

    以上のように、離婚を進めるときには、弁護士に相談をすると、より有利に進められる場合もあるので、住宅ローン付きの不動産を財産分与する時を始めとして、何か気になることがある場合には、一度離婚問題の経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

    参考:公正証書にするメリットとデメリット

7、まとめ

住宅ローンが共同名義になっている場合の財産分与には、かなりの困難がつきまといますので、損をしないためには、弁護士によるサポートを受けることが重要です。
ベリーベスト法律事務所は、離婚問題や不動産問題に積極的に取り組んでいる弁護士が多く所属している法律事務所ですので、お困りの際には、お気軽にご相談ください。

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この記事の監修
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所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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