「性の不一致」を理由に離婚は可能? 慰謝料請求できる場合と注意点
配偶者が性交渉を拒否してくる、身体的な問題で性交渉がうまくいかないなど、いわゆる「性の不一致」により離婚に至るケースは一定数存在します。
現時点で離婚していなくても、性の不一致に起因して、夫婦関係に不満を募らせている方も少なくないでしょう。
法律上、性の不一致を理由に離婚や慰謝料の支払いを請求することはできないのだろうか、と疑問に思っている方もいるはずです。
本コラムでは、性の不一致に関する法律上の問題や、性の不一致を理由に離婚・慰謝料の支払いを請求する際の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、性の不一致とは?
「性の不一致」とは、厳密な定義があるわけではありませんが、性に関する価値観が合わない、身体的・精神的な問題によって性交渉ができないなどの原因により、夫婦間の性生活関係がうまくいかない状態全般を意味します。
典型的には、以下のようなパターンが性の不一致に該当します。
- いずれか一方による性交渉の拒否(セックスレス)
- 勃起不全や膣口狭窄などによる性交不能
- あまりにも頻繁な性交要求
- 異常性癖(いわゆる「SMプレイ」などを過度に要求するなど)
性の不一致は、単純な性的不満足にとどまらず、「子どもをもうけるかどうか」という重要な問題にも関係するため、夫婦の離婚につながることもしばしばです。
裁判所が公表する令和4年度(2022年度)の司法統計によると、同年度中に裁判所に申し立てられた婚姻関係事件のうち、男性側による申し立ての10.9%(1万5176件中1669件)、女性側による申し立ての6.5%(4万1886件中2733件)が、「性的不調和」(≒性の不一致)を動機としています。
2、性の不一致を理由に離婚を求めることは可能?
性の不一致を理由に離婚をしたい場合には、配偶者の同意を得ることが原則となります。
もし離婚について配偶者の同意が得られない場合は、裁判離婚を目指す必要がありますが、性の不一致によって裁判離婚が認められるためのハードルは、比較的高いので注意が必要です。
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(1)協議や調停により、合意の下で離婚することは可能
協議離婚や調停離婚の場合には、離婚理由にかかわらず、夫婦が合意すれば離婚を成立させることができます。
したがって、性の不一致に関して不満を抱いている場合は、まず夫婦間で話し合いによる解決を図り、問題が解消されない場合には、その延長線上で離婚の合意を目指すとよいでしょう。 -
(2)裁判離婚の場合は法定離婚事由に当たることが必要
離婚協議がまとまらず、離婚調停も不成立に終わった場合に、あくまでも離婚を目指す場合には、離婚訴訟を提起するほかありません。
離婚訴訟では、裁判所が離婚の可否を判断しますが、離婚が認められるには、以下のいずれかの「法定離婚事由」が認められることが必要です(民法第770条第1項第1号)。
- ① 不貞行為
- ② 悪意の遺棄
- ③ 3年以上の生死不明
- ④ 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
- ⑤ その他、婚姻を継続し難い重大な事由があること
性の不一致以外にも、不貞行為(①)やDV・モラハラ(②または⑤)などの事情があれば、法定離婚事由に基づく離婚請求がしやすいでしょう。
これに対して、性の不一致のみを理由として裁判離婚を請求する場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することを立証することが必要です。 -
(3)性の不一致が離婚原因として認められる例・認められない例
ほかに離婚原因がないとすれば、性の不一致がどの程度深刻であるかという点が、裁判離婚が認められるかどうかに関して重要なポイントとなります。
たとえば以下のようなケースでは、性の不一致が「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たり、離婚が認められる可能性が高いでしょう。<離婚が認められやすいパターン>- 一方または両方が、子どもをもうける強い希望を持っているにもかかわらず、性交渉拒否や性交不能などにより、長期間全く性交渉が行われていない場合
- 合理的な理由がない性交渉拒否により、いずれか一方が深刻な精神的ダメージを負っている場合 など
反対に、以下のようなケースでは、性の不一致がいまだ深刻な状態には至っていないとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しないと判断される可能性が高いです。
<離婚が認められにくいパターン>- 加齢により性的能力が減退し、性交渉がうまくいかなくなった場合
- 夫婦仲が険悪になったために性交渉が行われなくなったものの、その期間が比較的短い場合 など
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
3、性の不一致により慰謝料を請求することはできる?
性の不一致により、配偶者に対して不満を持っているケースで、離婚とは別に慰謝料も請求したいと考える方もいらっしゃるかもしれません。この場合、性の不一致を理由とする慰謝料請求は認められるかどうかを、確認していきましょう。
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(1)相手に悪質な態度があった場合は慰謝料を請求し得る
「慰謝料」の支払いを請求できるのは、相手方の「不法行為」(民法第709条)に起因して、精神的な損害を被った場合です。
不法行為の成立要件は、故意または過失により、相手に対して違法に損害を加えたことです。
したがって、性の不一致が配偶者の「故意または過失による、違法な」(≒悪質な)言動によって引き起こされた場合には、配偶者に対して慰謝料を請求できる可能性があります。 -
(2)性の不一致で慰謝料を請求できる場合・できない場合
性の不一致を理由として、不法行為に基づく慰謝料を請求できる可能性がある場合の具体例は、以下のとおりです。
<慰謝料請求が認められやすいパターン>- 配偶者が一方的に性交渉を拒否しており、そのことに合理的な理由がない場合
- 配偶者が執拗に性交渉を要求し、こちらが拒否しているにもかかわらず、半ば強引に性交渉に持ち込まれる事態が発生した場合 など
反対に、以下のようなケースでは、配偶者に不法行為は成立せず、慰謝料請求は認められない可能性が高いでしょう。
<慰謝料請求が認められにくいパターン>- 配偶者の性交不能が、病気や精神的な問題に起因する場合
- 夫婦仲が険悪になったことにより、性交渉が中断していて、その原因がお互いにある場合 など
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(3)慰謝料が高額化する要素
性の不一致のみを理由として、高額の慰謝料が認められる可能性は低いと考えられます。
しかし、性の不一致が「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する程度に深刻であれば、離婚に伴う精神的な損害と相まって、慰謝料が高額になることもあり得るでしょう。
特に、以下のような事情がある場合には、慰謝料が高額化することが予想されます。
- 婚姻期間が長い場合
- 幼い子どもがいる場合
- 性の不一致の期間がきわめて長期間に及ぶ場合
- 性の不一致と併せて、不貞行為やDV、モラハラなどが認められる場合
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
4、性の不一致を理由に離婚や慰謝料を請求する場合の注意点
性の不一致を理由として、配偶者に対して離婚や慰謝料を請求する場合、裁判を見据えて注意すべきポイントがあります。
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(1)性の不一致の深刻度を示す証拠が必要
性の不一致を理由に裁判離婚を請求するためには、性の不一致が「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たると評価できる程度に、深刻な状態に陥っていることを立証する必要があります。
具体的には、以下に挙げる事情などを、証拠によって立証することが必要です。
- 性の不一致が継続している期間
- 性の不一致の原因と、その原因が解消困難であること
- 性の不一致によって被っている精神的ダメージの深刻度
- 出産適齢期などに鑑みた年齢的な事情
どのような証拠が必要になるかは、具体的な事情に応じて異なるので、弁護士にアドバイスを求めましょう。
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(2)配偶者以外の異性と不貞行為に及ぶことは避けるべき
性の不一致により、性的不満が募っているとしても、離婚が成立するまでは、配偶者以外の異性と性交渉を持つことは避けるべきです。
配偶者以外の異性と性交渉を持ってしまうと、不貞行為を犯した「有責配偶者」と判断され、裁判上の離婚請求がきわめて認められにくくなります。
また、配偶者から逆に慰謝料を請求されてしまう事態にも陥りかねません。
原則として離婚が成立するまでは、夫婦間の貞操義務は継続しますので、新たな恋愛などは離婚が成立してから始めましょう。
5、まとめ
性の不一致を理由とする離婚は、協議離婚や調停離婚であれば夫婦の合意によって認められます。
離婚に関する同意が配偶者から得られない場合には、裁判離婚での離婚成立を目指すこととなります。その際は、性の不一致が「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たることを、証拠により立証しなければなりません。
法定離婚事由の立証には、煩雑な準備が必要になることが多いため、主張戦略や証拠収集などにつき、弁護士に相談することがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所では、円滑に離婚を成立させるため、離婚協議から離婚訴訟に至るまで、離婚専門チームの弁護士が代理人としてサポートいたします。
配偶者との性の不一致を理由に離婚を検討されている方は、ぜひ一度、ぜひ一度ご相談ください。ベリーベスト法律事務所までご相談ください。離婚問題について経験豊富な弁護士が、ベストな結果を迎えられるように最後まで尽力いたします。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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