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子どもの意思はどれだけ反映される? 離婚前に知りたい親権のこと

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更新日:2024年04月11日  公開日:2019年07月04日
子どもの意思はどれだけ反映される? 離婚前に知りたい親権のこと

子どもを持つ親が離婚するとき、気になるのは親権の行方でしょう。

父親も母親も親権を希望して、話し合いが平行線のまま長引くことは珍しくありません。また、子ども自身が父親と母親のどちらに親権をもってほしいのか、意思を示すこともあります。

このようなさまざまなケースにおいて、親権者の判断に、子どもの意思はどれだけ重視されるのだろうかと気になっている方もいるでしょう。

本コラムでは、離婚するときの親権決定の判断基準や養育費、面会交流などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、親権決定の判断基準と子どもの意思

  1. (1)親権が決定される際の判断基準

    婚姻中は、夫婦が共同して親権を行うものと定められています。ところが、離婚の際には、親権は親のどちらか片方だけに認め、他方の親は親権を失うというのが日本の民法の定めです。
    この制度自体には異論があり、離婚後も共同親権を認めるべきだという運動も活発です。しかし、いまのところは、親の一方だけが親権を得られるという仕組みです。

    親権者としてどちらがよりふさわしいかの判断は、主に以下のような観点から判断されます。

    ①継続性の原則
    それまで、子どもを主として監護養育していた側が今後も子育てを継続したほうが良いという考えです。子どもが小さいほど、母親との関わりが大きいので、通常は母が有利ではありますが、場合によっては父親が主として監護養育している場合もあります。この考えにおいては、生まれてからの子どもとの関わりを具体的に判断することになります。また、単に親との関わりだけではなく、周囲の環境との関係も親権を判断するにあたり、影響してきます。つまり、転居や転校によって環境が大幅に変わるよりも、それまでの環境を継続させる方が望ましいという意味です。

    ②母性優勢の原則
    母性というと母親を有利とするように読めますが、そういう意味ではありません。いわゆる母性的な立場にあった側に親権を認めようという考えです。
    家庭によっては、父親が母性的な立場で子どもと関わっている場合もあります。もっとも、実際には母親が母性的な立場を担っているケースが多いと思われます。

    ③兄弟(姉妹)不分離の原則
    兄弟(姉妹)がいる場合、できるだけ分かれることなく一緒に養育するほうが望ましいという考えです。
    兄弟(姉妹)は、お互いに影響を受け合ってともに成長している大切な存在です。特に離婚によって子どもにとっての家庭環境は激変しますから、その負担を小さくするためにも、兄弟(姉妹)はできるだけ一緒に育てたほうが成長に望ましいと考えられています。

    ④子どもの意思の尊重
    離婚は夫婦の問題ですが、親権は子ども自身の問題です。大人の意見だけでなく、子ども自身の気持ち、意思をできるだけ尊重しようという考え方です。近年では、特に子どもの意思を尊重すべきだという考えが大きくなっています。
    先般の家事事件手続法改正の結果、親権者指定・変更の審判を行う際、15歳以上の子どもについては、必ずその意見を聴取しなければならないと新たに定められました。 もっとも、子どもの年齢によっては意思を伝えることができなかったり、あるいは、正直な意思を伝えることが親にとって悪いのではないかという葛藤を抱えてしまうことがあります。このような問題は、離婚ではつきものであり、家庭裁判所では、訓練された調査官が慎重に子どもの意思確認を行っています。


    このようなさまざまな観点から、子どもの年齢・性別、親から子どもへの愛情や関わり方、経済力、祖父母や親せきなどの監護を補助してくれる人がいるかなど、さまざまな事情を考慮して総合的に判断されます。
    実際のところ、子どもの年齢が小さいほど、母親が親権者と決まる場合が多く、経済力はあまり考慮されていません。

    なお、親権者は一度決定した後に、家庭裁判所へ親権者変更調停を申し立てることも可能です。しかし、親権変更のハードルは高く、よほどの事情がなければ認められませんし、子どもの生活は心身に大きな負担となる可能性があります。手続き上変更可能だという理由で、安易に決めることなく、真剣に話し合って十分に納得のいく判断をするようにしましょう。

  2. (2)子どもの意思はどれくらい反映されるの?

    15歳以上の子どもはその意見を裁判所が聞かなければならないという規定がありますが、15歳未満の子どもについても、赤ちゃんのように意思疎通ができない場合を除き、さまざまな方法で子ども自身の意見を把握し、それを尊重する配慮がされています。

    はっきりと自分の意思を伝え、その親と暮らすことについて客観的にみても特に問題がないならば、ほとんどの場合はその子どもの意思が尊重された判断がなされるでしょう。そして、その子どもに年下の兄弟(姉妹)がいる場合、上の子どもと下の子どもが一緒に生活するように判断される可能性が高まります。

2、離婚と親権について、子どもへの説明はどのようにするべき?

離婚した親は子どもに対して離婚の事実をどのように伝えているのでしょうか。
公益社団法人家庭問題情報センターによる、離婚した親と親の離婚を経験した子どもに対する調査をもとに見ていきましょう。

(出典:公益社団法人家庭問題情報センター「養育環境の変化と子どもの成長に関する調査研究」報告書)

  1. (1)親は子どもに離婚の説明をしている?

    同センターが行った調査によれば、親が子どもに対して、離婚について説明をした割合は70%程度ということでした。子どもが11歳以上の場合に限れば80%以上の親が子どもに離婚の説明を行っているということでした。

  2. (2)離婚を説明しなかった場合

    離婚を説明しなかった理由としては、年齢が低い場合は、「話してもよく分からないと思った」というものが多く、子どもの成長を待って伝えたケースもあるようです。
    年齢が高い場合は、「親が動揺して説明できなかった」「子どもの意思に反することがわかっていたので、かわいそうで話せなかった」といった理由が挙げられています。説明に困る親の心情が伝わります。

  3. (3)離婚の説明をした場合

    子どもの年齢が上がると、離婚にともなって転居・転校の問題が生じ、これを理由に説明をせざるを得なかったというケースもありました。

    説明をした親の気持ちとしては、「話さないほうが子どもが不安になると思った」「子ども自身の権利だから子どもに説明すべき義務があると思った」「話せば子どもなりにちゃんと理解できると思った」「説明したうえで子どもの意思を確認した」などの意見があり、子どもの心を大切に思い、真剣に向き合った様子が表れています。

    いずれにしても親側は、子どもに対して離婚を説明するかしないかを悩んでおり、しない選択をした親も一定程度いることがわかります。

  4. (4)子どもは親に説明してほしがっている

    他方、親が離婚した子どもの意見を調査した結果では、「親の考えとは異なっており、きちんと説明してほしかった」という声が圧倒的であったようです。自分も当事者であり、自分の知らないところで自分の意思も関係なく、ことが進められるのはつらかったという思いです。

    また、説明を受けた子どもも、十分な説明を受けたと感じている子どもは少なく、その点で、納得がいかないまま成長してきたケースが多々あります。

  5. (5)パパとママどっちと暮らしたい? と聞いてもいいか

    子どもの意思が重要だとしても、「パパとママとどっちがいい?」「どっちと暮らしたい?」と聞かれたら子どもはどう感じるのでしょうか。この質問経験のある子どもたちの意見としては、「とてもそんな質問に答えられない」「つらくてたまらなかった」という回答が圧倒的多数です。

    親としてはそれを聞きたい気持ちにかられるものですが、それがどれだけ子どもの負担、苦痛になっているか、質問自体が子どもを大きく傷つけるおそれがあることを十分に理解しておく必要があります。

3、親権をどちらが持つか決まらない場合の離婚の流れ

  1. (1)協議離婚

    未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合には必ず、親権者を取り決めなければ離婚できません。協議離婚の場合、離婚届に親権者の欄を記載しなければ受理されないのです。
    したがって、離婚の際には、夫婦間でよく話し合って親権をいずれがとるか決定しなければなりません。

  2. (2)調停・裁判

    どうしても親同士で話し合いが進まないとき、お互いに譲らずに決着がつかない場合は、家庭裁判所の調停を申し立てることになります。離婚調停の中で親権について改めて協議することとなります。

    調停でも折り合いがつかなければ、そのまま審判手続きに移行し、裁判所の判断により親権者を指定してもらうことになります。この調停の過程で、子どもの意思を確認したり、家庭の調査を行ったりという手続きも行われます。

    もっとも、そのほかの離婚の条件もまとまらずに離婚調停が不調に終わった場合は、離婚訴訟を提起して離婚や親権についても、裁判所の判断を仰ぐことができます。

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4、知っておきたい親権と監護権の違い

  1. (1)財産管理権と身上監護権について

    親権には、2つの権利が含まれています。そのひとつが財産管理権で、もうひとつが身上監護権です。このうち、実際に子どもと同居して生活を共にして育てていく権利が、身上監護権なのです。

  2. (2)親権者と監護権者を分けるケースのメリット・デメリット

    親権から身上監護権だけを取り出して、「監護権」と呼ぶことがあります。監護権は親権の一部として親権者が行使するのが原則です。しかし、親権者が子どもを監護できない事情がある場合など、例外的な場合、そして、両親の間で親権者と監護権とを分けて持つことで合意した場合には、分けることも可能です。

    親権者と監護権者とを分けるメリットは、まず、その結論をとることで離婚がスムーズにすすみ、泥沼離婚の子どもへの悪影響を回避できる点でしょう。
    たとえば、子どもが幼少で母親が育てることがふさわしいと誰から見てもわかる場合でも、父親が自分の気持ちの整理がつかず、親権を争って譲らない場合があります。
    こうした場合、親権を父とし、監護権者を母にすることが考えられます。実際に子育てをするのは母親ですが、父には、親権者としての権利が残り、双方の気持ちが納得して紛争をおさめられる可能性があります。

    また、子どもとしても、父と離れてしまったものの親権を父が持っているということで、自分とつながっているとか、自分に関しての責任を全うしようとしてくれているといった心理的安心を得られるというメリットがあります。

    他方、デメリットとしては、監護権者だけですべてを決定できなくなるという点でしょう。
    たとえば、子どもが事故に遭って損害賠償を請求しようとする際、権利があるのは財産権を行使できる親権者です。また、離婚後に子どもの名字を変更する際には、親権者の許可が必要ですので、その点でも相手と交渉したり許可をもらったりする手間がかかります。
    いずれの点でも、子どもの負担やデメリットが生じないようにすることが一番大事です。やはり、親権と監護権は一致させておくことが原則といえるでしょう。

  3. (3)離婚成立前は監護権者指定を求める

    なお、離婚成立前に別居した場合、離れてしまった子どもを取り返すためにはどうしたらよいでしょうか。この場合は、家庭裁判所に、監護権者指定審判を申し立てることができます。
    なぜなら、婚姻中は共同親権と決まっているので、親権から監護権だけを取り出して、離婚までの間の監護権をいずれが持つか、家庭裁判所に判断してもらうことになるからです。

5、養育費はどのように決定する? 計算方法とは

  1. (1)養育費について

    仮に父親が親権を取得できず、母の側で子どもを育てることとなった場合は、父が養育費を支払うことになります。原則として、両親双方の収入と、子どもの人数と年齢とを裁判所が用いる計算式にあてはめて決められます。

    この計算式自体は複雑ですが、簡単に養育費の目安がわかるように、当事務所のホームページで養育費計算ツールを用意しておりますので、ご活用ください。
    このツールを用いれば、自分がどれくらいの養育費を支払わなければならないのか見積もることが可能です。
    もちろん、算定表とは関係なく、夫婦間の話し合いで自由に金額を決めることもできますが、話し合いが整わなければ裁判所の調停または審判で金額が決められることになり、その際には、決まった計算式に沿って決定されます。

    参考:【最新2024年(令和6年)版】養育費計算ツール

  2. (2)シングルマザーへの助成金

    離婚して母親が親権を持った場合、いわゆるシングルマザーとしての生活が始まります。シングルマザーに対しては、国や地方自治体などがさまざまな助成制度を用意しています。
    これらはいずれも自ら申請して初めてもらえるものなので、知らなければ損をするばかりです。

    以下、代表的なものをあげます。


    ●代表的な助成制度
    • 児童扶養手当
    • 児童手当
    • 児童育成手当
    • 住宅費助成
    • 医療費助成
    • 電車等交通機関の助成制度
    • 保育所優先入所
    • 保育料減免


    市町村によってサービス内容はかなり異なってきます。必ず窓口で確認して申請漏れがないようにしましょう。

6、離婚後の面会交流で気を付けたいこと

  1. (1)面会交流の取り決めは詳細に決めておこう

    親権を得られなければ、子どもと離れて暮らすことになります。その離れてしまった親に認められる権利が、面会交流権です。面会交流権は、民法に定められたれっきとした権利であり、父母の離婚の際に、子どもの利益を最優先にして協議で定めることとされています。
    したがって、親の都合や気持ちだけでなく、子どもの状態や気持ちを大切にしながら、慎重に決めていくべきです。
    面会交流では、会う頻度や場所、時間、子どもの送迎の方法などを具体的に決めます。付添人の有無や、宿泊を伴うかという点も重要です。あとで親同士でもめることのないように、無理のない範囲で具体的に決めておく方がいいでしょう。

    また、面会以外にも、手紙やメール、LINEなどでの連絡や、学校行事への参加、誕生日などのプレゼントなどについても、ある程度決めておくことで細かいトラブルを防ぐこともできます。あくまで子どもの気持ちを第一に、丁寧な話し合いを行いましょう。

  2. (2)養育費の支払いと面会交流は別の問題

    なお、時として、養育費の支払いと面会交流とを引き換えのように主張する事例がみられます。子どもが面会に来ないから養育費を支払いたくない、といった言い分です。

    気持ちは理解できますが、養育費と面会交流権はまったく別のものです。たとえ、子どもと会えなくても養育費は払わなければなりませんし、養育費の支払いが止まってしまっても、子どもを面会交流に送り出すことは必要なことなのです。

7、まとめ

離婚と親権の問題は、絶対に切り離すことのできない問題です。子どもにとっては、親が離婚するというだけで大変なショックとなることでしょう。

そのうえ、自分自身をめぐって父親と母親がもめているという事実は、子どもの気持ちをさらに傷つけるものです。

幼少時の親との関係は、その後の成長に大きな影響を与えます。夫婦関係がうまくいかなくても、子どもへの愛情は変わらないことをしっかり伝えたうえで、子どもの幸せを第一に親権を決定していきましょう。

ベリーベスト法律事務所では、離婚問題に関するご相談を受け付けております。子どものためにどうすることがベストなのか、知見・経験豊富な離婚専門チームの弁護士が親身にお話を伺いながら、離婚に向けたサポートをいたします。

Zoomなどを活用したオンライン相談も受け付けておりますので、子ありで離婚を決断された方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所までお問い合わせください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
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[ご相談窓口]0120-663-031
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URL
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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