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離婚後の手続きは何が必要? 知っておきたい手続き一覧

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更新日:2023年04月03日  公開日:2022年12月08日
離婚後の手続きは何が必要? 知っておきたい手続き一覧

離婚自体は、市区町村役場に離婚届を提出するだけでできてしまいますが、それだけですべての手続きが終了というわけではありません。

離婚後は、姓の変更、公的身分証明関係、住民票・国民年金などの役所での手続きのほか、口座や名義変更など、さまざまな手続きが必要になります。

今回は、離婚後の手続きを効率よく進めるために知っておきたい、離婚後の手続きの概要と注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、離婚後にはどんな手続きが必要?

離婚後に必要な手続きとしては、大きく分けると以下の4つの項目があります。

  1. (1)姓の変更手続き

    婚姻時に姓を変更した側(主に女性)が必要になる手続きとして、姓の変更手続きというものがあります。離婚時の姓の変更手続きは、旧姓に戻るのか婚姻中の姓を使用するのかによって、手続きが異なります。

    ① 旧姓を使用し、元の戸籍に戻る場合
    婚姻をするときに姓の変更をした方は、離婚によって原則として旧姓に戻ることになります。これを「復氏」といいます。

    離婚によって配偶者の戸籍からは除籍されることになるので、婚姻前の元の戸籍に戻るのか、新たな戸籍をつくるのかを選択する必要があります。元の戸籍に戻るという場合には、離婚届に「婚姻前の氏に戻る者の本籍」欄がありますので、「元の戸籍に戻る」という部分にチェックをいれるようにしましょう。

    ② 旧姓を使用し、新しい戸籍をつくる場合
    婚姻前の戸籍が除籍されている場合や新たな戸籍の編製を希望する場合には、新しい戸籍をつくって、その戸籍に入ることになります。新しい戸籍をつくるという場合には、離婚届の「婚姻前の氏に戻る者の本籍」欄で、「新しい戸籍をつくる」という部分にチェックをいれるようにしましょう。

    ③ 婚姻中の姓を使用する場合
    婚姻中の姓を名乗り続けたいと言う方もいらっしゃるでしょう。この場合、離婚届の「婚姻前の氏に戻る者の本籍」欄は空欄にして、離婚届とは別に「離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)」を提出する必要があります。

    「離婚の際に称していた氏を称する届」は離婚届と同時に提出することもできますし、離婚の日から3か月以内であれば離婚後でも提出可能です。

  2. (2)公的身分証明関係の手続き

    離婚後は、運転免許証、パスポート、マイナンバーカードといった公的身分証明関係の手続きが必要になります。必要書類については、代表的なものを記載していますが、実際に手続きされる際には、あらかじめホームページを確認し、必要に応じて電話などで事前にご確認ください。

    ① 運転免許証
    離婚によって、本籍、姓、住所に変更が生じた場合には、運転免許証の記載事項変更の手続きが必要です。運転免許証の記載事項変更手続きは、新しい住所を管轄する警察署または運転免許センターで、以下の書類を提出することによって行います。

    • 運転免許証記載事項変更届
    • 住所・本籍・性の確認書類(住民票など)


    特に期限は設けられていませんが、運転免許証は、身分を証明する基本的なものになりますので、早めに手続きをすることをおすすめします。

    ② パスポート
    離婚によって、本籍、姓に変更が生じた場合には、パスポートの記載事項変更の手続きが必要です。ただし、同じ都道府県内での本籍変更であればパスポートの記載に変更は生じませんので変更手続きは不要です。パスポートの記載事項変更手続きは、住所地を管轄する旅券申請窓口で、以下の書類を提出して行います。

    • 一般旅券発給申請書
    • 戸籍謄本
    • パスポート用の写真


    ③ マイナンバーカード
    離婚によって、姓、住所に変更が生じた場合には、マイナンバーカードの記載事項変更の手続きが必要です。マイナンバーカードの記載事項変更手続きは、住所地の市区町村役場で、以下の書類を提出して行います。

    • 個人番号カード券面記載事項変更届
    • 本人確認書類(運転免許証など)
  3. (3)住民票や国民年金など役所の手続き

    離婚後は、市区町村役場において、住民票や国民年金などに関する手続きが必要です。

    ① 住民票の異動
    離婚によって住所が変更になった場合には、住民票の異動手続きが必要です。同一市区町村内での転居であれば、転居先の市区町村役場に「転居届」を提出すれば足りますが、他の市区町村に転居をする場合には、元の市区町村役場に「転出届」を提出し、転居先の市区町村役場に「転入届」を提出する必要があります。
    住民票の異動は、引っ越しの日から14日以内に行わなければなりません

    ② 国民年金
    厚生年金に加入している会社員の配偶者に扶養されている方は、厚生年金の第3号被保険者となるので国民年金の保険料を納める必要はありません。しかし、離婚によって配偶者の扶養から外れることになった場合には、第3号被保険者の資格を喪失することになるので、国民年金への加入手続きが必要です

    ③ 国民健康保険
    会社員の配偶者に扶養されている方は、被扶養者として配偶者の会社の社会保険に加入しています。離婚によって被扶養者としての資格を喪失するため、新たに国民健康保険に加入する必要があります。国民健康保険への加入は、資格喪失日から14日以内に行わなければなりません。

    ④ 世帯主の変更
    それまで世帯主となっていた配偶者が転居することになった場合は、世帯主の変更手続きが必要です。世帯主の変更は、居住地の市区町村役場において「世帯主変更届」を提出します。世帯主の変更は、変更が生じてから14日以内に行わなければなりません。

  4. (4)口座等の名義変更の手続き

    離婚によって住所や姓の変更が生じた場合には、さまざまな名義変更手続きが必要です。

    ① 預貯金口座
    口座開設時に登録した住所・姓から変更が生じた場合には、銀行の窓口で名義変更などの手続きを行う必要があります。姓が変更になった場合には、届出印の変更も必要になりますので、新たな銀行印をつくらなければなりません。

    ② クレジットカード
    住所や姓の変更があった場合には、クレジットカード会社に連絡をして、変更の手続きを行います。婚姻時に配偶者の家族カードを利用していた場合には、その後にトラブルになることもありますので、離婚の際に配偶者に返却するようにしましょう。

    ③ 不動産
    住所や姓の変更があった場合には、不動産登記の名義変更を行わなければなりません。また、離婚時に財産分与によって不動産を取得した場合には、所有権移転登記手続きも必要になります。

    ④ 車
    住所や姓の変更があった場合には、住所地を管轄する運輸支局において車検証の変更登録が必要です。車検証の変更登録は、変更があったときから15日以内に行わなければなりません。

    ⑤ 光熱費の支払い
    光熱費の支払いが元配偶者になっている場合には、契約の名義変更と支払い方法の変更手続きを行う必要があります。

2、子どもがいる場合にやるべき手続きとは?

子どもがいる場合には、上記の手続きに加えて、ほかにもやるべき手続きがあります。

  1. (1)子どもの姓の変更手続き

    子どもがいる夫婦の場合、離婚の際には、夫婦のどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。親権者に指定された親は、子どもと一緒に生活をすることになりますが、親権を得たとしても、子どもの姓が当然に変更になるというわけではない点に注意が必要です。子どもの姓は、手続きを取らない限り、婚姻中の姓のままです

    子どもの姓を変更するためには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立て」という手続きを行う必要があります。離婚による氏の変更であれば、通常は問題なく許可されます。
    裁判所からの許可が下りた後に、市区町村役場に入籍届を提出することによって、子どもの姓が戸籍上も変更されます。
    そして、入籍届の提出によって、子どもと親権者が同じ戸籍に入ることになります。

  2. (2)学校関係の手続き

    離婚に伴って親権者が転居する場合には、子どもの転園・転校手続きが必要です。卒業間近という場合には、学区外であっても特別に通学が許可されることもありますので、学校と相談して決めるとよいでしょう。
    また、学校や習い事関係の支払先や連絡先なども、必要に応じて変更します。

  3. (3)公的支援制度に関する手続き

    子どもがいる場合に、公的支援制度に関する変更手続きが必要になることがあります。

    ① 児童手当
    児童手当とは、中学校卒業までの子どもを養育している家庭に支給される手当です。離婚に伴い受給者の変更が生じる場合には、手続きが必要になります。

    ② 児童扶養手当
    児童扶養手当とは、離婚などによって、ひとり親家庭となった場合に支給される手当です。離婚によって自動的に支給される手当ではありませんので、児童扶養手当の支給要件に該当する方は、居住地の市区町村役場において児童扶養手当の申請手続を行うようにしましょう。

    ③ ひとり親家庭等医療費助成制度
    ひとり親家庭等医療費助成制度とは、ひとり親やその子どもが病院で治療を受けた場合に、健康保険の自己負担額の一部を自治体が助成するという制度です。この制度は、ひとり親家庭において、18歳に到達した最初の3月31日までの子どもを養育する父または母と子どもで、所得要件に該当する場合、助成の対象となります。

    ④ JR通勤定期券の割引
    児童扶養手当の支給を受けている方がJR通勤定期券を購入する場合には、割引を受けられる制度があります。この制度を利用すれば、JR通勤定期券を3割引きで購入することができます。

3、離婚後の手続きで気をつけること

離婚後の手続きにあたっては、どのような点に注意するべきなのでしょうか。

  1. (1)元配偶者の協力が必要になる場合もある

    離婚後の手続きは、自分だけで手続きすることができるものが多いですが、なかには元配偶者の協力が必要になるものもあります。

    たとえば、国民健康保険の変更手続きにあたっては、配偶者の職場から「健康保険資格喪失証明書」の交付を受けなければなりません。社会保険から国民健康保険に変更をする場合には、資格喪失日から14日以内に手続きをしなければなりませんので、元配偶者の協力が必要です。
    しかしながら、お願いしても協力してくれないとか、DVなどの理由からお願いすることが難しいということはあるでしょう。
    その場合には、市区町村の担当窓口で相談すれば、元配偶者の協力を得ずに進めることができる場合がありますので、あきらめずにまずはご相談ください。

    また、ご自身で元配偶者に連絡することが難しいという場合には、弁護士を窓口として対応することもできますので、弁護士への依頼も検討するとよいでしょう。

  2. (2)離婚後でも養育費、慰謝料、財産分与、年金分割の請求手続きが可能

    養育費、慰謝料、財産分与、年金分割といった離婚に関する条件については、離婚と同時に離婚協議書などで決めなければならないと思っている方も多くいらっしゃいます。しかし、これらの条件については、離婚後であっても決めることができます。そのため、どうしても先に離婚しなければならない、離婚したい事情がある場合には、離婚後にこれらの条件を話し合うことも可能です。

    ただし、いずれの請求手続きにも期限がありますので、期限内に手続きをしなければなりません。各手続きの期限は、以下のようになっています。

    養育費 養育費請求権が発生してから5年以内
    慰謝料 離婚から3年以内
    財産分与 離婚から2年以内
    年金分割 離婚から2年以内

    離婚後だとこれらの条件を話し合うのが難しくなることもありますので、できる限り離婚時に話し合いをするようにしましょう。離婚後に相手が対応してくれない、相手と会って話したくないという場合には、弁護士が代理人として交渉をすることもできます。自分だけで対応することに不安を感じているという場合には、法律の専門家である弁護士のサポートを受けるとよいでしょう。

4、まとめ

離婚後に行わなければならない手続きは非常にたくさんありますので、漏れがないようにするためにもチェックリストを作成するなどして、ひとつずつ確実に進めていくことが大切です。

なお、離婚すること自体は決まっても離婚条件が決まっていない場合や条件でもめている場合、公正証書の作成などでお悩みの場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士が間に入ることによって、スムーズに手続きを進めることができるでしょう。

離婚に関するお悩みを抱えている場合は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。経験豊富な弁護士が、一日でも早く新しい生活をスタートできるようサポートします。
初回相談は60分まで無料です(※)。お気軽にお問い合わせください。

(※)ご相談の内容によって一部有料となる場合がございます。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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