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別居して何年たったら離婚できる? 離婚と別居の関係性とは

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更新日:2022年07月04日  公開日:2022年07月04日
別居して何年たったら離婚できる? 離婚と別居の関係性とは

配偶者が離婚を拒否している場合に、離婚を実現するための方法のひとつとして、長期間別居することが考えられます。
離婚に向けた別居を決断する際には、今後の生活や離婚を見据えて、必要な準備を整えましょう。

今回は、別居と離婚の関係性や、離婚を見据えて別居する際の注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、別居していれば離婚が認められるのか?

夫婦のいずれかが離婚を拒否している場合、別居をしているという事実があったとしても、それだけで離婚が認められるとは限らない点に注意が必要です。

  1. (1)離婚手続きにおける別居の扱い

    離婚手続きには、以下の3種類があります。

    ① 協議離婚
    夫婦が話し合って、離婚することやその条件を合意します。

    ② 調停離婚
    家庭裁判所の調停手続きを通じて、離婚することやその条件を合意します。

    ③ 裁判離婚
    裁判所の判決によって、離婚の可否や離婚条件について結論が示されます。


    協議離婚と調停離婚は、夫婦の合意によって離婚を成立させる手続きであり、離婚理由は何でも構いません。したがって、夫婦が別居しているか否かにかかわらず、協議離婚または調停離婚を成立させることができます。

    これに対して裁判離婚の場合、離婚を認める判決を得るためには、法定離婚事由(後述)の存在が認められなければなりません
    別居を理由として裁判離婚を目指す場合は、その別居の事実が法定離婚事由に該当するかどうかが重要です。

  2. (2)別居は法定離婚事由に該当する可能性あり

    裁判離婚の条件である法定離婚事由は、以下の5つです(民法第770条第1項各号)。

    1. 不貞行為
    2. 悪意の遺棄
    3. 3年以上の生死不明
    4. 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
    5. その他婚姻を継続し難い重大な事由


    別居が法定離婚事由に該当し得るのは、主に以下の2つの場合です。

    (a)配偶者が別居して、以後生活費を支払わない場合
    従前生活費を負担してきた配偶者が別居を開始した後に生活費を支払わない場合には、夫婦の協力義務を放棄する行為として、「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。

    (b)別居が長期にわたる場合
    別居が長期にわたると、婚姻関係が破綻していると評価されて「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。


    なお、前述の法定離婚事由1~4に該当する事由がなく、別居が長期間にわたることを理由に離婚を請求する場合、何年別居すれば離婚できるかについては、ケース・バイ・ケースなので一概にはいえません。

    しかしながら、過去の裁判例では、5~10年程度別居しているケースでは離婚請求が認められる傾向にあると言えます。
    ただし、実際に離婚請求が認められるかどうかは、単純な別居期間だけでなく、夫婦関係に関するその他の事情を総合的に考慮したうえで判断される点に注意が必要です。

  3. (3)自分が有責配偶者の場合、原則として離婚請求は認められない

    別居が長期間にわたる場合でも、ご自身が法定離婚事由の発生について責任がある「有責配偶者」の場合、容易には離婚請求は認められない可能性が高いです。

    最高裁昭和62年9月2日判決では、有責配偶者からの離婚請求でも認められる場合もあるとしつつ、以下の3つの厳しい条件を挙げています。

    • 夫婦の別居が相当の長期間に及んでいること
    • 夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
    • 離婚請求を認容することが著しく社会正義に反する特段の事情がないこと


    特に「1」の別居期間については、通常のケースよりも長期間継続している必要があると考えられています。

    ケース・バイ・ケースなので一概にいえませんが、有責配偶者かの離婚請求する場合、10年以上の別居期間が必要と考えておいた方がよいと言えます。

2、離婚に向けて別居する場合に注意すべきこと

離婚を見据えて別居する場合、別居が長期にわたることも想定して、以下の事柄に注意しながら準備を進めましょう。

  1. (1)お金のこと - 仕事・婚姻費用・財産分与など

    ご自身の方が配偶者よりも収入が少ない場合、別居を決行する前に、生活費について考えておく必要があります。

    安定した収入を得られる仕事を探すほか、別居の際には婚姻費用を請求して支払ってもらいましょう。
    また、配偶者よりも収入が少ない方は、離婚が成立する段階で財産分与を受けられる可能性が高いです。

    適正額の財産分与を受けるためには、婚姻中に配偶者が取得した財産の把握が重要になりますので、取引のある銀行や口座番号、証券会社を把握して、通帳や証券会社等からの通知などの写真を撮っておくなど別居前にできる限り証拠資料を集めておきましょう。

  2. (2)子どものこと - 行政上の手続き・連れ去り防止など

    子どもと一緒に配偶者と別居する場合、別居前に子どもに関する対応を考えておくことも必要です。

    保育園・幼稚園・学校に通っている場合には、転園・転校手続きの準備を行います。
    また、児童手当を配偶者が受け取っている場合には、住民票の移転後に受給者の変更手続きを取りましょう。DVなどがあって住所を知られないようにしたい場合には、市町村役場で相談して必要な手続きを取りましょう。

    さらに、別居後に配偶者が子どもを連れ去ってしまう事態も、念のため警戒しなければなりません。
    実家に身を寄せて、ご自身の不在時には両親に面倒を見てもらうなど、状況に応じた対策を講じましょう。

  3. (3)その他 - 証拠収集など、離婚に向けた準備

    今後離婚について話し合いなどを進めていくに当たって、できるだけ良い条件で離婚を成立させるには、ご自身に有利な証拠を集めておくことが重要です。

    財産分与・婚姻費用・養育費など、金銭関係の条件については、配偶者の資産や収入に関する資料を確保しておきましょう。
    親権のためには、養育にご自身が深くかかわっていたことを示す資料を確保できれば望ましいです。

    必要に応じて弁護士のアドバイスを受けながら、別居前の段階から離婚に向けた準備を少しずつ進めましょう。

3、別居の末に離婚したい場合に取るべき対応

繰り返しになりますが、別居したからといってすぐに離婚できるわけではなく、状況次第では長期戦を覚悟する必要があります。

別居の末に離婚したい場合には、以下のポイントを押さえた対応を取ることで、その後の手続きを有利に進められる可能性が高まります。

  1. (1)状況に合わせた離婚手続きを選択する - 協議・調停・訴訟

    前述のとおり、離婚手続きには協議・調停・訴訟の3つがあります。

    このうち協議と調停は、夫婦間の合意によって離婚を成立させる手続きです。
    離婚原因も問われないので、別居期間が短かったとしても、相手が同意すれば離婚できます。

    そのため、法定の離婚事由に該当する事情がないという場合には、まずは協議または調停による離婚を目指すのがよいでしょう。
    長期間の別居した上で訴訟による離婚を試みるのは、一度話し合いを試みてからでも遅くありません。

  2. (2)婚姻費用は早めに請求する

    夫婦が別居している期間については、収入の多い側が少ない側に対して婚姻費用を支払う義務を負います(民法第760条)。婚姻費用とは、結婚している間に発生する生活費全般のことです。

    離婚を見据えた別居は長期間に及ぶ可能性が高いため、配偶者よりもご自身の収入が少ない場合には、婚姻費用だけはできるだけ早い段階で請求しておきましょう。

    なお、配偶者が婚姻費用の支払いを拒否する場合には、婚姻費用の分担請求調停・審判を利用することが考えられます。裁判所が婚姻費用について判断する場合には、調停を申し立てた時点からしか支払い義務を認めないことが一般的ですので、なるべく早期に調停を申し立てることが非常に重要です

  3. (3)別居することはあらかじめ伝えなくても大丈夫

    別居する際に、相手の同意を得ておかなければならないのではと心配でなかなか別居に踏み切れないという方も多くいらっしゃいます。

    同意が得られるのであれば同意を得たうえで、子どもをどうするのか、別居中の生活費をどうするのかを話し合うのがベストです。しかし、相手の同意は別居に必要というわけではありませんので、相手に告げることなく別居しても問題はありません。
    その際には、これが離婚を見据えた別居であることを内容とした置き手紙やメールなどを用意しておくとよいです。

    また、特に、配偶者からDVやモラハラの被害を受けている場合には、別居について配偶者の同意を得たり、別居についてあらかじめ話すことは危険な場合があります。ご自身の身を守ることを優先して、速やかに別居してから弁護士を窓口として話し合うなど今後の対応を考えましょう。

  4. (4)別居中でも第三者と肉体関係は持たない

    別居が長期間にわたる場合、離婚後の将来的な再婚などに向けて、配偶者以外の異性と交際したいと考える方もいらっしゃるでしょう。

    別居後に第三者と肉体関係を持つことは、すでに婚姻関係が破綻していると評価されれば不貞行為とはならず、慰謝料請求も認められません。しかしながら、別居していれば必ず婚姻関係が破綻していると評価されるわけではないため、別居後の肉体関係であっても、不貞行為であると判断されて慰謝料請求が認められる可能性があります
    また、婚姻関係が破綻する前の不貞行為であるとすれば、それによって有責配偶者とされてしまい、ご自身からの離婚請求が認められにくくなってしまうおそれもあります。

    離婚に向けて配偶者と別居をする際には、離婚が成立するまで他の異性と交際しないという覚悟が必要になります。

4、別居や離婚について弁護士に相談するメリット

離婚を見据えて配偶者と別居しようと考えている方は、事前に弁護士にご相談いただくのがおすすめです。

弁護士は、協議・調停を通じて、早い段階で離婚を成立させられるように尽力いたします。離婚の際には、親権や養育費、面会交流、財産分与、場合によっては慰謝料などについても話し合う必要がありますが、これについてもより良い条件での離婚となるように配偶者と話し合いを行い、調整します

また、訴訟になった場合には、主張立証のための書面の作成や証拠の準備、裁判所での期日への出席なども行います。これによって、ご自身がかける時間や手間を少なくすることができるだけでなく精神的な負担についても軽減できますし、損をせず、より有利な条件となるようにサポートします。

別居時の注意点についても、専門的・実務的な視点から親身になってアドバイスいたしますので、万全の対策を整えることが可能です。

配偶者との別居・離婚等については、お早めに弁護士までご相談ください。

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5、まとめ

配偶者と離婚したい場合、むやみに別居すればよいわけではなく、さまざまな注意点を踏まえて対応する必要があります。
性格の不一致などを理由として離婚したいと考える場合、離婚裁判になると別居期間が5年以上も必要となるのが通常です。そのため、協議や調停をうまく進めていく必要がありますので、早期に弁護士をつけて話し合いをすすめていくことが重要です。

ベリーベスト法律事務所は、離婚に関するご相談を随時受け付けております。
配偶者との協議や離婚調停・離婚裁判の手続きも、弁護士が全面的に代行・サポートいたしますので、安心してお任せいただけます。

離婚をご検討中の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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