家庭裁判所の「調査官調査」とは? 子連れ離婚における影響度を解説
未成年の子どもがいる夫婦が離婚をする場合には、子どもの親権者をどちらにするか決めなければなりません。
夫婦間の話し合いで離婚や子どもの親権について合意ができない場合、家庭裁判所の調停や裁判手続きによる解決を目指すことになりますが、家庭裁判所では「調査官」という聞き慣れない職員が手続きに関与することがあります。
実はこの調査官は、子どもの親権や監護権に関する判断に大きな影響を与えるキーパーソンのひとり、ともいえる存在です。
このコラムでは、子連れ離婚の調停や裁判で行われることがある「調査官調査」について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、調査官の職務と離婚事件における役割
調査官というのはどのような職種で、家庭裁判所の離婚事件でどのような役割を担っているのか解説します。
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(1)調査官とはどのような職種?
調査官(家庭裁判所調査官)とは、家庭裁判所が扱う家庭内の紛争である、「家事事件」や非行少年の処遇を決める「少年事件」で、事実の調査や環境調整を行う職員です。
家事事件や少年事件は、法律論や一般的な常識だけではなく、事件当事者や発達途上の子どもの性格や心情、人間関係、生活環境など個々の事情にも配慮することが求められます。
このような家庭裁判所の特殊性を踏まえ、裁判官や一般職員とは別枠で、心理学、社会学、教育学、社会福祉学など人間関係諸科学の試験により採用され、研修を積んだ調査官という職員が在籍しています。
離婚事件などの家事事件において調査官が担う職能は次のようなものです。- 事件の関係人の性格、経歴、生活状況、財産状態及び家庭その他の環境等について、医学、心理学、社会学、経済学その他の専門的知識を活用した事実の調査(家事審判規則7条の3)
- 事件の関係人の家庭その他の環境を調整するため必要があると認めるときは、社会福祉機関との連絡など調整的関与(家事審判規則7条の5)
調査官は、家事事件や少年事件の実務がキャリアの大半を占める職種であり、専門性や経験の面では、裁判官からも一目置かれる存在といえます。
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(2)離婚事件における調査官の役割
離婚の問題は、夫婦間の問題であると同時に、とりわけ未成年の子どもにも大きな影響を及ぼす問題でもあります。
1994年(平成6年)に日本が批准した「児童の権利条約」では、児童が影響を受ける司法上の手続きで児童が意見を表明できる権利が明文化されました(条約12条)。
家庭裁判所の離婚調停や子どもの監護をめぐる調停、審判手続きでは、かねてより調査官が関与することによって、子どもの意思を手続きに反映させる仕組みが機能していました。
その後、離婚裁判など人事訴訟の管轄が地方裁判所から家庭裁判所へ移管され、離婚事件は調停から裁判まですべての段階で調査官が関与できるようになり、さらに、親権に関する子どもの意向を把握することが手続き上義務化されるなど、制度の見直しが進んでいます。
このような流れを受けて、家庭裁判所では大人同士の紛争であっても、子どもが影響を受ける事項については、子どもの選択権を尊重する傾向が強くなってきています。
離婚事件において調査官調査が行われる場合、子どもの意向や監護状況が主な調査対象となりますが、中立的な立場から専門的知識、技法により子どもの内面にアプローチする調査官調査の重要性はますます高まっているといえます。
2、離婚事件における調査官調査の流れ
離婚事件において調査官調査が行われるのは、基本的に未成年の子どもの親権が問題となっているケースですが、すべての事件で調査が行われるわけではありません。
具体的にどのようなケースで調査官調査が行われるのか、またどのような流れで調査が行われるのかについて解説します。
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(1)調査官調査が行われるのはどのようなケース?
調査官調査は、当事者の主張立証とは別に、裁判所の権限で行う事実の調査として行われるものです。
一般的な民事事件や家事事件は、当事者の主張立証をもとに裁判所が判断したり調停を進行させたりするのが原則ですが、子どもの福祉に大きく影響する親権や監護権の問題については、裁判所が進んで事実の調査を行うことがあります。
なお、親権に関する判断では、子どもが10歳以上であればその意向が重視される運用が実務上定着しており、裁判所が子どもの真意を確認して親権の判断をする必要があると考えた場合には、専門家である調査官が関与することが多くなります。
また、以下のケースでも調査官調査が活用されています。- 親権が激しく争われて事件が長期化しそうなケース
- 裁判所が親権の判断に迷うケース
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(2)調査官調査の範囲
離婚事件における調査官調査の範囲は、裁判所が個別の事件ごとに指定しますが、一般的には次のような事項について調査が行われます。
- 親権者の指定に関する、子どもの意向
- 子どもの監護状況や生活状況
- 夫婦それぞれの監護態勢や、経済状況、心身の状況
調査の対象となるのは、当事者である夫婦、未成年の子ども、監護を手伝っている親族、幼稚園・保育園・学校などの関係機関などです。
また、調査官調査では、事実の調査に加えて、親権者の指定に関する調査官の意見が求められることもあります。 -
(3)調査の方法
調査は基本的に調査対象者との個別の面談により行われます。
面談の日時は調停や裁判の期日などで事前に調整され、当事者である夫や妻の面談には代理人弁護士の同席が認められることもあります。
なお、未成年の子どもとの面談については、監護環境や親子関係の調査も兼ねて調査官が家庭訪問することが多く、必要に応じて家庭裁判所の面談室で遊具を用いた心理テストが行われることもあります。 -
(4)調査結果の報告・開示
調査結果は調査報告書として書面化され、裁判所へ報告されます。
また、調査官の意見が求められた場合は、意見も合わせて記載されます。
調査報告書は当事者も閲覧、謄写(コピー)することができますが、未成年の子どもの利益が害されるおそれがある場合などは、部分的に閲覧、謄写が許可されないこともあります(人事訴訟法35条、家事事件手続法47条)。
3、調査官調査が裁判所に重視される理由
調査官調査が行われることになった場合、裁判所は調査結果に沿った判断をすることが非常に多くなります。
その理由と調査官調査への対応で注意したい点について解説します。
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(1)調査官調査は裁判所の判断を補充する役割がある
調査官調査は、裁判所の権限により必要と認める事項について行われることは前章で解説しましたが、言い換えれば裁判所が親権の判断について十分な心証が得られていない事項について調査官調査が行われます。
つまり、調査官調査は裁判所の判断を補充するために行うという意味があります。
調査結果がよほど不合理なものでない限り、裁判所が調査結果に沿った判断をするのはいわば自然なことと言えます。 -
(2)子どもの真意を確認することができる
裁判所が親権を判断するに当たって重視するのは、子どもの意向や子どもの福祉です。
しかし、子どもの表面上の言動は、身近にいる監護親などの影響を受けている可能性も否定できず、裁判官といえども子どもの真意を見極めるのは困難なことが多いのも事実です。
その点、調査官調査では専門的知識や技法による調査や、必要に応じて学校や保育園など関係機関から得られる情報も盛り込まれるため、裁判所としても安心して採用できるという面もあるのです。 -
(3)調査官調査には準備と協力姿勢が重要
調査官調査の面談では、相手方の主張に沿った質問や、親権を取得した場合に子どもと相手方との交流を認めるかなど、対応によっては不利になる問答があるかもしれません。
事前に弁護士のアドバイスを受けたり、面談には弁護士にも同席してもらったりするなど対策を講じることをおすすめします。
また面談では、調査官は姿勢や表情なども観察していますので、子どもの将来のために調査に協力するという姿勢も重要です。
4、調査で不利な結果になった場合の対処法
調査官調査の結果が不利なものであった場合、調停であれば相手方が親権について譲歩する可能性が低くなり、裁判であれば親権者を相手方と指定する判決になる可能性が極めて高いことになります。
このままでは状況が好転することはないため、対策を講じる必要がありますが、どのような対処法があるのでしょうか。
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(1)調査結果の不合理性を積極的に主張立証する
あくまで親権を取得したい場合は、最終的に調査結果どおりの判決がされないよう、積極的に主張立証を行う必要があります。
しかし調査が終わった段階で主張できることは、調査官調査の事実誤認や評価の誤り、調査の後に発生した新事実くらいしか考えられず、かなり旗色が悪い状況です。
なお、調査官調査の再調査は、調査後に重大な事情変更がある場合や、手続きが長期化した場合などに認められることはあるものの、基本的に行われないと考えたほうがよいでしょう。
仮に家庭裁判所の離婚裁判で親権が認められなかった場合、高等裁判所に控訴することができます。
高等裁判所には控訴審の審理に必要な調査を行う調査官が配属されており(裁判所法61条の2第2項)、控訴審の調査官の視点で一審の調査結果が見直される可能性もないわけではありません。 -
(2)面会交流の取り決めなど有利な条件獲得を目指す
親権については譲歩し、子どもとの面会交流の取り決めを目指すなど、離婚の条件を見直すことも選択肢のひとつとして考えられます。
面会交流とは、親権を得られなかった親が離婚後に子ども交流することで、裁判所で面会交流の条件について具体的に取り決めると、一定の強制力が生じます。
調査官調査の結果が出ると、裁判所はその結果を踏まえて調停や和解による解決をすすめる進行が一般的ですが、一定の譲歩をすることによって、裁判所も紛争の長期化を避けるために相手方の説得を試みてくれる可能性があります。
離婚条件について、弁護士にご相談されることをおすすめします。
5、離婚問題で弁護士のサポートを受けるメリット
離婚については決心が付いたとしても、子どもの親権や養育費、財産分与や年金分割など、離婚の条件として検討しなければならないことがいくつもあります。
また、子どもと一緒に生活することを重視する場合は、親権や監護権を獲得しなければなりませんが、そのためには、離婚のアクションを起こす前から準備が必要な点もあります。
弁護士は離婚問題が解決した後に後悔しないよう、より有利な離婚条件となるようアドバイスすることが可能です。
また、離婚問題を家庭裁判所で解決することになった場合でも、書類の作成から裁判所への出席、相手方への対応まで弁護士が代理人として代行します。
離婚はただでさえ心労が重なるものですが、弁護士のサポートにより負担が軽減されるのは大きなメリットといえるでしょう。
お悩みの方はご相談ください
なる場合がございます。
6、まとめ
離婚事件で調査官調査が行われることになった場合、子どもの親権や監護権に関する判断は調査官調査の結果に大きく影響を受けると考えたほうがよいでしょう。
弁護士のサポートを受けながらしっかり準備するのが理想ですが、仮に調査結果が不利なものになった場合にも事後的な対策が必要です。
離婚を考えているけれども子どもの親権は手放したくないという方は、できるだけ早い段階から弁護士のサポートを受けて、後悔のない再スタートを目指すことをおすすめします。
まずはベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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