養育費の支払いは法律上の義務? 金額を決める方法や手続きも解説
離婚をした後、子どもと同居しない親は、同居親に対して養育費を支払う法律上の義務があります。
養育費の支払いが難しいと感じるケースもあるかもしれませんが、支払いを怠ると強制執行がなされる危険もあります。
そのため、養育費を合理的な金額に抑えられるように、離婚時にきちんと話し合っておくことが大切です。
後にトラブルに発展しないために、養育費支払義務の法律上の根拠や、養育費を決定する手続き、離婚後の金額変更の可否などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、養育費の支払いは法律上の義務
養育費を支払うことは、離婚後に子どもと同居しない親が負担する、法律上の義務です。
ただし、相手方の言い値で支払う必要はなく、ある程度金額の目安がありますので、適切な手続きを踏んで金額を決定しましょう。
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(1)離婚しても子どもに対する扶養義務は存続する
養育費の支払い義務の法的根拠は、親の子どもに対する扶養義務であると解されています(民法第877条第1項)。
扶養義務とは、相手が自力で生活を成り立たせることができない場合に、経済的な援助を行う義務を意味します。配偶者と離婚をしたとしても、親子関係はそのままですので、親の子どもに対する扶養義務は、離婚後も存続するのです。
子どもと同居する親は、日常生活の中で子どものために費用を支出しますが、同居しない親はそうではありません。そのため非同居親は、同居親に対して養育費を支払うという形で、子どもに対する扶養義務を果たすことになるのです。 -
(2)養育費を支払うべき期間は?
支払い義務者が養育費を支払うべき期間は、わかりやすく言えば「子どもが自立するまでの期間」となります。
20歳前後まで支払うことが一般的ですが、具体的な期間については、家庭ごとの事情によって異なります。大学進学が一般的になっている昨今では、大学を卒業する22歳前後まで養育費を支払うべきケースも多くなっています。
いずれにしても、いつまで養育費を支払うかについては、協議・調停・審判・訴訟などを通じて、ケース・バイ・ケースで決定されます。 -
(3)養育費の金額はどのように決まる?
養育費の金額は、まず夫婦間で話し合い、決定できるよう努力します。
もし話し合いがうまくいかない場合には、後述する調停・審判・訴訟の手続きを通じて決定されます。
養育費の金額を決定する際の目安となるのが、裁判所が公表している「養育費算定表」です。
養育費算定表を用いると、以下の要素を総合して、家庭の状況ごとに、適切と考えられる養育費の金額目安を導き出せます。
- 夫婦それぞれの収入
- 子どもの人数
- 子どもの年齢
協議で養育費を決定する場合、必ずしも養育費算定表の基準にのっとる必要はありませんが、一定の参考になるでしょう。
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(4)養育費に贈与税がかかるケースもある
非同居親から同居親に対して支払われた養育費は、「通常必要と認められる」限り、贈与税の課税対象にはなりません(相続税法第21条の3第1項第2号)。
しかし逆に言えば、「通常必要と認められる」範囲を超える部分については、養育費に贈与税が発生する可能性があるので注意が必要です。
たとえば、以下のようなケースでは、養育費の一部に贈与税が課されてしまう可能性が高いと考えられます。
- 養育費という名目で、あまりにも高額の金銭がやり取りされた場合
- 養育費を投資やマンションの購入など、別の使途に使用した場合
- 養育費を一括で受け取り、すぐに使わない金額を預貯金として預け入れた場合
など
2、養育費の支払いで折り合いがつかない場合の手続き
養育費に関する話し合いがまとまらない場合、次の調停・審判・訴訟の手続きの中で、養育費の金額や支払い方法を話し合います。
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(1)離婚調停・訴訟
離婚時に養育費の支払いについて取り決める際に、話し合いがまとまらない場合には、離婚調停を申し立てましょう。
離婚調停では、調停委員が夫婦の間に入り、離婚条件についての話し合いを仲介します。その後、裁判官が養育費を含む離婚条件に関する調停案を提示するなどし、夫婦双方が合意すれば、調停成立となります。
一方、離婚条件に関して夫婦双方が合意に至らない場合には、調停は不成立となります。
引き続き、養育費を含む離婚条件について争う場合は、離婚訴訟を提起しましょう。
離婚訴訟では、適正な養育費の金額を立証する証拠(夫婦それぞれの収入を示す証明書など)を家庭裁判所に提出します。
家庭裁判所は、離婚の可否に加えて、養育費を含む離婚条件についての判断を、判決によって示します。 -
(2)養育費請求調停・審判
離婚後に、養育費の金額や支払い方法のみを決めたい場合には、養育費請求調停を申し立てましょう。
養育費請求調停では、養育費に議論のポイントを絞り、調停委員が間に入って落としどころを探ります。
裁判官が提示する調停案について、当事者双方が合意に至れば調停成立、合意に至らなければ調停不成立となる点は、離婚調停と同様です。
養育費請求調停が不成立となった場合、家庭裁判所が「審判」によって、養育費の金額について結論を示します。
3、養育費の支払い義務を免れることはできるのか?
一度取り決めた養育費を支払いたくない、または支払うのが難しい状況になった場合、養育費の支払い義務を免れる方法はあるのでしょうか。
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(1)基本的には支払う必要がある|強制執行のリスクもあるので要注意
前述のとおり、養育費の支払いは、子どもに対する扶養義務の一環です。
親としての義務である以上、基本的には決まった養育費の支払いを免れることはできないと心得ておきましょう。
もし養育費の支払いを怠った場合、最終的には相手方が強制執行を申し立て、財産や給与を差し押さえられてしまうおそれがあります。
特に、離婚公正証書を作成し、その中で「直ちに強制執行を受け入れる」という趣旨の文言(強制執行認諾文言)が記載されている場合、すぐにでも強制執行が行われる可能性がある点に注意が必要です(民事執行法第22条第5号)。 -
(2)養育費の減額が認められる場合がある
もっとも、自分か相手の家庭状況・経済状況が変わった場合には、養育費の減額を請求できる場合があります。
次の項目で、具体的にどのような場合に養育費の減額(変更)が認められるのか、詳しく見てみましょう。
4、離婚後に養育費の支払い条件を変更できる場合とは?
一度養育費を取り決めた場合でも、後から金額や支払い方法などを変更できることがあります。
養育費の支払いは、子どもに対する扶養義務の一環であり、扶養義務は両親が経済状況に応じて分担すべきものとされているため、経済状況が変化すれば、養育費の支払い条件も変更されます。
具体的には、同居親・子どもの状況や、非同居親の状況が以下のように変化した場合に、養育費の変更が認められることがあります。
なお、養育費の変更は、両親の間での協議によって取り決めるか、または調停・審判の手続きによることが必要です。
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(1)同居親や子どもの状況が変わった場合
同居親の収入が減った場合、養育費は増額となり、逆に同居親の収入が増えた場合には養育費は減額となります。また、同居親が再婚し、新しい配偶者が子どもと養子縁組をした場合には、養育費は減額または免除となります。
同居親の新しい配偶者が第一次的な扶養義務者となり、養育費を支払っていた非同居親の扶養義務は、第二次的なものに後退するためです。
さらに、私立学校への進学や塾通いなどにより、子どもの教育費が上昇した場合には、養育費の増額が認められる可能性があります。 -
(2)非同居親の状況が変わった場合
非同居親の収入が減った場合には養育費は減額となり、逆に非同居親の収入が増えた場合には、養育費は増額となります。
また、非同居親が再婚し、別の子どもが生まれた場合には、子ども1人当たりに費やすべき金額がやや減少すると考えられるため、養育費が減額となる可能性があります。
なお、非同居親の経済状況が悪化した場合であっても、それがやむを得ない合理的な理由による場合でなければ、養育費の減額は、認められない可能性が高くなります。
養育費の減額が認められない可能性が高いのは、以下のようなケースです。
- 相手に無断で借金を作った場合
- 浪費やギャンブルによって財産を減らしたり、借金をしたりした場合
- 仕事を自主的に辞めて働かないなど、収入を意図的に減らした場合
など
5、まとめ
養育費の支払いは、親の法律上の義務であるため、同居親から請求された場合、基本的には支払いを免れることはできません。
離婚時にきちんと養育費を取り決めておかないと、後で養育費の請求に関してトラブルに発展する可能性が高いため、弁護士に相談しながら、相手と適切な形で合意しておくことをおすすめいたします。
ベリーベスト法律事務所は、養育費を含む、離婚条件に関する配偶者との交渉を代行し、依頼者のストレスを軽減しながら、スムーズに離婚が実現するようにサポートいたします。
配偶者との離婚をご検討中の方、配偶者から養育費を請求されてお困りの方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
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